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第3章 襲撃
わだかまる不快感
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その後、起き上がれるようになるまでに三日は要した。
目を開いても体が重くて動けず、目を閉じれば地面が揺れるような心地に吐き気が込み上がる。
寝ても覚めても気持ち悪いという、地獄のような日々を乗り越えて今。
ようやく、不快感なく動けるようになった。
それにしても……
「暇だな……」
実は布団で上半身だけを起こして、今日何度目かも分からない溜め息をついた。
やっと動けるようになったというのに、尚希も拓也もまだ動くなと言って聞かないのだ。
拓也と二人の時に、文句も言ったのだが……
『調べ物は部屋でもできる。』
と、一蹴されてしまった。
拓也は自身も調べ物をする傍ら、自分が読みたいと伝えた本を運んできてくれた。
さすがに申し訳ないと思ったので、さっさと本を読んで自分で取り換えに行こうかと考えていたのだが、拓也は一時間に一回は新たな本を持ってきて、自分が読み終えた本を返しに行ってしまった。
どうやら、こちらの魂胆は向こうに丸見えのようだ。
そういうわけで、実は部屋を出ることなく、ずっと本を読んでいるだけの状況だった。
「あー、動きたい。」
読んでいた本を閉じて、実は体を伸ばす。
確かに体調はまだ万全というわけではないが、ずっと寝ていては逆に疲れるものである。
「でも、勝手に動き回れば、後であの二人がなんて言うか……」
あの二人を無視すると、その後が面倒だ。
今日一日くらい大人しくしていれば、さすがに文句は言われなくなるだろう。
実は窓の外を見る。
日は一番高い所からようやく傾き出した頃。
一日が終わるには、まだまだ長そうだ。
(仕方ないか……)
実は諦めて、また本のページをめくる。
ニューヴェルに関する本は、すでにほぼ読み尽くしてしまったように思える。
だが、得られたのはこの街の遍歴やそれに伴う環境の変化、その最中で生じた問題といった一般的知識のみ。
アイレン家が領主に就いた経緯も、交易に深く関わっていた中心人物であったからとしか書かれていない。
調べながらいつか、調べるべき要点がどこかずれている。
そんな気がしながらも、できることが限られている以上、今はただページをめくるしかない実だった。
途中二度ほど、拓也が様子を見に来た。
「何か目に留まるものはあった?」
「いや、特には。」
もはや定型になってきた会話を交わして、拓也はまた部屋を出ていく。
ドアを閉める前に―――
「抜け出すなよ。」
と、しっかり釘を刺されてしまった。
「分かってるよ。」
苦笑しつつ、実は拓也に手を振る。
ドアが閉められると、その場が一気に静寂に満たされた。
「……はぁ。」
集中するのも限界のようだ。
ずっと考え事をしながら本を読んでいたせいで、頭が少し痛い。
本を閉じてベッドに横になった実は、憂鬱そうに目を伏せる。
体調が悪いからだろうか。
本音を言うと、一人でじっとしていたくない。
―――なんだか、不気味な気配を感じてしまいそうで。
起き上がれないでいる間も、時々あの気配を感じていた。
気配はいつもねっとりと絡むような視線でこちらを見つめて、しばらくするとゆっくり去っていく。
定期的に様子を見に来る尚希たちとは明らかに違う、それなのに何かは分からない気配。
その気配に、嫌な予感がして仕方ない。
あれは、一体何なのか。
それはきっと、尚希しか知らないことなのだろうけど……
思わず、首筋に手を当てる。
自分が倒れたことについて、尚希はその原因を知っているようだった。
『実……本当に、ごめんな……』
気を失う間際、尚希は小さくそう謝ってきた。
あれはきっと、自分が尚希の抱えるものに触れてしまったという意味。
そしてその一端が、尚希が自分の首から引きずり出した黒いモノというわけだ。
思い出した途端に首筋に何かが蠢く不快感がよみがえってくるようで、実は顔をしかめた。
あれは何?
尚希の抱える秘密と、どう関わっている?
疑問は尽きない。
気を失う前に秘密を教えてもらう約束はしたが、その約束が必ず果たされるとは思えないのが残念だ。
拓也に聞かれたくないならば、隙を見計らってここに来ればいい。
それなのに、尚希は朝に自分の様子を見に来た以降、姿を現さない。
それはきっと、尚希が真実を話すことをまだ躊躇しているということ。
それだけ、尚希が抱えているものが重いということなのだ。
実は溜め息をつくと、ゆっくりと体を起こした。
ベッドから降りて、窓に向かう。
首の不快感が未だに消えない。
あの事を思い出すだけで、息苦しくなってしまう。
それらをどうにかしたくて、窓を開け放つ。
窓から吹き込んできたそよ風に、意識しないうちに全身から力が抜けた。
体調を崩してからというもの、室内の空気がやけに澱んでいるように感じる。
考え事をしていたり一人でいたりすると、それらが顕著に感じられて胸が圧迫される。
だから、時々こうやって無性に外の空気が欲しくなってしまうのだ。
「………」
窓に手をついて、外の景色を無為に眺める。
―――ざわっ
その時、突然背後に気配が降り立った。
目を開いても体が重くて動けず、目を閉じれば地面が揺れるような心地に吐き気が込み上がる。
寝ても覚めても気持ち悪いという、地獄のような日々を乗り越えて今。
ようやく、不快感なく動けるようになった。
それにしても……
「暇だな……」
実は布団で上半身だけを起こして、今日何度目かも分からない溜め息をついた。
やっと動けるようになったというのに、尚希も拓也もまだ動くなと言って聞かないのだ。
拓也と二人の時に、文句も言ったのだが……
『調べ物は部屋でもできる。』
と、一蹴されてしまった。
拓也は自身も調べ物をする傍ら、自分が読みたいと伝えた本を運んできてくれた。
さすがに申し訳ないと思ったので、さっさと本を読んで自分で取り換えに行こうかと考えていたのだが、拓也は一時間に一回は新たな本を持ってきて、自分が読み終えた本を返しに行ってしまった。
どうやら、こちらの魂胆は向こうに丸見えのようだ。
そういうわけで、実は部屋を出ることなく、ずっと本を読んでいるだけの状況だった。
「あー、動きたい。」
読んでいた本を閉じて、実は体を伸ばす。
確かに体調はまだ万全というわけではないが、ずっと寝ていては逆に疲れるものである。
「でも、勝手に動き回れば、後であの二人がなんて言うか……」
あの二人を無視すると、その後が面倒だ。
今日一日くらい大人しくしていれば、さすがに文句は言われなくなるだろう。
実は窓の外を見る。
日は一番高い所からようやく傾き出した頃。
一日が終わるには、まだまだ長そうだ。
(仕方ないか……)
実は諦めて、また本のページをめくる。
ニューヴェルに関する本は、すでにほぼ読み尽くしてしまったように思える。
だが、得られたのはこの街の遍歴やそれに伴う環境の変化、その最中で生じた問題といった一般的知識のみ。
アイレン家が領主に就いた経緯も、交易に深く関わっていた中心人物であったからとしか書かれていない。
調べながらいつか、調べるべき要点がどこかずれている。
そんな気がしながらも、できることが限られている以上、今はただページをめくるしかない実だった。
途中二度ほど、拓也が様子を見に来た。
「何か目に留まるものはあった?」
「いや、特には。」
もはや定型になってきた会話を交わして、拓也はまた部屋を出ていく。
ドアを閉める前に―――
「抜け出すなよ。」
と、しっかり釘を刺されてしまった。
「分かってるよ。」
苦笑しつつ、実は拓也に手を振る。
ドアが閉められると、その場が一気に静寂に満たされた。
「……はぁ。」
集中するのも限界のようだ。
ずっと考え事をしながら本を読んでいたせいで、頭が少し痛い。
本を閉じてベッドに横になった実は、憂鬱そうに目を伏せる。
体調が悪いからだろうか。
本音を言うと、一人でじっとしていたくない。
―――なんだか、不気味な気配を感じてしまいそうで。
起き上がれないでいる間も、時々あの気配を感じていた。
気配はいつもねっとりと絡むような視線でこちらを見つめて、しばらくするとゆっくり去っていく。
定期的に様子を見に来る尚希たちとは明らかに違う、それなのに何かは分からない気配。
その気配に、嫌な予感がして仕方ない。
あれは、一体何なのか。
それはきっと、尚希しか知らないことなのだろうけど……
思わず、首筋に手を当てる。
自分が倒れたことについて、尚希はその原因を知っているようだった。
『実……本当に、ごめんな……』
気を失う間際、尚希は小さくそう謝ってきた。
あれはきっと、自分が尚希の抱えるものに触れてしまったという意味。
そしてその一端が、尚希が自分の首から引きずり出した黒いモノというわけだ。
思い出した途端に首筋に何かが蠢く不快感がよみがえってくるようで、実は顔をしかめた。
あれは何?
尚希の抱える秘密と、どう関わっている?
疑問は尽きない。
気を失う前に秘密を教えてもらう約束はしたが、その約束が必ず果たされるとは思えないのが残念だ。
拓也に聞かれたくないならば、隙を見計らってここに来ればいい。
それなのに、尚希は朝に自分の様子を見に来た以降、姿を現さない。
それはきっと、尚希が真実を話すことをまだ躊躇しているということ。
それだけ、尚希が抱えているものが重いということなのだ。
実は溜め息をつくと、ゆっくりと体を起こした。
ベッドから降りて、窓に向かう。
首の不快感が未だに消えない。
あの事を思い出すだけで、息苦しくなってしまう。
それらをどうにかしたくて、窓を開け放つ。
窓から吹き込んできたそよ風に、意識しないうちに全身から力が抜けた。
体調を崩してからというもの、室内の空気がやけに澱んでいるように感じる。
考え事をしていたり一人でいたりすると、それらが顕著に感じられて胸が圧迫される。
だから、時々こうやって無性に外の空気が欲しくなってしまうのだ。
「………」
窓に手をついて、外の景色を無為に眺める。
―――ざわっ
その時、突然背後に気配が降り立った。
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