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忌まわしき過去
兄と呼ぶんじゃねぇ!
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夢の中で亮輔は千尋と過ごした日々を見ていた。
千尋が亮輔に何か言おうとしているが、上手く聞き取れなくて、目の前にいる千尋の姿が徐々に消えていく。
亮輔は千尋を追うが、足が上手く動かない。
そして千尋は視界から消え去った。
亮輔はハッと目を覚まし、夢かと胸を撫で下ろした。
時計を見ると、朝の5時を回っていた。
しかし、イヤな夢だ。
急に目の前から千尋が消えていくなんて。
ふと亮輔は不吉な予感がした。
(もしや、オフクロはもうこの世にいないのでは…?)
いや、まさかそんな事は無いだろう。
だが、いつまで経っても千尋の手掛かりさえ分からず、亮輔は不安になってきた。
警察は何をやってるんだろう?
ちゃんと捜索をしてるのだろうか?
達也が言うには、千尋は巨額の負債を抱え、行方をくらましたと言ってた。
本当にそうだったのだろうか?
一緒に住んでいて、そんな素振りは一度たりとも見たことはない。
いくら血の繋がってない母親とはいえ、何でも包み隠さず、亮輔には話してきた。
そして、毎晩のように激しく抱き合った。
そんな千尋がある日、突然いなくなるなんて事が理解し難い。
負債を抱えた会社は他の企業に乗っ取られ、マンションも抵当に入っていたという。
いくら世間知らずな15才の亮輔でも、不審に思う点がいくつかある。
達也は買収された会社に拾われる形で入社し、大学を辞めたと言った。
そして、別れ際に達也は餞別として、100万を亮輔に渡した。
その100万はどこから出してきたのだろうか?
ほぼ無一文になった状況でそんな大金が出せるのだろうか?
達也はあらかじめストックしておいた金だと言ったが、そんな大金を亮輔に渡したら、達也はどうやって生活しているのか?
あの時は気が動転して何も考える余裕は無かったが、今にして思えば、妙に引っ掛かる話だ。
(アニキに会うしかない。会社に行けば会えるかも)
亮輔は、インターネットカフェを出て、千尋の会社へ向かった。
電車に乗り、一時間程の距離にある会社の正門に着いた。
時計を見ると、まだ6:30。出社前だ。ここで待っていれば必ずアニキに会える、と。
達也が来るのを待った。
しばらくして、数名の社員が出社した。
達也は何時頃出勤してくるのだろう、か。何度も時計を見た。
すると、一台の高級車が地下の駐車場へ入っていった。
(アレ?…今のアニキじゃないか?)
運転席の横顔が達也に似ていた。
間違いない、アニキだ!
亮輔は後を追った。
車はバックして指定の駐車場所に停まった。
運転席から姿を見せたのは達也だった。
「アニキ!」
亮輔は達也に向かって叫んだ。
その声に後ろを振り返った達也は亮輔の姿を見て、一瞬驚いた。
「アニキ、探したよ。何で連絡がつかないんだよ?」
達也は無言だった。
「何だよ、何で黙ってんだよ?」
更に亮輔が詰め寄ると、達也は右の拳を亮輔の顔面に叩き込んだ。
「ぐゎっ…」
いきなり殴られた亮輔は何も出来ず、よろけた。
すかさず達也は亮輔の頭を掴み、壁に叩きつけた。
ゴン!という音を立てて亮輔はうずくまった。
そして達也は亮輔を蹴りまくった。
革靴で蹴られ、口や鼻から大量の出血が流れた。
大の字になって倒れている亮輔を見下ろし、達也はスーツの襟を直し、吐き捨てるように言い放った。
「誰がアニキだ?テメーはどっからこんなとこに入ってきたんだ、おいっ!聞いてんのか、コラァ!」
更に達也は亮輔の顔面を踏みつけた。
「言っとくが、オレはお前の兄じゃない。何が目的でここに来たか知らねえが、オレとお前は全く血が繋がってないんだよ。
分かったか?血の繋がらねえ兄弟なんて兄弟じゃねーんだよ!」
「…っ!」
激痛に追い打ちをかけるように達也は本当の事を告げた。
「お前はあの女と、あの女を養子縁組にした義理の父親との間に生まれたガキなんだよ!今後一切オレの事を兄と呼ぶな!
本来ならテメーは古賀なんて名字じゃねえんだよ、分かったのか、おい!」
更にもう1発腹に蹴りを見舞い、懐から財布を取り出し、何十枚と入っている一万円札を宙にばらまいた。
「これは慰謝料と手切れ金だ。いいか、二度とここに近づくんじゃねえぞ!もし近づいたらテメーの命は保証しねえぞ、聞いてんのか、おいっ!」
達也は亮輔に唾を吐きかけ、地下のエレベーターに乗っていった。
倒れている亮輔の周辺には一万円札が散らばっていた。
顔面を血に染めながら、亮輔は落ちている一万円札を拾った。
殴られ、蹴られた事より、達也とは全く血の繋がってない事の方がショックだった。
放心状態のまま、ただひたすらに一万円札を拾って、亮輔は再び倒れた。
「…あのヤロー、裏切りやがったな…もしかしてオフクロも…」
激痛のあまり、しばし立ち上がれなかったが、達也に対し、激しい憎悪を抱いた。
千尋が亮輔に何か言おうとしているが、上手く聞き取れなくて、目の前にいる千尋の姿が徐々に消えていく。
亮輔は千尋を追うが、足が上手く動かない。
そして千尋は視界から消え去った。
亮輔はハッと目を覚まし、夢かと胸を撫で下ろした。
時計を見ると、朝の5時を回っていた。
しかし、イヤな夢だ。
急に目の前から千尋が消えていくなんて。
ふと亮輔は不吉な予感がした。
(もしや、オフクロはもうこの世にいないのでは…?)
いや、まさかそんな事は無いだろう。
だが、いつまで経っても千尋の手掛かりさえ分からず、亮輔は不安になってきた。
警察は何をやってるんだろう?
ちゃんと捜索をしてるのだろうか?
達也が言うには、千尋は巨額の負債を抱え、行方をくらましたと言ってた。
本当にそうだったのだろうか?
一緒に住んでいて、そんな素振りは一度たりとも見たことはない。
いくら血の繋がってない母親とはいえ、何でも包み隠さず、亮輔には話してきた。
そして、毎晩のように激しく抱き合った。
そんな千尋がある日、突然いなくなるなんて事が理解し難い。
負債を抱えた会社は他の企業に乗っ取られ、マンションも抵当に入っていたという。
いくら世間知らずな15才の亮輔でも、不審に思う点がいくつかある。
達也は買収された会社に拾われる形で入社し、大学を辞めたと言った。
そして、別れ際に達也は餞別として、100万を亮輔に渡した。
その100万はどこから出してきたのだろうか?
ほぼ無一文になった状況でそんな大金が出せるのだろうか?
達也はあらかじめストックしておいた金だと言ったが、そんな大金を亮輔に渡したら、達也はどうやって生活しているのか?
あの時は気が動転して何も考える余裕は無かったが、今にして思えば、妙に引っ掛かる話だ。
(アニキに会うしかない。会社に行けば会えるかも)
亮輔は、インターネットカフェを出て、千尋の会社へ向かった。
電車に乗り、一時間程の距離にある会社の正門に着いた。
時計を見ると、まだ6:30。出社前だ。ここで待っていれば必ずアニキに会える、と。
達也が来るのを待った。
しばらくして、数名の社員が出社した。
達也は何時頃出勤してくるのだろう、か。何度も時計を見た。
すると、一台の高級車が地下の駐車場へ入っていった。
(アレ?…今のアニキじゃないか?)
運転席の横顔が達也に似ていた。
間違いない、アニキだ!
亮輔は後を追った。
車はバックして指定の駐車場所に停まった。
運転席から姿を見せたのは達也だった。
「アニキ!」
亮輔は達也に向かって叫んだ。
その声に後ろを振り返った達也は亮輔の姿を見て、一瞬驚いた。
「アニキ、探したよ。何で連絡がつかないんだよ?」
達也は無言だった。
「何だよ、何で黙ってんだよ?」
更に亮輔が詰め寄ると、達也は右の拳を亮輔の顔面に叩き込んだ。
「ぐゎっ…」
いきなり殴られた亮輔は何も出来ず、よろけた。
すかさず達也は亮輔の頭を掴み、壁に叩きつけた。
ゴン!という音を立てて亮輔はうずくまった。
そして達也は亮輔を蹴りまくった。
革靴で蹴られ、口や鼻から大量の出血が流れた。
大の字になって倒れている亮輔を見下ろし、達也はスーツの襟を直し、吐き捨てるように言い放った。
「誰がアニキだ?テメーはどっからこんなとこに入ってきたんだ、おいっ!聞いてんのか、コラァ!」
更に達也は亮輔の顔面を踏みつけた。
「言っとくが、オレはお前の兄じゃない。何が目的でここに来たか知らねえが、オレとお前は全く血が繋がってないんだよ。
分かったか?血の繋がらねえ兄弟なんて兄弟じゃねーんだよ!」
「…っ!」
激痛に追い打ちをかけるように達也は本当の事を告げた。
「お前はあの女と、あの女を養子縁組にした義理の父親との間に生まれたガキなんだよ!今後一切オレの事を兄と呼ぶな!
本来ならテメーは古賀なんて名字じゃねえんだよ、分かったのか、おい!」
更にもう1発腹に蹴りを見舞い、懐から財布を取り出し、何十枚と入っている一万円札を宙にばらまいた。
「これは慰謝料と手切れ金だ。いいか、二度とここに近づくんじゃねえぞ!もし近づいたらテメーの命は保証しねえぞ、聞いてんのか、おいっ!」
達也は亮輔に唾を吐きかけ、地下のエレベーターに乗っていった。
倒れている亮輔の周辺には一万円札が散らばっていた。
顔面を血に染めながら、亮輔は落ちている一万円札を拾った。
殴られ、蹴られた事より、達也とは全く血の繋がってない事の方がショックだった。
放心状態のまま、ただひたすらに一万円札を拾って、亮輔は再び倒れた。
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