快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

sky-high

文字の大きさ
77 / 189
新たな出発

兄の幻影

しおりを挟む
翌週教室に入った際、凜から封筒を渡された。中には千円札と小銭が入っていた。

「何、これ?」

「先週のカラオケで五千円置いてったでしょ?割勘で払ったからそのお釣よ」

お釣を受け取り、席に着いた。

隣で凜が小声で
「ねぇ、ホントは坂本さん達の話がイヤになって帰ったんじゃないの?」と聞いてきた。

図星だ。だがそうとは言えず、オレはテキトーに用事があったと言ってごまかした。

いい年こいて、いまだにヤンキー癖が抜けきってないヤツらの昔話なんて聞いてもこっちはつまらないだけだ。

それよりも、この数ヵ月の間に起こったオレの出来事に比べりゃ大した事じゃないだろ。

言うつもりもないが、坂本達はあれでもオレより倍以上生きてる大人だ。

あれが大人なのか。
ガキ臭い話に盛り上がってバカじゃないか。

そんな事を思いつつ、また授業が終われば風俗に行こうと考えていた。

さっさとあの金を使いきりたい。

「ねぇ、今度は二人でカラオケ行かない?」

「ん?」

凜が授業中、身を寄せて話しかけてきた。

「二人だけで?」

「そう、あの人達のヤンキー話、私も好きじゃないから、今度は二人で行こうよ。ダメ?」

断る理由も無いし、いいよ、と返事をした。

それよりも、オレは毎日舗装の工事で汗臭いまま学校に来てるのに、何とも思わないのだろうか。

汗だくで薄汚れた服を着たオレと、カジュアルでセンスの良い凜が隣だと、オレの薄汚さが際立って晒し者みたいだ。

それでもお構い無しに凜はちょくちょくオレに話しかけてくる。

話といっても、特に共通の話題は無い。
年が5つも離れているから、何を話せばいいのか分からないので、オレから話し掛ける事はない。

今日は仕事でこんな事があった、この前観たテレビの話とか、そういった類いの話を主にしていた。

何せ女とこうやって会話したことがないから、接し方が分からない。


授業が終わるとオレは繁華街へ行った。

通いなれたソープに入り、指名はせず、店員に任せっきりにしている。

どのソープ嬢が来ても、ヤル事は同じだし、テクニックだって、母のと比べたら雲泥の差だ。

母は今ごろ、何処で何をしているんだろうか?

出来る事ならオレが海外に行って探し出したい。

東南アジアか南米か、行く気になれば金もまだ余ってるし、明日からでも飛び立つ事は出来る。

実の母である、鴨志田の学校だけは卒業して欲しい、という約束だけは守ろうと思い、真面目に学校に通っている。

更に厄介なのは、母親や鴨志田の事を思い浮かべると同時に、あの兄の顔もちらついてくる。

もうこの世にはいないが、あのニヤけた顔を思い出す度にムカついてくる。

遺骨をドブ川に投げ捨てた事には後悔していない。むしろあの場所が1番相応しい。

だが、振り払おうとしても、あの顔が時折脳裏をかすめ、オレは兄の幻影を振り払えずにこの先も生きていかなきゃならないのか、そう考えると、気がおかしくなりそうだ。

毎日汗だくで働き、夜は学校で勉強し、帰りは風俗でセックスをする。

だが、どの最中でも兄の顔が浮かんでくる。

アイツは死んだんだ。
電車に轢かれ、肉片と化してくたばったんだ。

そう自分に言い聞かせながら拭い去ろうとしても、オレの身体にベットリと付きまって離れない。

どうやったら兄の幻影から逃れられるのだろうか、そんな事ばかりを考える日々が多くなった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...