快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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流浪の如く

スエット上下で面接…

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翌日、山下を連れて、駅前のコーヒーショップで沢渡さんが来るのを待った。

それにしても、なんて格好してるんだ…

金髪に細い眉毛。
おまけに、上下のスエットにサンダルという、ふざけた服装だ。

沢渡さんは、母が築き上げた会社を、兄が公私混同して倒産寸前にまでなった後を継いで社長となったが、民事再生法により、大手の企業に吸収されるという、辛い経験をした。


だが、沢渡さんを筆頭に、古参の幹部連中と共に必死になって業績を上げ、今では、その企業の子会社の代表取締役として、経営は徐々に上向きになった。


沢渡さんには、コイツの就職の世話をしてもらえないだろうか、と連絡した。


沢渡さんは快く引き受け、コーヒーショップで待ち合わせする事となった。

「おい!これでも、面接なんだぞ。何だよ、その格好は」

普段から、こんな格好をしている。
一緒にいるオレが恥ずかしい。

「はぁ?だって、仕事するしないはオレが決めるんだぜ。話だけなら、この格好で十分だろ」

…コイツには何を言ってもムダだ。

しばらくして、沢渡さんが店に現れた。
以前と変わらず、スリーピースのスーツを着こなし、ダンディーで品がある。

若干、白髪が目立つが、それを差し引いても、風格のある雰囲気を醸し出している。

「亮輔くん、久しぶりだな。何才になった?」

「23になりました」

「そうか。それならば、居酒屋の方が良かったかな?亮輔くんも、もう酒が飲める年になったんだからな」

「いや、オレはちょっと酒はダメなんで…」

「何だ、残念だな。隣の彼が亮輔くんの言ってた人かな?」

沢渡さんは山下の格好を見て、一瞬眉をひそめたが、直ぐに元の表情に戻った。

「あぁ、はい。コイツ、山下って言います。おい、この人が沢渡さんで、オレが世話になった人だ。
挨拶しろよ」

「あ、山下っす。山下悠平って言います、ヨロシクです」

席に座ったまま、頭も下げない。

…バカだ!これから仕事世話してもらうのに、そんな態度とは…

目眩がしてくる…


「沢渡です、ヨロシク。亮輔くんから話は聞いてある。何でも、以前はキャバクラのボーイをやってたらしいね?」

「えぇ、まぁ。でも、店の女とデキちゃって、クビになりました」

余計な事言うな!山下の足をギュッと踏みつけた。

「痛っ!」

「ん、どうしたのかな?」

「いや、何でもないです。沢渡さん、コイツを沢渡さんの所で使ってもらえないでしょうか?こんなふざけた格好してますけど、経験はあるんで。
どうかお願いします。…おい、お前も頭下げろバカ!」

全く緊張感が無い…

「山下くんとか言ったね。私は身なりで人を判断しない。
だが、その格好はなんだね?
仮にもこれは、面接なんだぞ。
何もネクタイまでしろとは言わないが、そういう格好で面接に挑むというのは、些かふざけ過ぎじゃないかな?」

誰だって、そう言うと思う。
他の人なら、一発で不採用だ。

「あ、さーせん。でも、いつもこの格好なんで」

「…おいっ!あんまりこの人を怒らせるんじゃないぞ」

小声で言ったが、全く聞いていない。

「ところで君は、何でボーイになろうと思ってるのかな?」

沢渡さんは穏やかな表情だ。

「えー、ボーイになれば、色んなキャバ嬢に囲まれて何かいいじゃないすか?
それにもしかしたら、キャバ嬢と付き合えるかもしんないし」

「成る程、そういう事か…」

その瞬間、カップに入っていたホットコーヒーを山下にぶちまけた。

「あ"っぢぃ~っ!!」

山下は顔にホットコーヒーを浴びて、大声を上げた。

店内では、何事か?とばかりに、客がこっちを見ている。

「今すぐ、その頭を黒く染めてこいっ!!そして、明日ここに来るんだ!次にそんなふざけた格好で来たら、これだけじゃ済まないぞ!分かったかっ!」

鬼のような形相で山下を一喝すると、名刺を渡した。

その迫力にビビった山下は、震えながら返事した。

「それじゃ、亮輔くん。後の事は私に任せてくれ。彼を一から鍛え直すから」

鬼の形相から一変して、温和な表情に変わった。

「あ、ありがとございます。このバカをよろしくお願いいたします」

沢渡さんに礼を言った。
山下はおしぼりで顔を拭いている。

「いいか、私の所の店で一から勉強するんだ。給料は20万。文句無いな?」

そう言って、沢渡さんは席を立った。

「亮輔くん。今度お母さんに、お線香を上げに伺うよ。その時は一杯だけでいいから、私に付き合ってくれよ」

「わかりました。母も喜ぶと思います」

「短い時間で申し訳ないが、私はこれで失礼するよ。おい、明日必ず私の所に来いよ!ちゃんとスーツを着て来るんだ、いいな!」

沢渡さんは店を出た。

このバカは、人を舐めすぎた。

さすが、沢渡さんだ。

山下のビビった姿を見て、オレは笑いを堪えた。

…よく考えたら、笑うのは何年ぶりだろう。

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