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流浪の如く
思いがけない出会い
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山下は、沢渡さんが経営する、キャバクラのボーイ(見習い)として働く事が決まった。
礼儀作法から接客態度、キャスト(キャバ嬢)との恋愛は御法度、という事を徹底的に叩き込まれた。
金髪だった頭を黒く染め、短く切って先輩のボーイや店長から怒られながらも、ホール内を駆け回っていた。
夕方前に出勤して、明け方に帰ってくるという、昼夜逆転の生活。
ヘロヘロになりながら帰ってくる。
本来ならば、寮に移る予定だったが、部屋がいっぱいの為、引き続き、オレのアパートで暮らす事となった。
沢渡さんから頼まれたのだから、イヤとは言えない。
今までみたいな、チャランポランな生活から一変して、作法を一から鍛え直されているらしい。
本人は早くも辞めたがっているみたいだが、沢渡さんにコイツの管理を頼んだお陰で、簡単に辞める事は出来ずに、嫌々ながら勤務している。
「お前、次バックレたら、沢渡さんから何されるか知らないからな。ちゃんと働いてこいよな」
沢渡さんの下で働けば、そのうち、仕事に対する姿勢も変わってくるだろう。
オレはまだ、ルート配送で自販機の飲料水の補充をしている。
山下の事をどうのこうのと言ったが、実はオレも辞めたくて仕方ないのだ。
やることが一杯ありすぎて、こっちも色々と大変だ。
ようやく、今日の仕事が終わった。
繁華街を抜けて、家に戻る方が近道なので、オレはいつもここを通っている。
オレが一人で歩いていると、呼び込みが次々と声を掛けてくる。
「お兄さん、キャバクラどうすか?」
外で呼び込みをする店員に混じって、キャバ嬢も声を掛けていた。
「あれ、古賀くん?」
振り返ると、ナツがベンチコートを着て、呼び込みをしている。
居酒屋で、頭にウーロン茶を掛けた事を思い出してしまった。
「何やっての、こんなとこで?」
寒そうにしているナツを見ると、キャバ嬢も大変だなぁ、と思った。
「うん、お客さん呼んでるのよ。古賀くん寄ってかない?」
「だから金無いし、酒飲めないっつったじゃん」
「それじゃあ名刺渡すね。来る気があったら来てね」
ナツは名刺を渡し、また通行人に声を掛けていた。
【クラブ ルージュ ユリ】
名刺には、ナツの源氏名が書いてあった。
裏を見ると、アドレスとLINEのID 番号が手書きで書かいてある。
名刺をポケットに入れて、ナツと別れ家路に着いた。
数日後、再び繁華街を通った。
「古賀くん」
また声を掛けられた。
「名刺の裏に連絡先あったでしょ?見なかった?」
「だってオレ、キャバクラに興味ないし」
「いいよ、別に来なくても。たまには連絡してよ」
相変わらず悲しい目をしている。
あの瞳の奥には何を見ているのだろうか。
「じゃあ、オレも名刺渡すよ」
会社から支給された名刺を、ナツに渡した。
「えー、これ会社の番号しか載ってないじゃん」
「ちゃんと見ろよ。会社の番号とオレのスマホの番号も載ってるよ」
名刺には会社の名前、オレの名前と会社の住所、電話番号、そしてオレのスマホの番号が載っている。
配送の仕事だから、事務所にいる時間が少ない。それでスマホの番号も記載してある。
「じゃあ、ここにかければ古賀くんが直接でるの?」
「うん」
「じゃ、今度かけてみるね」
「仕事頑張れよ」
「ありがとう」
ナツと別れ、家に着いた。
山下はすでに仕事に行っていた。
それにしても、いつまでアイツと一緒に暮らさなきゃなんないんだ。
憂鬱だ…
礼儀作法から接客態度、キャスト(キャバ嬢)との恋愛は御法度、という事を徹底的に叩き込まれた。
金髪だった頭を黒く染め、短く切って先輩のボーイや店長から怒られながらも、ホール内を駆け回っていた。
夕方前に出勤して、明け方に帰ってくるという、昼夜逆転の生活。
ヘロヘロになりながら帰ってくる。
本来ならば、寮に移る予定だったが、部屋がいっぱいの為、引き続き、オレのアパートで暮らす事となった。
沢渡さんから頼まれたのだから、イヤとは言えない。
今までみたいな、チャランポランな生活から一変して、作法を一から鍛え直されているらしい。
本人は早くも辞めたがっているみたいだが、沢渡さんにコイツの管理を頼んだお陰で、簡単に辞める事は出来ずに、嫌々ながら勤務している。
「お前、次バックレたら、沢渡さんから何されるか知らないからな。ちゃんと働いてこいよな」
沢渡さんの下で働けば、そのうち、仕事に対する姿勢も変わってくるだろう。
オレはまだ、ルート配送で自販機の飲料水の補充をしている。
山下の事をどうのこうのと言ったが、実はオレも辞めたくて仕方ないのだ。
やることが一杯ありすぎて、こっちも色々と大変だ。
ようやく、今日の仕事が終わった。
繁華街を抜けて、家に戻る方が近道なので、オレはいつもここを通っている。
オレが一人で歩いていると、呼び込みが次々と声を掛けてくる。
「お兄さん、キャバクラどうすか?」
外で呼び込みをする店員に混じって、キャバ嬢も声を掛けていた。
「あれ、古賀くん?」
振り返ると、ナツがベンチコートを着て、呼び込みをしている。
居酒屋で、頭にウーロン茶を掛けた事を思い出してしまった。
「何やっての、こんなとこで?」
寒そうにしているナツを見ると、キャバ嬢も大変だなぁ、と思った。
「うん、お客さん呼んでるのよ。古賀くん寄ってかない?」
「だから金無いし、酒飲めないっつったじゃん」
「それじゃあ名刺渡すね。来る気があったら来てね」
ナツは名刺を渡し、また通行人に声を掛けていた。
【クラブ ルージュ ユリ】
名刺には、ナツの源氏名が書いてあった。
裏を見ると、アドレスとLINEのID 番号が手書きで書かいてある。
名刺をポケットに入れて、ナツと別れ家路に着いた。
数日後、再び繁華街を通った。
「古賀くん」
また声を掛けられた。
「名刺の裏に連絡先あったでしょ?見なかった?」
「だってオレ、キャバクラに興味ないし」
「いいよ、別に来なくても。たまには連絡してよ」
相変わらず悲しい目をしている。
あの瞳の奥には何を見ているのだろうか。
「じゃあ、オレも名刺渡すよ」
会社から支給された名刺を、ナツに渡した。
「えー、これ会社の番号しか載ってないじゃん」
「ちゃんと見ろよ。会社の番号とオレのスマホの番号も載ってるよ」
名刺には会社の名前、オレの名前と会社の住所、電話番号、そしてオレのスマホの番号が載っている。
配送の仕事だから、事務所にいる時間が少ない。それでスマホの番号も記載してある。
「じゃあ、ここにかければ古賀くんが直接でるの?」
「うん」
「じゃ、今度かけてみるね」
「仕事頑張れよ」
「ありがとう」
ナツと別れ、家に着いた。
山下はすでに仕事に行っていた。
それにしても、いつまでアイツと一緒に暮らさなきゃなんないんだ。
憂鬱だ…
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