快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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流浪の如く

理性が抑えきれない

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頭の中では理解している。
もう関わってはいけない、と。

だが、もう一度会ってみたい…

ナツの事だ。
オレは着信拒否をしたままだ。
だが、拒否を解除しようかどうか、迷っていた。

ナツの事が好きになったというワケではない。
ただ、ナツという人物に会って、まだ色々と話をしたい事もあった。

これが好きという事なのか?
ならば会うのは止めよう。

だが、一晩経つとまた会いたいと思ってしまう。

この葛藤に随分悩まされた。
どっちを取るべきか。

ナツの事を思うのなら、手を引くべきだ。
オレの周囲の人々が事故や他殺でこの世を去っていった。
ナツも、その中の一人になるのかも知れない。

それを分かっていながら、オレの心はナツに会いたがっている。

どうすればいいんだ。
オレはあの日以来、仕事帰りにあの繁華街を通るのを避け、遠回りしながら家に帰っている。

そうだ、忘れるしかないんだ。
時が経てば忘れてくれるだろう、それまでの我慢だ。
オレはそう自分に言い聞かせた。
どうしても会いたいという気持ちがムクムクと頭をもたげてくるのを、必死になって抑えつけていた。

それにナツは誰も信じないと言った。
それはオレも同じで、誰も信じないし、愛する事もしない。
そうやって暗黒の中でもがきながら10代を過ごしてきた。

…明日は鴨志田の月命日だ。
墓を掃除して、線香を上げに行こう。



「そういや、今日ナツと会ったよ。アイツ、ウチの店の近くのキャバクラに働いてるみたいだな。初めて知ったよ」

山下は、風呂上がりにドライヤーで髪を乾かしながら言ったが、ドライヤーの音でよく聞こえない。

「あ、ナツ?ナツが何だって?」

オレは内心逸る気持ちを抑え、素っ気なく聞いてみた。

「何かお前の事言ってたぞ」

「何かって、どんな事?」

拒否したのを怒ってるんじゃないかな、やっぱり。

「今度会ったら、ウーロン茶じゃなく、コーラぶっかけやる!とか言ってたぞ。お前、かなり嫌われてるな」

…コーラね。
本当は会いたい。
だが、お互いに他人を信用しない者同士が会って、何をすりゃいいのか。

やっぱり諦めた方がいい。
今は気持ちが揺れ動いてるが、諦めるしかない。

「オレ、ナツの連絡先教えてもらったんだ~、いいだろ?店が違うから付き合っても大丈夫だしな、うん」

能天気でいいな、コイツは。

「連絡先貰ったって事は店に来い、って事じゃね?」

「いいよ~、いくらでも行ってやるよ」

「お前、あの女は貢がせるだけ貢がせて、いざとなったらポイっと捨てるタイプだって言ってたじゃねえか」

コイツは言うこととやる事が違いすぎる。

「ありゃオレの勘違いだ。多分、オレに連絡先教えたって事は…だろ?やっぱ」

「んじゃお前、あの残りの豚と馬面はどうすんだよ?」

「あ?豚はブタ箱に、馬面にはニンジン食わせておきゃいいんだよ、いや~、しかしあの女の前じゃ、豚も馬面も単なる動物にしか見えないな、ギャハハハハ~」

よく言うよ、この前までオレがそう言ったら激怒してたクセに。

すると、テーブルに置いてあった山下のスマホから着信音が鳴った。

「おい、電話鳴ってるぞ」

「誰だ、こんな時間に…あっナツからだ」

「何っ?」

「こりゃラブコールかな」

「…おい、オレはいないって言ってくれよ」

「はいはーい、もしもし。お疲れさん、今日は店じゃないの?…うん、うん。そうなんだ、オレも今日は休みでさ。
…えっ?古賀?…」

オレはいないという、ジェスチャーをした。

「…あぁ、どっか行ったんじゃないかな。…さぁ、どこに行ったんだか。アイツ童貞だからさ、家だとオレがいるからAV観れないんで、ビデオボックスでも行ってオナニーしてんじゃないの、今頃。ウハハハハ」

居留守つかってるとはいえ、テキトーな事ばっか言いやがって…



「それで?…うん、あぁ成る程ね。今度目の前にアイツ連れてくるから、コーラでもビールでもついでにナツのションベンでもぶっかけてやりゃいいんだよ!あ、でもアイツ変態だからションベンだと余計に興奮するかもな、ギャハハハハ!」

人の事、変態扱いしやがって!

「…うん、うん、分かった、分かった。じゃあ、ボトル入れたら、オレのボトルも入れさせて?ダーッハッハッハッハ!」

オヤジみたいな下ネタ言うなよ。

「あいよー、じゃまたね、おやすみ~」

一体、どんな会話をしたのか。

「ナツのヤツ、しきりにお前の事ブーブー言ってたぞ!お前、あの女に相当嫌われてるな」

「ふーん、まぁ会わなきゃいいだけの事じゃん。もう、関係ねえよ」

オレは冷静を装ったが、内心は穏やかではなかった。

…やっぱナツに会いたいな。
でも、オレとナツって、血が繋がってるって事だよな…

…そう考えたら、バカバカしくなってきた。

寝よう。

「おい、寝るからテレビの音低くしてくれよ」

「あぁ、分かった分かった、んじゃおやすみ~」

寝て忘れよう!そう思い、ベッドに入った。

だが、日に日にナツの事を考え、仕事中も、飯食ってる時も、風呂に入ってる時もナツの顔が浮かんでくる。

誰も信じないし、愛さないと言ったじゃないか!また騙されるぞ!

そう言い聞かせ、会いたいという気分を抑えつけていた。

だが、仕事から帰る時、どうしても、繁華街を通りたくなった。

ナツに会ったらどうする?シカトするか、それとも…

オレはナツがまた店の前で立って、客引きしてるんじゃないかと淡い期待を抱いた。

だが、ナツの姿は無かった。
指名が多いんだから、外で客引きしてるより、店内にいる方が多いに決まってる。

会わなくてホッとしたのか、残念だったのか、複雑な心境だった。

この辺りで、買い物でもして帰ろう。

オレはコンビニに入り、カップラーメンを手にレジの前で並んでいた。

すると、後ろから肩をポンポンと叩かれ、振り返るとナツがいた。

オレは一瞬固まった。
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