快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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不毛な同棲生活

真実を語る時がきた

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二十代は、勉強に費やす時間を増やしてみようか。

…だが、頭では分かっていても、動く事すら、億劫になっていた。
身体中が常に怠く、薬の副作用なのか、ボンヤリとしている。

ナツは昼間寝ている事が多いが、モデルの仕事を掛け持ちでやっている。
モデルといっても、新聞のチラシにある、バーゲン品を着ているモデルだ。

本業はどっちなのか、聞いた事が無いが、モデルの方に興味がありそうな事を言っていた気がする。

確かにスラッとして、スタイルがよく、おまけに美形だ。
鴨志田もどちらかと言えば、地味な顔立ちだった。

姉妹でも、こんなに違うものなのだろうか。

それよりも、いつ言おうか、まだ悩んでいる。
ここへ来て、一週間が経つ。

とにかく、話すことが何もないのだ。
テレビの無い部屋で、ナツはパソコンで動画を観ている。
オレは何もやることが無く、ナツが休みの日は、一日中一緒にいるのが、苦痛で耐えられなかった。

月にニ、三回、心療内科に通院する時だけ、外に出て、後は部屋にこもっている。

ナツが仕事に出掛けて、一人の時は、このシーンとした部屋が心地よいが、ナツが帰って来た途端、部屋の空気が変わり、息苦しくなる。

オレはここにいたら、余計ダメになる、ナツにホントの事を言って、ここを出よう。

そのタイミングを伺っていた。

半月経った時、いつものように、ナツは仕事を終え、真夜中に帰宅した。

オレはナツが帰ってくるまで、起きている事にしている。
部屋に転がり込んできて、家主より先に寝るというのは、失礼だと思い、起きている。
ナツは帰って来ると、シャワーを浴びて、朝方に寝る。その時、オレもベッドに入って、睡眠導入剤を飲んで寝るのが習慣になっていた。

その時、ナツが唐突に言ったのは、「亮ちゃんて…ホントに童貞なの?」
どうやら、山下の言葉を真に受けてるみたいだ。

「童貞か…そうかもね。うん、童貞だ」
ウソは言ってない。何せ、この数年、女の身体に触れていないからだ。
童貞みたいなもんだ。

「えっ、どっちなの?」

ナツはガバッと上体を起こすと、背を向けているオレの身体に擦り寄せた。

「…何で、そんな事聞くの?」

普通の男なら、同棲し始めの頃は、毎晩のように飢えた獣のように、女の身体に何度も射精するだろうが、オレはハナっから、そのつもりはない。

「…だってさ。もう、一緒に住んで半月ぐらいになるんだよ?フツーだったら…するでしょ?」

…このタイミングで話した方がいいかも。
ナツの方に身体を向け、話を切り出した。

「もし、オレとお前がセックスしたら、近親相姦になるからだよ」

「何それ~、チョー、意味不なんだけど!マジウケる」

冗談だと思っているのだろう、笑っていた。

「実は、お前が探していた姉ちゃんの事なんだが…」

「えっ、お姉ちゃん?お姉ちゃんがどうしたの?」

ナツの表情が一変した。

「広瀬紗栄子から、鴨志田紗栄子になっていた。その客から、養子縁組になったという話しは本当の事だ」

ナツは言葉を失った。

「お前の姉ちゃんが大学生の頃、お前と同じ水商売のバイトをしてた時に、ある企業の常務が、姉ちゃんの事を気に入って、子供がいない、妻に先立たれた常務は姉ちゃんを養子縁組にしたんだよ」

「…何それ?ウソでしょ?いくら亮ちゃんでも、そんな変なウソつかないでよ!」

ナツは語気を強めたが、構わずオレは話を続けた。

「だけど、その養子縁組で父親になった男はやっぱり女に飢えてたんだろな…養子とはいえ、娘に手を出して、妊娠した」

「もう、いい加減にして!冗談でも言って良いことと、悪いことがあるでしょ!」

今にも泣きそうな顔をしている。だが、話を止めなかった。

「で、妊娠したはいいが、その常務は堕ろせと言った。でも姉ちゃんは生みたいと言って、中絶をしなかった。というより、もう中絶できるような状態じゃない程に、お腹の中の子供は胎内で育っていった」

「…何でそんな事、亮ちゃんが知ってるの?」

「いいから、黙って聞け!」

オレはナツに怒鳴り付け、黙らせた。

「常務は生んでもいいが、絶対に認知はしないと言ったらしい。その常務は以前、ヤクザをやっていて、そこの企業の社長から、裏の仕事を引き受けていた。
ヤクザから足を洗った時、社長は会社の常務として、迎え入れたという事だ」

ナツの顔はクシャクシャになり、涙を流していた。

「そこで常務は、社長に養子縁組の娘ができちゃったからどうにかならないか?と相談を持ちかけた。社長も常務には、色々と汚い仕事をしてもらったせいで、何も言えなかったらしいがな」

「…ちょっと。じゃ、お姉ちゃんには子供がいるの?今どうしてるの?」

ナツは激しく詰め寄った。

オレはナツの手を振り払い、更に話を続けた。
ここまできたら、最後まで話すつりだ。

「社長はある社員に目をつけた。かつて、社長の秘書兼愛人だった女と社内結婚した社員に話を持ち掛け、昇進する代わりに、生まれてくる子供の親になって欲しいと」

「…」

「その男も秘書だった女と結婚し、男の子が生まれたが、女は育児の合間に社長との関係を続けていた。そして旦那の方も、皮肉な事に、姉ちゃんと深い仲になっていった。当初はその社員との間に生まれた子供だと思っていたが、血液型でその男の子供ではなく、常務の子供だと判明した」

「…何よ、それ?お姉ちゃん利用されたの、その常務って人に?」

構わずオレは続けた。

「でも、結局はその男の子供という事で認知する代わりに、何人もの社員をごぼう抜きして、役職の肩書きが付き、あっという間に出世した。だが、家庭は最悪で、それが原因で離婚した。
なのに、何故か旦那の方が実の子供を引き取り、妻には姉ちゃんが生んだ子供を社長に頼まれ、という感じで、シングルマザーとして、その子を育てた」

「…何なの?何で、そんな汚い事してまで…」

「いいから、最後まで聞け、それまで黙って聞いてろ」

「冗談も程々にしてよね!それ以上言うと、ここから出てってもらうからね!」

「そのつもりで話してんだ、こっちは!」

「…ウソ?」

「ホントだ」

「…何で?何で亮ちゃんがお姉ちゃんの事知ってるの?何がなんだか全っ然分かんないだけど!」

少しずつ鼓動が速まってきた。
言わなきゃ…

「知ってるもなにも…その子供がオレだからだ」

「…っ!!」

ナツは頭の中が混乱した。

「いや~っ!」

ベッドの周辺にある、物を投げつけた。枕や目覚まし時計が壁に当たり、ジリリリリリ!と鳴った。

だが、この後の話の方が、ナツにとっては、もっと辛い話になるんだ。

少し息苦しくなってきた…
オレは頓服薬を飲んで、呼吸を意識的にゆっくりと息を吐いた。

この先の事を言うのは、ナツにもオレにも辛い話しだ…何でこんな運命なのだろうか?
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