快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

sky-high

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顔を変えた過去

私も整形したい…

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「なかなかいい見晴らしじゃないか、なぁナツ」

マンションのベランダから、コリアンタウンを見渡せる高さで、達也は心地よい風を浴びた。
十階建てマンションの七階に部屋を借り、達也とナツは新しい暮らしをスタートさせた。

「でもさぁ、コリアンタウンなんて言うけど、どこが韓国っぽいんだ?ただ焼肉屋や韓国料理の店が多いだけじゃん」

人々はこの地を、コリアンタウンと読んでいるのだが、中に入ってみると、何処にでもあるような街の風景で、言葉もハングルだけじゃなく、日本語も飛び交っている。

「でも、たまにニンニクとかごま油のような匂いしない?キムチを漬けてる家庭が多いから」

とはいえ、必ずしも在日の人は必ずキムチを作るというワケではない。
元々は日本で生まれ、日本で育っているのだから、ごく普通の家庭と何ら変わりはない。
ここの何処がコリアンタウンなんだ?あの弁護士がいた澱んだ空気に老朽化した建物が並ぶ場所の方が、よっぽど日本らしくない。


何故、この街が日本人にとっては相応しくないのか、達也には理解できない。

「それが在日の暮らしなの。でも全く日本と変わらない生活してるでしょ?なのに、何で差別されるのかな…」

ナツはリビングで洗濯物を畳んでいる。
マンションの造りだって、日本人向けの仕様だ。

「まぁ、同胞っていうぐらいだから、皆同じ場所に集まって生活してるんだろうな。
海外に行けば、チャイナタウンやジャパニーズタウンだってあるんだし、同じようなもんか」

日当たりは良く、決して新しい建物ではないが、レンガ調の外観で、決して他のマンションと比べても、見劣りしない。

「そうなんだよね。でも、ここにいる人は皆、自分は一体何処の国の人間なんだろう?って思ってるはず」

全部が全部という訳ではないが、在日の人々は自分のアイデンティティーとは何だろう、と疑問を抱いているのかは詳しくは分からない。
ただナツの言うとおり、日本で生まれ育っているのに、という考えの人もいるはず。

国籍が違うだけで、こうも待遇が違うものなのか、達也にはイマイチピンとこなかった。

「いいじゃん。すぐ近くに焼肉屋はあるし、韓国料理店だって、韓流ブームの時に流行ったじゃん?オレ、韓国の料理好きだし、ここは気に入ったよ」

達也は身を潜める為に、この場所を選んだ。
ナツが在日だからという理由ではなく、ここへ住んでハングルを覚えれば、在日コリアンとして、カムフラージュ出来るという理由からだ。

更にもう一つ、沢渡と亮輔を始末するのには、なるべく近場にいた方が良いと思ったのも理由の一つだ。

「達っちゃん」

ナツは達也の事を、達っちゃんと呼んでいる。

「ん、どうした?」

ナツは今の自分の気持ちを伝えた。

「…あの、私も整形したい…私、顔にコンプレックス持ってるし…」

デリヘルをやっていた頃、ナツの顔を見てチェンジという客が何人もいた。

この顔じゃなければ、この顔じゃなかったら、もっと別の人生が送れたはず…

「…うん、オレも変えてるし、ナツがやりたいならやればいいと思うよ」

「ホントに?」

ナツは期待に胸を踊らせていた。
エラの張った頬骨を削り、二重まぶたにして、歯の矯正もしたい…

だが、それにはかなりの費用が。

「いいよ、金ならあるじゃん」

達也は弁護士から奪い取った、アタッシュケースを押し入れから取り出した。

「ほら、この金でなりたい顔になればいいよ」

1億円ある。
これならば理想の顔になれる、ナツは美容整形外科に行く決心をした。
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