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顔を変えた過去
国籍云々でガタガタ騒ぐな!
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弁護士を葬り去り、達也とナツは、アタッシュケースに入った1億円を持って立ち去った。
弁護士は車ごと圧縮プレス機で押し潰され、四角い塊となり、粉々になった。
まず、一人。続いて達也が消し去る人物は二人。
それは、沢渡と亮輔だ。
達也はこの二人を確実に葬る為に、すぐには行動に移さなかった。
それよりもまず、一緒に住む場所を決めなきゃ、とナツは遠く離れた場所へ移ろうと思ったが、達也は近場で身を隠せるような場所を見つけた。
それは多くの在日コリアンが住む場所、コリアンタウンと呼ばれる場所に住み、しばらくは身を隠して、生活しようと考えた。
コリアンタウンは、弁護士が住んでいた澱んだ異臭が漂う地域から車で10分程の場所で、日本にいながら、コリアン文化の雰囲気が漂う街へ移った。
ここは日本なのか?と錯覚する程、朝鮮文化が定着した街で、交わす言葉は日本語ではなく、ハングルを使う。
周りは在日2世や3世のコリアン達が密集し、韓国料理の店が立ち並ぶ、異国情緒溢れる場所だ。
都心へアクセスする交通機関は電車やバス、地下鉄と便利でしかも、この街に住めば、身を潜める事は十分に出来る。
達也はコリアンタウンの中にある、マンションの部屋を借りる為、不動産屋を訪れた。
マンションの住民のほとんどは在日コリアンで、家賃も都内にしては、かなり格安だ。
築年数は15年とやや古いが、八畳の洋室と6畳の和室にリビングがある2LDKの部屋を借りる事にした。
「お客様…失礼ですが、在日の方ですか?」
窓口で対応した担当の男は、達也を見るなり、国籍の事を聞いてきた。
「いや、日本人だけど。何か都合の悪い事でも?」
達也は小島の免許証を窓口の男に見せた。
もう、古賀達也という人物は列車に轢かれ、この世を去った。
これからは、小島晴彦(こじまはるひこ)として再スタートを切る。
「これはこれは、大変失礼致しました。しかし、何故日本の方がこのコリアンタウンに住もうと?」
住む、随分変わった人だなぁと。
「何故って?ここは日本ですよ?日本人が日本の街に住む。当たり前の事じゃないですか」
達也は当然だ、と答えた。
「でも、あの場所は在日の人ばかりですよ…ここだけの話、あの辺りは日本人が彷徨かない程でして…ですからこの地域にしては、かなり安い家賃なんですけどね、ええ」
達也の隣で聞いていたナツは、窓口の男の言う事が、日本人と在日コリアンの格差を言っているように思えた。
あぁ、やっぱり…ここでも私みたいな在日の人間は差別されるのか、と。
「さっきから在日、在日って…
同じ日本に住んでる者同士でしょうが?それともあの場所だけ円じゃなく、ウォンの紙幣が必要なんですか?
テレビをつければ、韓国の放送局しか映らないんですか?
違うでしょう。あなたの言ってることは、差別発言だ!
日本だ韓国だと、そんなに区別してよく、このような仕事が出来ますね?これは差別発言です!
確かに、私は日本人です。そしてその地域に住んでる人も国籍が違うだけで、この日本で生まれ育っているのです!あなたがもし、韓国で生まれ育った日本人だとしたら、今のような事を言われたらどう思いますか?決していい気分にはならないでしょ?違いますか?
私はあの場所が気に入ったから住みたい、それだけです。
日本だ韓国だと騒いでないで、同じ場所に生活する者同士なんですよ。わかりますか、この意味が!」
達也は一気に捲し立てた。
達也には日本人だからとか、在日だからとか、という考えは全く無い。
要は国籍が違うだけの話。後は皆一緒だ、そういう考えの持ち主だ。
「…あ、いや、その。大変失礼致しました」
窓口の男は、達也に非礼を詫びた。
「私に言うより、ここを訪ねてくる在日の方々に言って下さい。私はあの場所が気に入った。だから、今すぐにでも契約したいのです。いいですか?」
達也の勢いに気圧され、窓口の男は恐縮しながら、契約書を持ってきた。
達也は小島晴彦とサインした。
「じゃあ、そういう事でヨロシク」
契約を交わし、コリアンタウンにそびえ立つ、十階建てのマンション。
そこの七階の部屋を借りた。
「…ありがとう」
帰り際、ナツが達也に礼を言った。
「ん?何が?」
「だってあの不動産の人、在日だ何だって言ってたでしょ?あなたが差別発言だ、って言ったらビビっちゃって、何かおかしかった」
ナツがクスッと笑った。
「日本も韓国も欧米も関係ねえよ。良いと思ったからそこに決めた、ただそれだけだ」
「…でも何か嬉しい」
ナツは達也の腕を組んで歩いた。
「んじゃ、ナツ。アパートから荷物こっちに持ってこよう。
古くなった物は処分して、新しいのを買おう。なんてったって、ここが再スタートの地だからな」
達也はここで居を構え、亮輔と沢渡を消す。こうして達也とナツは、コリアンタウンに住むこととなった。
弁護士は車ごと圧縮プレス機で押し潰され、四角い塊となり、粉々になった。
まず、一人。続いて達也が消し去る人物は二人。
それは、沢渡と亮輔だ。
達也はこの二人を確実に葬る為に、すぐには行動に移さなかった。
それよりもまず、一緒に住む場所を決めなきゃ、とナツは遠く離れた場所へ移ろうと思ったが、達也は近場で身を隠せるような場所を見つけた。
それは多くの在日コリアンが住む場所、コリアンタウンと呼ばれる場所に住み、しばらくは身を隠して、生活しようと考えた。
コリアンタウンは、弁護士が住んでいた澱んだ異臭が漂う地域から車で10分程の場所で、日本にいながら、コリアン文化の雰囲気が漂う街へ移った。
ここは日本なのか?と錯覚する程、朝鮮文化が定着した街で、交わす言葉は日本語ではなく、ハングルを使う。
周りは在日2世や3世のコリアン達が密集し、韓国料理の店が立ち並ぶ、異国情緒溢れる場所だ。
都心へアクセスする交通機関は電車やバス、地下鉄と便利でしかも、この街に住めば、身を潜める事は十分に出来る。
達也はコリアンタウンの中にある、マンションの部屋を借りる為、不動産屋を訪れた。
マンションの住民のほとんどは在日コリアンで、家賃も都内にしては、かなり格安だ。
築年数は15年とやや古いが、八畳の洋室と6畳の和室にリビングがある2LDKの部屋を借りる事にした。
「お客様…失礼ですが、在日の方ですか?」
窓口で対応した担当の男は、達也を見るなり、国籍の事を聞いてきた。
「いや、日本人だけど。何か都合の悪い事でも?」
達也は小島の免許証を窓口の男に見せた。
もう、古賀達也という人物は列車に轢かれ、この世を去った。
これからは、小島晴彦(こじまはるひこ)として再スタートを切る。
「これはこれは、大変失礼致しました。しかし、何故日本の方がこのコリアンタウンに住もうと?」
住む、随分変わった人だなぁと。
「何故って?ここは日本ですよ?日本人が日本の街に住む。当たり前の事じゃないですか」
達也は当然だ、と答えた。
「でも、あの場所は在日の人ばかりですよ…ここだけの話、あの辺りは日本人が彷徨かない程でして…ですからこの地域にしては、かなり安い家賃なんですけどね、ええ」
達也の隣で聞いていたナツは、窓口の男の言う事が、日本人と在日コリアンの格差を言っているように思えた。
あぁ、やっぱり…ここでも私みたいな在日の人間は差別されるのか、と。
「さっきから在日、在日って…
同じ日本に住んでる者同士でしょうが?それともあの場所だけ円じゃなく、ウォンの紙幣が必要なんですか?
テレビをつければ、韓国の放送局しか映らないんですか?
違うでしょう。あなたの言ってることは、差別発言だ!
日本だ韓国だと、そんなに区別してよく、このような仕事が出来ますね?これは差別発言です!
確かに、私は日本人です。そしてその地域に住んでる人も国籍が違うだけで、この日本で生まれ育っているのです!あなたがもし、韓国で生まれ育った日本人だとしたら、今のような事を言われたらどう思いますか?決していい気分にはならないでしょ?違いますか?
私はあの場所が気に入ったから住みたい、それだけです。
日本だ韓国だと騒いでないで、同じ場所に生活する者同士なんですよ。わかりますか、この意味が!」
達也は一気に捲し立てた。
達也には日本人だからとか、在日だからとか、という考えは全く無い。
要は国籍が違うだけの話。後は皆一緒だ、そういう考えの持ち主だ。
「…あ、いや、その。大変失礼致しました」
窓口の男は、達也に非礼を詫びた。
「私に言うより、ここを訪ねてくる在日の方々に言って下さい。私はあの場所が気に入った。だから、今すぐにでも契約したいのです。いいですか?」
達也の勢いに気圧され、窓口の男は恐縮しながら、契約書を持ってきた。
達也は小島晴彦とサインした。
「じゃあ、そういう事でヨロシク」
契約を交わし、コリアンタウンにそびえ立つ、十階建てのマンション。
そこの七階の部屋を借りた。
「…ありがとう」
帰り際、ナツが達也に礼を言った。
「ん?何が?」
「だってあの不動産の人、在日だ何だって言ってたでしょ?あなたが差別発言だ、って言ったらビビっちゃって、何かおかしかった」
ナツがクスッと笑った。
「日本も韓国も欧米も関係ねえよ。良いと思ったからそこに決めた、ただそれだけだ」
「…でも何か嬉しい」
ナツは達也の腕を組んで歩いた。
「んじゃ、ナツ。アパートから荷物こっちに持ってこよう。
古くなった物は処分して、新しいのを買おう。なんてったって、ここが再スタートの地だからな」
達也はここで居を構え、亮輔と沢渡を消す。こうして達也とナツは、コリアンタウンに住むこととなった。
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