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免許合宿編
しおりを挟む「夏休みは合宿に行ってくるわ」
夏休み直前、椿とランチをした。亜耶と一緒に中型バイクの免許を取りに行くらしい。
「良いな~~♡♡♡ ツーリングとか楽しそう♡♡♡」
「南も取りに行くか?」
私は既に16歳だし、椿は誕生日が夏休み真っ最中だ。免許が取れる頃には誕生日が来ているだろう。
「行きたいけど、お金がなあ~~……やっぱりバイトしようかな……?」
高校受験で頑張った私は、引き続き勉強を頑張らないと授業についていけなくなってしまう。それと……最大の障壁が我が家にいるのだ。気軽にバイト出来ない環境なのである。
「はあ?駄目に決まってんじゃん!!」
「私はママに話してるんだけど……」
ママにバイトをしたいと話していたら、案の定蓮に反対されてしまった……。
「ママは別に反対はしないけど、急にどうしたの?何か欲しい物でもあるの?」
「椿がね、夏休みに中型バイクの免許取りに行くんだって。私もバイクの免許欲しいなって思って」
「ダメーーーッッ!!!そんなもの危ないよッッ!!怪我でもしたらどうするの!?」
……保護者よりも保護者みたいなことを言いやがる……。
「あら?良いじゃない♡ 実はママも持ってるのよね~~♡ パパが危ないから乗らないでくれって言うから、もうずっと乗ってないけどね」
エピソードがそっくりで、奇妙なところで血の繋がりを感じる……。
そう言えば、何故一緒に寝ることを許したのかとママに聞いたら
「パパもママとくっ付いて寝ないと精神が病むって駄々捏ねてた時期があったのよね~~♡」
と言っていた……。似たもの親子にも程がある。
「南に移動手段与えたらダメだよ!!春休み何があったのか忘れたの!?」
いつの間にか寝室に忍び込んでいた蓮から逃走し、椿の家に駆け込んだことか?そしてそのまま椿たちの旅行に着いて行ったことか?あれはどう考えても蓮のせいだと思うのだが……
「じゃあ蓮も一緒に免許取らない?」
「えっ?」
提案した私を見て固まる蓮。思ってもみなかったみたいな顔してるけど、閉じ込めることばっかり考えてるからそんな単純なことにも気付かないのだろうか?
「……いいの……?」
「逆に何で駄目だと思ったの?」
「だって南……自分のコミュニティに俺がいるの嫌がるでしょ?」
「……そうだっけ?」
ジト目で睨む蓮。何か忘れているのだろうか……?
「中学の時、南が演劇部の助っ人やるってなった時に、俺も手伝うって言ったら、俺が手伝うなら助っ人止めるって言っただろ?」
椿と亜耶が所属する演劇部は、当時ミュージカルばかりやっていた。急に欠員になった主役の妹役をやって欲しいと椿に頼まれ、本番3日前に助っ人として舞台に上がることになった。そこに乱入してきた蓮と取り巻き……という記憶はあるが、助っ人止める云々は覚えが無い。そもそもそんな切羽詰まった状況で止めるなんて言えるわけがない。
「……私言ってないよ?それ誰から聞いたの?」
「誰って、椿……あっ!もしかして、椿が勝手に言ってきたのか!?」
「あ~~……多分私に気を遣ってくれたんだろうね。蓮と取り巻きに劇をめちゃくちゃにされたくなかったんだろうねぇ……」
「そうやって、俺を害悪みたいに扱うの、南の周りでは当たり前になってたんだろ?自業自得なのは分かってるけど……傷付く……」
「ごめん~~……でも傷付く前に反省して?」
そもそも因果応報なのだ。女関係のゴタゴタを思い出したら、やっぱり高校離れて良かったと思わざるを得ない。
「合宿代なら、パパが出してあげるよ~~♡」
珍しく早く帰ってきたパパが、食事中にそう言った。
「でも、悪いよ……」
「これからバイク買ったり色々お金掛かるんだから、合宿代くらいパパに出させてよ♡ でもママは危ないからダメ~~♡」
「いや駄目だろッッ!!?気まぐれで良い親父ヅラすんなよ!!」
「え?一緒に合宿行けてラッキー☆とか思わないの?」
「南の行動範囲広げたくねーのッッ!!!」
「うわ~~……我が息子ながら狭量~~……一緒にツーリングするの楽しいと思うんだけどな~~……あ、でもママはダメ~~♡」
「ウフフ♡ うざいわよパパ♡」
ママにうざいと言われて顔面蒼白になるパパ。やっぱりこの人蓮の父親なんだなぁ~~、と血の濃さを実感した。結局パパのご好意をありがたく頂戴して、椿たちと同じ合宿に行くことになったのだった。
「ウェェーーイ合宿合宿ぅぅーー♪」
「ウェイウェイ合宿ぅぅーー♪」
小学生男子のようなはしゃぎ方をする椿と亜耶。椿と私、亜耶と蓮、それぞれが同室になり、9日間の合宿がスタートした。
覚えることが多くて大変だけど、授業は楽しいし、友達と一緒というのも楽しい♡ 合宿メンバーは私たちの他にも高校生が2人いた。修司と奈美恵という、これまた幼馴染同士だった。
「それじゃあみんな幼馴染繋がりなの?すげえ偶然もあるもんだな」
「ウチは夫婦なんで。幼馴染じゃないです」
修司の言葉に間髪入れず返す蓮に、苦笑いをする亜耶。
「はあ?俺らと同い年って言ってたよな?」
「すみません!義理のきょうだいなんです!」
「あ、そういうこと?」
「婚約者ですぅぅーーー!!!だから実質夫婦なんですぅぅーーー!!!」
苦笑いをする亜耶の隣で、険しい顔をする椿。やっぱり蓮のことを警戒してるんだよね……貰ったお守り、ちゃんと身に付けてるからね!……と思っていたら、肩がプルプル震え出した。椿……面白がってやがるな……
「近くにスパ銭あるんだってよ!!タマちゃんが車出してくれるらしいぜ~~♪」
教官の玉木先生ことタマちゃんの車に乗って、6人でスパ銭に向かう。景観の良い露天風呂や炭酸泉、サウナ等があって、ゆったり過ごせる施設だ。椿と奈美恵ちゃんと外気浴を楽しんでいたら、奈美恵ちゃんが徐に質問してきた。
「蓮君が言ってた夫婦って、どこまで本当なの?」
「全部本当だよな~~?w 」
椿が横から揶揄してくる。
「ちょっと椿w あのね、婚約させられてるのは本当。でも私はいつか普通のきょうだいに戻りたいって思ってるの」
「元々血も繋がってないのに……?」
「そうだけど……私にとって、蓮は弟だから……」
「そう……やっぱり子供の頃から側にいると、どうしても兄弟みたいな感覚になっちゃうよね」
悲しげな目をする奈美恵ちゃん。もしかして……
「奈美恵は修司のことが好きなのか?」
身も蓋もない聞き方をする椿。本人に悪気は無いんだろうけど……
「修司には言わないでッッ!!」
「いっ……言わないよっ!!ねぇ、椿?」
「おっ……おう……」
椿は結論を急ぐあまり、他人のペースというものを考えない傾向にある。良い悪いじゃなく、そういう性格なのだ。
「私の片想いだから……修司に気持ちがバレたら、きっと距離置かれちゃうから……蓮君が羨ましいな……私は、蓮君みたいに我を通し切れないからさ……」
「そうか?相手の気持ちを思い遣って、距離取ってる奈美恵の方が尊いと思うんだけどな」
椿の鋭い一言が炸裂する。奈美恵ちゃんは目を丸くして椿を見ていた。
「奈美恵は偉いよ。気持ちを押し込めるのだって、簡単じゃないだろうに。散々南を女のトラブルに巻き込んでおいて、この期に及んで自分の恋愛感情だけをぶつけて南の自由を奪おうとする誰かさんとは大違いだぜ?」
「椿……怒ってる?」
「逆に何で南は怒らないんだ?見てる分には面白いけどな、もし私が南だったら、殴ってでも自由を勝ち取るぞ?」
椿は自由人だ。自由を何より尊び、愛する椿から見たら、私はイライラする存在なのかもしれない。
「……ごめん……巻き込んでおいて、イライラさせちゃって……」
「私も言い過ぎた……ごめん……」
椿が気まずそうに謝ってきた。怖がってばかりで、椿に頼りっぱなしの自分に、自分が一番失望しているのかもしれない。自分はもっと強いと思い込んでいたけど、全然そんなこと無かったのだ。
「どうやら私は、他人を理不尽に搾取する人間が地雷なんだよな……だから托卵は犯罪にすれば良いと思ってる」
「ブフォw 何で急に托卵っw 」
椿の隣で吹き出す奈美恵ちゃん。ツボにハマったみたいだ。
「え?托卵ムカつかねぇ?」
「そんなの考えたことないわw 」
「DNA鑑定義務化すれば良いのにな~~」
「あははは!」
いつの間にか和やかな雰囲気になって、椿と奈美恵ちゃんの仲も深まったようだった。
「ところで椿ちゃんは、亜耶君とは本当にただの幼馴染なの?亜耶君、かなりのイケメンじゃない?
「いやいや、ハトコだぜ?」
「殆ど他人じゃんw 私は椿とお似合いだと思うけどな~~?」
「アカンのや……ホラ、見て?この鳥肌、見て?マジでカンベンしてくれ……」
奈美恵ちゃんに揶揄われて鳥肌を立てる椿に笑いながら、スパ銭を堪能した。
「じゃあ、連れには話通しておくから♪」
「ありがとう修司君!」
中学の時からハマってるマイナーなガールズバンドが、修司君の友達と繋がりがあるそうだ。ゲリラライブ中心に活動しているバンドだから、普段なかなかチケットが取れないのだが、友達経由ならチケットが手に入りやすいのだと教えてくれた。
「南ちゃんって笑顔が可愛いよね♡ ……やっぱり女の子は愛嬌だよな~~♡ どう?蓮君と別れて、俺と付き合わない?」
「お断りしま~~す☆」
「うっわ、瞬殺w 」
「本気じゃないくせに~~w 本命は、もっと近くにいるんでしょ~~?」
「ッッ!?……何で分かったの??」
マジか……奈美恵ちゃんの気持ちに気付いてくれれば良いのにな~~……という思いで、カマかけてみただけなんだけど……奈美恵ちゃん!両思いだよ♡♡
「ばっ……バレバレだよ修司君~~♪」
「俺、そんなに分かりやすいかなぁ?本人にはナイショね?」
「告白すれば良いのに……奈美恵ちゃん、きっと喜ぶよ?」
「……怖いんだよ……告って、逃げられたらと思うと怖くて堪んねえ……ただの幼馴染にさえ戻れなくなったらと思うと……身動き取れなくなる……」
この二人、同じこと怖がってやがる……告白失敗して避けられたらどうしようって、お互いが思っていやがる……。
私は、ポケットに入っている椿から貰ったお守りを握りしめた。
「修司君、これあげる」
「え?何……?」
「恋愛成就のお守り!」
……かどうかは知らんけど、今この瞬間、何故かこのお守りを修司君にあげなければ、と、強く思ったのだ。
「絶対告白が上手くいくお守り!ほら、手出して!!」
「え?……おう……」
お守り……水晶の勾玉を手渡ししたその時、背後から蓮の叫び声が聞こえた。
「俺の南に触るなよッッ!!?」
肩を掴まれ、もの凄い勢いで後ろに引っ張られた。幸い、お守りは修司君に渡した後だったけど、落したら割れるやつだから、一瞬でも渡すのが遅れていたらアウトだった。
その瞬間、蓮に無性に腹が立った。椿から貰ったお守り……椿が私の身を守るためにとくれたお守り。私が修司君と奈美恵ちゃんの恋が成就しますようにと願いを込めて渡したお守り。あのお守りには、手に渡った人の数だけ想いが込められている。とても大切なものだ。それを粗末に扱われたような気がして、無性に腹が立ったのだ。
『散々南を女のトラブルに巻き込んでおいて、この期に及んで自分の恋愛感情だけをぶつけて南の自由を奪おうとする誰かさんとは大違いだぜ?』
椿の言葉を思い出す。そうだ、あの時、女の子たちから嫌がらせを受けていた時、蓮は何一つ庇ってくれなかった。遠くから睨み付けてきただけだったのだ。
「離してよ……」
「南……?」
「離しなさいッッ!!!アンタには修司君にキレる資格は無いッッ!!!」
ビクッと震え、ゆっくり手を離す蓮。振り返ると、今にも泣き出しそうな顔で私を見ていた。
「南……ッッ……ッッ……カハッ……ハッ……ハッ……!」
喉に手を押さえて、浅い呼吸を繰り返す蓮。
「え?何?どうしたの蓮ッッ!?」
「多分過呼吸だ!!紙袋持ってない!?」
「えっ!?持ってない!!どうしよう!?」
オロオロしていたら、椿と亜耶がコンビニから帰ってきた。
「か◯あげくんの袋でよければあるぜ!?」
事態を察した亜耶が紙袋を渡してくれて、蓮の口に当て、ゆっくり呼吸をさせた。その間ずっと私の服を握り締めていて、罪悪感で胸が締め付けられた。
呼吸が落ち着いてきた蓮が、涙をポロポロ溢しながら
「嫌わないで……お願い……どこにも行かないで……」
と、譫言のように呟いていた。
「どこにも行かないから……怒った理由も、後で話すからね……?」
「南ぃぃ~~……大好きぃぃ~~……」
いつの間にか奈美恵ちゃんも部屋から出てきて、みんなに醜態を見られている。それでも私には、身も世もなく泣きじゃくる蓮の背中を摩ることしか出来なかった。
「つくづくスマン……思ってたより蓮の依存がヤバかった……アレは殴ったら最悪の結末を迎えるやつや……」
部屋に戻ると、椿に謝られた。
「でしょ?w 」
「何笑ってんだよw 」
「笑うしかないでしょw 」
ケラケラ笑い合った後、椿が蓮に腹を立てる理由を話し始めた。
「いや~~……私から見て、あまりにも南に汚い情念が絡み付いてたからさぁ~~、ずっと、何とか剥がしてやりたいと思ってたんだよね~~」
椿はいわゆる、見える人だ。自然や生き物のエネルギーの流れみたいなものも見えるらしい。
「汚い情念てw じゃあ、受験のアドバイスくれた時から、蓮の気持ち知ってたの?」
「……まあね。そのせいで南のエネルギーが枯渇してたからな。言っただろ?私は托卵とエナジーバンパイアが地雷なんだよ。南……絶対に無理するなよ?」
「ありがとう椿……あとごめん。椿から貰ったお守り、修司にあげちゃった」
「ハハッ……明日には奈美恵に彼氏が出来るな」
やっぱり椿には、あの二人のエネルギーも見えているのだろう。
あの後、私が怒った理由を話したら、叱られた子犬のようにシュンとしていた蓮。一応修司君に頭を下げていたけれど、今後も似たような案件は起こりそうだと思った。
「中学の時……南が嫌な思いしてたのは知ってた……高校急に変えたのも、俺と離れたかったからだよね?分かってる……あの頃、俺が話しかけるだけで構えてた南には、近付きたくても近付けなかった。これ以上嫌われたくなかったし、あの頃は見てるだけで良いって、思い込んでたから……結局見てるだけじゃ済まなかったけど……」
ふと、修司君が、奈美恵ちゃんに逃げられたらと思うと怖くて堪らないと話していたことを思い出した。
「そっか……てっきり、蓮は他人には全く興味ないものかと思ってたわ。なんかいっつもダルそ~~にしてたもんね?」
「寄ってくる女はダルかったけど。心配して声掛けてくれる奴も、亜耶くらいしかいなかったし、色々どうでも良かったな、あの頃は……」
「これからはダルがってられないよ?取り敢えず免許取ったらさ、二人でツーリング行こうね」
「南ぃぃ~~ッッ♡♡♡ チューしたいッッ♡♡♡」
「……ダメ……」
「今すぐ!!チューしたいッッ!!♡♡♡ 触れるだけで良いから!!お願いお願いお願いッッ!!♡♡♡ 合宿中一緒に寝れてないんだよ?もう南が枯渇してるんだよぉぉ~~!!」
「……どーりで最近よく眠れると思った……」
涙目で懇願する蓮にため息を吐くと、自分の人差し指を唇に当てた。
「南……?」
その人差し指を蓮の唇に当てると、途端に真っ赤に染まる蓮の顔。
「はわ……♡♡♡♡ はわわ……♡♡♡♡」
大人しくなった蓮を見て、こんなことで良かったのかと拍子抜けした。取り敢えず助かった。
「ウェェーーイ免許取得ぅぅーー♪」
「ウェイウェイ免許免許ぉぉーー♪」
免許証を翳し、やはり小学生男子のようにはしゃぐ椿と亜耶。私たちは6人全員、無事免許を取得した。
「一緒にバイク買いに行こうね♡♡♡」
「うん♡♡♡」
はしゃぐ椿たちの横で、明らかに甘々な空気を醸し出す修司と奈美恵ちゃん。
「え?もしかしてお前ら……」
「実は付き合い始めたんだぁ~~♡♡♡」
奈美恵ちゃんの肩を抱き、得意げな修司君と、照れ笑いをする奈美恵ちゃん。
「ええ~~?おめでとう~~♡♡♡」
「ありがとう~~♡♡♡ 南ちゃんと蓮君のおかげだよ~~♡♡♡」
「え?何かしたっけ?」
「蓮君を見てたら、色々と手遅れになる前に気持ち伝えておこうと思って。修司を呼び出したら、修司も自分が手遅れになる前に告白したいって言ってくれて♡♡♡」
「へぇ……そう……」
「蓮君みたいに手遅れになる前に、修司と付き合えて良かったぁ~~♡♡♡ ホントにありがとう♡♡♡」
「どおいたしまして……」
背後で椿と亜耶が笑いを堪えてる気配がする……。見える人じゃないけど、それくらいは分かるぞ二人とも……。
「俺たちも、一緒にバイク買いに行こうね♡♡♡」
「その前にバイトでしょ?」
「ダメだよ!!バイトなんかしたら、有象無象に付き纏われちゃうよ!!?」
「じゃあどうやってバイク買うのよ!?」
「そんなんオヤジに金出させとけば良いんだよッッ!!」
「……私そういうの嫌い……」
「ゔわぁぁ~~~ん!嫌いって言うなぁぁーー~~ッッ!!ゔわぁぁ~~ん!やだぁぁ~~ッッ!!」
ドン引きで蓮を見る周りの人たち……。話を逸らそうと、修司君が亜耶に話しかける。
「あっ…亜耶と椿はどうなんだ?付き合ったりはしないの?」
途端、顔面蒼白になる椿と亜耶。
「「アカンのや……ホラ、見て?この鳥肌、見て?マジでカンベンしてくれ……」」
声を揃えて、腕の鳥肌を見せてくる二人。側から見たらお似合いなのだが、どうやらお互い生理的に受け付けないそうだ。仲はめちゃくちゃ良いんだけど、本質的にお互い小学生男子なのだろう。
みんなと別れて、家に帰った。久しぶりの家で寛ぎ、ママが作ってくれたご飯を食べる。今日はゆっくり眠れそ……
「おかえり南~~♡♡♡」
お風呂から上がって部屋に戻ると、私のベッドに腰掛けニッコニコで両手を広げる蓮。
忘れてた……蓮と一緒に寝なければならないことを……
「こっ……今夜は暑いからさ、別々で寝よ…」
「ヤダッ!!絶対ヤダァァーーーッッ!!!」
「……あんまり興奮しないで……」
また過呼吸でも起こされたら面倒だ……。諦めてベッドに乗ると、ニッコニコの蓮にやはり羽交締めにされたのだった……くっっそ暑い……。
ウトウトしていると、後ろから蓮が話しかけてきた。
「南……俺……南に伝えたいことが……やっぱりいいや……」
「ん~~……?どうしたの……?」
「なんでもない……おやすみ、南……♡」
蓮の声を聞きながら、そのまま深い眠りに落ちていった。
揉めに揉めた結果、私と蓮は近所にある老舗の喫茶店でバイトをすることになった。パパが立て替えてくれたバイクの代金を、バイト代から分割で返していくことになり、残りの夏休みは、勉強したりバイトしたり蓮とツーリングに行ったりと、充実した日々を過ごした。
困ったことと言えば、あれ以来蓮がちょいちょいキスを強請ってくることくらいか。最初のうちは指の間接キスで騙されてくれていたが、だんだんと欲が出てきた様子だった。
「チューしたいッッ!!♡♡♡」
「……ダメ……」
「ヤダァ~~チューしたい~~ッッ!!!」
「……ホントは私が寝てる間にしてるんじゃないの……?」
「それはしてないよ……本当。信じて……」
「ホントかなぁ~~??」
「ホントだもん……南に許されないことするのは、怖いから……」
しょんぼり顔でそんなこと言われたら、罪悪感が芽生えるではないか……。
「……蓮、ちょっとしゃがんで?」
「え?こう?」
チュッ♡
「はい、おしまい」
「ファッ!!?ふわぁぁぁ~~!!?♡♡♡♡♡♡」
顔を真っ赤にして、ぴょんぴょん跳ねる蓮。小さい子みたいで可愛いと思いつつ、指の間接キスで誤魔化されてくれなくなった現実に頭を痛めたのであった。
「もう一回!!!♡♡♡♡」
「……ダメ……」
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