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第47話 聖女の誤爆と魔法発動
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拠点を出た俺たちは、薄暗い通路を進んでいた。
俺は一人じゃない探索に――今日は触り程度で引き上げる予定だが、雫ちゃんの存在が大きく、年甲斐もなく心を踊らせていた。
それでも警戒は怠らず数分ほど進んだところで、最初の敵と遭遇した。
カチッ、カチッ。
通路の曲がり角から現れたのは、白い骨だけの身体を持つ、この階層ではお馴染みのスケルトンナイト(以下、スケルトン)だ。
錆びた剣を引きずり、虚ろな眼窩をこちらに向けている。
「……来たな」
俺は足を止め、背後の雫ちゃんを手で制した。
「こいつらは大したことない。下がって見ててくれ。俺一人で片付ける」
「えっ、でも……」
「いいから。実戦(デモンストレーション)だ」
俺はお揃いのヘルメットを被った彼女を後ろに残し、両手の盾を構えて前に出た。
スケルトンがこちらに気づき、顎をカタカタと鳴らして走り出してくる。
(……動きが遅い。一ヶ月前の俺とは違う)
俺は冷静に間合いを測る。
相手が錆びた剣を振りかぶった。軌道は見えている。
ガギィッ!!
俺は左手の『防御用ラウンドシールド』で、その斬撃を真正面から受け止めた。
複合装甲のゴムが衝撃を殺す。完璧だ。
あとは右手の斬撃シールドで、魔石ごと肋骨を粉砕するだけ――。
その時だった。
「――えいっ!」
背後から、可愛らしい掛け声が聞こえた。
同時に、頭上から大量の水塊が降り注いできた。
バシャァッ!!
「うおっ!? な、何事だ!?」
冷たい液体が、前衛にいる俺の半身(おもに右側のシールドと肩)を直撃した。
視界が水飛沫で白く染まる。
「ああっ! ご、ごめんなさい佐東さん!」
振り返ると、そこには青いポリバケツを抱えた雫ちゃんがいた。
彼女は俺が戦っている間に、自身のギフト『アイテムボックス』から清掃用のバケツを取り出し、聖水を満たして援護しようとしてくれたらしい。
だが、コントロールが壊滅的だった。
「だ、大丈夫だ、俺には効かない! それより敵は……」
俺は濡れた顔を拭いながら前を見る。
聖水は俺の肩で弾け、その飛沫の半分ほどがスケルトンにかかっていた。
たったそれだけの量だったが――。
ジュワァァァッ!!
「ギィッ……!?」
スケルトンは悲鳴を上げる間もなく、白い煙となって溶け落ち、瞬時に「消滅」した。
カラン、と魔石と錆びた剣だけが落ちる。
「……まじか。飛沫だけでこれかよ」
俺が濡れたシールドを振って水気を切っていると、雫ちゃんが青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「タイミングを合わせようとしたら、手が滑ってしまって……」
「いや、結果オーライだ。ナイス援護だったよ。……濡れたけどな」
「うう、すみません……」
俺たちは苦笑いし合ったが、安堵するのは早かった。
スケルトンが消滅した白い霧の向こうから、カチリカチリと新たな足音が聞こえてきたのだ。
「……!! 雫ちゃん、まだいるぞ! 後続が二体!」
霧を割って現れたのは、新たなスケルトン二体。
俺はとっさに盾を構え直そうとする。だが、距離が近い。
「ひっ!?」
雫ちゃんが息を呑む。
彼女はパニック気味に敵を見つめ、そして――何かを閃いたようにハッとした顔をした。
「あっ! ……『ターンアンデッド』って魔法があります!」
彼女がそう叫んだ、その瞬間だった。
カッ!!
彼女の言葉に呼応するように、彼女の身体を中心として、爆発的な白い光が全方位に広がった。
「うおっ、眩しっ!?」
俺は思わず目を覆う。
それはヘッドライトの比ではない、神々しい浄化の閃光。
光が通路を満たし、迫っていた二体のスケルトンを飲み込む。
「ギィィィィィ――……」
断末魔と共に、骨の身体は光に溶けるように消滅した。
カラン、コロン。
静寂が戻った通路には、乾いた音を立てて落ちたドロップアイテムだけが残されていた。
「……え?」
雫ちゃんが、キョトンとして自分の手を見つめている。
「い、今……私、魔法を使おうとしたわけじゃなくて……ただ『ある』って言っただけで……」
「どうやら、魔法名を口にするだけで発動するタイプみたいだな。まさに『音声認識』か」
俺は呆れ半分、感心半分で呟いた。
詠唱も集中もいらない。敵を見て、浮かんだ言葉を口にするだけで広範囲殲滅。
俺が一ヶ月かけて泥臭く戦ってきた相手を、彼女は一瞬で薙ぎ払ってしまった。
「すごいな、雫ちゃん。君は最強の対アンデッド兵器だよ」
「そ、そうですか? でも、佐東さんに聖水をかけちゃいましたし……」
「それはご愛嬌だ。次は気をつけてくれ」
俺は濡れた頭(ヘルメット)を拭きながら、二つの残骸に近づき、戦利品を拾い上げた。
残ったのは、合計三つの小さな「魔石」。
そして、三本のボロボロに錆びついた「剣」だ。
「また剣かよ」
俺は錆びた剣を拾い上げ、深い嘆息を漏らした。
「このダンジョンのスケルトン、倒すと(浄化されても)必ず装備してる剣を残すんだよな。おかげで拠点の隅には、こいつの山ができてる」
「あ、あの鉄屑の山、これだったんですね」
「ああ。錆びすぎてて武器としては使えないし、溶かして鉄にする設備もない。正直、ただのゴミなんだが……」
俺は魔石だけをポケットに入れ、錆びた剣はインベントリの「不用品枠」へと放り込んだ。
こいつら、剣以外も落とせばいいのに。
「よし。とりあえず、君の戦力は確認できた。……これなら、少し奥まで行けるかもしれないな」
「はい! 私、頑張ります!」
お揃いの「安全第一」ヘルメットを被った俺たちは、苦笑いを交わしながら、ひとまずの勝利を喜び合った。
こうして、凸凹コンビの初陣は、ドタバタながらも大勝利で幕を閉じたのだった。
俺は一人じゃない探索に――今日は触り程度で引き上げる予定だが、雫ちゃんの存在が大きく、年甲斐もなく心を踊らせていた。
それでも警戒は怠らず数分ほど進んだところで、最初の敵と遭遇した。
カチッ、カチッ。
通路の曲がり角から現れたのは、白い骨だけの身体を持つ、この階層ではお馴染みのスケルトンナイト(以下、スケルトン)だ。
錆びた剣を引きずり、虚ろな眼窩をこちらに向けている。
「……来たな」
俺は足を止め、背後の雫ちゃんを手で制した。
「こいつらは大したことない。下がって見ててくれ。俺一人で片付ける」
「えっ、でも……」
「いいから。実戦(デモンストレーション)だ」
俺はお揃いのヘルメットを被った彼女を後ろに残し、両手の盾を構えて前に出た。
スケルトンがこちらに気づき、顎をカタカタと鳴らして走り出してくる。
(……動きが遅い。一ヶ月前の俺とは違う)
俺は冷静に間合いを測る。
相手が錆びた剣を振りかぶった。軌道は見えている。
ガギィッ!!
俺は左手の『防御用ラウンドシールド』で、その斬撃を真正面から受け止めた。
複合装甲のゴムが衝撃を殺す。完璧だ。
あとは右手の斬撃シールドで、魔石ごと肋骨を粉砕するだけ――。
その時だった。
「――えいっ!」
背後から、可愛らしい掛け声が聞こえた。
同時に、頭上から大量の水塊が降り注いできた。
バシャァッ!!
「うおっ!? な、何事だ!?」
冷たい液体が、前衛にいる俺の半身(おもに右側のシールドと肩)を直撃した。
視界が水飛沫で白く染まる。
「ああっ! ご、ごめんなさい佐東さん!」
振り返ると、そこには青いポリバケツを抱えた雫ちゃんがいた。
彼女は俺が戦っている間に、自身のギフト『アイテムボックス』から清掃用のバケツを取り出し、聖水を満たして援護しようとしてくれたらしい。
だが、コントロールが壊滅的だった。
「だ、大丈夫だ、俺には効かない! それより敵は……」
俺は濡れた顔を拭いながら前を見る。
聖水は俺の肩で弾け、その飛沫の半分ほどがスケルトンにかかっていた。
たったそれだけの量だったが――。
ジュワァァァッ!!
「ギィッ……!?」
スケルトンは悲鳴を上げる間もなく、白い煙となって溶け落ち、瞬時に「消滅」した。
カラン、と魔石と錆びた剣だけが落ちる。
「……まじか。飛沫だけでこれかよ」
俺が濡れたシールドを振って水気を切っていると、雫ちゃんが青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「タイミングを合わせようとしたら、手が滑ってしまって……」
「いや、結果オーライだ。ナイス援護だったよ。……濡れたけどな」
「うう、すみません……」
俺たちは苦笑いし合ったが、安堵するのは早かった。
スケルトンが消滅した白い霧の向こうから、カチリカチリと新たな足音が聞こえてきたのだ。
「……!! 雫ちゃん、まだいるぞ! 後続が二体!」
霧を割って現れたのは、新たなスケルトン二体。
俺はとっさに盾を構え直そうとする。だが、距離が近い。
「ひっ!?」
雫ちゃんが息を呑む。
彼女はパニック気味に敵を見つめ、そして――何かを閃いたようにハッとした顔をした。
「あっ! ……『ターンアンデッド』って魔法があります!」
彼女がそう叫んだ、その瞬間だった。
カッ!!
彼女の言葉に呼応するように、彼女の身体を中心として、爆発的な白い光が全方位に広がった。
「うおっ、眩しっ!?」
俺は思わず目を覆う。
それはヘッドライトの比ではない、神々しい浄化の閃光。
光が通路を満たし、迫っていた二体のスケルトンを飲み込む。
「ギィィィィィ――……」
断末魔と共に、骨の身体は光に溶けるように消滅した。
カラン、コロン。
静寂が戻った通路には、乾いた音を立てて落ちたドロップアイテムだけが残されていた。
「……え?」
雫ちゃんが、キョトンとして自分の手を見つめている。
「い、今……私、魔法を使おうとしたわけじゃなくて……ただ『ある』って言っただけで……」
「どうやら、魔法名を口にするだけで発動するタイプみたいだな。まさに『音声認識』か」
俺は呆れ半分、感心半分で呟いた。
詠唱も集中もいらない。敵を見て、浮かんだ言葉を口にするだけで広範囲殲滅。
俺が一ヶ月かけて泥臭く戦ってきた相手を、彼女は一瞬で薙ぎ払ってしまった。
「すごいな、雫ちゃん。君は最強の対アンデッド兵器だよ」
「そ、そうですか? でも、佐東さんに聖水をかけちゃいましたし……」
「それはご愛嬌だ。次は気をつけてくれ」
俺は濡れた頭(ヘルメット)を拭きながら、二つの残骸に近づき、戦利品を拾い上げた。
残ったのは、合計三つの小さな「魔石」。
そして、三本のボロボロに錆びついた「剣」だ。
「また剣かよ」
俺は錆びた剣を拾い上げ、深い嘆息を漏らした。
「このダンジョンのスケルトン、倒すと(浄化されても)必ず装備してる剣を残すんだよな。おかげで拠点の隅には、こいつの山ができてる」
「あ、あの鉄屑の山、これだったんですね」
「ああ。錆びすぎてて武器としては使えないし、溶かして鉄にする設備もない。正直、ただのゴミなんだが……」
俺は魔石だけをポケットに入れ、錆びた剣はインベントリの「不用品枠」へと放り込んだ。
こいつら、剣以外も落とせばいいのに。
「よし。とりあえず、君の戦力は確認できた。……これなら、少し奥まで行けるかもしれないな」
「はい! 私、頑張ります!」
お揃いの「安全第一」ヘルメットを被った俺たちは、苦笑いを交わしながら、ひとまずの勝利を喜び合った。
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