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第56話 言葉足らずの魔法と氷結の盾
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アイテムボックスにリザードマンの死体、今では食材と言っているを入れ、俺たちはさらに奥へと足を進めた。
このエリアは通路が複雑に入り組み、死角が多い。
俺は『索敵』スキルを全開にしていたが、それでも「それ」は突然起こった。
「――ッ!! 伏せろ!」
俺が叫ぶのと、影が飛び出してくるのは同時だった。
それも、一体ではない。
「ギシャァァァッ!!」
「グルァァァッ!!」
左右の分かれ道から、二体のリザードマンが同時に襲いかかってきたのだ。
完全に挟み撃ちの形。
俺はとっさに雫ちゃんを背中に隠し、右肩のL字型シールドを正面に、左手のラウンドシールドを側面に構えた。
ドゴォッ!!
ガギィンッ!!
二方向からの重い衝撃。
左手の鈍撃シールドで槍を弾くことはできたが、正面のL字型シールドには全体重を乗せた体当たりを食らった。
「ぐぅッ……!」
重い。
足が石床を削り、ジリジリと後退させられる。
二対一。しかも片方はフリーだ。
右側のリザードマンが、弾かれた槍を構え直し、無防備な俺の脇腹を狙ってくる。
「さ、佐東さんッ!」
背後で雫ちゃんの悲鳴が上がる。
俺は歯を食いしばった。
「動くな! 俺がなんとか……」
「助けないと……! ええと、氷、氷の玉を……!」
彼女の慌てた声が聞こえる。
まずい、焦っている。
彼女は杖を突き出し、リザードマンを狙おうとしたが、俺が壁になっているせいで射線が通らない。
それでも彼女は、必死に魔法を放とうとして――。
「え、えいっ! アイス……ッ!!」
言葉が、詰まった。
焦りと恐怖で、本来唱えるべき『アイスボール』の後半部分、『ボール(球)』が出てこなかったのだ。
コマンドは不完全。
だが、魔力はすでに放出されている。
行き場を失った「純粋な冷気」の魔力は、最も近くにある導体――すなわち、俺が構えている鉄のラウンドシールドへと吸い込まれた。
パキパキパキパキッ!!
「うおっ!?」
凄まじい音が響き、俺のラウンドシールドが一瞬にして真っ白に染まった。
表面に分厚い霜と氷柱が走り、極低温の冷気を撒き散らす「氷の壁」へと変貌する。
「ギッ!?」
盾を押し込んでいた正面のリザードマンが、あまりの冷たさに驚愕し、飛び退くように一歩下がった。
その手や肩の鱗には、触れただけで霜が降りている。
「こ、これは……」
俺は冷気を放つ自分の盾を見た。
持ち手部分(裏側)に巻いてある革とゴムのおかげで、俺の手は無事だ。だが、表側は完全に凍りついている。
(……そうか、分かったぞ!)
俺の脳内で、パズルのピースがハマった。
『アイスボール』は、「アイス(属性)」+「ボール(形状)」で成立する。
だが、形状指定をしなかったことで、属性そのものが一番近くの物体に定着したんだ。
つまりこれは、偶然発動した『エンチャント・アイス(氷属性付与)』!
「いける……!」
敵は、未知の冷気に怯んで動きを止めている。
この隙を見逃す手はない。
俺は凍りついた左手の盾を構え直すと、一気に踏み込んだ。
「冷たいのがお望みか? なら、特大のをくれてやるよ!!」
俺は全身のバネを使い、凍結ラウンドシールドを豪快に叩きつけた。
「シールドバッシュ!!」
ドゴォォォンッ!!
氷の塊ごとの激突。
逃げ遅れたリザードマンの胴体に、極低温の攻撃が直撃する。
「ガァッ……!?」
リザードマンは 白煙?を吐いて吹き飛んだ。
激突の瞬間、盾の表面の氷が一気に相手へと伝播する。
パキパキパキッ!!
空中に放り出されたリザードマンの身体が、足先から頭まで、瞬く間に白い氷に覆われていく。
そして、壁に激突した時には、そいつはカチコチに凍りついた「氷像」と化していた。
「……すげぇ」
打撃+凍結。文句なしの一撃必殺の技だ。
だが、戦いは終わっていなかった。
「ゴァァァァァァッ!!」
残されたもう一体のリザードマンが、相棒の死を見て、恐怖するどころか激昂したのだ。
目は血走り、全身の筋肉を膨張させ、死を恐れぬ特攻態勢に入っている。
バーサーク状態だ。
「ちっ、逆効果かよ!」
俺は氷から解放された盾を構え直すが、さっきの一撃で表面の氷は砕け散り、ただの濡れた盾に戻っている。
敵が跳躍した。速い!
「佐東さん、どいてください!」
その時、背後から凛とした声が響いた。
さっきまでの震えはない。
俺は反射的に、盾を構えたまま半身に開いた。
その隙間を縫うように、雫ちゃんの杖が突き出される。
「今度こそ、間違えません……!」
彼女は真っ直ぐに敵を見据え、明確なイメージと共に言葉を紡いだ。
「貫け――アイスアロー!!」
ヒュンッ!!
放たれたのは球体ではない。
空気を切り裂く、鋭利な氷の矢。
それが、空中で咆哮を上げていたリザードマンの、大きく開かれた喉元に深々と突き刺さった。
「ガ、ッ……!?」
声が凍りつく。
リザードマンは空中で絶命し、勢いのまま俺たちの足元へゴロリと転がった。
「……ふぅ」
俺は息を吐き、濡れた盾を下ろした。
そして、杖を構えたまま肩で息をしている雫ちゃんに振り返った。
「ナイスだ。……いい度胸だったぞ」
「は、はい……! もう、失敗したままじゃ終われませんから!」
彼女は気丈に笑ってみせたが、その足は少し震えていた。
俺は彼女のヘルメットをポンと叩き、今回の「失敗」が生んだ大発見について語ることにした。
「さっきのミス、気にするなよ。おかげで大発見だ」
「え?」
「『アイス』だけだと、形にならずに物に宿る。つまり、おっちょこちょいなミスのおかげで、俺たちは『属性付与(エンチャント)』の方法を見つけたってわけだ」
俺の言葉に、彼女は目を丸くし、それから嬉しそうに破顔した。
「怪我の功名、ですね!」
こうして俺たちは、偶然と失敗の中から、攻略の糸口をまた一つ掴み取ったのだった。
このエリアは通路が複雑に入り組み、死角が多い。
俺は『索敵』スキルを全開にしていたが、それでも「それ」は突然起こった。
「――ッ!! 伏せろ!」
俺が叫ぶのと、影が飛び出してくるのは同時だった。
それも、一体ではない。
「ギシャァァァッ!!」
「グルァァァッ!!」
左右の分かれ道から、二体のリザードマンが同時に襲いかかってきたのだ。
完全に挟み撃ちの形。
俺はとっさに雫ちゃんを背中に隠し、右肩のL字型シールドを正面に、左手のラウンドシールドを側面に構えた。
ドゴォッ!!
ガギィンッ!!
二方向からの重い衝撃。
左手の鈍撃シールドで槍を弾くことはできたが、正面のL字型シールドには全体重を乗せた体当たりを食らった。
「ぐぅッ……!」
重い。
足が石床を削り、ジリジリと後退させられる。
二対一。しかも片方はフリーだ。
右側のリザードマンが、弾かれた槍を構え直し、無防備な俺の脇腹を狙ってくる。
「さ、佐東さんッ!」
背後で雫ちゃんの悲鳴が上がる。
俺は歯を食いしばった。
「動くな! 俺がなんとか……」
「助けないと……! ええと、氷、氷の玉を……!」
彼女の慌てた声が聞こえる。
まずい、焦っている。
彼女は杖を突き出し、リザードマンを狙おうとしたが、俺が壁になっているせいで射線が通らない。
それでも彼女は、必死に魔法を放とうとして――。
「え、えいっ! アイス……ッ!!」
言葉が、詰まった。
焦りと恐怖で、本来唱えるべき『アイスボール』の後半部分、『ボール(球)』が出てこなかったのだ。
コマンドは不完全。
だが、魔力はすでに放出されている。
行き場を失った「純粋な冷気」の魔力は、最も近くにある導体――すなわち、俺が構えている鉄のラウンドシールドへと吸い込まれた。
パキパキパキパキッ!!
「うおっ!?」
凄まじい音が響き、俺のラウンドシールドが一瞬にして真っ白に染まった。
表面に分厚い霜と氷柱が走り、極低温の冷気を撒き散らす「氷の壁」へと変貌する。
「ギッ!?」
盾を押し込んでいた正面のリザードマンが、あまりの冷たさに驚愕し、飛び退くように一歩下がった。
その手や肩の鱗には、触れただけで霜が降りている。
「こ、これは……」
俺は冷気を放つ自分の盾を見た。
持ち手部分(裏側)に巻いてある革とゴムのおかげで、俺の手は無事だ。だが、表側は完全に凍りついている。
(……そうか、分かったぞ!)
俺の脳内で、パズルのピースがハマった。
『アイスボール』は、「アイス(属性)」+「ボール(形状)」で成立する。
だが、形状指定をしなかったことで、属性そのものが一番近くの物体に定着したんだ。
つまりこれは、偶然発動した『エンチャント・アイス(氷属性付与)』!
「いける……!」
敵は、未知の冷気に怯んで動きを止めている。
この隙を見逃す手はない。
俺は凍りついた左手の盾を構え直すと、一気に踏み込んだ。
「冷たいのがお望みか? なら、特大のをくれてやるよ!!」
俺は全身のバネを使い、凍結ラウンドシールドを豪快に叩きつけた。
「シールドバッシュ!!」
ドゴォォォンッ!!
氷の塊ごとの激突。
逃げ遅れたリザードマンの胴体に、極低温の攻撃が直撃する。
「ガァッ……!?」
リザードマンは 白煙?を吐いて吹き飛んだ。
激突の瞬間、盾の表面の氷が一気に相手へと伝播する。
パキパキパキッ!!
空中に放り出されたリザードマンの身体が、足先から頭まで、瞬く間に白い氷に覆われていく。
そして、壁に激突した時には、そいつはカチコチに凍りついた「氷像」と化していた。
「……すげぇ」
打撃+凍結。文句なしの一撃必殺の技だ。
だが、戦いは終わっていなかった。
「ゴァァァァァァッ!!」
残されたもう一体のリザードマンが、相棒の死を見て、恐怖するどころか激昂したのだ。
目は血走り、全身の筋肉を膨張させ、死を恐れぬ特攻態勢に入っている。
バーサーク状態だ。
「ちっ、逆効果かよ!」
俺は氷から解放された盾を構え直すが、さっきの一撃で表面の氷は砕け散り、ただの濡れた盾に戻っている。
敵が跳躍した。速い!
「佐東さん、どいてください!」
その時、背後から凛とした声が響いた。
さっきまでの震えはない。
俺は反射的に、盾を構えたまま半身に開いた。
その隙間を縫うように、雫ちゃんの杖が突き出される。
「今度こそ、間違えません……!」
彼女は真っ直ぐに敵を見据え、明確なイメージと共に言葉を紡いだ。
「貫け――アイスアロー!!」
ヒュンッ!!
放たれたのは球体ではない。
空気を切り裂く、鋭利な氷の矢。
それが、空中で咆哮を上げていたリザードマンの、大きく開かれた喉元に深々と突き刺さった。
「ガ、ッ……!?」
声が凍りつく。
リザードマンは空中で絶命し、勢いのまま俺たちの足元へゴロリと転がった。
「……ふぅ」
俺は息を吐き、濡れた盾を下ろした。
そして、杖を構えたまま肩で息をしている雫ちゃんに振り返った。
「ナイスだ。……いい度胸だったぞ」
「は、はい……! もう、失敗したままじゃ終われませんから!」
彼女は気丈に笑ってみせたが、その足は少し震えていた。
俺は彼女のヘルメットをポンと叩き、今回の「失敗」が生んだ大発見について語ることにした。
「さっきのミス、気にするなよ。おかげで大発見だ」
「え?」
「『アイス』だけだと、形にならずに物に宿る。つまり、おっちょこちょいなミスのおかげで、俺たちは『属性付与(エンチャント)』の方法を見つけたってわけだ」
俺の言葉に、彼女は目を丸くし、それから嬉しそうに破顔した。
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