外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

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序章

第3話 加護の判明と婚約破棄

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 この日の朝はいつもとは異なるざわめきがあり、15歳の誕生日を迎えるロイのために、村人たちは特別なお祝いの準備を進めていた。この世界では15歳の誕生日を境に神から【加護】と呼ばれる特別な力を授かる。

 それは一生を左右するほどの重要な力であり、兄たちもまた、その恩恵にあずかっていた。長兄には「英雄の加護」が、次男には「戦士の加護」が与えられていた。

 その日、朝の光が農村を温かく照らす中、ロイは家族や親しい友人たちからの祝福を一つひとつ胸に刻み、運命の日を迎える準備を整えた。

 それから一週間後のことである。
 加護を確認するため隣町に行く、運命の日を迎えた。

 朝の光が窓から差し込み、ロイは目を覚ました。家の中はいつもと違うざわめきで満ちている。今日は彼にとって特別な日だ。その月に15歳の誕生日を迎えた者は神殿のある町にて加護とギフトの確認をし、それをもって成人となる。
 この日は、ロイが成人として新たな人生を歩む大切な第一歩の日でもあった。

 家族は朝食のテーブルを囲んでいた。ロイが部屋に入ると、母親が優しい笑顔で挨拶した。

「おはよう、ロイ。今日は大切な日ね。大丈夫?緊張していない?」

「うん。流石にちょっと緊張しているけど、兄たちほどじゃなくても、そこそこ良いのをもらっていたらなぁってあまり寝られなかった程度かな?」

 ロイの妹ははしゃいで彼の隣に座り期待していることを話す。

「ロイ兄、加護ってどんなのをもらったのかな!?すんごいのを期待してるよ!」

「あまり期待すんなって。平凡なのが当たり障りなく良いんだからさ」

 興味のなさそうに見えた弟は、ぼんやりとパンをかじりながらも時折ロイをチラリと見ていた。

 父親は何か考え事をしているように沈黙していたが、ロイが席に着くと、重々しく口を開いた。

「ロイ、お前の加護に期待しているぞ。男に生まれたんだ。平凡と言わず、どうだ俺のは凄いだろっ!とドヤ顔をするくらいしてもバチは当たらないからな」

 父親の言葉に、テーブルを叩くような音が響いた。普段は無口な父親も緊張しているのか、普段より言葉数が多かったが、それは父親がいつも使う、強い意志を示すジェスチャーだった。

 祝いの言葉を交わし、家族は一緒に朝食をとった。

 ロイは父親と共に父の上司である、子爵家が住まう隣町にある神殿を目指した。その月に誕生日を迎えた者たちが集うこの地方の中心地で、神聖な儀式が執り行われる場所である。村から馬車で揺られること半日、二人は神殿に到着した。

 その扉をくぐると、ロイの人生に新たな章が刻まれようとしていた。

 神殿内は厳かな空気に包まれていた。
 この日は5人の少年が儀式の為に神殿を訪れた。

 ロイは年老いた神官に導かれ、緊張しながらも授かった加護を知るための儀式に身をゆだねることになり、自分の名が呼ばれるのを待っていた。

「ロイ・ファン・クラベル」

 名前を呼ばれ、ロイはゆっくりと前に進み出た。神官はロイの手を取り、高らかに祈りを唱え始めた。光が彼の体を包み込むと、神殿の壁に映し出される文字が、彼の運命を告げた。

 そして、彼の運命を左右する瞬間が訪れた。【魔石操作】という、稀有な加護がロイに授けられたのだ。
 これは魔石の力を引き出し、操る能力。しかし、この加護は期待を裏切るものだった。魔石から引き出した魔力は使うと時間と共に消えてしまい、その扱いには細心の注意が必要だった。
 加えてそのギフトは【魔石抜き取り】。生者から魔石を抜き取ることはできず、死んだ魔物からしか魔石を抜き取ることが出来ない。
 戦闘においてはほとんど役立たずの能力である。
 体を切り裂かずに抜き取れるので、毛皮を得る場合、傷の少ない状態の良い皮を採れるメリットがある。

 また、魔石しか価値のないゴブリン等は、悪臭を放つので死体から魔石を抜き取るのは苦痛そのもの。そういった魔石のみ必要な場面でしか、活躍の場はないと言っても過言ではない。
 冒険者に同行する場合、ゴブリンの集落を討伐する時の荷物持ち兼魔石回収者位しか仕事にありつけないであろう外れ加護だ。

 儀式が終わり、ロイは領主の館に報告のため訪れ、婚約者であるミネアと顔を合わせる。

 ミネア・ヴァン・アステールは、14歳にしてその美しさと品格で知られる子爵家の令嬢であった。

 彼女の髪は夜空を思わせるほどの深い黒色で、繊細な波打ちが光に反射してきらめいていた。その瞳は、暖かな琥珀色で、常に知的な好奇心を湛えているかのように輝いていた。

 ミネアの肌は、まるで雪のように白く、少女の純粋さを象徴していた。彼女の立ち姿は、年齢不相応なほど大人の雰囲気を纏っており凛としている。どこか憂いを帯びた表情は、多くの詩人たちを魅了し、彼女の美を讃える詩を書かせるほどであった。

 彼女の服装は、常に最高級のシルクとレースで作られたドレスを身に纏い、その上品な装いは、彼女が子爵家の娘の一人であることを誰の目にも明らかにしていた。しかし、ミネアの真の魅力は、その外見だけではなく、彼女の内に秘めた強さと聡明さにあった。

 ミネアはロイの加護が明らかになったその場にて、彼女の未来に影響を及ぼすと判断し、婚約を破棄する決断を下した。

 彼女のその決断は、彼女の背景と価値観に基づいており、彼女はロイの加護とギフトを知るや否や、冷たい言葉を残して婚約を破棄した。

「こんな外れ加護じゃ、私の未来はないわ」

 彼女は言い放ち、婚約指輪をテーブルに叩きつけて去っていった。ロイは涙を抑えきれずに彼女の背中を見送った。

 重苦しい空気の中、村へと戻ることに。道中馬車を操る父はひとことも発しなかった。

 ロイたちが家に戻ると、馬車の音から帰宅が分かり母と妹が玄関で待っていた。異様な雰囲気を察した母が心配そうに尋ねる。

「ロイ、どうしたの?何かあったの?」

 不機嫌そうな父親の外套を母親が受け取り、リビングに入ると興味のなさそうな弟がソファーに座っていた。
 妹が二人に水を差し出すと、父親が立ち上がり重い口を開いた。

「残念だがロイ、お前の加護は家族にとっても、村にとっても恥だ。婚約も破棄された。魔石操作の外れ加護のせいで、どれだけの屈辱を受けたと思っている?」

 母は驚き、父に詰め寄った。

「どういうこと?ロイが何をしたっていうの?」

「黙れ!」

 父親はテーブルを叩き、怒りに震えた声で続けた。

「お前はもう家族の一員ではない。今すぐここを出て行け!」

 母と妹は絶句し、ロイに駆け寄り抱きしめて慰めた。

「そんな…」

 母が言葉を失い、妹も涙を浮かべた。

 そこから必死に母親が説得し、妹も泣きながら訴えた。

「そんなの酷いよ!ロイ兄を家にいさせて!私たち血を分けた家族でしょ!」

 二人の説得に渋々頷き、ロイに向かって言った。

「仕方がない。荷造りをする時間をやろう。成人となったのだから、2日後には家を出て新しい道を歩みなさい。」


 弟はニンマリしながらその様子を見ており一言『雑魚』と吐き捨てて自室に戻っていく。
 ロイは家族の中で孤立していることを痛感しながらも、妹と母の擁護する言葉に少しの希望を見出した。ロイは自分の部屋に戻り、新しい人生の始まりに向けて準備を始めた。

 こうして、ロイの物語の第二幕が幕を開ける。彼に与えられた「魔石操作」という加護、そしてそれが引き起こした家族や婚約者との関係の変化。不確かな未来の中で、ロイは気持ちを切り替え、新たな道を歩む決意を固め、これからの成長と冒険に不安を覚えつつも胸を膨らませていた。
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