外れギフト魔石抜き取りの奇跡！〜スライムからの黄金ルート！婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

序章

第13話 帰還祝

　夕暮れの町へと戻ったロイとソニアは、解体場にてゴブリンクイーンの死体を出した。

　解体場にいたスタッフは皆驚きの声を上げる。
　筋骨隆々で、ソニアより大きいのだ。
　その価値を認識したガレスは驚き、ロイにギルドマスターを呼びに走らせた。

　死体は魔物か獣に食われたのか少し傷んでいはいたが、それでも充分に価値はある。

　ガレスはギルドマスターの指示の元、ロイが単独でゴブリンクイーンを倒した証拠を提示した。

　死体には魔石が抜き取られた痕跡がなく、ロイが既に魔石を抜き取ったと報告があったのと、手には魔石が握られている。
　ガレスは慎重にナイフを刺し入れ、魔石が本来あるべき場所が空になっていることを示した。

　ギルドマスターも、ゴブリンクイーンは死後獣等に食われた形跡以外、外傷がないことからロイが魔物を倒す特別な能力を持つ者であると認めざるを得なかった。

「うむ。確かに外傷はなかったな。ロイ、お前さんを儂の権限で正式な冒険者とすることをここに認める。いくらシルバー級の魔物とはいえ、アイアン級からのスタートだからな」

　ロイは晴れてアイアンランクの冒険者と認定された。
　魔石やクイーンの死体を引き渡したお金の受け取りは明日として、この日はお開きとなった。

　そして馬車を返した後、皆で酒場に繰り出して解体場の仲間たちから祝福を受けた。

　解体場の職員たちは低い給料にもかかわらず、仲間が冒険者として新たなスタートラインに立つことを心から喜んだ。彼らは自分たちの仕事に誇りを持ち、時には命を懸けながらも【悪臭で死ぬかと思ったと談】、町の安全を守るために働いている。
　ロイの成功は、彼らにとっても希望の光であり、お祝いの宴は夜遅くまで続いて行くが、こんな一幕もあった。

「ロイ、お前は本当に冒険者になったんだな」

「ええ、信じられないけどね。でも、ここで学んだことが役に立ったよ」

「お前、ソニアちゃんと一緒に生活してんだろ？どこまで進んだんだ？」

　ソニアとの関係について尋ねる声が上がると、ロイは苦笑いを浮かべた。

「ソニアはただの同居人だよ。何もないけど？」

　周囲からは不満の声が漏れる。

「何やってんだ、ロイ。そんな清い関係だけでいいのか？お前も男だろ！」

「今の僕たちの間にはそういうことはないんだよ」

　しかし、酔っぱらいのデイが更に大声でロイに迫った。

「ロイ！お前まだ手を出していないのか？流石にキスをするか胸くらい触っただろうが！？」

　ソニアは顔を真っ赤にしており、言葉を詰まらせた。
　ロイは困惑しながらも、何もないと答えたがデイは続ける。

「モタモタしてっと他の奴に取られるぞ！」

　その時、ソニアが小さな声で言った。

「私はロイしか見ません！他の人となんて考えられません」

「そうだそうだ！ロイ、こんな良い子を泣かせたら俺等が許さんからな！」

「お前には勿体ないくらい出来た子だろ！お前気が付いてるか？ソニアちゃんがお前と暮らし始めてから身なりも良くなったろ！」

　周囲の仲間たちは、からかい半分に笑いながらもソニアを励ました。そして、解体場長のガレスが立ち上がり、場を収めた。

「お前らいい加減にしろ。ロイは良いがソニアちゃんが困っているだろ！でもなロイ、ソニアちゃんのことは大事にしろよ。それとデイの話は話半分に流しとけ」

　デイは皆からボコボコにされぐったりとしながらも、ガレスの言葉に耳を傾けた。
　ガレスはロイに向かって続ける。

「ロイ、これから冒険者をするなら、こんなことは日常茶飯事だ。いちいち真に受けていたら大変な目にあうぞ」

　ロイは頷き、ガレスの言葉に感謝の意を示し、ソニアも安心したように微笑んだ。

「ありがとうガレス。気をつけるよ」

　そして、仲間たちは再び笑顔を取り戻し、ロイとソニアの新たな冒険者としての旅立ちを祝いながら、夜中まで続いた宴を楽しんだ。

　謙虚なロイは仲間たちの喜びに感謝しつつも、自分が直面していた危険と、犠牲になった者たちのことを忘れていなかった。彼はアイアンランクの冒険者となったことを誇りに思いつつも、これからもっと多くの人々を守るために、自分の力を磨くことを誓った。そして、その決意は彼をさらなる高みへと導いていくことになるであろう。