外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow

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序章

第14話 換金とリラ

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 翌日解体場でクイーンの解体を行った後、ゴブリンの討伐手続きと魔石の換金に取り掛かった。ギルドの職員は冒険者でなくても、冒険者でなければできないことを受け付けてくれる。

 ロイはいつもの見下すような態度の受付嬢が、今日は驚いた顔をしていたので少し面白かった。
 それは、彼が今日までに見た数々の驚きの表情の中で、最も記憶に残るものだったかもしれない。

 ギルドの日常の中でも、非日常的な出来事がある。ロイのこの一日はまさにそんな日常と、非日常の狭間を行き交う一日だったのだ。

 この時はまだ解体場のスタッフが着る服を着ていたので、訝しげな目を向けるだけだった。
 また、冒険者登録する前の素材などは先に精算するように言われていた。

「えっと、ゴブリン12体の魔石と5体の討伐証明、ゴブリンクイーンの魔石と素材の換金をお願いします。これガレスさんからの素材引取証明です」

「わ、分かりました。少し待っていて・・・」

 後方に下がり、お金の用意をお願いしたようだ。

「お金はどうしますか?」

「現金でください」

「はい。ゴブリンの魔石は一つにつき500リュピス、討伐証明は1000リュピスですが、討伐証明部位の方が少ないようですが大丈夫ですか?」

「ええ。逃げながら戦っていて、翌日に拾ったから討伐証明部位が一部食われていたんで、数が合わないんです」

「分かりました。ゴブリンクイーンですが、魔石が10万リュピスで素材の方は14万リュピスになります。合計で25万1千リュピスになりますが、お支払いは金貨25枚と銀貨1枚で宜しいでしょうか?」


「ありがとうございます」

 ロイは引換証とお金を受け取ると、お辞儀をして去っていった。受付嬢は自分のところに来ないでよと呟くが、誰がクイーンを討伐したのか気になるも、底辺とはあまり関わりたくないので聞かなかった。
 時折ギルドマスターの判断で解体場に直接持ち込ませる分があり、そのお金を取りに来たのだとしか思わなかった。

 そんなリラは、いつものように受付のカウンターに立っていて、次の冒険者の応対に移った。彼女の前には、いつものように書類がいくつか置かれていた。先ほどロイが提出した書類は、またもや無秩序に置かれており、処理済みの方に置いていった。
 彼女はため息をつきながら、書類を整理し始めた。「この人はいつになったらちゃんとできるようになるのかしら…」彼女はぼやいた。
 先程はいつもと違う様子だったから文句を言いそびれたのだ。

 ロイの顔を思い浮かべると、リラの心は複雑な感情で満たされた。
 彼の顔は確かに好みだったが、事務仕事の能力は残念ながら期待できなかった。
 彼が解体場で働くようになり、姿を見せる時に臭いなと思っていたが、手を洗わずエプロンで拭う習慣はリラが手を洗いなさいよ!そもそもエプロンの目的は・・・と文句を言って改善されたが、それでもまだ臭いは残っていた。給料の低さもあり、彼を結婚相手の候補として考えることはできなかった。

「冒険者たちはみんな体目当て…」

 ため息を吐きロイの後ろ姿を見送った。

「誰かまともな人はいないのかしら…」

 リラは心の中でつぶやいた。

 ロイが去り、次応冒険者への対時にリラの手は震えた。いつもは取り巻きの冒険者たちに囲まれているが、今日は彼らも依頼を受けておりいなかった。依頼掲示のミスに気が付いた冒険者がリラに向かって怒鳴った。

「女がいなきゃ受けられないってどういうことだよ!聞いてないぞ!ソロでも受けられるところに貼ってあんだろ!他に良い依頼がないんだ!それに女が必要ならお前が俺様とパーティーを組めば良いだけだろ!ミスしたんだからそれくらいして当たり前だろ?ああん?違うか!こちとら遊びでやってんじゃねぇんだぞ!」

 その冒険者はカウンターをバンと叩いた。

 リラは怖くて泣きそうになり、言い訳を始めた。

「す、すみません、私が間違えて… 特殊条件の依頼を…」

 特殊条件有りとしての依頼ではなく、通常依頼の束の中にあり、中身をよく確認せずに貼り付けてしまった。
 今日の当番は自分だったので、己が確認を怠ったのだと理解はしたが、恐怖で引きつっていた。

 その時、解体場に戻り始めていたロイが引き返して来た。

「待ってください、彼女は何も悪くありません。私が間違えて通常依頼の書類に入れてしまったんです」

 ロイはその冒険者に向かって言った。彼はリラのミスを庇い、自分が責任を取ると言い張った。

「か弱い女の人が強面に怒鳴られているのはよくないですからね」

 ロイはリラに向かって冷静に言い、リラを守るように冒険者との間に入り、ひたすら謝り始めた。
 ロイの中で騎士たる者はいかなる時も、か弱き女性を守るものだとの父の教えに体が自然と動いたのだ。

「すみません、これは僕のミスです。やり直しますので、どうか許してください。」

 ロイが頭を深く下げ、土下座をしたのが見える。

 リラは他の職員に安全確保の為に引っ張られて後方に下がった。
 ロイにその場を押し付けてしまったとの罪悪感でリラの心の中は一杯だった。

 そしてふと見えたのは蹴られるロイ。流石に暴力を振るい始めたので、周りの冒険者が止めに入る。
 リラはその怖くて失禁するのをこらえるのが精一杯で、涙を流しながら申し訳ない気持ちも動けず、ただただ震えていた。

 リラは翌日、顔を腫らしたロイを見かけた。彼女は彼に近づきたかった。心の中で謝罪の言葉を繰り返していたが、声に出す勇気がなかった。

「ロイさん、昨日は本当に申し訳ありませんでした。貴方のせいではないのに、あのようなことになってしまい…」

 彼女は心の中で呟いた。

 しかし、リラはただ静かに彼を見つめることしかできなかった。彼がどんなに優しくても、彼女は自分が恨まれていると感じていた。彼女の心は罪悪感と後悔でいっぱいだった。

 しかし、恨まれて文句を言われるのではと恐れた。確か騎士の息子と聞いているので、戦闘系の加護を持たなくても、自分を組み伏せて殴るのは容易だろうと身構えてしまった。また、きのうの冒険者のあの顔が目に焼き付き、躊躇したのだ。

 ロイは何も言わずに会釈のみして過ぎ去り、ギルドの外へと向かっており、リラはその背中を見つめながら言葉を失った。彼女は彼に謝る機会を逃したことを後悔し、その日を境に、彼女はロイに対する態度を少しずつ変えていくことを決心した。
 リラはもう二度と、彼や他の誰かを不当に責めることはしないと誓ったのだった。
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