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ifの世界線のお話
13:話し合い(4)
しおりを挟む結局、2時間ほど外で話し込んでから帰ってきたウィンターソン公爵夫妻は仲良く手を繋いでいた。
ただ、アルフレッドが呆然とするシャロンの手を引いて歩いているという感じで、その様子は恋人というよりは親子である。
二人揃って鼻を赤くした彼らは、暖炉の前にしゃがみ込み、火の方に手を出して暖を取る。
「あー。なんというか…。親睦は深まったようだな…」
ヘンリーが何とも言えない視線を二人に向けると、アルフレッドは穏やかに微笑みかえした。
「離縁しようと思います」
「そうか。手続きはどうする?」
「また後日改めて。今は、その…まだ気持ちの整理できていないようなので…」
アルフレッドがシャロンの方に視線を向けると瞬きする事を忘れた彼女はその大きな金色の目を見開き、ぼーっと炎を見つめていた。
そんな彼女の姿に、サイモンは二人のこの決断をどう解釈して良いのか分からない。
シャロンは本当に納得しているのだろうか。
もしかすると、自分の存在が彼らに離縁という結論を出させたのではないか。
そんな事を考えてしまう。
「あの、何故そのような結論に…」
「…えーっと、方向性の違い?」
「音楽活動してる団体にありがちな理由を言わないでくださいよ」
どこぞのバンドの解散するときの理由みたいだ。
だがしかし、二人が同じ方向を向いていないと言う点ではあながち間違いではない。
その後も、納得できないサイモンは本当にそれで良いのかとアルフレッドに問い質したが、彼はこの結婚を下した王がもうすぐ不在となることや、分家筋の子を養子にもらうから後継問題は大丈夫だなどと説明し、結論を覆さなかった。
仕方なく、彼はシャロンにも問いかける。
「お嬢はそれで良いんですか?」
「…」
「お嬢?おーい」
シャロンはぼーっとしたまま返事をしない。
サイモンは小さくため息をつくと、自分の声が聞こえていない様子の彼女に近づき、顔を覗き込んだ。
「お嬢。聞いてます?」
「ふぇ!?」
シャロンは唐突に現れた彼の整った顔面に驚きよろけて尻餅をついた。
サイモンはそんな彼女に手を貸そうしたが、何故か差し出した手を払われる。
「…どうしました?」
「と、どどど、どうもしてない」
「いや、どうみてもおかしいでしょう」
明らかに挙動不審な動きをして、シャロンはアルフレッドの後ろに隠れる。
動きがネズミ並みに素早い。こんなに早く動けたことに驚きだ。
「えーっと…、お嬢?」
「な、ななな何でもない」
「何でもないって…」
何でもない態度ではない。
すると、アルフレッドはそんな挙動不審な彼女の様子にクスッと笑みをこぼした。
「サイモン君。シャロンは自覚したばかりだから、お手柔らかに頼むよ」
「はい?自覚?」
彼の言葉がわからないサイモンは眉間に皺をよせ、首を傾げた。
片思いを拗らせた彼は、彼女の矢印が自分に向くという発想がそもそもない。
その後、しばらくハディスとアルフレッドで話し合ったのち、正式な離縁については日を改めて行うことになった。
理由は簡単。シャロンの挙動がおかしいからだ。
まともに話し合いができそうにないので、必要な種類を揃えたのち、改めてアルフレッドがジルフォード家を訪れることになったらしい。
何が何だかわからないサイモン達は、とりあえず挙動不審なシャロンを車に押し込み、城を後にした。
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