視える私と視えない君と

赤羽こうじ

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ホテルにて

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 自身を見つめる幸太に対して、叶も身体を起こし立ち上がると幸太の隣へと静かに腰を下ろした。
 隣に座った叶が笑みを浮かべて幸太の肩へ身体を預けてもたれかかる。

「でも君も慣れない長旅で疲れてるかな?」

「いや、俺は大丈夫だって。叶さんとこうしてられるから疲れも何処か行ったし」

「そっか、じゃあ少しぐらいもたれてもいいよね」

 そう言って肩に頭を乗せる叶を幸太が優しく撫でていた。そのまま叶の顔を覗き込み、二人の視線が重なり幸太が顔を近付けた時、突然叶のスマホが鳴り響く。

 甘い二人の時間を切り裂く着信に叶が眉を釣り上げてスマホに目をやると画面には『着信  志穂』の文字が表示されていた。

 叶は苛立つ心を落ち着ける様に大きく一息つくと諦めたように電話に出た。

「はい」

「あれ?鬼龍ちゃん怒ってる?お邪魔だった?」

「……怒ってません。ちょっと疲れてぐったりしてただけです」

「あ、そうなんだ。集合前にちょっと打ち合わせしとこうかと思ってさ。そっち行ってもいい?」

「……わかりました」

 電話を切り振り返ると、叶は眉根を寄せて軽く頭を振った。

「志穂さん今からこっち来るって。ごめんね」

「いや仕事だし仕方ないよ。それにここ数日の事考えたら叶さんが目の前にいるってだけで安心出来るから」

 そう言って苦笑いを浮かべる幸太だったが、実際は二人だけのいい雰囲気を邪魔されもどかしい想いを抱えていた。
 そんな幸太の心情を理解していたのか、叶は近付くとそっと幸太を抱き締める。

 やがて暫くすると部屋のドアをやや軽快にノックする音が響き、叶がドアを開けると志穂がにこやかに顔を覗かせた。

「ごめんね、お邪魔しちゃって」

「あ、いえ、全然大丈夫ですよ」

 咄嗟にそう言って笑みを見せる幸太だったが、ややうんざりした様に叶はため息をついた。

「志穂さん邪魔してる認識はあるんですね。それで打ち合わせってなんですか?」

 叶が眉根を寄せて冷たく言い放つと、志穂は変わらない笑みを向けてソファに腰掛ける。

「そんな邪険にしないでよ、傷付いたらどうするの?」

「それで志穂さんが傷付くなら寧ろ見てみたいですよ」

 そう言いながら叶はテーブルにインスタントのコーヒーを三つ置くと志穂の対面に腰を下ろした。

「幸太君も良かったら飲んでね」

「あ、ありがとう、ごめん疲れてたのに」

「いいよ、ついでだから」

 幸太ににこやかな笑みを向ける叶を見て、志穂がにやにやとした笑みを浮かべた。

「彼氏には優しいんだ」

「当然じゃないですか。さぁ早く始めましょうか」

 少し棘のある叶の言葉を聞き志穂は笑みを浮かべながら頷き、鞄からノートパソコンを取り出しテーブルの上に置くと、慣れた手つきで操作し画面を指さした。

「まぁ見て」

 そう言われ叶が画面を注視する。遠巻きに見ていた幸太もそっと叶の横に腰を下ろした。

 画面には一人の女性が映し出され、女性はカメラ片手に暗い草むらを探索して歩いて行く。
 その画面を見ていた叶が思わず呟いた。

「……宇津崎紗奈」

「私は出会ってないから分からなかったけどやっぱり言ってた子なんだ」

 叶は無言のまま頷き画面を見つめ続けていた。画面の中では宇津崎紗奈がカメラを片手に一人、廃病院に向かって歩いて行く。
 やがて画面は廃病院内へと変わり宇津崎紗奈が一人言のようにレポートしながら廃病院内を探索していた。
 その後画面は草の生い茂る中庭へと移り、突然「きゃっ」と言う叫び声と共に画面は激しく揺れ、固く軽い衝撃音を記録しながら最後は暗い地面を映し出していた。

 パソコンの画面を前のめりになりながら見ていた叶が上体を起こし軽いため息をつく。

「最後は恐らく枯井戸に落ちた瞬間を記録した瞬間でしょうね。ところで志穂さん、この画像どこで手に入れたんですか?」

 叶が冷たい目をして問い掛けると志穂はニヤリと口角を上げた。

「そんな事聞かなくても察しはついてるんでしょ?廃病院から出て来た貴女からカメラを受け取った時にちょっとね、SDカード抜かせてもらったのよ」

「やっぱり……相変わらず手癖悪いですね」

「仕方ないじゃない。どうせ警察が証拠品だなんだって言って持っていっちゃうんだから、その前に記録として残しとかなきゃね」

 そう言って笑みを浮かべる志穂を見て、叶も呆れたように笑っていた。
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