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梅雨の長い雨がようやく上がり、夏の光がアスファルトを白く照らし出す、そんな七月の初めのことだった。
俺たちの生活は、あの週末を境に新しいリズムを刻み始めていた。
俺は在宅の仕事をこなしながらヒナとの時間を確保するという、綱渡りのような生活にも少しずつ慣れてきた。ヒナも俺が集中している時間を何となく察してくれるようになり、一人で絵本を読んだりお絵描きをしたりして静かに過ごしてくれることが増えた。
それは、穏やかで満ち足りた時間だった。
このささやかな日常が、ずっと続けばいい。俺は心の底からそう願っていた。
だが、平穏というものはえてして脆いものらしい。
その日の夕方、異変は静かに訪れた。
いつもなら「パパ、おなかすいた!」とキッチンで作業する俺の足元にまとわりついてくるヒナが、やけに静かなのだ。リビングのソファで、人形を抱きしめたままぐったりとしている。
「ヒナ、どうした? 具合でも悪いのか?」
俺が声をかけると、ヒナは力なく顔を上げた。その頬が妙に赤い。
俺ははっとして、その小さな額に手を当てた。
燃えるように熱い。
血の気がさっと引いていくのを感じた。熱だ。ヒナが熱を出している。
その瞬間から、俺の世界はパニックという名のけたたましいサイレンに支配された。
どうすればいい。子供が熱を出した時、親は何をすべきなんだ。
薬は? うちには俺がたまに飲む頭痛薬しかない。子供用の薬なんてあるはずもない。
体温計は? 俺が使っている古い水銀の体温計では、子供の熱を正確に測ることなどできそうにない。
そして、何よりも病院。
そうだ、病院に連れて行かなければ。
だが、その思考はすぐに冷たい壁に突き当たった。
保険証。
この子には健康保険証がない。この社会において、彼女の存在を証明するものは何一つないのだ。
俺は完全に途方に暮れた。できることと言えば、濡らしたタオルで熱い体を拭いてやることくらい。だが、ヒナは冷たいタオルにびくりと体を震わせ、「さむい」とか細い声で呟いた。
違うのか。冷やせばいいというものではないのか。
もう、何も、分からなかった。
ヒナの、ぜえぜえと苦しそうな呼吸を聞いていると、心臓を直接握りつぶされるような痛みが走った。
代われるものなら代わってやりたい。俺がどれだけ苦しんでもいいから、この子を楽にしてやってくれ。俺は神にさえ祈りたい気持ちだった。
このままでは駄目だ。
俺は誰かに助けを求めなければ。
俺の脳裏に二人の女性の顔が浮かんだ。
お隣の老婦人。そして桜木さん。
今は夜の九時を回っている。こんな時間に隣の家のチャイムを鳴らすのは非常識だ。
だが、俺にはもうそんなことを言っている余裕はなかった。
俺はヒナをソファに残し、転がるように玄関へ向かった。隣の部屋のドアを、震える指でノックする。
数回のコールの後、ドアが静かに開いた。
「はい、どなた……あら、相生さん。どうかなさいました?」
老婦人は、俺の鬼気迫るような形相を見てすぐに事態を察してくれたようだった。
「ヒナが、熱を……。どうすればいいのか、何も分からなくて……」
俺の声は情けないほど震えていた。
老婦人は驚いた顔をしたが、すぐにその表情を頼もしいものへと変えた。
「まあ、大変。すぐにお邪魔しますわ」
彼女は自分の部屋から手際よく、いくつかのものを持ってきた。
子供用の電子体温計、額に貼る冷却ジェルシート、そして小さな魔法瓶。
「まずは熱を測りましょう。それから、水分補給が一番大事よ」
彼女の落ち着いた声と無駄のない動きは、パニックに陥っていた俺の心を少しずつ鎮めてくれた。
体温計が示した数字は39度2分。
その見たこともない数字に、俺は再び血の気が引いた。だが、老婦人は慌てなかった。
「子供はね、よくこれくらいの熱を出すものよ。大丈夫、大丈夫」
彼女はそう言いながら、ヒナの額に優しく冷却シートを貼ってくれた。ヒナは気持ちがいいのか、少しだけ苦しそうな表情を和らげた。
老婦人は魔法瓶から温かい麦茶を注ぎ、ヒナに少しずつ飲ませてくれた。その手慣れた様子を見ていると涙が出そうになった。経験というものが、これほど頼もしく尊いものだとは知らなかった。
その時、ポケットのスマートフォンが震えた。
桜木さんからだった。『その後、ヒナちゃん、お元気ですか?』という何気ないメッセージ。
俺は一瞬ためらった。だが、もう一人で抱え込むのはやめたんだ。
俺は隣の老婦人に助けられているという現状を、正直に彼女に伝えた。
すると、数秒もしないうちに彼女から電話がかかってきた。
「相生さん、大丈夫ですか!? ヒナちゃんは!?」
電話の向こうの桜木さんの声は真剣だった。俺は状況を説明した。
すると彼女は、まるで医者か看護師のように的確なアドバイスを次々と俺に与えてくれた。
「唇が乾いていないか見てあげてください。おしっこの回数は減っていませんか」
「もしけいれんを起こすようなことがあれば、その時はためらわずに救急車を呼ぶんですよ。保険証がなくたって、命が一番大事なんですからね」
彼女の力強い言葉に、俺ははっとさせられた。
そうだ。俺は何をためらっていたんだろう。
ヒナの命以上に大事なものなんて、ありはしないじゃないか。
お隣の老婦人の温かい看病。電話の向こうの桜木さんの心強いサポート。
俺は一人じゃなかった。
俺が勇気を出して築いたこのささやかな繋がりが、今、ヒナの命を支えてくれている。
その夜、俺は老婦人と交代でヒナのそばに付き添った。
夜中、何度かヒナはうなされて目を覚ました。そのたびに俺は彼女の小さな手を握り、「大丈夫だ」と声をかけ続けた。それは、まるで自分自身に言い聞かせているようでもあった。
夜が白み始める頃、ヒナの呼吸が少しずつ穏やかになっていくのが分かった。
額に触れると、あれほど燃えるようだった熱が少し引いている。
俺は心からほっとした。
疲れ果てた老婦人はソファでうたた寝をしていた。俺はその寝顔に静かに頭を下げる。
そして窓の外に広がる朝焼けの空を見上げた。
じわ、と視界が滲んだ。
それは安堵の涙であり、そして感謝の涙だった。
俺の孤独な城は、もうどこにもない。
城壁は崩れ落ち、そこには温かい光を注いでくれるたくさんの窓ができていた。
俺はこの日のことを、一生忘れないだろう。
俺たちの生活は、あの週末を境に新しいリズムを刻み始めていた。
俺は在宅の仕事をこなしながらヒナとの時間を確保するという、綱渡りのような生活にも少しずつ慣れてきた。ヒナも俺が集中している時間を何となく察してくれるようになり、一人で絵本を読んだりお絵描きをしたりして静かに過ごしてくれることが増えた。
それは、穏やかで満ち足りた時間だった。
このささやかな日常が、ずっと続けばいい。俺は心の底からそう願っていた。
だが、平穏というものはえてして脆いものらしい。
その日の夕方、異変は静かに訪れた。
いつもなら「パパ、おなかすいた!」とキッチンで作業する俺の足元にまとわりついてくるヒナが、やけに静かなのだ。リビングのソファで、人形を抱きしめたままぐったりとしている。
「ヒナ、どうした? 具合でも悪いのか?」
俺が声をかけると、ヒナは力なく顔を上げた。その頬が妙に赤い。
俺ははっとして、その小さな額に手を当てた。
燃えるように熱い。
血の気がさっと引いていくのを感じた。熱だ。ヒナが熱を出している。
その瞬間から、俺の世界はパニックという名のけたたましいサイレンに支配された。
どうすればいい。子供が熱を出した時、親は何をすべきなんだ。
薬は? うちには俺がたまに飲む頭痛薬しかない。子供用の薬なんてあるはずもない。
体温計は? 俺が使っている古い水銀の体温計では、子供の熱を正確に測ることなどできそうにない。
そして、何よりも病院。
そうだ、病院に連れて行かなければ。
だが、その思考はすぐに冷たい壁に突き当たった。
保険証。
この子には健康保険証がない。この社会において、彼女の存在を証明するものは何一つないのだ。
俺は完全に途方に暮れた。できることと言えば、濡らしたタオルで熱い体を拭いてやることくらい。だが、ヒナは冷たいタオルにびくりと体を震わせ、「さむい」とか細い声で呟いた。
違うのか。冷やせばいいというものではないのか。
もう、何も、分からなかった。
ヒナの、ぜえぜえと苦しそうな呼吸を聞いていると、心臓を直接握りつぶされるような痛みが走った。
代われるものなら代わってやりたい。俺がどれだけ苦しんでもいいから、この子を楽にしてやってくれ。俺は神にさえ祈りたい気持ちだった。
このままでは駄目だ。
俺は誰かに助けを求めなければ。
俺の脳裏に二人の女性の顔が浮かんだ。
お隣の老婦人。そして桜木さん。
今は夜の九時を回っている。こんな時間に隣の家のチャイムを鳴らすのは非常識だ。
だが、俺にはもうそんなことを言っている余裕はなかった。
俺はヒナをソファに残し、転がるように玄関へ向かった。隣の部屋のドアを、震える指でノックする。
数回のコールの後、ドアが静かに開いた。
「はい、どなた……あら、相生さん。どうかなさいました?」
老婦人は、俺の鬼気迫るような形相を見てすぐに事態を察してくれたようだった。
「ヒナが、熱を……。どうすればいいのか、何も分からなくて……」
俺の声は情けないほど震えていた。
老婦人は驚いた顔をしたが、すぐにその表情を頼もしいものへと変えた。
「まあ、大変。すぐにお邪魔しますわ」
彼女は自分の部屋から手際よく、いくつかのものを持ってきた。
子供用の電子体温計、額に貼る冷却ジェルシート、そして小さな魔法瓶。
「まずは熱を測りましょう。それから、水分補給が一番大事よ」
彼女の落ち着いた声と無駄のない動きは、パニックに陥っていた俺の心を少しずつ鎮めてくれた。
体温計が示した数字は39度2分。
その見たこともない数字に、俺は再び血の気が引いた。だが、老婦人は慌てなかった。
「子供はね、よくこれくらいの熱を出すものよ。大丈夫、大丈夫」
彼女はそう言いながら、ヒナの額に優しく冷却シートを貼ってくれた。ヒナは気持ちがいいのか、少しだけ苦しそうな表情を和らげた。
老婦人は魔法瓶から温かい麦茶を注ぎ、ヒナに少しずつ飲ませてくれた。その手慣れた様子を見ていると涙が出そうになった。経験というものが、これほど頼もしく尊いものだとは知らなかった。
その時、ポケットのスマートフォンが震えた。
桜木さんからだった。『その後、ヒナちゃん、お元気ですか?』という何気ないメッセージ。
俺は一瞬ためらった。だが、もう一人で抱え込むのはやめたんだ。
俺は隣の老婦人に助けられているという現状を、正直に彼女に伝えた。
すると、数秒もしないうちに彼女から電話がかかってきた。
「相生さん、大丈夫ですか!? ヒナちゃんは!?」
電話の向こうの桜木さんの声は真剣だった。俺は状況を説明した。
すると彼女は、まるで医者か看護師のように的確なアドバイスを次々と俺に与えてくれた。
「唇が乾いていないか見てあげてください。おしっこの回数は減っていませんか」
「もしけいれんを起こすようなことがあれば、その時はためらわずに救急車を呼ぶんですよ。保険証がなくたって、命が一番大事なんですからね」
彼女の力強い言葉に、俺ははっとさせられた。
そうだ。俺は何をためらっていたんだろう。
ヒナの命以上に大事なものなんて、ありはしないじゃないか。
お隣の老婦人の温かい看病。電話の向こうの桜木さんの心強いサポート。
俺は一人じゃなかった。
俺が勇気を出して築いたこのささやかな繋がりが、今、ヒナの命を支えてくれている。
その夜、俺は老婦人と交代でヒナのそばに付き添った。
夜中、何度かヒナはうなされて目を覚ました。そのたびに俺は彼女の小さな手を握り、「大丈夫だ」と声をかけ続けた。それは、まるで自分自身に言い聞かせているようでもあった。
夜が白み始める頃、ヒナの呼吸が少しずつ穏やかになっていくのが分かった。
額に触れると、あれほど燃えるようだった熱が少し引いている。
俺は心からほっとした。
疲れ果てた老婦人はソファでうたた寝をしていた。俺はその寝顔に静かに頭を下げる。
そして窓の外に広がる朝焼けの空を見上げた。
じわ、と視界が滲んだ。
それは安堵の涙であり、そして感謝の涙だった。
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