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グリフォンが仲間になってから、私の森の生活はもっと豊かになりました。
特に、空からの眺めは本当に素晴らしいものです。
「わあ、すごいわ。森全体がこんなに綺麗だったのね」
私はフィリアの背中に、そっと乗せてもらっています。
風を切りながら空を飛ぶのは、生まれて初めての経験でした。
眼下には、私が浄化した森が緑の絨毯のように広がります。
きらきらと輝く泉があり、動物たちが草原を駆け回っていました。
その様子が、はっきりと上から見えます。
「主様、しっかりと掴まっていてくださいね」
「ええ、大丈夫よフィリア。本当に最高の気分だわ」
フィリアの背中はとても広くて、ふかふかの羽毛で覆われています。
ですから、少しも怖いとは感じません。
隣では、旦那さんのグレンがルーンを背中に乗せて飛んでいました。
ルーンも初めての空の旅に、とても興奮している様子です。
「わふ、わふん」と、嬉しそうに何度も鳴いています。
私たちは、しばらく空の散歩を楽しみました。
森の隅々まで見て回り、まだ浄化できていない場所がないか確認します。
上空から森を見ることで、全体の様子がよく分かりました。
「あそこ、少しだけ黒い靄がかかっているわ」
私が指さした場所は、森の西の端にある岩場です。
まだ、邪悪な呪いの力が少しだけ残っているようでした。
「承知いたしました主様。すぐに、参りましょう」
グレンとフィリアは、大きな翼を翻しました。
そして、あっという間にその岩場へと降下していきます。
地上に降り立った私は、早速スキルを発動させました。
「【清浄】」
私の手から放たれた光が、岩場全体を優しく包み込みます。
残っていた最後の黒い靄は、光に触れて綺麗に消え去りました。
これで、この森の全ての場所が完全に浄化されたことになります。
「よかったわ。これで、みんなが安心して暮らせるわね」
私が微笑むと、ルーンも嬉しそうに私の足にすり寄ってきます。
浄化が終わった岩場には、暖かい太陽の光が降り注ぎました。
すると岩の隙間から、可愛らしい高山植物が次々と顔を出し始めます。
色とりどりの花が咲き乱れ、寂しかった岩場が美しいお花畑へと変わりました。
「まあ、綺麗……」
私がその光景に見とれていると、花の蜜を求めてたくさんの蝶々が集まります。
その羽は、まるで宝石のような輝きを持っていました。
あまりに幻想的な美しさに、私はすっかり心を奪われてしまいます。
家に帰ると、ノームたちが新しい家の建設を始めてくれていました。
場所は、今住んでいる大樹のすぐ隣です。
日当たりが良くて泉にも近く、一番良い場所を選んでくれたようでした。
「主殿、お帰りなさいませ」
「ちょうど今、基礎工事を始めたところですじゃ」
ノームたちは、何十人も集まっててきぱきと働いています。
土を丁寧に固めて、石を積み上げて頑丈な土台を作っていました。
その仕事ぶりは、いつ見ても本当に見事なものです。
「わあ、もうこんなに進んでいるのですね。本当に、ありがとうございます」
「なに、これくらいお安い御用です。主殿の家を建てるのは、我らにとっても誇りなのですよ」
代表のノームが、嬉しそうに笑ってくれました。
家の建設は、森の住人たちにとっての一大プロジェクトになっているようです。
土の精霊であるノームたちが、土台と壁を作ってくれます。
森の木々は、家を建てるのに最適な木材を自ら差し出してくれました。
動物たちは、その木材を運ぶのを手伝っています。
グリフォンのグレンとフィリアは、その大きな体で重い柱を軽々と運んでいました。
水の精霊は、作業で汚れた体を清めるため綺麗な水を供給してくれます。
風の精霊シルフたちは、心地よい風を送ってみんなの汗を乾かしていました。
火の精霊サラマンダーたちは、暖炉のレンガを一つ一つ丁寧に焼き上げています。
みんなが、私のために一生懸命になってくれていました。
その光景を見ているだけで、私の胸は温かい気持ちでいっぱいになります。
「私も、何か手伝いたいです」
私がそう言うと、ノームたちは顔を見合わせ少しだけ困った顔をしました。
「主殿は、そこに座っていてくだされば、それが一番の励みになりますでの」
どうやら、私に力仕事をさせるつもりはないようです。
それならと、私は別のことを思いつきました。
「でしたら、みなさんのために美味しいお昼ご飯を作りますね」
私は、すぐに畑へと向かいました。
そこには、水の精霊の祝福を受けた野菜たちが元気に育っています。
みずみずしいトマトに、つやつやしたナスが実っていました。
大きくて立派なカボチャも、ごろごろと転がっています。
私は、たくさんの野菜を収穫しました。
そして、家のキッチンで料理を始めます。
今日のメニューは、夏野菜をたっぷり使ったカレーのような煮込み料理です。
スパイスは、森で採れた香りの良い植物を使いました。
大きな鍋で野菜をコトコト煮込むと、食欲をそそる良い香りが辺りに立ち込めます。
「おお、なんだかすごく良い匂いがするぞ」
「主殿が、我らのために料理を作ってくださっているらしい」
ノームたちの仕事の効率が、さらに上がったような気がします。
料理が完成する頃には、家の壁がもう半分くらい出来上がっていました。
私は、大きなお皿に出来立ての料理をよそっていきます。
パンは、木の実をすり潰した粉をサラマンダーの炎で焼いた特製のパンです。
「みなさーん、お昼ご飯ができましたよ」
私が声をかけると、働いていたみんながわーっと歓声を上げて集まってきました。
ノームも、動物たちもみんな一緒に輪になって地面に座ります。
私もその輪に加わり、みんなで一緒にお昼ご飯を食べました。
「うまい、こんなに美味いものは生まれて初めて食ったわい」
「主殿の料理は、まさに世界一じゃ」
ノームたちが、大絶賛してくれました。
動物たちも、夢中になって料理を食べています。
ルーンも、尻尾をぶんぶんと振って美味しそうに食べていました。
みんなが、美味しそうにご飯を食べている顔を見るのは本当に幸せです。
「ふふ、おかわりはたくさんありますからね」
その日の午後は、みんなで休憩を取りました。
温泉に入って汗を流し、木陰でお昼寝をします。
私も、ルーンや動物たちに囲まれてうとうとと微睡みました。
こんなに穏やかで、満たされた時間は生まれて初めてです。
王都にいた頃の生活が、まるで嘘のように感じられます。
あの頃は、いつも誰かの顔色を窺って息を潜めるように生きていました。
自分の価値を、スキルの優劣だけで決めつけられていつも惨めな気持ちでした。
でも、今は違います。
ここには、私をありのままに受け入れてくれる優しい仲間たちがいました。
役立たずのスキルしか持たない私を、『森の主』と呼んで慕ってくれます。
「本当に、ここに来てよかったわ」
私は、腕の中で眠るルーンの頭をそっと撫でながら呟きました。
その日の夕方、家の建設が一段落した頃でした。
森の偵察をしていたグレンが、少しだけ険しい顔で私の元へ舞い降りてきます。
「主様、ご報告いたします。森の南の入り口に、人間の集団が近づいております」
「人間、ですって」
また、アルフォンス殿下たちが来たのでしょうか。
私は、少しだけ身構えてしまいました。
「いえ、前回のような物々しい雰囲気ではございません。鎧をまとった騎士は少なく、むしろ文官のような者たちが多いようです」
「文官、ですか」
「はい。馬車も数台確認できます。旗印から察するに、アステリア王国の公式な使節団かと思われます」
王国の、使節団。
一体、何のためにこんな森の奥まで来たのでしょう。
私の胸に、嫌な予感がよぎりました。
「いかがいたしますか主様。追い返しますか」
グレンの問いに、私は少しだけ考え込みました。
前回のアルフォンス殿下たちのように、森に危害を加えるつもりなら容赦なく追い返します。
でも、今回は様子が違うようでした。
「いいえ、まずは彼らの目的を探ってみましょう」
「私に気づかれないように、遠くから様子を窺うことはできますか」
「お安い御用です。我が目と耳は、千里先まで見通せます故」
グレンは、丁寧に頭を下げると再び音もなく空へと舞い上がりました。
私は、建設中の新しい家の窓から南の空をじっと見つめます。
どうか、この穏やかな生活を邪魔しに来たのではありませんように。
私は、ただそう祈るばかりでした。
しばらくして、グレンが戻ってきました。
「主様、やはり彼らの目的は主様との接触にあるようです」
「私と、ですか」
「はい。使節団を率いているのは、バーンズ子爵と名乗る老齢の貴族です。彼は、森の入り口で馬車を降りると森に向かって深々と頭を下げました」
頭を、下げたのですか。
あの傲慢なアルフォンス殿下とは、ずいぶん違う態度のようです。
「そして、こう叫んでおりました。『この森におわす、偉大なる浄化の力を持つ御方。どうか、我らの非礼をお許しいただきお姿をお見せください』と」
浄化の力を持つ、御方。
それは、間違いなく私のことでしょう。
どうやら、王国の人間たちも私の力の本当の価値に気づいたらしいです。
「さらに、こうも続けておりました。『我らは、貴方様を害しに来たのではございません。ただ、疫病に苦しむアステリアの民をお救いいただきたく嘆願に参ったのです』と」
やはり、王都の疫病は相当深刻な事態になっているようです。
聖女ミレイ様の力でも、どうにもならないのでしょう。
だから、私を追放したにも関わらず今更助けを求めに来たのです。
なんて、身勝手な人たちなのでしょう。
私は、フンと鼻を鳴らしたくなりました。
でも、グレンの報告はまだ続きます。
「そのバーンズ子爵という男、かつてクライネルト侯爵家に仕えていたことがあると申しております」
「えっ」
私は、思わず声を上げました。
クライネルト侯爵家は、私の実家です。
バーンズ子爵。
その名前に、聞き覚えがありました。
私がまだ、幼かった頃のことです。
父の補佐をしていた、とても温厚で優しい白髪の紳士でした。
よく、私にお菓子をくれたり面白い話を聞かせてくれたりしたのを覚えています。
彼が、なぜ使節団のリーダーとしてここにいるのでしょう。
私の心は、複雑な気持ちで揺れ動いていました。
特に、空からの眺めは本当に素晴らしいものです。
「わあ、すごいわ。森全体がこんなに綺麗だったのね」
私はフィリアの背中に、そっと乗せてもらっています。
風を切りながら空を飛ぶのは、生まれて初めての経験でした。
眼下には、私が浄化した森が緑の絨毯のように広がります。
きらきらと輝く泉があり、動物たちが草原を駆け回っていました。
その様子が、はっきりと上から見えます。
「主様、しっかりと掴まっていてくださいね」
「ええ、大丈夫よフィリア。本当に最高の気分だわ」
フィリアの背中はとても広くて、ふかふかの羽毛で覆われています。
ですから、少しも怖いとは感じません。
隣では、旦那さんのグレンがルーンを背中に乗せて飛んでいました。
ルーンも初めての空の旅に、とても興奮している様子です。
「わふ、わふん」と、嬉しそうに何度も鳴いています。
私たちは、しばらく空の散歩を楽しみました。
森の隅々まで見て回り、まだ浄化できていない場所がないか確認します。
上空から森を見ることで、全体の様子がよく分かりました。
「あそこ、少しだけ黒い靄がかかっているわ」
私が指さした場所は、森の西の端にある岩場です。
まだ、邪悪な呪いの力が少しだけ残っているようでした。
「承知いたしました主様。すぐに、参りましょう」
グレンとフィリアは、大きな翼を翻しました。
そして、あっという間にその岩場へと降下していきます。
地上に降り立った私は、早速スキルを発動させました。
「【清浄】」
私の手から放たれた光が、岩場全体を優しく包み込みます。
残っていた最後の黒い靄は、光に触れて綺麗に消え去りました。
これで、この森の全ての場所が完全に浄化されたことになります。
「よかったわ。これで、みんなが安心して暮らせるわね」
私が微笑むと、ルーンも嬉しそうに私の足にすり寄ってきます。
浄化が終わった岩場には、暖かい太陽の光が降り注ぎました。
すると岩の隙間から、可愛らしい高山植物が次々と顔を出し始めます。
色とりどりの花が咲き乱れ、寂しかった岩場が美しいお花畑へと変わりました。
「まあ、綺麗……」
私がその光景に見とれていると、花の蜜を求めてたくさんの蝶々が集まります。
その羽は、まるで宝石のような輝きを持っていました。
あまりに幻想的な美しさに、私はすっかり心を奪われてしまいます。
家に帰ると、ノームたちが新しい家の建設を始めてくれていました。
場所は、今住んでいる大樹のすぐ隣です。
日当たりが良くて泉にも近く、一番良い場所を選んでくれたようでした。
「主殿、お帰りなさいませ」
「ちょうど今、基礎工事を始めたところですじゃ」
ノームたちは、何十人も集まっててきぱきと働いています。
土を丁寧に固めて、石を積み上げて頑丈な土台を作っていました。
その仕事ぶりは、いつ見ても本当に見事なものです。
「わあ、もうこんなに進んでいるのですね。本当に、ありがとうございます」
「なに、これくらいお安い御用です。主殿の家を建てるのは、我らにとっても誇りなのですよ」
代表のノームが、嬉しそうに笑ってくれました。
家の建設は、森の住人たちにとっての一大プロジェクトになっているようです。
土の精霊であるノームたちが、土台と壁を作ってくれます。
森の木々は、家を建てるのに最適な木材を自ら差し出してくれました。
動物たちは、その木材を運ぶのを手伝っています。
グリフォンのグレンとフィリアは、その大きな体で重い柱を軽々と運んでいました。
水の精霊は、作業で汚れた体を清めるため綺麗な水を供給してくれます。
風の精霊シルフたちは、心地よい風を送ってみんなの汗を乾かしていました。
火の精霊サラマンダーたちは、暖炉のレンガを一つ一つ丁寧に焼き上げています。
みんなが、私のために一生懸命になってくれていました。
その光景を見ているだけで、私の胸は温かい気持ちでいっぱいになります。
「私も、何か手伝いたいです」
私がそう言うと、ノームたちは顔を見合わせ少しだけ困った顔をしました。
「主殿は、そこに座っていてくだされば、それが一番の励みになりますでの」
どうやら、私に力仕事をさせるつもりはないようです。
それならと、私は別のことを思いつきました。
「でしたら、みなさんのために美味しいお昼ご飯を作りますね」
私は、すぐに畑へと向かいました。
そこには、水の精霊の祝福を受けた野菜たちが元気に育っています。
みずみずしいトマトに、つやつやしたナスが実っていました。
大きくて立派なカボチャも、ごろごろと転がっています。
私は、たくさんの野菜を収穫しました。
そして、家のキッチンで料理を始めます。
今日のメニューは、夏野菜をたっぷり使ったカレーのような煮込み料理です。
スパイスは、森で採れた香りの良い植物を使いました。
大きな鍋で野菜をコトコト煮込むと、食欲をそそる良い香りが辺りに立ち込めます。
「おお、なんだかすごく良い匂いがするぞ」
「主殿が、我らのために料理を作ってくださっているらしい」
ノームたちの仕事の効率が、さらに上がったような気がします。
料理が完成する頃には、家の壁がもう半分くらい出来上がっていました。
私は、大きなお皿に出来立ての料理をよそっていきます。
パンは、木の実をすり潰した粉をサラマンダーの炎で焼いた特製のパンです。
「みなさーん、お昼ご飯ができましたよ」
私が声をかけると、働いていたみんながわーっと歓声を上げて集まってきました。
ノームも、動物たちもみんな一緒に輪になって地面に座ります。
私もその輪に加わり、みんなで一緒にお昼ご飯を食べました。
「うまい、こんなに美味いものは生まれて初めて食ったわい」
「主殿の料理は、まさに世界一じゃ」
ノームたちが、大絶賛してくれました。
動物たちも、夢中になって料理を食べています。
ルーンも、尻尾をぶんぶんと振って美味しそうに食べていました。
みんなが、美味しそうにご飯を食べている顔を見るのは本当に幸せです。
「ふふ、おかわりはたくさんありますからね」
その日の午後は、みんなで休憩を取りました。
温泉に入って汗を流し、木陰でお昼寝をします。
私も、ルーンや動物たちに囲まれてうとうとと微睡みました。
こんなに穏やかで、満たされた時間は生まれて初めてです。
王都にいた頃の生活が、まるで嘘のように感じられます。
あの頃は、いつも誰かの顔色を窺って息を潜めるように生きていました。
自分の価値を、スキルの優劣だけで決めつけられていつも惨めな気持ちでした。
でも、今は違います。
ここには、私をありのままに受け入れてくれる優しい仲間たちがいました。
役立たずのスキルしか持たない私を、『森の主』と呼んで慕ってくれます。
「本当に、ここに来てよかったわ」
私は、腕の中で眠るルーンの頭をそっと撫でながら呟きました。
その日の夕方、家の建設が一段落した頃でした。
森の偵察をしていたグレンが、少しだけ険しい顔で私の元へ舞い降りてきます。
「主様、ご報告いたします。森の南の入り口に、人間の集団が近づいております」
「人間、ですって」
また、アルフォンス殿下たちが来たのでしょうか。
私は、少しだけ身構えてしまいました。
「いえ、前回のような物々しい雰囲気ではございません。鎧をまとった騎士は少なく、むしろ文官のような者たちが多いようです」
「文官、ですか」
「はい。馬車も数台確認できます。旗印から察するに、アステリア王国の公式な使節団かと思われます」
王国の、使節団。
一体、何のためにこんな森の奥まで来たのでしょう。
私の胸に、嫌な予感がよぎりました。
「いかがいたしますか主様。追い返しますか」
グレンの問いに、私は少しだけ考え込みました。
前回のアルフォンス殿下たちのように、森に危害を加えるつもりなら容赦なく追い返します。
でも、今回は様子が違うようでした。
「いいえ、まずは彼らの目的を探ってみましょう」
「私に気づかれないように、遠くから様子を窺うことはできますか」
「お安い御用です。我が目と耳は、千里先まで見通せます故」
グレンは、丁寧に頭を下げると再び音もなく空へと舞い上がりました。
私は、建設中の新しい家の窓から南の空をじっと見つめます。
どうか、この穏やかな生活を邪魔しに来たのではありませんように。
私は、ただそう祈るばかりでした。
しばらくして、グレンが戻ってきました。
「主様、やはり彼らの目的は主様との接触にあるようです」
「私と、ですか」
「はい。使節団を率いているのは、バーンズ子爵と名乗る老齢の貴族です。彼は、森の入り口で馬車を降りると森に向かって深々と頭を下げました」
頭を、下げたのですか。
あの傲慢なアルフォンス殿下とは、ずいぶん違う態度のようです。
「そして、こう叫んでおりました。『この森におわす、偉大なる浄化の力を持つ御方。どうか、我らの非礼をお許しいただきお姿をお見せください』と」
浄化の力を持つ、御方。
それは、間違いなく私のことでしょう。
どうやら、王国の人間たちも私の力の本当の価値に気づいたらしいです。
「さらに、こうも続けておりました。『我らは、貴方様を害しに来たのではございません。ただ、疫病に苦しむアステリアの民をお救いいただきたく嘆願に参ったのです』と」
やはり、王都の疫病は相当深刻な事態になっているようです。
聖女ミレイ様の力でも、どうにもならないのでしょう。
だから、私を追放したにも関わらず今更助けを求めに来たのです。
なんて、身勝手な人たちなのでしょう。
私は、フンと鼻を鳴らしたくなりました。
でも、グレンの報告はまだ続きます。
「そのバーンズ子爵という男、かつてクライネルト侯爵家に仕えていたことがあると申しております」
「えっ」
私は、思わず声を上げました。
クライネルト侯爵家は、私の実家です。
バーンズ子爵。
その名前に、聞き覚えがありました。
私がまだ、幼かった頃のことです。
父の補佐をしていた、とても温厚で優しい白髪の紳士でした。
よく、私にお菓子をくれたり面白い話を聞かせてくれたりしたのを覚えています。
彼が、なぜ使節団のリーダーとしてここにいるのでしょう。
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「これは、呪いじゃない。……経年劣化による、素材の悲鳴だ」
化学知識と修復技術。前世のスキルを応用し、奇跡的に生還したセレンは、搾取されるだけの人生に別れを告げる。
これは、ガラクタ同然の呪具に秘められた真の価値を見出す少女が、自らの工房を立ち上げ、やがて国中の誰もが無視できない存在へと成り上がっていく物語。
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