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グレゴール隊長の口から出た「王都」そして「聖女ユナ様」という言葉に、私の思考は一瞬だけ過去へ引き戻された。私を追放したあの場所、あの人々のことだ。しかし私の心に動揺はなかった。ただ事実として何が起きているのかを知る必要があると感じただけだ。
「王都で動きが? 詳しく聞かせてもらえますか」
私の落ち着いた声に、グレゴール隊長は少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻って頷いた。
「はっ。ガンツ殿が王都の旧知の商人から極秘に得た情報によりますと、どうやら聖女ユナ様の力が著しく衰えているとのことです」
「力が衰えている?」
予想外の言葉に私はわずかに眉をひそめた。
「はい。かつては触れるだけで病を癒やし、人々の心を安らがせたという彼女の奇跡の御業が、ここ数ヶ月ほとんど見られなくなったと。それどころか彼女が祈りを捧げた土地で、逆に作物の育ちが悪くなったり、原因不明の病が流行ったりといった良くない噂まで流れ始めているようです」
それは奇妙な話だった。聖女の力が人々を癒やすのではなく、逆に害をなすなどあり得るのだろうか。
「それだけではございません」
グレゴール隊長はさらに声を潜めて続けた。
「王都とその周辺地域で大規模な凶作が続いているそうです。日照りが続いたかと思えば今度は長雨に見舞われる。天候は不安定を極め、王宮の食料備蓄もいよいよ底が見え始めているとか。民衆の間では、これも聖女様の力が衰えたせいではないかと不満の声が高まっていると……」
「……なるほど。それでジュリアス殿下は?」
私がその名前を口にすると、グレゴール隊長の顔に苦々しい色が浮かんだ。
「王太子殿下は聖女様を庇い、これはエリアーナ様を追放したことに対する神々の怒りだ、などと責任転嫁に終始していると聞いております。ですがそんな言い分がいつまでも通用するはずもなく、貴族たちの間でも殿下と聖女様への不信感が急速に広まっている模様です」
自らが犯した過ちを神々のせいにするとは。彼の性根は私が知っていた頃から何も変わっていないらしい。
『主よ、その聖女とやらの力、まがい物だったのではないか?』
私の隣を歩いていたシラスがテレパシーで問いかけてきた。
「まがい物というよりは……あるいは何かから力を前借りするような、不安定なものだったのかもしれないわね。土地の生命力や人々の信仰心。そういう有限のものを消費して奇跡を起こしていたとしたら。今その代償を支払わされているのかもしれない」
もしそうならあまりに愚かで危険な力だ。私の創成魔法が世界の理を理解し、その流れに沿って新たな価値を生み出す力であるのとは対極にある。
「ガンツ殿は、いずれ王家がエリアーナ様に助けを求めてくる可能性も考えているようです。その時我々はどう対応すべきかと」
グレゴール隊長の言葉に私は静かに首を横に振った。
「その時はその時です。私たちが今考えるべきは王都のことではありません。このヴァイスランドと、助けを求めてきた隣人であるゴードン領のこと。そして私たちの新しい仲間、ドワーフのことです」
私のきっぱりとした声にグレゴール隊長は迷いを振り払うように力強く頷いた。
「はっ! おっしゃる通りです。失礼いたしました」
私たちはヴァイスランドへの帰路を急いだ。
ゴードン領との国境を越え、ヴァイスランドの南門である砦が見えてきた時、私はその光景に目を見張った。砦の周辺には以前はなかったはずの広大な開拓地が広がり、そこでは多くの人々が農作業に汗を流している。砦と村を結ぶ街道も以前より広く、そして頑丈に整備されていた。
「これは……」
「エリアーナ様がご不在の間も、ガンツ殿やクラウス殿の指揮のもと、皆で開拓を進めておりました。誰もがあなた様がお戻りになるまでに、この国をもっと豊かにしたいと」
グレゴール隊長が誇らしげに説明してくれた。その言葉に私の胸が温かくなる。私がいなくてもこの国は成長を続けている。それは領主として何より嬉しいことだった。
私たちが村へ到着するとその報は瞬く間に広がり、村中の人々が広場に集まって私たちの帰還を熱狂的に歓迎してくれた。
「エリアーナ様! お帰りなさいませ!」
「ゴードン領をお救いになったと聞きました! さすがは我らの主君です!」
クラウスさんを始めとする村の長老たち、ボリンやマーサたち職人、そして子供たちまでが満面の笑みで私を取り囲む。その誰もの顔が、私がこの地に来た頃とは比べ物にならないほど活気に満ち溢れていた。
その日の夜、私は集会所に主要なメンバーを集め、今回の旅の成果を報告した。ゴードン領の危機を救い友好不可侵条約を締結したこと。そして何より、地の底に伝説の種族ドワーフの国が存在し、彼らと永遠の友好を誓い合ったこと。
「ドワーフ、ですと!?」
私の報告にボリンが誰よりも早く食いついてきた。彼の目は鍛冶師としての純粋な好奇心と興奮で子供のように輝いている。
「古の伝承に聞く伝説の鍛冶の民……! そんな方々が本当にこの地下に……!?」
「ええ、本当よボリン。そして彼らは私たちの技術に強い興味を示してくれたわ。特にヴァイスランド鋼にはね。逆に彼らの持つ『ルーン刻印』の技術は、私たちの武具や道具をさらに進化させてくれるはず」
私はドワーフの里で見た魔力を帯びた武具について説明した。その話にボリンだけでなく他の職人たちも身を乗り出して聞き入っている。
「すげえ……! そんな技術が実在したなんて……! ぜひお会いして槌を交えてみてえもんだ!」
ボリンが興奮気味に叫ぶ。
「その機会はすぐに来るわ。近いうちに彼らの長であるギムリ殿が、使節団を率いてこのヴァイスランドを訪れてくれることになっているの。その時に向けて私たちも最高の歓迎準備をしなければ」
私の言葉に全員が力強く頷いた。そして私は今回の旅で固まった新たな構想を打ち明けた。
「ドワーフたちとの交流を深めるため、そしてあの豊かな地下世界の資源を活用するため、私はこの村と彼らの里『グズ=ドゥーム』を直接結ぶ新たな交通網を建設したいと考えています」
私は創成魔法を使い、床にこの辺り一帯の立体的な地形図を創り出した。そして地上のヴァイスランドと遥か地下深くに存在するグズ=ドゥームの位置を示す。
「シルヴァヌス号の路線を、彼らが地上へ出るために使った通路の入り口まで延長します。そしてそこからは地下へ向けて巨大な縦穴を掘る。その中を蒸気の力とドワーフの歯車技術を組み合わせた巨大な昇降機で行き来するのです」
私の壮大すぎる計画にその場にいた誰もが息を呑んだ。地上と遥か地の底を結ぶ交通網。それはもはや鉄道建設の域を超えた神話的な事業だ。
「そ、昇降機……。どれほどの深さになるか見当もつきませんぞ……」
石工のヒューゴが呆然と呟いた。
「ええ、途方もない事業になるでしょう。でも私たちにはヴァイスランド鋼がある。ヒューゴの石工技術とラルスの建築技術もある。そしてドワーフたちの協力も得られる。不可能ではないはずよ」
私は職人たちの顔を一人一人見回した。彼らの目には驚愕と共に未知なる挑戦への強い光が宿り始めていた。
「考えてもみて。これが完成すれば私たちは地上の豊かな穀物や木材と、地下の希少な鉱物資源を自由に行き来させることができる。ヴァイスランドとグズ=ドゥームは一つの巨大な経済圏として共に発展していくことになるのよ」
私の言葉は彼らの職人魂だけでなく、ガンツのような商人の心にも強く響いたようだった。
「素晴らしい……! なんと夢のある話でしょう! 地下の宝石や希少金属を我らが独占的に扱うことができるとなれば……ヴァイスランドは大陸一の商業国家となることも夢ではございませんぞ!」
ガンツが興奮で身を震わせながら言った。
「決まりね。この『地下大動脈計画』、ヴァイスランドの次なる国家事業とします。まずはドワーフの使節団を歓迎し、彼らに私たちの国の素晴らしさを見てもらうことから始めましょう」
私の宣言に集会所は未来への希望と興奮に満ちた熱い熱気に包まれた。
王都が過去の栄光にすがり内側から崩壊を始めている頃、この北の果ての地では地上と地下の民が手を取り合い、誰も見たことのない新しい未来を創り出そうとしていた。
翌日から村はドワーフの使節団を迎えるための準備で活気に沸いた。
ラルス率いる大工たちは彼らのための迎賓館の建設を急ピッチで進めている。ドワーフの体格や好みを考慮し、天井は少し低いが頑丈で落ち着いた雰囲気の石と木を組み合わせた美しい建物だ。
マーサたちは歓迎の宴で披露するための特別なタペストリーを織り上げていた。それはヴァイスランドとグズ=ドゥームの友好をテーマにしたもので、ルナシルクとドワーフから少量分けてもらった光る鉱石の糸を使い、シラスとドワーフの伝承に登場する竜が仲良く並んでいる姿が描かれていた。
ボリンの工房からは昼夜を問わず槌の音が響いていた。彼はドワーフたちに贈るためのヴァイスランド鋼で作った最高傑作の酒杯セットを制作しているようだった。
そして私は彼らをヴァイスランドに案内するための正式な使者を立てることにした。人選はすぐに決まった。
「グレゴール隊長、そしてガンツ。あなたたちにグズ=ドゥームへの使者という大役をお願いしたいのです」
私がそう告げると指名された二人は驚きながらも、その目に誇りと責任感を宿らせた。
「はっ! このグレゴール、必ずや大役を果たしてまいります!」
「お任せください、エリアーナ様。最高の形で彼らをこちらへお連れすることをお約束いたします」
軍事の責任者として信頼の厚いグレゴール隊長と、商人として交渉事に長けたガンツ。これ以上ない最適な人選だろう。
私は彼らに護衛として防衛隊の精鋭十名をつけ、ギムリ長老に宛てた親書とヴァイスランドの特産品をいくつか持たせた。
「道はギムリ長老から聞いていますね。気をつけて行ってきてください。あなた方の帰りを皆で待っています」
「「はっ!」」
数日後、グレゴール隊長とガンツ率いる使節団はヴァイスランドの民全員に見送られながらゴードン領との国境を越え、ドワーフの隠れ里へと旅立っていった。
彼らの後ろ姿を見送りながら私はこれから始まる新しい時代に胸が高鳴るのを感じていた。私たちの国はもう私一人の力で動いているのではない。ここにいる誰もがそれぞれの役割を果たし、自らの意志でこの国を前へと進めているのだ。
彼らが留守の間も私たちの国造りは止まらない。
私はゴードン領との正式な交易を開始した。シルヴァヌス号が運んできたヴァイス麦やヴァイスランド鋼の製品を国境の砦でゴードン領の商人に引き渡し、見返りとして彼らの領地で豊富に採れる良質な木材や薬草などを輸入する。
初めての国際交易は両国に大きな利益をもたらした。ゴードン領は飢饉から完全に立ち直り、ヴァイスランドはこれまで不足していた資源を手に入れることができた。輸入した木材はすぐにラルスたちの手によって新しい施設の建設に使われた。
まず建てられたのは村の子供たちのための学校だ。読み書き計算といった基礎的な学問からヴァイスランドの歴史、そして私が持つ知識の一部である科学や農業技術の初歩までを教える総合的な教育機関。教師は引退したクラウスさんのような知識人や手の空いた騎士たちが務めることになった。
次に診療所を拡張し本格的な病院を建設した。最新の医療器具を備え、負傷者の治療だけでなく病気の予防や衛生管理の指導も行う。もちろん、それらの器具は私が創成魔法で創り出したものだ。
ゴードン領から輸入した薬草と、私が地下世界で発見した浄化作用のある植物を組み合わせることで、私はいくつかの新しい特効薬の開発にも成功していた。
教育と医療。それは国の未来を支える最も重要な土台だ。子供たちが夢を持って学び、人々が健康で安心して暮らせる。そんな当たり前のことがこのヴァイスランドでは現実のものとなりつつあった。
その様子を王都の者たちが見たら一体どう思うだろうか。彼らが「捨てられた土地」と蔑んだ場所が、今や王国で最も先進的で最も希望に満ちた場所へと生まれ変わろうとしているのだから。
そんなことを考えていたある日、マーサが興奮した様子で私の執務室に駆け込んできた。その手には一枚の、これまで見たこともないほど美しい布が握られていた。
「エリアーナ様! できました! ついに完成したのです!」
マーサは息を切らしながら、その布を机の上に広げた。それは月明かりをそのまま閉じ込めたかのような、淡く幻想的な輝きを放つ布だった。ベースとなっているのは最高級のルナシルクだが、そこにドワーフから譲り受けた光る鉱石の粉末を織り込んである。鉱石は自ら光を放ち、まるで布地そのものが生命を持っているかのように明滅していた。
「これは……素晴らしいわ、マーサ。タペストリーに使っていたあの鉱石ね」
「はい! ギムリ様から少量いただいたものを解析し、糸に撚り込む方法を試行錯誤しておりました。この布は光を吸収し、暗闇で自ら輝くのです。しかもルナシルクの軽さと丈夫さは少しも損なわれていません」
私はその布を手に取った。驚くほど滑らかで軽い。そして指の間からこぼれる光は、冷たい輝きではなく、どこか温かみを感じさせるものだった。
「すごい技術力ね。これなら夜間作業用の服や、兵士たちの識別用の腕章にも使えるかもしれない。何より、とても美しいわ。これでドレスを作ったら、さぞ見事でしょうね」
私の言葉にマーサは頬を染めて嬉しそうに頷いた。
「はい! 早速、歓迎の宴でエリアーナ様がお召しになるドレスのデザインを考えております。きっとドワーフの方々も驚かれますわ」
「ありがとう、マーサ。楽しみにしているわ」
職人たちの探究心と技術力が、異文化との交流によって新たな高みへと到達しようとしている。この布一枚が、その確かな証拠だった。
村の発展はそれだけではない。ボリンの工房では、ヴァイスランド鋼を使った新しい農具の開発が進められていた。従来の鉄製の鍬や鋤よりも遥かに頑丈で軽く、土を深く、そして効率的に耕すことができる。開拓地の作業効率は飛躍的に向上し、今年の秋の収穫は、去年の倍以上になることが見込まれていた。
食料の安定供給は国の基盤だ。豊かな食卓は人々の心を豊かにし、新たな活力を生み出す。ヴァイスランドは今、その好循環に入りつつあった。
私は時折、建設中の学校へ足を運んだ。教室では、年の離れた子供たちが机を並べ、真剣な眼差しで黒板に向かっている。文字を覚えたての幼い子が、少し年上の子に教わりながら懸命に自分の名前を書いている。その光景は、どんな宝石よりも輝いて見えた。
「エリアーナ様」
私に気づいた子供たちが、ぱっと顔を輝かせて駆け寄ってくる。
「今日ね、新しい字を習ったんだよ!」
「見て見て、計算ができるようになったの!」
彼らの無邪気な笑顔と成長が、私の何よりの喜びだった。この子たちの未来のために、私はこの国をもっと豊かにしなければならない。その思いが、私を突き動かす原動力となっていた。
病院では、新しい薬によって多くの人々が救われていた。以前はこの地で猛威を振るっていた風土病も、今ではほとんど見られない。ゴードン領から来た商人の中には、ヴァイスランドの医療水準の高さに驚き、自国の家族のために薬を買い求めていく者もいた。ヴァイスランドの名は、交易を通じて少しずつ、しかし着実に周辺地域へと広まり始めていた。
ある晴れた午後、私はシラスと共にシルヴァヌス号の新しい路線の建設現場を視察していた。線路は村から東へと伸び、ドワーフたちが地上へと出てきた洞窟の入り口を目指している。
『主よ、面白いものだな。かつては不毛の地と呼ばれたこの場所が、今や大陸で最も活気のある場所になりつつある』
シラスが私の思考に直接語りかけてくる。その声には、どこか誇らしげな響きがあった。
「ええ、本当に。でも、それは私一人の力じゃないわ。ここに住む皆が、自分の国を良くしようと努力しているからよ」
『違いない。だが、そのきっかけを作ったのは主だ。主が希望という種を蒔いたからこそ、皆の努力が花開いたのだ』
シラスの言葉は素直に嬉しかった。彼はずっと私の傍で、私の苦悩も喜びも見てきたのだから。
線路の先、森の中にぽっかりと口を開けた洞窟が見える。あそこが、地下世界への入り口だ。グレゴール隊長とガンツは、今頃あの洞窟の奥深く、ドワーフの国へと至る道を歩んでいるのだろう。
「無事に着いているといいのだけど」
『あの二人なら心配いらんだろう。それより、彼らがドワーフの使節団を連れて帰ってきた時が楽しみではないか』
「そうね。ボリンがどんな顔をするか、目に浮かぶようだわ」
私たちは顔を見合わせて小さく笑った。穏やかな時間が流れる。
しかし、その平穏は長くは続かなかった。
数日後、ガンツが手配していた王都との連絡員が、一頭の馬を死ぬ寸前まで駆り立ててヴァイスランドに到着した。彼は旅の疲労で顔色を土気色に変え、息も絶え絶えに私の執務室へと転がり込んできた。
「エリアーナ様……! 王都で……王都で、大変なことが……!」
連絡員から渡された羊皮紙には、ガンツの取引相手である商人からの、走り書きのような文字が並んでいた。
そこには、聖女ユナの力の暴走によって王都の一部が壊滅状態になったこと、そして食料不足に喘ぐ民衆がついに暴動を起こし、王宮にまで押し寄せているという、信じがたい内容が記されていた。
「王都で動きが? 詳しく聞かせてもらえますか」
私の落ち着いた声に、グレゴール隊長は少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻って頷いた。
「はっ。ガンツ殿が王都の旧知の商人から極秘に得た情報によりますと、どうやら聖女ユナ様の力が著しく衰えているとのことです」
「力が衰えている?」
予想外の言葉に私はわずかに眉をひそめた。
「はい。かつては触れるだけで病を癒やし、人々の心を安らがせたという彼女の奇跡の御業が、ここ数ヶ月ほとんど見られなくなったと。それどころか彼女が祈りを捧げた土地で、逆に作物の育ちが悪くなったり、原因不明の病が流行ったりといった良くない噂まで流れ始めているようです」
それは奇妙な話だった。聖女の力が人々を癒やすのではなく、逆に害をなすなどあり得るのだろうか。
「それだけではございません」
グレゴール隊長はさらに声を潜めて続けた。
「王都とその周辺地域で大規模な凶作が続いているそうです。日照りが続いたかと思えば今度は長雨に見舞われる。天候は不安定を極め、王宮の食料備蓄もいよいよ底が見え始めているとか。民衆の間では、これも聖女様の力が衰えたせいではないかと不満の声が高まっていると……」
「……なるほど。それでジュリアス殿下は?」
私がその名前を口にすると、グレゴール隊長の顔に苦々しい色が浮かんだ。
「王太子殿下は聖女様を庇い、これはエリアーナ様を追放したことに対する神々の怒りだ、などと責任転嫁に終始していると聞いております。ですがそんな言い分がいつまでも通用するはずもなく、貴族たちの間でも殿下と聖女様への不信感が急速に広まっている模様です」
自らが犯した過ちを神々のせいにするとは。彼の性根は私が知っていた頃から何も変わっていないらしい。
『主よ、その聖女とやらの力、まがい物だったのではないか?』
私の隣を歩いていたシラスがテレパシーで問いかけてきた。
「まがい物というよりは……あるいは何かから力を前借りするような、不安定なものだったのかもしれないわね。土地の生命力や人々の信仰心。そういう有限のものを消費して奇跡を起こしていたとしたら。今その代償を支払わされているのかもしれない」
もしそうならあまりに愚かで危険な力だ。私の創成魔法が世界の理を理解し、その流れに沿って新たな価値を生み出す力であるのとは対極にある。
「ガンツ殿は、いずれ王家がエリアーナ様に助けを求めてくる可能性も考えているようです。その時我々はどう対応すべきかと」
グレゴール隊長の言葉に私は静かに首を横に振った。
「その時はその時です。私たちが今考えるべきは王都のことではありません。このヴァイスランドと、助けを求めてきた隣人であるゴードン領のこと。そして私たちの新しい仲間、ドワーフのことです」
私のきっぱりとした声にグレゴール隊長は迷いを振り払うように力強く頷いた。
「はっ! おっしゃる通りです。失礼いたしました」
私たちはヴァイスランドへの帰路を急いだ。
ゴードン領との国境を越え、ヴァイスランドの南門である砦が見えてきた時、私はその光景に目を見張った。砦の周辺には以前はなかったはずの広大な開拓地が広がり、そこでは多くの人々が農作業に汗を流している。砦と村を結ぶ街道も以前より広く、そして頑丈に整備されていた。
「これは……」
「エリアーナ様がご不在の間も、ガンツ殿やクラウス殿の指揮のもと、皆で開拓を進めておりました。誰もがあなた様がお戻りになるまでに、この国をもっと豊かにしたいと」
グレゴール隊長が誇らしげに説明してくれた。その言葉に私の胸が温かくなる。私がいなくてもこの国は成長を続けている。それは領主として何より嬉しいことだった。
私たちが村へ到着するとその報は瞬く間に広がり、村中の人々が広場に集まって私たちの帰還を熱狂的に歓迎してくれた。
「エリアーナ様! お帰りなさいませ!」
「ゴードン領をお救いになったと聞きました! さすがは我らの主君です!」
クラウスさんを始めとする村の長老たち、ボリンやマーサたち職人、そして子供たちまでが満面の笑みで私を取り囲む。その誰もの顔が、私がこの地に来た頃とは比べ物にならないほど活気に満ち溢れていた。
その日の夜、私は集会所に主要なメンバーを集め、今回の旅の成果を報告した。ゴードン領の危機を救い友好不可侵条約を締結したこと。そして何より、地の底に伝説の種族ドワーフの国が存在し、彼らと永遠の友好を誓い合ったこと。
「ドワーフ、ですと!?」
私の報告にボリンが誰よりも早く食いついてきた。彼の目は鍛冶師としての純粋な好奇心と興奮で子供のように輝いている。
「古の伝承に聞く伝説の鍛冶の民……! そんな方々が本当にこの地下に……!?」
「ええ、本当よボリン。そして彼らは私たちの技術に強い興味を示してくれたわ。特にヴァイスランド鋼にはね。逆に彼らの持つ『ルーン刻印』の技術は、私たちの武具や道具をさらに進化させてくれるはず」
私はドワーフの里で見た魔力を帯びた武具について説明した。その話にボリンだけでなく他の職人たちも身を乗り出して聞き入っている。
「すげえ……! そんな技術が実在したなんて……! ぜひお会いして槌を交えてみてえもんだ!」
ボリンが興奮気味に叫ぶ。
「その機会はすぐに来るわ。近いうちに彼らの長であるギムリ殿が、使節団を率いてこのヴァイスランドを訪れてくれることになっているの。その時に向けて私たちも最高の歓迎準備をしなければ」
私の言葉に全員が力強く頷いた。そして私は今回の旅で固まった新たな構想を打ち明けた。
「ドワーフたちとの交流を深めるため、そしてあの豊かな地下世界の資源を活用するため、私はこの村と彼らの里『グズ=ドゥーム』を直接結ぶ新たな交通網を建設したいと考えています」
私は創成魔法を使い、床にこの辺り一帯の立体的な地形図を創り出した。そして地上のヴァイスランドと遥か地下深くに存在するグズ=ドゥームの位置を示す。
「シルヴァヌス号の路線を、彼らが地上へ出るために使った通路の入り口まで延長します。そしてそこからは地下へ向けて巨大な縦穴を掘る。その中を蒸気の力とドワーフの歯車技術を組み合わせた巨大な昇降機で行き来するのです」
私の壮大すぎる計画にその場にいた誰もが息を呑んだ。地上と遥か地の底を結ぶ交通網。それはもはや鉄道建設の域を超えた神話的な事業だ。
「そ、昇降機……。どれほどの深さになるか見当もつきませんぞ……」
石工のヒューゴが呆然と呟いた。
「ええ、途方もない事業になるでしょう。でも私たちにはヴァイスランド鋼がある。ヒューゴの石工技術とラルスの建築技術もある。そしてドワーフたちの協力も得られる。不可能ではないはずよ」
私は職人たちの顔を一人一人見回した。彼らの目には驚愕と共に未知なる挑戦への強い光が宿り始めていた。
「考えてもみて。これが完成すれば私たちは地上の豊かな穀物や木材と、地下の希少な鉱物資源を自由に行き来させることができる。ヴァイスランドとグズ=ドゥームは一つの巨大な経済圏として共に発展していくことになるのよ」
私の言葉は彼らの職人魂だけでなく、ガンツのような商人の心にも強く響いたようだった。
「素晴らしい……! なんと夢のある話でしょう! 地下の宝石や希少金属を我らが独占的に扱うことができるとなれば……ヴァイスランドは大陸一の商業国家となることも夢ではございませんぞ!」
ガンツが興奮で身を震わせながら言った。
「決まりね。この『地下大動脈計画』、ヴァイスランドの次なる国家事業とします。まずはドワーフの使節団を歓迎し、彼らに私たちの国の素晴らしさを見てもらうことから始めましょう」
私の宣言に集会所は未来への希望と興奮に満ちた熱い熱気に包まれた。
王都が過去の栄光にすがり内側から崩壊を始めている頃、この北の果ての地では地上と地下の民が手を取り合い、誰も見たことのない新しい未来を創り出そうとしていた。
翌日から村はドワーフの使節団を迎えるための準備で活気に沸いた。
ラルス率いる大工たちは彼らのための迎賓館の建設を急ピッチで進めている。ドワーフの体格や好みを考慮し、天井は少し低いが頑丈で落ち着いた雰囲気の石と木を組み合わせた美しい建物だ。
マーサたちは歓迎の宴で披露するための特別なタペストリーを織り上げていた。それはヴァイスランドとグズ=ドゥームの友好をテーマにしたもので、ルナシルクとドワーフから少量分けてもらった光る鉱石の糸を使い、シラスとドワーフの伝承に登場する竜が仲良く並んでいる姿が描かれていた。
ボリンの工房からは昼夜を問わず槌の音が響いていた。彼はドワーフたちに贈るためのヴァイスランド鋼で作った最高傑作の酒杯セットを制作しているようだった。
そして私は彼らをヴァイスランドに案内するための正式な使者を立てることにした。人選はすぐに決まった。
「グレゴール隊長、そしてガンツ。あなたたちにグズ=ドゥームへの使者という大役をお願いしたいのです」
私がそう告げると指名された二人は驚きながらも、その目に誇りと責任感を宿らせた。
「はっ! このグレゴール、必ずや大役を果たしてまいります!」
「お任せください、エリアーナ様。最高の形で彼らをこちらへお連れすることをお約束いたします」
軍事の責任者として信頼の厚いグレゴール隊長と、商人として交渉事に長けたガンツ。これ以上ない最適な人選だろう。
私は彼らに護衛として防衛隊の精鋭十名をつけ、ギムリ長老に宛てた親書とヴァイスランドの特産品をいくつか持たせた。
「道はギムリ長老から聞いていますね。気をつけて行ってきてください。あなた方の帰りを皆で待っています」
「「はっ!」」
数日後、グレゴール隊長とガンツ率いる使節団はヴァイスランドの民全員に見送られながらゴードン領との国境を越え、ドワーフの隠れ里へと旅立っていった。
彼らの後ろ姿を見送りながら私はこれから始まる新しい時代に胸が高鳴るのを感じていた。私たちの国はもう私一人の力で動いているのではない。ここにいる誰もがそれぞれの役割を果たし、自らの意志でこの国を前へと進めているのだ。
彼らが留守の間も私たちの国造りは止まらない。
私はゴードン領との正式な交易を開始した。シルヴァヌス号が運んできたヴァイス麦やヴァイスランド鋼の製品を国境の砦でゴードン領の商人に引き渡し、見返りとして彼らの領地で豊富に採れる良質な木材や薬草などを輸入する。
初めての国際交易は両国に大きな利益をもたらした。ゴードン領は飢饉から完全に立ち直り、ヴァイスランドはこれまで不足していた資源を手に入れることができた。輸入した木材はすぐにラルスたちの手によって新しい施設の建設に使われた。
まず建てられたのは村の子供たちのための学校だ。読み書き計算といった基礎的な学問からヴァイスランドの歴史、そして私が持つ知識の一部である科学や農業技術の初歩までを教える総合的な教育機関。教師は引退したクラウスさんのような知識人や手の空いた騎士たちが務めることになった。
次に診療所を拡張し本格的な病院を建設した。最新の医療器具を備え、負傷者の治療だけでなく病気の予防や衛生管理の指導も行う。もちろん、それらの器具は私が創成魔法で創り出したものだ。
ゴードン領から輸入した薬草と、私が地下世界で発見した浄化作用のある植物を組み合わせることで、私はいくつかの新しい特効薬の開発にも成功していた。
教育と医療。それは国の未来を支える最も重要な土台だ。子供たちが夢を持って学び、人々が健康で安心して暮らせる。そんな当たり前のことがこのヴァイスランドでは現実のものとなりつつあった。
その様子を王都の者たちが見たら一体どう思うだろうか。彼らが「捨てられた土地」と蔑んだ場所が、今や王国で最も先進的で最も希望に満ちた場所へと生まれ変わろうとしているのだから。
そんなことを考えていたある日、マーサが興奮した様子で私の執務室に駆け込んできた。その手には一枚の、これまで見たこともないほど美しい布が握られていた。
「エリアーナ様! できました! ついに完成したのです!」
マーサは息を切らしながら、その布を机の上に広げた。それは月明かりをそのまま閉じ込めたかのような、淡く幻想的な輝きを放つ布だった。ベースとなっているのは最高級のルナシルクだが、そこにドワーフから譲り受けた光る鉱石の粉末を織り込んである。鉱石は自ら光を放ち、まるで布地そのものが生命を持っているかのように明滅していた。
「これは……素晴らしいわ、マーサ。タペストリーに使っていたあの鉱石ね」
「はい! ギムリ様から少量いただいたものを解析し、糸に撚り込む方法を試行錯誤しておりました。この布は光を吸収し、暗闇で自ら輝くのです。しかもルナシルクの軽さと丈夫さは少しも損なわれていません」
私はその布を手に取った。驚くほど滑らかで軽い。そして指の間からこぼれる光は、冷たい輝きではなく、どこか温かみを感じさせるものだった。
「すごい技術力ね。これなら夜間作業用の服や、兵士たちの識別用の腕章にも使えるかもしれない。何より、とても美しいわ。これでドレスを作ったら、さぞ見事でしょうね」
私の言葉にマーサは頬を染めて嬉しそうに頷いた。
「はい! 早速、歓迎の宴でエリアーナ様がお召しになるドレスのデザインを考えております。きっとドワーフの方々も驚かれますわ」
「ありがとう、マーサ。楽しみにしているわ」
職人たちの探究心と技術力が、異文化との交流によって新たな高みへと到達しようとしている。この布一枚が、その確かな証拠だった。
村の発展はそれだけではない。ボリンの工房では、ヴァイスランド鋼を使った新しい農具の開発が進められていた。従来の鉄製の鍬や鋤よりも遥かに頑丈で軽く、土を深く、そして効率的に耕すことができる。開拓地の作業効率は飛躍的に向上し、今年の秋の収穫は、去年の倍以上になることが見込まれていた。
食料の安定供給は国の基盤だ。豊かな食卓は人々の心を豊かにし、新たな活力を生み出す。ヴァイスランドは今、その好循環に入りつつあった。
私は時折、建設中の学校へ足を運んだ。教室では、年の離れた子供たちが机を並べ、真剣な眼差しで黒板に向かっている。文字を覚えたての幼い子が、少し年上の子に教わりながら懸命に自分の名前を書いている。その光景は、どんな宝石よりも輝いて見えた。
「エリアーナ様」
私に気づいた子供たちが、ぱっと顔を輝かせて駆け寄ってくる。
「今日ね、新しい字を習ったんだよ!」
「見て見て、計算ができるようになったの!」
彼らの無邪気な笑顔と成長が、私の何よりの喜びだった。この子たちの未来のために、私はこの国をもっと豊かにしなければならない。その思いが、私を突き動かす原動力となっていた。
病院では、新しい薬によって多くの人々が救われていた。以前はこの地で猛威を振るっていた風土病も、今ではほとんど見られない。ゴードン領から来た商人の中には、ヴァイスランドの医療水準の高さに驚き、自国の家族のために薬を買い求めていく者もいた。ヴァイスランドの名は、交易を通じて少しずつ、しかし着実に周辺地域へと広まり始めていた。
ある晴れた午後、私はシラスと共にシルヴァヌス号の新しい路線の建設現場を視察していた。線路は村から東へと伸び、ドワーフたちが地上へと出てきた洞窟の入り口を目指している。
『主よ、面白いものだな。かつては不毛の地と呼ばれたこの場所が、今や大陸で最も活気のある場所になりつつある』
シラスが私の思考に直接語りかけてくる。その声には、どこか誇らしげな響きがあった。
「ええ、本当に。でも、それは私一人の力じゃないわ。ここに住む皆が、自分の国を良くしようと努力しているからよ」
『違いない。だが、そのきっかけを作ったのは主だ。主が希望という種を蒔いたからこそ、皆の努力が花開いたのだ』
シラスの言葉は素直に嬉しかった。彼はずっと私の傍で、私の苦悩も喜びも見てきたのだから。
線路の先、森の中にぽっかりと口を開けた洞窟が見える。あそこが、地下世界への入り口だ。グレゴール隊長とガンツは、今頃あの洞窟の奥深く、ドワーフの国へと至る道を歩んでいるのだろう。
「無事に着いているといいのだけど」
『あの二人なら心配いらんだろう。それより、彼らがドワーフの使節団を連れて帰ってきた時が楽しみではないか』
「そうね。ボリンがどんな顔をするか、目に浮かぶようだわ」
私たちは顔を見合わせて小さく笑った。穏やかな時間が流れる。
しかし、その平穏は長くは続かなかった。
数日後、ガンツが手配していた王都との連絡員が、一頭の馬を死ぬ寸前まで駆り立ててヴァイスランドに到着した。彼は旅の疲労で顔色を土気色に変え、息も絶え絶えに私の執務室へと転がり込んできた。
「エリアーナ様……! 王都で……王都で、大変なことが……!」
連絡員から渡された羊皮紙には、ガンツの取引相手である商人からの、走り書きのような文字が並んでいた。
そこには、聖女ユナの力の暴走によって王都の一部が壊滅状態になったこと、そして食料不足に喘ぐ民衆がついに暴動を起こし、王宮にまで押し寄せているという、信じがたい内容が記されていた。
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