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謎の黒い影を目撃した翌朝、店の雰囲気はいつもと変わらない。
バエルさんは新しい商品の陳列に忙しく、フェンとノクスは窓辺でじゃれ合っていた。
昨夜の出来事が、まるで夢だったかのように思えるほどだ。
しかし私の頭の中では、昨夜の光景が何度も再生されていた。
あの黒い影は、一体何者だったのだろう。
私たちを監視していたのか、それとも全くの偶然だったのだろうか。
考え事をしている私に、バエルさんが声をかけてきた。
「師匠、どうかなさいましたか。
帳簿に、何か問題でもありましたか」
その顔には、心配の色が浮かんでいる。
「いえ何でもありません、少し考え事をしていただけです」
私は、笑顔で答えた。
余計な心配をかける必要は、ないだろう。
今は、目の前の仕事に集中すべきだ。
「それよりもバエルさん、商人たちから得た情報を元に次の計画を立てましょう」
「おお、そうですな。
よろしくお願いいたします」
バエルさんは、ぱっと顔を輝かせた。
私は、羊皮紙の上にいくつかのキーワードを書き出す。
「王都の夜会」、そして「南の港町の商談会」、「東の国の新技術」。
これらが、当面の私たちの目標となる。
「まず王都の夜会ですが、これは二週間後に開催されるようです。
参加するのは、有力な貴族ばかりです。
そこで私たちのルビーベリージャムを、大々的に売り込みましょう」
「しかし師匠、我々のような平民が貴族の夜会に参加することなど」
「もちろん、正面から乗り込むわけではありません。
裏から、手を回すのです」
私は、商人から聞いたある人物の名前を挙げた。
その人物は王宮に出入りしている御用商人で、金に汚いことで有名らしい。
「彼にジャムの売上の一部を渡すという条件で、夜会のデザートに使ってもらうよう交渉します」
「味には、絶対の自信があります。
一度食べてもらえれば、必ずや貴族の方々の間で話題になるはずです」
「なるほど、そういう手があったか」
バエルさんは、感心して何度も頷いている。
「次に、南の港町で開かれる商談会。
これは、一ヶ月後です。
ここには王国中から、腕利きの商人たちが集まります。
ここで成功すれば私たちの店の名前は、一気に全国区になるでしょう。
私たちはレオの玩具を主力商品として、この商談会に臨みます。
他の店にはない、独創性と品質の高さで勝負するのです」
「そして、東の国の新技術。
これは、染色の技術ですね。
これについてはまだ情報が少ないので、まずは情報収集に専念します。
もしかしたらこの技術を応用して、新しい商品を開発できるかもしれません」
私の立てた計画に、バエルさんは興奮を隠しきれない様子だった。
「すごい、すごいですぞ師匠。
なんだか、天下統一でも目指しているかのようです」
「天下統一なんて、大袈裟なことですよ。
ただビジネスの基本に忠実に、一歩ずつ進んでいくだけです」
私は冷静に答えたが、心の中では静かな興奮が渦巻いていた。
自分の知識と戦略が、この世界でどこまで通用するのか。
それを試すのが、楽しくて仕方がなかったのだ。
計画を立て終えた後、私は一人で店の外に出た。
少し、頭を冷やしたかったのである。
フェンとノクスが、心配そうに後をついてくる。
ポルタの街は、今日も活気に満ち溢れていた。
行き交う人々の顔は、皆明るく見える。
この街の経済が、上手く回っている証拠だろう。
私は何となく、昨夜の黒い影が消えた路地裏へと足を向けた。
何か、手がかりが残っていないかと思ったのだ。
もちろん、そこには何も見つからなかった。
「考えすぎ、でしょうか」
私がため息をついた、その時だった。
背後から、不意に声をかけられる。
「君が、リリアかい」
振り返ると、そこに一人の少年が立っていた。
私より、少し年上に見える。
十歳くらいだろうか、黒い髪に黒い瞳。
そして、全身を黒い衣服で包んでいる。
昨夜見た、あの影と同じ色の服だった。
少年は、フードを目深に被っている。
その顔は、影になっていてよく見えない。
しかしその声には、どこか聞き覚えがあるような気がした。
「あなたは、誰ですか」
私は警戒しながら、問い返した。
フェンとノクスが、私を守るように少年の前に立ちはだかる。
少年はそんな二匹を一瞥すると、少しだけ口元を緩めた。
「怖がらないで、敵じゃない」
少年はそう言うと、ゆっくりとフードを外す。
現れたその顔を見て、私は息を飲んだ。
整った顔立ちだが、その瞳には年齢にそぐわない深い影が宿っている。
そして何よりも、彼の首筋に見覚えのある痣があった。
それはアークライト家の血を引く者だけに現れる、特殊な痣だ。
私も、普段は髪で隠しているが同じ場所に同じ痣がある。
「まさか、あなたは」
「久しぶりだな、リリア」
少年は、静かに名乗った。
「俺はゼロ、君の兄だよ」
「兄、ですって」
私の頭は、混乱した。
私には、ヘクターという兄がいたはずだ。
しかし目の前の少年は、あの傲慢な兄とは似ても似つかない。
「ヘクター兄様では、ないのですか」
「ああ、あんな奴と一緒にするな」
ゼロと名乗る少年は、心底嫌そうに顔をしかめた。
「俺は君が生まれる前に、この家を捨てた。
父のやり方に、嫌気がさしてな。
だから、君が俺のことを知らなくても当然だ」
ゼロは、淡々と語り始めた。
彼の話によると、彼はアルフォンスの長男として生まれた。
しかし父の腐敗したやり方に反発し、わずか八歳で家を飛び出したのだという。
以来、彼は裏社会で生き抜いてきた。
盗賊ギルドに身を寄せ、情報屋としてその日暮らしの生活を送っていたらしい。
「昨夜、君の店の周りをうろついていたのは俺だ。
最近、この街で君の噂を耳にしてな。
まさかとは思ったが、本当に君だったとは」
ゼロの瞳が、まっすぐに私を見つめる。
その目には驚きと、そして少しの懐かしさが含まれているようだった。
「君があの腐った家を追い出されたと聞いた時は、正直安心したよ。
あんな場所にいたら、君は潰されてしまうだけだからな」
私は、何と答えていいか分からなかった。
突然現れた兄、そして私の知らない家族の過去。
情報量が多すぎて、頭が追いつかない。
「リリア、君に一つ忠告しておく」
ゼロの声のトーンが、少しだけ低くなった。
「あの男、父さんには気をつけるんだ。
彼は、君が思っている以上に執念深い男だ。
君がこの街で成功していると知れば、必ず何か仕掛けてくる」
ゼロの言葉に、私ははっとした。
確かに、その可能性は考えていなかった。
あの父のことだ、私が手に入れた成功を黙って見ているはずがない。
「ありがとうございます、忠告に感謝します」
私は、素直に頭を下げた。
敵か味方かまだ分からないが、彼のくれた情報は間違いなく有益だ。
「礼を言われる筋合いはないさ、ただの気まぐれだ」
ゼロはそう言って、再びフードを目深に被った。
「俺はもう行く、また何かあれば姿を現すかもしれないし現さないかもしれない」
「待ってください」
私が呼び止めると、ゼロは足を止めた。
「なぜ、今になって私の前に現れたのですか。
何か、目的があるのではないでしょうか」
私の問いに、ゼロはしばらく黙っていた。
そして小さな声で、ぽつりと呟く。
「君の瞳が、母さんによく似ていたからかな」
それだけ言うとゼロは今度こそ、路地の闇の中へと姿を消した。
その動きは、やはり猫のようにしなやかだった。
後に残されたのは、私とフェンとノクスだけだ。
私はしばらくの間、ゼロが消えた暗闇を呆然と見つめていた。
兄、ゼロの存在は私の計画に新たな変数をもたらす。
彼は敵なのか、それとも味方なのだろうか。
そして父アルフォンスは、本当に私に接触してくるのだろうか。
考えなければならないことが、また増えてしまった。
しかし不思議と、嫌な気はしない。
むしろ困難な課題を与えられた方が、私の頭は冴え渡るのだ。
「さあ、帰りましょうか二人とも。
やるべきことが、たくさんあるのですから」
私の声には、新たな決意が込められていた。
店に戻ると、バエルさんが血相を変えて私に駆け寄ってくる。
「師匠、大変です。
王都から、使いの方が」
「王都から、ですって」
店の奥を見ると、立派な紋章の入った服を着た一人の男が立っていた。
その男の顔には、見覚えがある。
アークライト家に仕えていた、執事の一人だった。
執事は私の姿を認めると、深々と頭を下げる。
その態度は、以前の私を「存在しないもの」として扱っていた頃とはまるで違った。
「リリアお嬢様、ご当主様が至急お会いしたいと仰せです」
「つきましては明朝、お迎えの馬車を寄越しますのでご準備を、とのことです」
ゼロの忠告が、現実のものとなった。
それも、予想をはるかに超える速さで。
あの父が、一体何の用だろうか。
ろくなことではない、ということだけは確かだ。
私は一瞬だけ、考え込んだ。
この申し出を、断ることもできる。
しかしそれでは、相手の思う壺だろう。
ここで逃げれば私は父から、一生追い回されることになるかもしれない。
「分かりました、ご当主様にお伝えください」
私は、腹を括った。
「喜んで、お伺いしますと」
私の答えに執事は安堵したような、それでいて少しだけ意外そうな顔をした。
私の隣で、バエルさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
大丈夫と目配せすると、彼はこくりと頷いた。
これは私と、あの腐敗した父親との対決だ。
私は、自分の知識と仲間とで掴んだ全てを守らなければならない。
バエルさんは新しい商品の陳列に忙しく、フェンとノクスは窓辺でじゃれ合っていた。
昨夜の出来事が、まるで夢だったかのように思えるほどだ。
しかし私の頭の中では、昨夜の光景が何度も再生されていた。
あの黒い影は、一体何者だったのだろう。
私たちを監視していたのか、それとも全くの偶然だったのだろうか。
考え事をしている私に、バエルさんが声をかけてきた。
「師匠、どうかなさいましたか。
帳簿に、何か問題でもありましたか」
その顔には、心配の色が浮かんでいる。
「いえ何でもありません、少し考え事をしていただけです」
私は、笑顔で答えた。
余計な心配をかける必要は、ないだろう。
今は、目の前の仕事に集中すべきだ。
「それよりもバエルさん、商人たちから得た情報を元に次の計画を立てましょう」
「おお、そうですな。
よろしくお願いいたします」
バエルさんは、ぱっと顔を輝かせた。
私は、羊皮紙の上にいくつかのキーワードを書き出す。
「王都の夜会」、そして「南の港町の商談会」、「東の国の新技術」。
これらが、当面の私たちの目標となる。
「まず王都の夜会ですが、これは二週間後に開催されるようです。
参加するのは、有力な貴族ばかりです。
そこで私たちのルビーベリージャムを、大々的に売り込みましょう」
「しかし師匠、我々のような平民が貴族の夜会に参加することなど」
「もちろん、正面から乗り込むわけではありません。
裏から、手を回すのです」
私は、商人から聞いたある人物の名前を挙げた。
その人物は王宮に出入りしている御用商人で、金に汚いことで有名らしい。
「彼にジャムの売上の一部を渡すという条件で、夜会のデザートに使ってもらうよう交渉します」
「味には、絶対の自信があります。
一度食べてもらえれば、必ずや貴族の方々の間で話題になるはずです」
「なるほど、そういう手があったか」
バエルさんは、感心して何度も頷いている。
「次に、南の港町で開かれる商談会。
これは、一ヶ月後です。
ここには王国中から、腕利きの商人たちが集まります。
ここで成功すれば私たちの店の名前は、一気に全国区になるでしょう。
私たちはレオの玩具を主力商品として、この商談会に臨みます。
他の店にはない、独創性と品質の高さで勝負するのです」
「そして、東の国の新技術。
これは、染色の技術ですね。
これについてはまだ情報が少ないので、まずは情報収集に専念します。
もしかしたらこの技術を応用して、新しい商品を開発できるかもしれません」
私の立てた計画に、バエルさんは興奮を隠しきれない様子だった。
「すごい、すごいですぞ師匠。
なんだか、天下統一でも目指しているかのようです」
「天下統一なんて、大袈裟なことですよ。
ただビジネスの基本に忠実に、一歩ずつ進んでいくだけです」
私は冷静に答えたが、心の中では静かな興奮が渦巻いていた。
自分の知識と戦略が、この世界でどこまで通用するのか。
それを試すのが、楽しくて仕方がなかったのだ。
計画を立て終えた後、私は一人で店の外に出た。
少し、頭を冷やしたかったのである。
フェンとノクスが、心配そうに後をついてくる。
ポルタの街は、今日も活気に満ち溢れていた。
行き交う人々の顔は、皆明るく見える。
この街の経済が、上手く回っている証拠だろう。
私は何となく、昨夜の黒い影が消えた路地裏へと足を向けた。
何か、手がかりが残っていないかと思ったのだ。
もちろん、そこには何も見つからなかった。
「考えすぎ、でしょうか」
私がため息をついた、その時だった。
背後から、不意に声をかけられる。
「君が、リリアかい」
振り返ると、そこに一人の少年が立っていた。
私より、少し年上に見える。
十歳くらいだろうか、黒い髪に黒い瞳。
そして、全身を黒い衣服で包んでいる。
昨夜見た、あの影と同じ色の服だった。
少年は、フードを目深に被っている。
その顔は、影になっていてよく見えない。
しかしその声には、どこか聞き覚えがあるような気がした。
「あなたは、誰ですか」
私は警戒しながら、問い返した。
フェンとノクスが、私を守るように少年の前に立ちはだかる。
少年はそんな二匹を一瞥すると、少しだけ口元を緩めた。
「怖がらないで、敵じゃない」
少年はそう言うと、ゆっくりとフードを外す。
現れたその顔を見て、私は息を飲んだ。
整った顔立ちだが、その瞳には年齢にそぐわない深い影が宿っている。
そして何よりも、彼の首筋に見覚えのある痣があった。
それはアークライト家の血を引く者だけに現れる、特殊な痣だ。
私も、普段は髪で隠しているが同じ場所に同じ痣がある。
「まさか、あなたは」
「久しぶりだな、リリア」
少年は、静かに名乗った。
「俺はゼロ、君の兄だよ」
「兄、ですって」
私の頭は、混乱した。
私には、ヘクターという兄がいたはずだ。
しかし目の前の少年は、あの傲慢な兄とは似ても似つかない。
「ヘクター兄様では、ないのですか」
「ああ、あんな奴と一緒にするな」
ゼロと名乗る少年は、心底嫌そうに顔をしかめた。
「俺は君が生まれる前に、この家を捨てた。
父のやり方に、嫌気がさしてな。
だから、君が俺のことを知らなくても当然だ」
ゼロは、淡々と語り始めた。
彼の話によると、彼はアルフォンスの長男として生まれた。
しかし父の腐敗したやり方に反発し、わずか八歳で家を飛び出したのだという。
以来、彼は裏社会で生き抜いてきた。
盗賊ギルドに身を寄せ、情報屋としてその日暮らしの生活を送っていたらしい。
「昨夜、君の店の周りをうろついていたのは俺だ。
最近、この街で君の噂を耳にしてな。
まさかとは思ったが、本当に君だったとは」
ゼロの瞳が、まっすぐに私を見つめる。
その目には驚きと、そして少しの懐かしさが含まれているようだった。
「君があの腐った家を追い出されたと聞いた時は、正直安心したよ。
あんな場所にいたら、君は潰されてしまうだけだからな」
私は、何と答えていいか分からなかった。
突然現れた兄、そして私の知らない家族の過去。
情報量が多すぎて、頭が追いつかない。
「リリア、君に一つ忠告しておく」
ゼロの声のトーンが、少しだけ低くなった。
「あの男、父さんには気をつけるんだ。
彼は、君が思っている以上に執念深い男だ。
君がこの街で成功していると知れば、必ず何か仕掛けてくる」
ゼロの言葉に、私ははっとした。
確かに、その可能性は考えていなかった。
あの父のことだ、私が手に入れた成功を黙って見ているはずがない。
「ありがとうございます、忠告に感謝します」
私は、素直に頭を下げた。
敵か味方かまだ分からないが、彼のくれた情報は間違いなく有益だ。
「礼を言われる筋合いはないさ、ただの気まぐれだ」
ゼロはそう言って、再びフードを目深に被った。
「俺はもう行く、また何かあれば姿を現すかもしれないし現さないかもしれない」
「待ってください」
私が呼び止めると、ゼロは足を止めた。
「なぜ、今になって私の前に現れたのですか。
何か、目的があるのではないでしょうか」
私の問いに、ゼロはしばらく黙っていた。
そして小さな声で、ぽつりと呟く。
「君の瞳が、母さんによく似ていたからかな」
それだけ言うとゼロは今度こそ、路地の闇の中へと姿を消した。
その動きは、やはり猫のようにしなやかだった。
後に残されたのは、私とフェンとノクスだけだ。
私はしばらくの間、ゼロが消えた暗闇を呆然と見つめていた。
兄、ゼロの存在は私の計画に新たな変数をもたらす。
彼は敵なのか、それとも味方なのだろうか。
そして父アルフォンスは、本当に私に接触してくるのだろうか。
考えなければならないことが、また増えてしまった。
しかし不思議と、嫌な気はしない。
むしろ困難な課題を与えられた方が、私の頭は冴え渡るのだ。
「さあ、帰りましょうか二人とも。
やるべきことが、たくさんあるのですから」
私の声には、新たな決意が込められていた。
店に戻ると、バエルさんが血相を変えて私に駆け寄ってくる。
「師匠、大変です。
王都から、使いの方が」
「王都から、ですって」
店の奥を見ると、立派な紋章の入った服を着た一人の男が立っていた。
その男の顔には、見覚えがある。
アークライト家に仕えていた、執事の一人だった。
執事は私の姿を認めると、深々と頭を下げる。
その態度は、以前の私を「存在しないもの」として扱っていた頃とはまるで違った。
「リリアお嬢様、ご当主様が至急お会いしたいと仰せです」
「つきましては明朝、お迎えの馬車を寄越しますのでご準備を、とのことです」
ゼロの忠告が、現実のものとなった。
それも、予想をはるかに超える速さで。
あの父が、一体何の用だろうか。
ろくなことではない、ということだけは確かだ。
私は一瞬だけ、考え込んだ。
この申し出を、断ることもできる。
しかしそれでは、相手の思う壺だろう。
ここで逃げれば私は父から、一生追い回されることになるかもしれない。
「分かりました、ご当主様にお伝えください」
私は、腹を括った。
「喜んで、お伺いしますと」
私の答えに執事は安堵したような、それでいて少しだけ意外そうな顔をした。
私の隣で、バエルさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
大丈夫と目配せすると、彼はこくりと頷いた。
これは私と、あの腐敗した父親との対決だ。
私は、自分の知識と仲間とで掴んだ全てを守らなければならない。
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