僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

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仇 001

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「……やるじゃねえか。いや、正直舐めてたわ。お前ら面白過ぎ……特に、そこのにーちゃん」

 言って、テスラは爛々と輝く瞳で僕を見据えた。

「不死身に近い治癒系のスキル……それだけで充分面白いってのに、さっきのは何だ? お前がスキルを発動した途端、俺の可愛いペットたちが瞬殺じゃねえか。仮にもBランクモンスターだぜ? それが五体だぜ? 一発二発の攻撃で倒せていいわけがねえんだよ。Sランク冒険者にだって、そんな馬鹿げた力を持つ奴はそうはいねえ」

 かははっと笑ってから、テスラは首をゴキゴキと鳴らす。

「俺の見立てじゃあ、さっきのスキル、ステータス系だろ? 敵のスキル防御を極端に下げるか、味方のスキル攻撃にバフを掛けるか……光自体は魔物に当ててたから、前者の可能性の方が高いな。だが、いくら防御が下がろうが、Bランクモンスターの生命力を一発で削り切るには相当な火力がいる。そっちのねーちゃんも、中々面白いスキルを持ってるみてーだ」

 テスラの視線を受けたミアは、ブルっと肩を震わせた。

「いずれにせよ、お前らは高ランクの魔物複数体を瞬殺できるスキルを持ってやがる。こりゃ、暇潰しなんて言ってられねーよ……気合入れて、全力で遊ばねえとな。じゃないと失礼ってもんだぜ。うんうん、そうに違いない。【倫理の否定マッドサイエンス】を使えばいくらでもペットを復活させられるが、あいつらじゃあ役不足ってもんだ……あれ、役不足の使い方間違ってるか? まあ意味さえ通じりゃどっちでもいいよな。揚げ足取りが好きな奴は一定数いるが、俺に言わせりゃ、全員等しくクソだぜ。言葉尻を捉える暇があるなら女のケツでも追っかけた方がマシさ。エネルギーの使い方が下手くそな人間が多過ぎるって思わねえ?」
「……お喋りが好きらしいな、あんた」

 ひたすら喋り続けるテスラに苛立ちを覚え、つい口を挟んでしまう。

「おっと、すまんすまん。久しぶりに面白い奴を見つけたもんで、興奮しちまってさ……いやー、少しは落ち着かねえとな。あんまりテンション上げ過ぎると、楽しめるもんも楽しめなくなっちまう。面白い時間はできるだけ長く楽しみたいからな。力の入れ具合をミスって、一瞬で終わらせたらつまんねえ。対象年齢三歳のオモチャを大人の本気パワーで扱ったら、即ぶっ壊れちまうからな……ん? そうでもねえか? ガキ向けのオモチャって意外と安全性に配慮された頑丈なつくりになってたりするもんなー。今の例え無しで」
「……くだらないことをペラペラと、随分余裕そうじゃない」

 僕同様、ミアも苛立っているようだ。
 握る拳に力が入っている。

「お遊び感覚で街をこんなにして、まだそんなふざけた態度でいられるわけ? あなた、自分がどれだけのことをしでかしたかわかってるの?」
「おっと、説教か? いやまー、お前らの気が済むならいくらでもやりゃいいけどさ……でも俺、反省とか後悔とかしないタイプだぜ?」
「……別に、あなたみたいな下種に更生なんて期待してないわ。地獄に落ちてほしいだけよ」
「そいつは重畳。だったらやることは一つだろ」

 ニヤリと笑って、テスラはスーツの上着を脱いだ。
 彼なりの臨戦態勢だろうか……強制的に、こちらの緊張が高まる。

「あ、そうそう……殺しちまう前に、一個訊きたいことがあるんだった。お前たちの名前教えてくれよ。まずはにーちゃんから」
「……」
「おいおい無視か? 無視はまずいだろ、人として。お前らは俺のことが嫌いだろうが、こっちは結構気に入ってんだよ……名前くらい教えてくれてもいいだろ? な? な?」
「……イチカ・シリル」

 このまま黙っていたら一生喋り続けそうなので、仕方なく答える。

「イチカ・シリルね……おっけーおっけー。じゃ、次はそこのチビ」
「チビって……レヴィ・コラリスです」
「レヴィ・コラリス……お前はまあ、今のところ面白くねえから、精々頑張ってくれや」
「……好き勝手言わないでください。死ね」

 嫌悪感を隠そうともせず、レヴィが吐き捨てる。

「かははっ、活きの良いチビだ……じゃー、最後にねーちゃん」

 テスラに指さされたミアは、キッと奴を睨みつけた。

「……ミア・アインズベルよ。あなたを殺す人間の名前なんだから、嫌でも覚えてなさい」
「ミア・アインズベルね。お前も充分威勢がいい……ん? アインズベル?」

 不意に、テスラの動きが固まる。

「アインズベル、アインズベル……なーんか聞いたことあるな、その名前。どこで聞いたんだっけな~」

 頭を左右に傾けながら、テスラは顎に手を当てた。


「んん~……あっ、思い出した。クーラ・アインズベルか」


 その名前は。
 僕たち全員に、聞き覚えがあった。

「何年か前にギーラで仕事した時だったな……うんうん、間違いねえ。クソ田舎の割にでかい仕事だったからな~」
「……あなたたち、ギーラで何をしたの」

 とても静かな声で。
 ミアが尋ねる。

「何をしたのか、だって? 急に俺らに興味を持つじゃねえか。かははっ」

 テスラは笑い、

「クーラ・アインズベルの経営してた、

 当たり前のように、そう言ったのだった。

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