僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

文字の大きさ
56 / 60

倫理の否定 003

しおりを挟む



 スキルを発動する暇もなく蹂躙されている僕の目に、橙炎が映る。

「イチカから離れろ‼ 【ファイアストーム】‼」

 温かい。
 これは、ミアの炎だ。
 でも彼女の炎じゃ、こいつらに傷一つだってつけることはできない。
 ミアの持つマイナススキル、【乙女の一撃】は、与えるダメージを1にしてしまうのだから。

「「「ギエエエエエエエエエエエエエエエ‼」」」

 魔物たちが咆える。
 ダメージはなくとも、鬱陶しく燃え盛る炎に苛立ちを覚えたのだろう。
 そしてその矛先は。
 まっすぐ、ミアに向かう。

「ほらほらどうしたの! 私はここよ!」

 自分に向けられた威圧的な咆哮を意にも介さず、ミアはスキルを繰り出し続けた。

「――っ」

 まさか、囮になろうとしているのか?
 僕を助けるために?
 ミアのレベルは30……先程ドラゴンのコアを吸収したとは言え、二つか三つくらいしかレベルは上がっていないはずだ。
 その程度の防御力では、Bランクモンスターの攻撃を受け切れない。
 彼女が囮になるということは。
 即ち、命を懸けるということ。

「【ファイアトルネード】‼」

 橙の炎が渦を巻く。
 その邪魔な熱源を排除しようとブラックガーゴイルが動き、僕を取り囲む包囲網が緩んだ。
 待ち望んだ数秒の隙。

「――【神様のサイコロトリックオアトリート】‼」

 僕はまず、周りに残った四体に向けてスキルを使う。
 突然の閃光は魔物たちの視界を一瞬だけ奪い、包囲網を抜け出ることに成功した。
 もつれる足を無理矢理稼働させる。
 ブラックガーゴイルは、既にミアの眼前に迫っていた。
 急げ。
 走れ。
 ミアに何かあったら。
 僕は一生、自分を許せない!

「ミア‼」

 右手を目一杯伸ばす。
 少しでも早く、スキルを届かせるために。

「【神様のサイコロ】‼」

 閃光が飛ぶ。
 そして――

「【ファイアランス】‼」

 炎の槍が、ブラックガーゴイルを貫いた。

「次はあんたたちよ! 【ファイアストーム】!」

 続けざまに放たれた炎が、残った魔物を燃やしていく。
 灰となり、コアを撒き散らすBランクモンスターたち。
 勝負は一瞬でついた。

「……ありがとう、ミア。それから、ごめん」

 僕はミアの隣に行き、頭を下げる。
 自分の軽率な行動の所為で、仲間を危険に晒してしまった。
 一歩間違えれば、タイミングが悪ければ、ミアは死んでいたかもしれない。

「何よ、水臭いじゃない。仲間なんだから助けにいくのは当然でしょ? それに、私もたまには身体を張らないとね」

 腰をパンパンと払ってから、ミアは右手をすっと挙げる。
 その動作の意味を図りかねていると、

「何してんの。ハイタッチ!」

 ミアがにっこりと笑った。
 少し恥ずかしいが、付き合わないわけにはいかない。

「最強コンビ、イエイッ!」
「……イエイ」

 パンッと、小気味良い音が響いた。
 久しぶりのハイタッチにどぎまぎしていると、

「イチカさん! ミアさん!」

 僕らの名前を叫びながら、レヴィが早足で駆けてくる。

「ああ、レヴィ。お前は大丈夫だったか?」
「大丈夫だったか、じゃないです! 人の心配より自分の心配をしてください! っていうか無茶し過ぎです! 何回死ぬつもりですか!」
「ご、ごめんなさい……」

 物凄い剣幕だった。

「ミアさんもミアさんです! いきなり走っていったと思えば、囮になるなんて! 相手はBランクモンスターなんですよ! 無謀過ぎます!」
「ご、ごめんなさい……」

 勢いに押され、ミアも謝罪をする。
 年上二人の威厳は皆無だった。

「……まあでも、無事でよかったですよ、ほんとに。私のスキルじゃお二人を助けることが難しかったので、丸く収まってホッとしています」
「……もし僕らがピンチになったら、助けてくれたってことか?」
「当たり前のことを訊かないでください……っていうか、半分走り出してましたよ」

 やれやれと言わんばかりに肩をすくめるレヴィ。
 こいつもこいつで、仲間想いの良い奴である。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...