僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

文字の大きさ
178 / 382
第十六話

2

しおりを挟む
奈緒ちゃんがここに来るのは、あきらかに楓が目当てだ。
私が言うのもナンだけど、一体どこが気に入ったんだろうか。

「ねぇ、楓君」
「なんですか? 奈緒さん」
「あたしがこんなことを言うのは、お門違いかもしれないけど……。少し力み過ぎだよ。もう少しだけ、肩の力を抜いてもいいんじゃないかな」

奈緒ちゃんは、楓の肩に体をすり寄せてそう言った。

「そう…ですか? 僕的には、あまり意識してなかったんだけど……」

楓は、困惑の表情を浮かべる。
たしかにベースを弾いている最中の楓は、少し力み過ぎだったかもしれないけど……。
それを指摘できるのも、奈緒ちゃんだけだろうな。
どうして奈緒ちゃんが楓の家にいるのかというと。
私が楓の部屋にやってきた後、どういうわけか奈緒ちゃんが楓の家にやってきて、それ以降、楓にべったりなわけである。
それはもう、見ているこっちがジェラシーを感じてしまうくらいに。

「どうしたの、香奈? なんだか不満そうだけど……?」

奈緒ちゃんは、わざとなのかどうなのかわからないけど、思案げな表情でそう言ってきた。
私は、表面上は笑顔で返す。

「なんでもないわよ。ただちょっと、くっつきすぎなんじゃないかなって思っただけだよ」
「そうかな? 普通だと思うんだけど……」

それでも奈緒ちゃんは、キョトンとしている。
まったく自覚はないっていう感じだ。
楓もまんざらでもないのかデレデレしちゃってるし。
少しは、私の気持ちも考えてよね!
はっきりとそう言ってやりたいが、それはできない。
そんな感情的になったら、あからさまに楓を贔屓しかねないからだ。
そんなのでは、楓も困るだろうし。

「普通じゃないよ。充分くっつきすぎだよ! すぐに離れなさい!」

私は、ビシィッと指を突きつける。
私だって、我慢してるのに……。

「わかったよ。しょうがないなぁ……」

奈緒ちゃんは、いかにも残念そうな表情を浮かべ、楓から離れた。
これでやっとまともに練習できる。
そう思った矢先、再び家の呼び鈴が鳴った。

「ん? 今度は、誰だろう?」

楓はすぐに立ち上がり、そのまま部屋を後にする。
私は、楓を追いかけるようにして部屋から出た。

「待って。私も行く」
「香奈姉ちゃんは、部屋で待ってて。すぐに戻ってくるから」

しかし、すぐに楓に制止され、そう言われてしまう。
もしかしたらと思っての行動だったんだけど、楓にはすでにわかっていたのかな。

「わかった。それじゃ、部屋で待ってるね」

私の言葉を聞いて安心したのか、楓は一階にある玄関に向かっていく。
私の家ならともかく、楓の家にお客さんが来たのだから、ここは楓に任せて大丈夫か。
私は、楓の部屋に戻っていく。
再び楓の部屋に戻ると、私が何か言う前に奈緒ちゃんが口を開いた。

「もしかして美沙かな?」
「どうだろう。美沙ちゃんが来るとしたら、まず私にメールとか電話をしてくると思うんだけど……」

私は、履いてるスカートのポケットからスマホを取り出す。
内容を確認しても、メールや電話の着信が入っては……いた。
入っていたのは、一件のメールだ。
内容は──

『今から、楓君の家に行くね。香奈ちゃんには悪いけど、楓君の初めてをいただきます♪』

と、こんな感じだった。
楓の『初めて』って、一体なんなんだろうか。
私は、その場で硬直してしまう。

「………」
「どうだった?」

呆然と立ち尽くしてる私に、奈緒ちゃんが訊いてくる。

「あ、うん。美沙ちゃんからメールが入ってたよ」
「そっか。やっぱりね」

奈緒ちゃんは、フッと笑う。
奈緒ちゃんの言う『やっぱり』っていうのは、少し気になる。まさか──

「もしかして、奈緒ちゃんにもメールがあったの?」
「ううん。あたしのところには、きてないよ」
「それなら、どうして?」
「なんとなくだよ。美沙なら、やりかねないかなってね」

奈緒ちゃんは、そう言ってギターを弾き始める。
抜け駆けなら、奈緒ちゃんもやったくせに、何を言ってんだろう。
そんなことを思いながら、奈緒ちゃんのギターの演奏を聴いていた。

しばらくしないうちに、楓が部屋に戻ってくる。
案の定というか、美沙ちゃんを連れてだが──。

「やっぱり、香奈ちゃんたちも来てたんだね」

美沙ちゃんは、私たちを見て悪戯っぽい笑みを浮かべ、そう言った。
やっぱりって……。
あんな挑発的なメールを見たら、誰だって大急ぎで行きそうなものだけど。
奈緒ちゃんは、微笑を浮かべて美沙ちゃんに返す。

「あたしは香奈の後に来たから、なんともいえないかな。もしかしたら、あたしが来る前にエッチなことの一つくらいはしたんじゃないかな」
「えぇ~。そうなの?」

美沙ちゃんは、驚いた様子で傍にいた楓に視線を向ける。
そんな抜け駆けみたいなこと、楓はしてないし。
楓は、慌てふためいた様子で言った。

「僕は、そんなこと絶対にしないよ。変なことを言わないでよ!」

言いたいことは、私の代わりに楓が言ってくれたので、私から言えることは何もないと思う。
私は、黙って美沙ちゃんの反応を伺う。
美沙ちゃんは、悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「へぇ~。絶対にしないんだ。それがたとえ二人っきりでも?」

そう言って楓にくっついているあたり、美沙ちゃんも積極的に楓にアプローチを仕掛けてるな。

「ちょっ……。美沙先輩」

楓は、どうしたらいいか悩んでいる様子だった。
同じバンドメンバーだから、邪険にすることもできないだろうし。
──仕方ない。
ここは私が何とかしよう。
そう思い、私はすぐに行動に出る。しかし──
近くにいた奈緒ちゃんが、私の腕を掴んで制止した。
私は、奈緒ちゃんの行動に困惑してしまう。

「え……。奈緒ちゃん?」
「香奈。気持ちはわかるけど、もう少しだけ様子を見よう」
「でも……」
「大丈夫だって。楓君は、香奈一筋だからさ。美沙がそんな行動をしたって、楓君は絶対にブレないよ」
「そうかなぁ……」

私は、楓に視線を向ける。
普通は、そんなに積極的なアプローチをされてしまったら、まんざらでもないっていう感じになってしまうだろう。
ただでさえ、美沙ちゃんは普通に可愛い部類に入るのだから。
楓のことを信じてないってわけじゃない。
私は、楓のことが心配なのだ。

「香奈が信じてあげなくてどうするの? 楓君だって、香奈のことを信じているのに……。それに、もうお互いにエッチなことをしちゃった仲なんでしょ?」
「それは……」

私は、顔に火がついたかのように赤くなる。
たしかに楓とは、一緒にお風呂に入ったり、エッチなことをしたりと、色々やった。
それはもう、私には楓しかいないって言うくらいに。

「香奈のその顔を見たら、楓君に手を出そうだなんて思えなくなっちゃうくらいなんだから。美沙だって、そのくらいはわかってると思うよ」
「うん……。それだと安心なんだけど……」

私は、不安に思いながらも美沙ちゃんを見る。
美沙ちゃんは、何を思ったのか楓のことをギュッと抱きしめた。

「大丈夫だよ。楓君のことは、私たちみんながしっかりと支えてあげるから。楓君は、何も心配しないでやることをやりなさい。わかった?」
「う、うん。わかったよ」

楓はキョトンとした表情をしていたが、すぐに意味を理解して美沙ちゃんを抱きしめ返す。
どうやら美沙ちゃんは、楓を安心させたかったみたいだ。

「だったら、良しとするか」

そう言うと美沙ちゃんは、ゆっくりと楓から離れる。
それも名残惜しそうに……。
もしかして、美沙ちゃんも楓のことを狙ってるのかな?
もし狙ってるとしたら、完全に恋のライバルになってしまうじゃないか。
奈緒ちゃんだって、恋のライバルに近いのに……。
どっちにしても、楓は私の恋人なんだから、そんなのは絶対に許さないけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...