362 / 382
第二十九話
1
しおりを挟む
楓をデートに誘う時って、なぜか緊張してしまう。
いつもどおりにすればいいのだけど、なかなかうまくいかない。
緊張のあまり声を出すのも大変だ。
「ねぇ、弟くん」
「ん? どうしたの?」
「今日、暇かな?」
私は、いつになくどきどきしながら楓に訊いてみる。
彼はそれに対してどう返してくるだろうか。
内心ハラハラもしている。
「さすがに暇ってことはないかな……。これから夕飯の準備もあるし、バイトもあるしで──」
「そっか……」
これ以上は私はなにも言えなかった。
夕飯はともかく、バイトに関しては仕方がないと思っているからだ。
ちょっとした時間でバンド活動とかを一緒にしてもらっているから、本来なら暇ってことはないんだろうけど。
「ごめんね」
「弟くんが謝る必要はないよ。なんとなく聞いてみただけだから……。だから気にしなくてもいいよ」
「うん……」
とにかく。暇ではないことは理解したので、楓のことをデートに誘うのはやめることにする。
楓は、いかにもっていったようなくらい申し訳なさそうな顔をしていた。
「ほら。そんな顔しないの。私にだって、そういう時はあるんだから──。弟くんは、やりたいと思ったことをやるのが一番だと思うよ」
「香奈姉ちゃんは、やりたいこととかってないの?」
「そうだなぁ……。これといっては特にないかな。強いてあげれば弟くんのお世話くらい…かな?」
恥ずかしげもなくそんなことを言えてしまうのは、きっと楓のことでいっぱいだからだと思う。
もちろん自身の勉強は、もう終わらせている。
後は試験に挑むだけだ。
しかし楓は、そのことが心配なのか訊いてきた。
「試験勉強とかはもういいの?」
「うん。大体のところはもうやり終えたから、後は試験当日に受けるだけかな」
「自信のほどは?」
「半々…かな」
「そっか。さすが香奈姉ちゃんだね」
楓は、私にそう言ってくる。
実際はどうなんだろう。
半々なんだろうか?
できるだけのことをするしかないのだが、それでも不安は残る。
だからこそ私は、楓が尊敬する『私』じゃないとダメなのかもしれないが。
「弟くんは? わからないところとかってない?」
「今のところは……。特にないかな」
「そっか」
そんなことを言われて落ち込まないわけがない。
どうして楓は、素直に聞いてくれないんだろうか。
それを私が口に出しても、建前とかで押し隠してしまうのが楓の悪い癖だ。
私は、思いついたかのように楓に抱きつく。
もちろん安心させるためだ。お互いにだが──
「ちょっ。香奈姉ちゃん? なにを──」
「もう少しだけ……。このままでいさせて」
「でも……。ちょっと恥ずかしいよ」
「ちっとも恥ずかしくなんてないよ。弟くんは、私の大切なバンドメンバーなんだから。それだけはこれからも変わらないの」
これだけはやっておかないときっと後悔する。
そんな風に思ってしまった。
なぜかはわからないが……。
なんとなくっていうのは、かえって恐いものだ。
まぁ、私たち以外には誰もいないのだから、恥ずかしいもなにもない。
「だけど……」
「問答無用だよ。弟くんは、もう少しだけ私に甘えちゃいなさい」
「もしかして不安だったりするの?」
「そりゃあね。私だって1人の女の子なんだし。…不安になったりもするよ」
「だからって、甘えたりするのはちょっと違うような……」
「そこは、ほら。弟くんの気持ち次第だよ。私のことをちゃんと見ていてくれてるかどうか……」
「それはもちろん! 香奈姉ちゃんのことは、それはもうしっかりと見てるよ。たぶん……」
最後のその不安そうな一言は一体……。
いつでもとは言わないから、そういうことは自信をもって言ってほしいな。
「弟くんだしね。まぁ、大目に見ておくことにしようかな」
私は、そう言って楓から離れる。
甘えたりするっていうのは、なかなかに難しいものだ。
我ながらにして──
楓が帰ってくるまでの間というのは、なんとなく暇になったりする。
そういう時は、恋愛小説などを読んでおく。
あくまでも空想なので参考になる部分はほぼ無しに近いが、それでも興味本位で読んでいる。
エッチなシーンも多少は出ているので、楓に試してみようという気持ちは…まぁ、無いとも言えないが実際はどうだろうか。
楓は喜ぶかな?
あくまでも空想だから、やめておいたほうがいいのかな。
もしかすると理想のシチュエーションがあったりするかもしれない。
「まぁ、弟くんに限ってそんなことはないよね……。あくまでも上手くいっている男女の空想的な話だろうし……」
そんなことを1人で言いながら小説を読んでいく。
そういえば、こうして落ち着いた気持ちで本を読むのは、久しぶりな気がする。
勉強以外では、こんなことは無かったかも。
「やっぱり、適度な距離感で付き合う方がいいのかな……」
そう言ってみるものの、答えてくれる人はいない。
お姉ちゃんとしての自分と、彼女としての自分。
楓にとって、どの私が一番好きなんだろう。
この小説を読んでいると、私の普段の立ち振る舞いについて悩んでしまうことがある。
どこか積極的なところがないような気もしないでもないからだ。
もしかして私だけかな?
そんなことを思ってしまうのは──
恋愛って難しいな……。
「理恵ちゃんに勧められて読んでるけど、これは……」
面白いから読み進められるが、個人的には好きになれない女の子が多い印象だ。
恋愛小説って、こんなものだろうと思えばまだ割り切れるんだが……。
いきなりエッチな行為に及ぶのも、ちょっとどうかとも思えてしまう。誰かとは言わないけれど。
でも、何もしないというこのもどかしさが逆に面白さをだしているのかもしれない。
──楓も似たようなものだから。
「弟くんって、どんなのが好みなのかな?」
私は、ふとそう言っていた。呟くように──
いつもどおりにすればいいのだけど、なかなかうまくいかない。
緊張のあまり声を出すのも大変だ。
「ねぇ、弟くん」
「ん? どうしたの?」
「今日、暇かな?」
私は、いつになくどきどきしながら楓に訊いてみる。
彼はそれに対してどう返してくるだろうか。
内心ハラハラもしている。
「さすがに暇ってことはないかな……。これから夕飯の準備もあるし、バイトもあるしで──」
「そっか……」
これ以上は私はなにも言えなかった。
夕飯はともかく、バイトに関しては仕方がないと思っているからだ。
ちょっとした時間でバンド活動とかを一緒にしてもらっているから、本来なら暇ってことはないんだろうけど。
「ごめんね」
「弟くんが謝る必要はないよ。なんとなく聞いてみただけだから……。だから気にしなくてもいいよ」
「うん……」
とにかく。暇ではないことは理解したので、楓のことをデートに誘うのはやめることにする。
楓は、いかにもっていったようなくらい申し訳なさそうな顔をしていた。
「ほら。そんな顔しないの。私にだって、そういう時はあるんだから──。弟くんは、やりたいと思ったことをやるのが一番だと思うよ」
「香奈姉ちゃんは、やりたいこととかってないの?」
「そうだなぁ……。これといっては特にないかな。強いてあげれば弟くんのお世話くらい…かな?」
恥ずかしげもなくそんなことを言えてしまうのは、きっと楓のことでいっぱいだからだと思う。
もちろん自身の勉強は、もう終わらせている。
後は試験に挑むだけだ。
しかし楓は、そのことが心配なのか訊いてきた。
「試験勉強とかはもういいの?」
「うん。大体のところはもうやり終えたから、後は試験当日に受けるだけかな」
「自信のほどは?」
「半々…かな」
「そっか。さすが香奈姉ちゃんだね」
楓は、私にそう言ってくる。
実際はどうなんだろう。
半々なんだろうか?
できるだけのことをするしかないのだが、それでも不安は残る。
だからこそ私は、楓が尊敬する『私』じゃないとダメなのかもしれないが。
「弟くんは? わからないところとかってない?」
「今のところは……。特にないかな」
「そっか」
そんなことを言われて落ち込まないわけがない。
どうして楓は、素直に聞いてくれないんだろうか。
それを私が口に出しても、建前とかで押し隠してしまうのが楓の悪い癖だ。
私は、思いついたかのように楓に抱きつく。
もちろん安心させるためだ。お互いにだが──
「ちょっ。香奈姉ちゃん? なにを──」
「もう少しだけ……。このままでいさせて」
「でも……。ちょっと恥ずかしいよ」
「ちっとも恥ずかしくなんてないよ。弟くんは、私の大切なバンドメンバーなんだから。それだけはこれからも変わらないの」
これだけはやっておかないときっと後悔する。
そんな風に思ってしまった。
なぜかはわからないが……。
なんとなくっていうのは、かえって恐いものだ。
まぁ、私たち以外には誰もいないのだから、恥ずかしいもなにもない。
「だけど……」
「問答無用だよ。弟くんは、もう少しだけ私に甘えちゃいなさい」
「もしかして不安だったりするの?」
「そりゃあね。私だって1人の女の子なんだし。…不安になったりもするよ」
「だからって、甘えたりするのはちょっと違うような……」
「そこは、ほら。弟くんの気持ち次第だよ。私のことをちゃんと見ていてくれてるかどうか……」
「それはもちろん! 香奈姉ちゃんのことは、それはもうしっかりと見てるよ。たぶん……」
最後のその不安そうな一言は一体……。
いつでもとは言わないから、そういうことは自信をもって言ってほしいな。
「弟くんだしね。まぁ、大目に見ておくことにしようかな」
私は、そう言って楓から離れる。
甘えたりするっていうのは、なかなかに難しいものだ。
我ながらにして──
楓が帰ってくるまでの間というのは、なんとなく暇になったりする。
そういう時は、恋愛小説などを読んでおく。
あくまでも空想なので参考になる部分はほぼ無しに近いが、それでも興味本位で読んでいる。
エッチなシーンも多少は出ているので、楓に試してみようという気持ちは…まぁ、無いとも言えないが実際はどうだろうか。
楓は喜ぶかな?
あくまでも空想だから、やめておいたほうがいいのかな。
もしかすると理想のシチュエーションがあったりするかもしれない。
「まぁ、弟くんに限ってそんなことはないよね……。あくまでも上手くいっている男女の空想的な話だろうし……」
そんなことを1人で言いながら小説を読んでいく。
そういえば、こうして落ち着いた気持ちで本を読むのは、久しぶりな気がする。
勉強以外では、こんなことは無かったかも。
「やっぱり、適度な距離感で付き合う方がいいのかな……」
そう言ってみるものの、答えてくれる人はいない。
お姉ちゃんとしての自分と、彼女としての自分。
楓にとって、どの私が一番好きなんだろう。
この小説を読んでいると、私の普段の立ち振る舞いについて悩んでしまうことがある。
どこか積極的なところがないような気もしないでもないからだ。
もしかして私だけかな?
そんなことを思ってしまうのは──
恋愛って難しいな……。
「理恵ちゃんに勧められて読んでるけど、これは……」
面白いから読み進められるが、個人的には好きになれない女の子が多い印象だ。
恋愛小説って、こんなものだろうと思えばまだ割り切れるんだが……。
いきなりエッチな行為に及ぶのも、ちょっとどうかとも思えてしまう。誰かとは言わないけれど。
でも、何もしないというこのもどかしさが逆に面白さをだしているのかもしれない。
──楓も似たようなものだから。
「弟くんって、どんなのが好みなのかな?」
私は、ふとそう言っていた。呟くように──
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる