大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫

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1 追放

4 覚醒

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「……あれ?」

 俺はランの身代わりとしてブラッドドラゴンの爪に貫かれるはずだった。
 だがその爪は俺の頭の上で動きを停止させている。

「どういう……ことだ……?」

「何が起こっている……?」

 ランも俺も今起こっていることが理解できなかった。貫かれるはずの俺の体が無傷で、爪は俺の頭が止めている。
 ブラッドドラゴンは今もなお爪を俺に突き刺そうとしているが、微動だにしない。

 爪が通らないことがわかったのか、ブラッドドラゴンは尻尾で俺の体を薙ぎ払おうとした。だがまたしてもその尻尾は俺の体に当たりそこで動きを止める。

 尻尾による攻撃すらも効かなかったため、ブラッドドラゴンは炎を俺に浴びせてきた。しかしその炎も俺に傷を与えることは無かった。

「サザン……?」

「これは、どういう状況なんでしょうか……?」

 どれだけブラッドドラゴンの攻撃を受けても一切のダメージが入らない。まるで圧倒的にレベル差が開いているかのようだ。
 そこで俺は、グロスに刺された場所が完全に治っていることに気づいた。

 さっきまでは傷が残っていた。だが今は一切の傷跡が無い。
 これが表すのは、治癒能力が高くなったという事実。そして治癒能力の強化は多くの場合レベルが上がることで行われる。

 俺は咄嗟に自分のレベルを確認し、驚愕した。

「レ、レベル……90……?」

 先ほどまで10ちょっとしか無かった俺のレベルが今は90という高レベルになっている。
 であれば、先ほどからダメージを受けていないのは辻褄が合う。これほどのレベル差があればブラッドドラゴンの如何なる攻撃であれど、ダメージを食らうことは無いのだ。

「レベル90だと!?」

 ランは俺のつぶやきを聞いたのか、俺と同じように驚愕の声を上げた。

「……よし!」

 俺はブラッドドラゴンへと向かっていく。エンチャント魔法も数多く使用出来るようになっているため、レベルが上がったのは間違いない。
 その辺の小石を広い、新たに習得した即死エンチャントをかける。自分のレベル以下の相手を即死させる効果を持ったエンチャント……今の俺のレベルならブラッドドラゴンを即死させられる。

「ふんっ!」

 精一杯の力でブラッドドラゴンに投げつける。その小石はブラッドドラゴンの体を貫通し、ダンジョンの壁に深くめり込んだ。
 そしてブラッドドラゴンは即死エンチャントの効果によって塵と化した。

「……すげえなこれ」

 自分でも驚いている。これほどの力をまさか俺が身に付けることが出来るとは思わなかった。

 この後は魔物に出会うことも無く、俺とランはダンジョンを無事に脱出し正式にパーティを組むことが出来た。



「しかしサザンの急激なレベルアップは気になるな」

「ですよね。いったいなんでこんなことが起きたのか」

 俺とランはこの急激なレベルアップについて調べるため、王都にある図書館へとやってきている。ここには魔法に関することはもちろんのこと世界中の色んな情報がまとめられているため、何かしらの手がかりがあると考えたのだ。

「……む? これ、これじゃないか!?」

 ランが慌てて見せてきた本には、確かに俺と似たような情報が記されていた。

 大器晩成スキル。このスキルを持つものは獲得経験値を上昇させる代わりに、一定のレベルからレベルが上がらなくなるらしい。そして獲得した経験値量が特定の量を超えた時、その分のレベルが一気に上がるのだと言う。この本ではその現象を『覚醒』と定義している。
 このスキルは所持していることを判断する術が無いため、ほとんどの者は伸び悩むことにより覚醒が起こる前に冒険者を引退してしまうのだとか。

 このスキルによって上昇する経験値量やレベルが上がらくなるタイミングは人それぞれであるらしく、経験値量はだいたい2倍から多くて4倍程度。レベルは20後半から上がらなくなることが多いようだ。

「ということは、サザンの場合はかなり低レベルの状態でレベルが上がらなくなったということか」

「みたいですね」

 仮にそうなのであれば、俺はまだまだ強くなれるのかもしれない。
 しかし疑問も残る。俺が大器晩成型スキルを保有しているにしても、ここまでレベルが上がった例は他に無いため明らかに異常なのだ。
 
「サザンの疑問も解けたことだ。そろそろ行こうぜ?」

「行くって……どこに?」

「サザンを追放した、グロスのとこにだよ。強くなった今ならいろいろと言いたいこともあるだろう?」

 ランは、俺を追放したグロスのとこに行こうと提案した。そうだ。今の俺ならメルとリアをあの最低な男から引き離すことが出来るかもしれない。
 自分のことについて調べるのはまたの機会にして、まずはグロスの元に向かい決着をつける。すべてはそれからだ。
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