薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第七章

第二十二話 円弧の舞姫の正体 前編

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 ~アイリン視点~





『勝ったのはアイリン! 2着オグニ! 3着アイネスビジンでした!』

『人気トップスリーの激しいレースだったですね。次のレースも楽しみです』

 レースの結果が決まり、実況や解説、そして観客たちの歓声が耳に入る中、わたしは高揚感に包まれました。

 初めてのG Iレースでの優勝は、まるで夢のようです。

「いつまでボーッとしていますの?」

「優勝者は行くべき場所があるだろう?」

「行くべき場所? あ、そうでした!」

 レースでの優勝者は、この後にインタビューがあります。シャカールトレーナーは、面倒臭がってバックレているようですが、優勝者としての責務はしっかりと果たすべきですよね。

 うう、でも、さすがに緊張しちゃいます。どんなことを言われるのでしょうか? こんなことになるのなら、インタビューを受ける練習もしておくべきでした。

 一度意識すると、心臓の鼓動が早鐘を打ち、余計に緊張をしてきます。

「あう、緊張が止まりません。どうしましょう。でも、優勝者の責務として、これだけは絶対にやるべきです」

 緊張が体に現れ、右手と右足が同時に前に出る中、わたしは一度建物の中に戻り、インタビューが行われる部屋に行こうとしました。すると、一枚の紙がヒラヒラと落ちて、足元に落下します。

 何でしょうか? この紙は?

 気になったので、足元に落ちた紙を拾って開きます。それはシャカールトレーナーからのメッセージでした。

【インタビューを受けるのはお前の自由だが、バカ丸出しの発言はするなよ。お前がバカなことを言うと、トレーナーである俺まで恥をかくことになる】

「シャカールトレーナーのバカ! どうしてそんなことを言うのですか! 弟子の初インタビューなんですよ! もっと優勝したことに対しての労いの言葉や、称賛の言葉を書いても良いではないですか!」

 思わず声を上げ、少しだけシャカールトレーナーに対して怒っていると、いつの間にか緊張が解れていることに気付きます。

 あれ? なんか緊張しなくなっている? もしかして、シャカールトレーナーのことに対して怒ったからなのかな?

 何が原因で緊張しなくなったのかは分かりませんが、これでインタビューを受けることが出来ます。

 その後、インタビューが行われる部屋に行ったわたしは、記者たちから様々なことを聞かれ、その問いに答えてインタビューは滞りなく終わることが出来ました。

 インタビューが終わった後に更衣室に向かうと、アイネスビジンさんとオグニさんが居ました。

「あれ? まだいたのですか?」

「ええ、ちょっとオグニさんとお話をしておりまして。多分あなたも知らないと思いますが、円弧の舞姫をご存じですか?」

「円弧の舞姫?」

 名前からして、きっと誰かのニックネームのようなものなのでしょうが、そんな風に呼ばれている方を、わたしは知りません。

「すみません。わたしも知りません」

「そうか。円弧の舞姫と同じ学園の制服だから、学園で見ているかと思っていた。あまり認知されていないのか。これは逆に驚きだ。まぁ、良い。もし、円弧の舞姫と会う機会があったら、言伝を頼む。地方の怪物が、また君とレースがしたいと言っていたと」

「分かりました。もし、その方と出会うことができれば、伝えておきます」

「ワタクシも見かけた際にはお伝えしておきますわ。何せ、同じレースで競ったライバルからの頼みですもの。オーホホホ!」

「2人とも頼んだ。それでは、そろそろ着替えようか。互いの先生たちも待っているはずだからな」

 軽く雑談をした後、わたしが着替え終わるのを待ってもらい、わたしたちは更衣室を後にして、それぞれの集合場所へと向かっていきます。

「2人とも良くやってくれた。我が学園の走者が、1着と3着を取る好成績を収めてくれたことを学園長として誇りに思う」

 集合場所に向かうと、ルーナ学園長からのお褒めの言葉を賜ります。そんな中、わたしはシャカールトレーナーをジッと見ました。

「何だ? 俺の顔に何かついているのか?」

「いや、優勝した弟子に何か言うことがあるのではないのかな? と思いまして」

「この俺が教え込んだんだ。優勝して当たり前だ。もし、優勝できなかった時は叱ってやる言葉をたくさん考えていたがな」

「それって、わたしが負けると思っていたじゃないですか! シャカールトレーナー酷いです!」

「アハハハハ! シャカールは相変わらずだね。小さい声でアイリンのことを応援していたじゃないか『行け! 行け! 差し返せ! お前ならやれる!』って言って、横で聞いていて笑いを我慢するのに必死だったよ」

「ルーナ! テメェー、勝手に妄言を吐くな……たく、ちゃっかり聞いているんじゃねぇよ。仲間を応援するなんて、俺のキャラじゃないのに」

 途中からシャカールトレーナーがブツブツと小声で喋っていましたが、エルフであるわたしにはバッチリ聞こえていました。

 そうか。シャカールトレーナーは、わたしのことを応援してくれていたんだ。

 その事実が知れただけで。何だかわたしの心が温かくなるような気がしました。

 そして心が温かくなったところで、わたしはオグニさんの言葉を思い出します。

「そうだ。ルーナ学園長なら円弧の舞姫のことを知っていますよね?」

「円弧の舞姫? ああ、知っているさ。我が校の誇る十強走者のメンバーだからね」

「十強走者? そんなものがあるのか?」

「ああ、ワタシの学園で最強の10人さ」

「そんなものがあったのか、全然知らなかったな」

「何を言うんだい? 十強走者のナンバーツーはシャカール、君なのだから」

「俺が十強者のメンバー? そんなものに加入した覚えはないぞ」

「それもそうだろう。何せ、ワタシが勝手に決めて無許可で作ったものだからな」

 ルーナ学園長の言葉に苦笑いを浮かべます。この人は相変わらず自由だな。まぁ、でも、学園のトップなのだから。当たり前なのかも知れませんが。

「因みにナンバーワン走者はこのワタシだ」

「お前かよ! そもそも、お前は引退して走者ではないじゃないか」

「ワタシだけ仲間外れにされるのは嫌だ。いくら引退しても、ナンバーワンの座は譲れない。別に良いじゃないか。引退したとしても、未だにワタシに勝てる者などいないのだから」

 いつの間にか話が脱線しています。円弧の舞姫が学園のトップテンの実力者だと言うことは分かりました。でも、本当に知りたいのはその舞姫が誰なのかなのです。

「あのう、わたしが知りたいのは、その円弧の舞姫が誰なのかなのですが?」

「おっと、そうだったな。でも、素直に答えを教えるのは面白くない。なのでヒントをあげよう。円弧の舞姫のヒントは、君の良く知っている人物さ」

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ルーナ学園長は意地悪をします。

 わたしの知っている人に円弧の舞姫がいる。わたしの知っている人はそれほど多くはありません。こうなったら、手当たり次第に聞いてみるとしましょう。
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