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第七章

第二十三話 円弧の舞姫の正体 後編

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 ~アイリン視点~





 ツインターボステークスのレースが終わり、最速スプリンターの称号を得たわたしは、学園に戻るとシャカールトレーナーのハーレムハウス……じゃなかった。シェアハウスに向かいます。

 シャカールトレーナーは、ルーナ学園長に呼ばれて学園長室へと向かったのですが、いったい何の話をされるのでしょうか?

 なんだか妙に気になります。

「あら? アイリンちゃんじゃないですか? レースはどうでしたか?」

 シェアハウスに帰って来ると、白髪のロングの髪の先をゴムで束ねたウサギ耳の女の子が、おっとりとした口調で話し掛けてきました。彼女は玄関前を掃除中だったらしく、箒を持って掃いています。

「あ、クリープさん! 聞いてくださいよ! わたし、ついに優勝することができました! G Iレースの覇者です!」

「あらあら、それはおめでとうございます。」

 自身の頬に右手を置いて笑みを浮かべた後、クリープさんは何かを思い付いたかのように両手を叩きました。

「今日はアイリンちゃんの好物を作ってお祝いしましょう」

「本当ですか! やった!」

 好物を作ってくれると言う言葉に、わたしは思わず嬉しくなってその場で軽く跳躍しました。

「本当に偉いです。ママがよしよしして上げますね」

 こちらに近付くと、クリープさんはわたしの頭に手を置き、優しい手付きで頭を撫でられます。

「えへへ、クリープさんありがとうございます。やっぱり優勝したからには、お褒めの言葉のひとつでも言うべきですよね。シャカールトレーナーなんか、自分が教えたのだから勝って当たり前とか言って、素直に褒めてくれないのですよ」

「ふふふ、シャカール君らしいですね。なら、ママが彼の分まで頭を撫でてあげましょう」

 再び頭を撫でられ、あまりの気持ちよさに目を細めます。

 やっぱり褒められるって良いですね。次も頑張ろうって、やる気が出て来ます。

「あ、そうだ。クリープさんは円弧の舞姫をご存じですか? この学園の生徒らしいのですけど?」

 円弧の舞姫の名前を出した瞬間、クリープさんの手が止まりました。

 この反応、彼女は円弧の舞姫のことを知っていると見て良いでしょうね。

「ええ、知っていますわよ。白い俊雷、地方の怪物、そして円弧の舞姫は、可憐な白き三姉妹と呼ばれ、去年のレースを賑わせる注目の走者たちです」

 クリープさんが知っている情報を教えてくれますが、違和感を覚えます。

 あれ? 今、クリープさんは三姉妹って言っていたよね。でも、オグニさんは円弧の舞姫と言っていた。もし、本当に姉妹であれば、姉か妹と付け加えるはず?

 まぁ、そんな細かいことは良いか。わたしのすべきことは、彼女からの言伝を円弧の舞姫さんに伝えるだけですから。

「クリープさん、円弧の舞姫を知っているのなら、代わりに伝えてもらって良いですか。オグニさん……地方の怪物が、また円弧の舞姫とレースで勝負をしたいと言っていました」

「そう……オグニちゃんがそんなことを言っていたんだ。よかった。またレースに復帰してくれたのね」

 ポツリと小声で呟くクリープさんですが、エルフであるわたしにはしっかりと聞こえています。

「アイリンちゃん。言伝ありがとうございます。オグニちゃんからのメッセージ、しっかりと受け取りました」

「受け取った……ってことは……もしかして」

「ええ、円弧の舞姫ことクリープ・アストは、ママのことです」






 ~白い俊雷(サザンクロス)視点~





「へぇ、遂にオグニがレースに復帰したとタイ。こりゃあ自分ももっとトレーニングにガマダサなければ精を出さなければ、ならんタイ

 オグニがツインターボステークスに出場したと言う情報を手に入れた自分は、手が震えていた。

「オグニがケガをして、それ以来自分らはバラバラになってしまったケンから、もう3人が揃うことはないと思っておったタイ。でも、これで3人が再びレースで競うことができるタイ」

「サザンクロス君、居る?」

 扉を叩く音が聞こえ、そちらに顔を向ける。この声は母親の声タイ。

ドギャンどんな用? 自分は今からトレーニングに出ようと思っていたバイだよ

「ごめんね。今度の勝負服のデザインなのだけど、こんなのってどうかなって思って?」

 扉を開けて中に入ってきた母親の手には、ピンク色の服が握られていた。可愛らしくレースが付けられ、スカートのところはフリフリになっちょるなっている

 その勝負服を見た瞬間、頬を引き攣った。

 また母親の趣味丸出しのゴスロリ系の服になっちょるなっている

「何も言わないってことはOKってことね。なら、これで決まりね」

 呆気に取られていると、母親は何も言っていないことを暗黙の了解と認識したようで、アトゼキしないで扉を閉めないで部屋から出て行く。

「くそう! どうして母親の前だと何も言えなくなるんバイだよ! 自分は男バイ! あんなもの、いつまでも来ていられんタイ
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