【完】25年後、君と答え合わせ

こころ ゆい

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第一章 回想

光春(みつはる)②

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*****

 そこに、ドカドカいやらしい音を響かせて、祖父の宗一郎が近づいてきた。

「...千春。お前、あやつが亡くなった今、跡取りとして病院を支えろ」
「.......」

 葬式の席でする話だと思えない。本当にこの人はいつもこうだ。自分勝手で、思いやりのカケラもない。

「...おい。あれを出せ」

 カチャとカバンを開く音がして、何やら書類が取り出された。そのカバンを持っているのは、千春の父・春斗。本当なら、兄が亡くなった今、喪主として葬式を取り仕切る責任がある人間。だが、母にその役目を投げ、祖父に付き従っている。

「...これにサインしておけ」
「......」
「拒否権はない。....万が一、拒否するなら....以前した“あの約束“もなしだ」
「...最初の話と違います」
「あの時とは、状況が違う。...あの時はまだ光春が生きていた」
「.......」
「返事をしろ。千春。...ここに、サインするよな?」
「...わかりました」

 そして、研修医を終えれば、千春は祖父の病院で医者としてつとめること。跡取りとして、病院を盛り立てていくことを誓約させられた。

*******

 あっという間に兄の通夜や葬式は過ぎ、千春はまた花乃の病院に顔を出した。彼女の両親から、花乃が目を覚ましたと電話があったからだ。

「花乃?」
「...千春?」

 花乃は、ベッドに横たわったまま、酸素チューブをつけられ、顔色が良くない。だが、確かに目を開け、千春の名を呼んだ。
 彼の声がする方へ、ゆっくりと顔を傾ける。

「...良かった。花乃が目、覚まして」

 ここ数日、色々なことがありすぎて、その声は特に感情がこもっていた。

「...ごめんなさい、心配かけて」

 フルフルと首を振りながら、千春の目は潤んでいた。

「...お兄さん、残念だったわね」
「...事故だった」
「........」
「俺...兄のことほとんど知らないんだ。忙しい人だったから。ゆっくり話した記憶もない」
「...うん」
「...もっと、知りたかった。...教えて欲しかった」
「....うん」
「.......」

 それ以上何も話さない千春の方向を、花乃はじっと見つめているだけ。かける言葉が見つからなかった。

********

 数日後。花乃と両親は、その当時の担当医と対面していた。

「花乃さんの、病名がわかりました」
「え!?」

 両親はガタッと音を鳴らして椅子から立ち上がった。花乃は、今の言葉が頭に入ってこずに固まっている。

「花乃さんは...命に関わるほどの高熱が出るイアロフスキー病だと思われます。麻痺はあまり例を見ませんが、花乃さんが当時夢熱病を罹患されていたことを思うと、それらが複雑に合わさって引き起こされたのかと。非常に珍しく、世界でも数例ほど。難病指定されておりますが、ほとんどデータがなく、今のところ完治は難しいと思っていてください。薬も開発されていないので、病名はわかりましたが...状況が劇的に変化するとは...考えない方がいいかもしれません」

 希望を見出していた両親は、またもや絶望した。花乃も、「あぁ...やっぱりか」と落ち込み...言葉を発することはなかった。





 
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