24 / 53
第二章 25th Birth day
いつかの約束②
しおりを挟む
「...あ、花乃ちゃん。....私ね、行けたの」
「....ん?どこに?」
「へへ、あのね。....両親と、遊園地」
「...え、本当!?」
「うん。退院はできても、勉強とか、学校生活とか...。もう、毎日に追われて全然余裕がなくてね。情けないことに、すっかりそのことが頭から抜けてたの。....それで、何とかみんなが歩んでる日常に追いつけたかなって自分なりに、ホッとして....立ち止まった瞬間にね。思い出したんだ。遊園地に、両親を連れて行ってあげたかったんだったって」
しみじみ思い返すように話す瑠璃の声に、静かに耳を傾ける。
「...十数年かかっちゃったけど。その日は、私が全部計画して、車の運転もお父さんじゃなくて、私がしてね。サプライズで両親を連れて行ったの。おっきな遊園地!それで、まだまだ僅かなものだけど....私が稼いだお金でね、両親と乗り物乗ったり、甘いデザート食べたり」
「うん...うん....」
「...最後に、その日の思い出にお土産屋さんで写真たて買って。....今ね、リビングにその日の写真を入れて飾ってあるんだ」
「...瑠璃ちゃん...おめでとう!すごい、すごいね。瑠璃ちゃん...良かった、本当に。夢が叶って良かった」
嬉しくて、涙が出てきて、花乃はズビズビと鼻をすすりながら笑顔で瑠璃に言った。
「もう、花乃ちゃんったら。泣きすぎ...。両親もね、毎日その写真見てデレデレしてて。呆れちゃうくらいなのよ?」
明らかに嬉しそうな声で「しょうがないな」と言う瑠璃が、花乃は微笑ましかった。
******
「あ...そろそろ仕事に戻らなきゃ」
「もうそんな時間...?あっという間だったね」
「うん。でも、久しぶりに花乃ちゃんの顔見ながら話せて、良かった。...そうだ。花乃ちゃん、これ」
「ん?」
「...誕生日プレゼント。良ければ、使って?」
「わぁ...ありがとう、瑠璃ちゃん。...なんだろう?」
瑠璃に差し出されたものに、花乃が手探りで手を伸ばす。かたくて、ツルツルしていて...ひんやり金属の部品もついている。
「あ...髪留め?」
「すごい、当たりだ。あのね、これ、鼈甲でできたバレッタなの。色合いも落ち着いた琥珀色でね、花の模様が彫られてて可愛いんだよ。花乃ちゃんに似合うと思って」
「瑠璃ちゃん...嬉しい」
「ふふ、良かった。あ、今ちょうど髪の毛が編み込んであるし、つけてあげるよ」
「うん、お願いします」
瑠璃はサイドで編まれて後ろで結ばれているハーフアップの花乃の髪の毛に、鼈甲のバレッタをつけてくれた。
「可愛い!やっぱり似合うね」
「本当?ありがとう、瑠璃ちゃん。大切にするね」
「うん!今日は花乃ちゃんにも会えて、プレゼントも渡せて、大満足だ!あと数時間、仕事頑張れそうだよ」
「ふふ、瑠璃ちゃんったら。頑張ってね」
「うん!」
瑠璃がバタバタと帰り支度をする気配を感じながら、花乃が立ち上がると、千春がすぐに寄り添ってくれる。そして、瑠璃に声をかけた。
「瑠璃ちゃん、今日は急に無理言ってごめんね。来てくれてありがとう」
瑠璃が、笑って答える。
「ふふ、千春さんは“いつも“急なので。特に驚きませんよ」
(....え?...“いつも“?)
ニコニコ会話を聞いていた花乃は、その言葉にピクっと身を強張らせた。そんな様子に気づかず、二人は話し続ける。
「はは、そっか。...あ。そういえば、あいつが瑠璃ちゃんのこと気にしてた」
「...あいつ?」
「ああ。如月慎也。覚えてる?」
「....はい」
「そっか。さっき、ちょうど会う機会があってね。瑠璃ちゃんはどうしてるかって。...よく聞かれるんだよね」
「....そう、ですか」
「...うん、まぁ、それだけ。...また連絡するよ。じゃね」
「あ...はい!じゃあ...花乃ちゃん、今日はありがとう!また、絶対会いにいくから。素敵なお誕生日、過ごしてね」
二人の会話に耳を澄ませていた花乃は、再び話を振られて驚いたが....何とか笑顔を取り繕った。
「...あ、うん!こちらこそありがとう、瑠璃ちゃん。気をつけてね。おじさまとおばさまにも、よろしくね」
「もちろん。花乃ちゃんが元気だったって、両親にも伝えとく。またね!」
「...うん!またね」
そして、瑠璃とわかれた。
花乃は、遊園地の楽しげな音楽を聴きながら...しばらく瑠璃の去っていった方向を呆然と見つめていたーー。
「....ん?どこに?」
「へへ、あのね。....両親と、遊園地」
「...え、本当!?」
「うん。退院はできても、勉強とか、学校生活とか...。もう、毎日に追われて全然余裕がなくてね。情けないことに、すっかりそのことが頭から抜けてたの。....それで、何とかみんなが歩んでる日常に追いつけたかなって自分なりに、ホッとして....立ち止まった瞬間にね。思い出したんだ。遊園地に、両親を連れて行ってあげたかったんだったって」
しみじみ思い返すように話す瑠璃の声に、静かに耳を傾ける。
「...十数年かかっちゃったけど。その日は、私が全部計画して、車の運転もお父さんじゃなくて、私がしてね。サプライズで両親を連れて行ったの。おっきな遊園地!それで、まだまだ僅かなものだけど....私が稼いだお金でね、両親と乗り物乗ったり、甘いデザート食べたり」
「うん...うん....」
「...最後に、その日の思い出にお土産屋さんで写真たて買って。....今ね、リビングにその日の写真を入れて飾ってあるんだ」
「...瑠璃ちゃん...おめでとう!すごい、すごいね。瑠璃ちゃん...良かった、本当に。夢が叶って良かった」
嬉しくて、涙が出てきて、花乃はズビズビと鼻をすすりながら笑顔で瑠璃に言った。
「もう、花乃ちゃんったら。泣きすぎ...。両親もね、毎日その写真見てデレデレしてて。呆れちゃうくらいなのよ?」
明らかに嬉しそうな声で「しょうがないな」と言う瑠璃が、花乃は微笑ましかった。
******
「あ...そろそろ仕事に戻らなきゃ」
「もうそんな時間...?あっという間だったね」
「うん。でも、久しぶりに花乃ちゃんの顔見ながら話せて、良かった。...そうだ。花乃ちゃん、これ」
「ん?」
「...誕生日プレゼント。良ければ、使って?」
「わぁ...ありがとう、瑠璃ちゃん。...なんだろう?」
瑠璃に差し出されたものに、花乃が手探りで手を伸ばす。かたくて、ツルツルしていて...ひんやり金属の部品もついている。
「あ...髪留め?」
「すごい、当たりだ。あのね、これ、鼈甲でできたバレッタなの。色合いも落ち着いた琥珀色でね、花の模様が彫られてて可愛いんだよ。花乃ちゃんに似合うと思って」
「瑠璃ちゃん...嬉しい」
「ふふ、良かった。あ、今ちょうど髪の毛が編み込んであるし、つけてあげるよ」
「うん、お願いします」
瑠璃はサイドで編まれて後ろで結ばれているハーフアップの花乃の髪の毛に、鼈甲のバレッタをつけてくれた。
「可愛い!やっぱり似合うね」
「本当?ありがとう、瑠璃ちゃん。大切にするね」
「うん!今日は花乃ちゃんにも会えて、プレゼントも渡せて、大満足だ!あと数時間、仕事頑張れそうだよ」
「ふふ、瑠璃ちゃんったら。頑張ってね」
「うん!」
瑠璃がバタバタと帰り支度をする気配を感じながら、花乃が立ち上がると、千春がすぐに寄り添ってくれる。そして、瑠璃に声をかけた。
「瑠璃ちゃん、今日は急に無理言ってごめんね。来てくれてありがとう」
瑠璃が、笑って答える。
「ふふ、千春さんは“いつも“急なので。特に驚きませんよ」
(....え?...“いつも“?)
ニコニコ会話を聞いていた花乃は、その言葉にピクっと身を強張らせた。そんな様子に気づかず、二人は話し続ける。
「はは、そっか。...あ。そういえば、あいつが瑠璃ちゃんのこと気にしてた」
「...あいつ?」
「ああ。如月慎也。覚えてる?」
「....はい」
「そっか。さっき、ちょうど会う機会があってね。瑠璃ちゃんはどうしてるかって。...よく聞かれるんだよね」
「....そう、ですか」
「...うん、まぁ、それだけ。...また連絡するよ。じゃね」
「あ...はい!じゃあ...花乃ちゃん、今日はありがとう!また、絶対会いにいくから。素敵なお誕生日、過ごしてね」
二人の会話に耳を澄ませていた花乃は、再び話を振られて驚いたが....何とか笑顔を取り繕った。
「...あ、うん!こちらこそありがとう、瑠璃ちゃん。気をつけてね。おじさまとおばさまにも、よろしくね」
「もちろん。花乃ちゃんが元気だったって、両親にも伝えとく。またね!」
「...うん!またね」
そして、瑠璃とわかれた。
花乃は、遊園地の楽しげな音楽を聴きながら...しばらく瑠璃の去っていった方向を呆然と見つめていたーー。
12
あなたにおすすめの小説
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる