45 / 53
最終章 25年後、君と答え合わせ
1.写真
しおりを挟む
「...なぁ、花乃。...もし俺が....嘘をついていたら、どうする?」
「嘘?...千春、私に嘘ついてるの?」
「...はは。例え話。花乃は...どうする?...友達、やめる?」
「例え話...。そうね...もし千春が私に嘘をついていたら...ーーー」
****
ピピピピーー。
「....昔の夢、か」
目覚まし時計の高いアラーム音に、千春の意識は浮上した。パチリと目を開け、天井を見上げる。乾いた唇から、ポツリ言葉が漏れた。
「...どうしてこうも、毎日毎日。夢ばっかり見るかな...。もう忘れろよな、俺」
クシャりと寝癖のついた髪を握って、千春は体を起こし、ベッドの上で片膝を抱える。
目を閉じて脳裏に浮かぶのは、いつも同じ人物。
花乃の目と麻痺が治って、完治したと如月から連絡をもらってから.....三年の月日が流れていたーー。
「花乃....」
返事をしてくれる声も、振り返って向けられる笑顔も。ここには、もうなかった。
*****
『やぁ!千春、調子はどうだい?』
金髪に青い瞳をもつ大柄な男性が、千春の研究室の机までやってきた。
『やぁ!ジャック!元気だよ。ジャックはどうだい?』
千春は、振り返りにこやかに返事する。
『元気元気!今日も、元気すぎて、嫁さんにうるさいって叱られちまったよ』
豪快にガハハと笑う。
『はは、相変わらず仲がいいね。羨ましいよ』
千春は調子を合わせて、笑った。
『千春は男前なんだ。すぐにいい子が見つかるだろ?...ああ、もう居たか』
ジャックはニタッと笑って、千春の机を指差した。
『あ...これは』
千春がどう反応したものか迷っていたら、ジャックは返事も聞かずにまた話し始める。
『それ、ずっと飾ってるよな。どれも、同じ子だろ?...彼女かい?』
ニッと、口の端をあげてジャックがからかってきた。
『この子は...そんなんじゃないんだ。...でも』
ジャックは、そこで一旦黙ってしまった千春に首を傾げて、続きを促した。
『.....ずっと、幸せを願ってる』
ふわりと切なげに笑った千春に、ジャックは小さく息をのんだ。
千春は一度目を閉じてから....場の空気を切り替えるようにジャックに言った。
『...ところで、何か僕に用かい?ジャック』
その言葉にハッとして、ジャックが慌てて言った。
『そうだった!あの実験の測定結果って出てるかい?すぐに確かめたいことがあって』
『ああ。アレだね。もう出てるよ。...はい』
千春は、机にあるファイルから一枚の紙を取り出した。ジャックは、勢いよくその紙を受け取って、すぐに手を上にかかげる。
『サンキュー!じゃ、またな千春』
『はは、うん、またなジャック』
ジャックの後ろ姿を見送りながら、千春は机の上の写真立てに目を向けた。
そこには、花乃と千春が並んでうつる写真が数枚飾られている。どの写真も、二人は幸せそうに笑っていたーー。
*****
アメリカで最も大きい国立研究所。
そこの所長に誘われて単身渡米したのは、全て終わったあとすぐだ。
千春のしていた花乃のための研究。
その結果生まれた、花乃のための薬。母のことが判明してからは、『解毒剤』のようなものと千春は捉え、作り続けていた。
それが、宗一郎が花乃に告知した嘘の難病・イアロフスキー病を治療する薬に、姿を変えるかもしれないと所長に力説された。
そう言われてみれば、確かに症状は似ている。
だが、似て非なるものなので、結果が出るかは未知数だった。
千春と祖父の病院のニュースを聞き、薬の存在を知った所長に声をかけられ、日本に居る意味が見出せなかった千春は誘いにのった。
そして、再び研究を続けていた。
「嘘?...千春、私に嘘ついてるの?」
「...はは。例え話。花乃は...どうする?...友達、やめる?」
「例え話...。そうね...もし千春が私に嘘をついていたら...ーーー」
****
ピピピピーー。
「....昔の夢、か」
目覚まし時計の高いアラーム音に、千春の意識は浮上した。パチリと目を開け、天井を見上げる。乾いた唇から、ポツリ言葉が漏れた。
「...どうしてこうも、毎日毎日。夢ばっかり見るかな...。もう忘れろよな、俺」
クシャりと寝癖のついた髪を握って、千春は体を起こし、ベッドの上で片膝を抱える。
目を閉じて脳裏に浮かぶのは、いつも同じ人物。
花乃の目と麻痺が治って、完治したと如月から連絡をもらってから.....三年の月日が流れていたーー。
「花乃....」
返事をしてくれる声も、振り返って向けられる笑顔も。ここには、もうなかった。
*****
『やぁ!千春、調子はどうだい?』
金髪に青い瞳をもつ大柄な男性が、千春の研究室の机までやってきた。
『やぁ!ジャック!元気だよ。ジャックはどうだい?』
千春は、振り返りにこやかに返事する。
『元気元気!今日も、元気すぎて、嫁さんにうるさいって叱られちまったよ』
豪快にガハハと笑う。
『はは、相変わらず仲がいいね。羨ましいよ』
千春は調子を合わせて、笑った。
『千春は男前なんだ。すぐにいい子が見つかるだろ?...ああ、もう居たか』
ジャックはニタッと笑って、千春の机を指差した。
『あ...これは』
千春がどう反応したものか迷っていたら、ジャックは返事も聞かずにまた話し始める。
『それ、ずっと飾ってるよな。どれも、同じ子だろ?...彼女かい?』
ニッと、口の端をあげてジャックがからかってきた。
『この子は...そんなんじゃないんだ。...でも』
ジャックは、そこで一旦黙ってしまった千春に首を傾げて、続きを促した。
『.....ずっと、幸せを願ってる』
ふわりと切なげに笑った千春に、ジャックは小さく息をのんだ。
千春は一度目を閉じてから....場の空気を切り替えるようにジャックに言った。
『...ところで、何か僕に用かい?ジャック』
その言葉にハッとして、ジャックが慌てて言った。
『そうだった!あの実験の測定結果って出てるかい?すぐに確かめたいことがあって』
『ああ。アレだね。もう出てるよ。...はい』
千春は、机にあるファイルから一枚の紙を取り出した。ジャックは、勢いよくその紙を受け取って、すぐに手を上にかかげる。
『サンキュー!じゃ、またな千春』
『はは、うん、またなジャック』
ジャックの後ろ姿を見送りながら、千春は机の上の写真立てに目を向けた。
そこには、花乃と千春が並んでうつる写真が数枚飾られている。どの写真も、二人は幸せそうに笑っていたーー。
*****
アメリカで最も大きい国立研究所。
そこの所長に誘われて単身渡米したのは、全て終わったあとすぐだ。
千春のしていた花乃のための研究。
その結果生まれた、花乃のための薬。母のことが判明してからは、『解毒剤』のようなものと千春は捉え、作り続けていた。
それが、宗一郎が花乃に告知した嘘の難病・イアロフスキー病を治療する薬に、姿を変えるかもしれないと所長に力説された。
そう言われてみれば、確かに症状は似ている。
だが、似て非なるものなので、結果が出るかは未知数だった。
千春と祖父の病院のニュースを聞き、薬の存在を知った所長に声をかけられ、日本に居る意味が見出せなかった千春は誘いにのった。
そして、再び研究を続けていた。
12
あなたにおすすめの小説
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる