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孤独な狼✖︎砂時計=甘い夜?(四章の『その後』です)
2 〔完〕
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◇
「.....試すだけ。試すだけだから」
ホテルに到着して一息ついたところで、百合子は砂時計と睨めっこ。
誰にあてたものなのか。
言い訳しながら....砂時計をひっくり返す。
....ぎゅっ。
何だか目を開けていられなくなって....瞼を閉じる。
そしてーー。
「............」
.....ぱちり。
シーンとして、何の物音もしない部屋で。
おそるおそる目を開けた。
「.....はぁ~」
ーーやっぱり。そんなわけ、ないじゃない.....。
結局、目を開けても目の前には誰も立っていなかった。
と、その時ーー。
コンコン。
「...へ?」
ドアをノックする音が響いて、思わずビクッと肩を揺らした。百合子はそろりと視線を滑らせて....耳を澄ませる。
「....百合子さん?....いる?」
「....う、うそでしょ」
ガバッと立ち上がってドアに駆け寄る。
ガチャッと遠慮がちに開けば、そこにはーー。
「...黎、さん?」
「百合子さん。....良かった、会えて」
ものすごく嬉しそうな顔をした黎が立っていた。
いつも通り耳と尻尾を隠すスタイルだ。
「ど、どうして...あ、どうぞ」
「ありがとう」
中に招き入れてから、まじまじと見つめる。
やっぱり。どう見ても黎で....百合子は夢でも見ているのかと、小さく頬をつねった。
「はは、何してるの?....綺麗な肌が赤くなるよ?」
優しく目を細めて。頬をつねる百合子の手に、そっと黎の手が重なる。
百合子は、トクンと胸を鳴らしながらーー。
黎の背中の向こうに見える....テーブルの上の砂時計を見据えた。
(....あれって本物、だったんだ)
と、同時にハッとした。
(じゃあ....黎さんがここに居られるのは...)
ーーあと20分程度?
こうしている間にも時は過ぎている。
百合子は理解して、慌ててしまった。
「.....百合子さん?」
「あ....あの!黎さん....今朝は、ごめんなさい」
「........え?」
黎は、不思議そうに首を傾げている。
それでも、百合子は続けた。
「....私、予定を楽しみにしてて。お仕事だから仕方ないのに...意地悪したの....」
「意地悪....」
「....一人で行くとか....黎さんが心配するのわかってたのに」
「...........」
しゅんとしながら謝ると、黎は黙ってしまった。
「....一日、色々回ったんだけど。本当は、全然楽しめなくて。今朝のこととか...黎さんのことばっかり考えてた。ごめんなさい」
黎は目を丸くして、優しく言った。
「.....ううん。俺も、約束してたのにごめんね」
お互い謝って、二人は笑い合う。
そして、安堵した百合子がつい漏らしたのだ。
今、起きたことについてーー。
「.....おばあさんにもらった魔法の砂時計、本物で良かった。本当は信じてなかったんだけど、こうして黎さんに会って謝ることもできたし」
「....砂時計?」
黎は、再び首を傾げた。
だが、百合子は気にせず頷いて...また視線を滑らせる。
「あと20分くらい、か....。明日は必ず帰るから待っててね?」
「...........」
百合子は、黎に抱きついた。
黎は自分の背後をチラリと見て....。
(....なるほど)
ニッと口の端をあげるーー。
「....そうだね。あとちょっとみたいだし....早くしないとね」
「........へ?」
ぴたりとくっつく百合子の背に腕を回して。
ぎゅうと強く抱きしめる。
百合子の頭の上から....
とんでもなく色っぽい声が落ちてきた。
ゆるゆる黎を見上げれば....
黎は濡れた赤い舌をのぞかせて...
ペロリと舌なめずりをしている。
ドクン。
百合子の心臓が跳ねて....勝手に身体が疼き始めた。
耳元に寄せた唇が、熱い吐息とともに言葉を吹き込んでくる。
「.....百合子さん...会いたかったよ。20分間、たっぷり愛し合おうね」
「あ.......」
綺麗に笑った黎は...百合子を抱き上げベッドに運ぶ。
そしてーー。
宣言通り、愛情いっぱいの時間を過ごしーー。
気づけば.....窓から朝日が差し込んでいた。
「....な、なんで?」
「....ん?....どうしたの?」
満足げに鼻を寄せて頬に擦り合わせてくる黎を....百合子は恨めしげに見つめた。黎は....素知らぬ顔で。
百合子は、やっと真実に気づいた。
「.....黎さん?」
咎める声音で言えば、さすがに黎も観念した。
頭をぽりぽりかきながら言ったのだ。
ーー百合子さんに会いたくて、全力で仕事片付けてきたんだよね。
「~~~!気づいてたなら、教えてくれたらいいのに!」
「ははは。だって、信じてる百合子さんが可愛くて...つい」
どうやら黎は気づいていて、わざと黙っていたらしい。
「もうっ!....知らないっ!」
「.............」
「....な、なんですか?」
と、怒っても。蕩けた顔で見つめてくる黎に、百合子が若干後ずさる。
「いや....百合子さんって、怒った顔も本当に可愛いなって見惚れてた」
「なっ、何言って」
「百合子さんはどんな時でも。何をしてても可愛い。うん、俺って....幸せ者だね」
満面の笑みで笑うから、百合子の怒りは萎んでいってーー。結局、『魔法の砂時計』のことは忘れ去られていった。
百合子と黎は、昨日の分もたっぷりデートを楽しんで....もう一泊して帰っていったーー。
◇
「あの女の子、どうなったかね~。老婆心でちょいと冗談言っちゃったけど。楽しんでくれてたらはなまるだね~。ふふふふ」
今日も同じ場所に同じ姿で座っていた老婆は、ニタァと笑って呟いたーー。
「.....試すだけ。試すだけだから」
ホテルに到着して一息ついたところで、百合子は砂時計と睨めっこ。
誰にあてたものなのか。
言い訳しながら....砂時計をひっくり返す。
....ぎゅっ。
何だか目を開けていられなくなって....瞼を閉じる。
そしてーー。
「............」
.....ぱちり。
シーンとして、何の物音もしない部屋で。
おそるおそる目を開けた。
「.....はぁ~」
ーーやっぱり。そんなわけ、ないじゃない.....。
結局、目を開けても目の前には誰も立っていなかった。
と、その時ーー。
コンコン。
「...へ?」
ドアをノックする音が響いて、思わずビクッと肩を揺らした。百合子はそろりと視線を滑らせて....耳を澄ませる。
「....百合子さん?....いる?」
「....う、うそでしょ」
ガバッと立ち上がってドアに駆け寄る。
ガチャッと遠慮がちに開けば、そこにはーー。
「...黎、さん?」
「百合子さん。....良かった、会えて」
ものすごく嬉しそうな顔をした黎が立っていた。
いつも通り耳と尻尾を隠すスタイルだ。
「ど、どうして...あ、どうぞ」
「ありがとう」
中に招き入れてから、まじまじと見つめる。
やっぱり。どう見ても黎で....百合子は夢でも見ているのかと、小さく頬をつねった。
「はは、何してるの?....綺麗な肌が赤くなるよ?」
優しく目を細めて。頬をつねる百合子の手に、そっと黎の手が重なる。
百合子は、トクンと胸を鳴らしながらーー。
黎の背中の向こうに見える....テーブルの上の砂時計を見据えた。
(....あれって本物、だったんだ)
と、同時にハッとした。
(じゃあ....黎さんがここに居られるのは...)
ーーあと20分程度?
こうしている間にも時は過ぎている。
百合子は理解して、慌ててしまった。
「.....百合子さん?」
「あ....あの!黎さん....今朝は、ごめんなさい」
「........え?」
黎は、不思議そうに首を傾げている。
それでも、百合子は続けた。
「....私、予定を楽しみにしてて。お仕事だから仕方ないのに...意地悪したの....」
「意地悪....」
「....一人で行くとか....黎さんが心配するのわかってたのに」
「...........」
しゅんとしながら謝ると、黎は黙ってしまった。
「....一日、色々回ったんだけど。本当は、全然楽しめなくて。今朝のこととか...黎さんのことばっかり考えてた。ごめんなさい」
黎は目を丸くして、優しく言った。
「.....ううん。俺も、約束してたのにごめんね」
お互い謝って、二人は笑い合う。
そして、安堵した百合子がつい漏らしたのだ。
今、起きたことについてーー。
「.....おばあさんにもらった魔法の砂時計、本物で良かった。本当は信じてなかったんだけど、こうして黎さんに会って謝ることもできたし」
「....砂時計?」
黎は、再び首を傾げた。
だが、百合子は気にせず頷いて...また視線を滑らせる。
「あと20分くらい、か....。明日は必ず帰るから待っててね?」
「...........」
百合子は、黎に抱きついた。
黎は自分の背後をチラリと見て....。
(....なるほど)
ニッと口の端をあげるーー。
「....そうだね。あとちょっとみたいだし....早くしないとね」
「........へ?」
ぴたりとくっつく百合子の背に腕を回して。
ぎゅうと強く抱きしめる。
百合子の頭の上から....
とんでもなく色っぽい声が落ちてきた。
ゆるゆる黎を見上げれば....
黎は濡れた赤い舌をのぞかせて...
ペロリと舌なめずりをしている。
ドクン。
百合子の心臓が跳ねて....勝手に身体が疼き始めた。
耳元に寄せた唇が、熱い吐息とともに言葉を吹き込んでくる。
「.....百合子さん...会いたかったよ。20分間、たっぷり愛し合おうね」
「あ.......」
綺麗に笑った黎は...百合子を抱き上げベッドに運ぶ。
そしてーー。
宣言通り、愛情いっぱいの時間を過ごしーー。
気づけば.....窓から朝日が差し込んでいた。
「....な、なんで?」
「....ん?....どうしたの?」
満足げに鼻を寄せて頬に擦り合わせてくる黎を....百合子は恨めしげに見つめた。黎は....素知らぬ顔で。
百合子は、やっと真実に気づいた。
「.....黎さん?」
咎める声音で言えば、さすがに黎も観念した。
頭をぽりぽりかきながら言ったのだ。
ーー百合子さんに会いたくて、全力で仕事片付けてきたんだよね。
「~~~!気づいてたなら、教えてくれたらいいのに!」
「ははは。だって、信じてる百合子さんが可愛くて...つい」
どうやら黎は気づいていて、わざと黙っていたらしい。
「もうっ!....知らないっ!」
「.............」
「....な、なんですか?」
と、怒っても。蕩けた顔で見つめてくる黎に、百合子が若干後ずさる。
「いや....百合子さんって、怒った顔も本当に可愛いなって見惚れてた」
「なっ、何言って」
「百合子さんはどんな時でも。何をしてても可愛い。うん、俺って....幸せ者だね」
満面の笑みで笑うから、百合子の怒りは萎んでいってーー。結局、『魔法の砂時計』のことは忘れ去られていった。
百合子と黎は、昨日の分もたっぷりデートを楽しんで....もう一泊して帰っていったーー。
◇
「あの女の子、どうなったかね~。老婆心でちょいと冗談言っちゃったけど。楽しんでくれてたらはなまるだね~。ふふふふ」
今日も同じ場所に同じ姿で座っていた老婆は、ニタァと笑って呟いたーー。
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