【13章まで完結】25人の花嫁候補から、獣人の愛され花嫁に選ばれました。

こころ ゆい

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孤独な狼✖︎砂時計=甘い夜?(四章の『その後』です)

2 〔完〕

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「.....試すだけ。試すだけだから」

 ホテルに到着して一息ついたところで、百合子は砂時計と睨めっこ。

 誰にあてたものなのか。
 言い訳しながら....砂時計をひっくり返す。

 ....ぎゅっ。

 何だか目を開けていられなくなって....瞼を閉じる。

 そしてーー。

「............」

 .....ぱちり。

 シーンとして、何の物音もしない部屋で。
 おそるおそる目を開けた。

「.....はぁ~」

 ーーやっぱり。そんなわけ、ないじゃない.....。

 結局、目を開けても目の前には誰も立っていなかった。

 と、その時ーー。

 コンコン。

「...へ?」

 ドアをノックする音が響いて、思わずビクッと肩を揺らした。百合子はそろりと視線を滑らせて....耳を澄ませる。

「....百合子さん?....いる?」
「....う、うそでしょ」

 ガバッと立ち上がってドアに駆け寄る。

 ガチャッと遠慮がちに開けば、そこにはーー。

「...黎、さん?」
「百合子さん。....良かった、会えて」

 ものすごく嬉しそうな顔をした黎が立っていた。
 いつも通り耳と尻尾を隠すスタイルだ。

「ど、どうして...あ、どうぞ」
「ありがとう」

 中に招き入れてから、まじまじと見つめる。
 やっぱり。どう見ても黎で....百合子は夢でも見ているのかと、小さく頬をつねった。

「はは、何してるの?....綺麗な肌が赤くなるよ?」

 優しく目を細めて。頬をつねる百合子の手に、そっと黎の手が重なる。

 百合子は、トクンと胸を鳴らしながらーー。
 黎の背中の向こうに見える....テーブルの上の砂時計を見据えた。

(....あれって本物、だったんだ)

 と、同時にハッとした。

(じゃあ....黎さんがここに居られるのは...)

 ーーあと20分程度?

 こうしている間にも時は過ぎている。
 百合子は理解して、慌ててしまった。

「.....百合子さん?」
「あ....あの!黎さん....今朝は、ごめんなさい」
「........え?」

 黎は、不思議そうに首を傾げている。
 それでも、百合子は続けた。

「....私、予定を楽しみにしてて。お仕事だから仕方ないのに...意地悪したの....」
「意地悪....」
「....一人で行くとか....黎さんが心配するのわかってたのに」
「...........」

 しゅんとしながら謝ると、黎は黙ってしまった。

「....一日、色々回ったんだけど。本当は、全然楽しめなくて。今朝のこととか...黎さんのことばっかり考えてた。ごめんなさい」

 黎は目を丸くして、優しく言った。

「.....ううん。俺も、約束してたのにごめんね」

 お互い謝って、二人は笑い合う。
 そして、安堵した百合子がつい漏らしたのだ。
 今、起きたことについてーー。

「.....おばあさんにもらった魔法の砂時計、本物で良かった。本当は信じてなかったんだけど、こうして黎さんに会って謝ることもできたし」
「....砂時計?」

 黎は、再び首を傾げた。
 だが、百合子は気にせず頷いて...また視線を滑らせる。

「あと20分くらい、か....。明日は必ず帰るから待っててね?」
「...........」

 百合子は、黎に抱きついた。
 黎は自分の背後をチラリと見て....。

(....なるほど)

 ニッと口の端をあげるーー。

「....そうだね。あとちょっとみたいだし....早くしないとね」
「........へ?」

 ぴたりとくっつく百合子の背に腕を回して。
 ぎゅうと強く抱きしめる。

 百合子の頭の上から....
 とんでもなく色っぽい声が落ちてきた。

 ゆるゆる黎を見上げれば....
 黎は濡れた赤い舌をのぞかせて...
 ペロリと舌なめずりをしている。

 ドクン。

 百合子の心臓が跳ねて....勝手に身体が疼き始めた。
 耳元に寄せた唇が、熱い吐息とともに言葉を吹き込んでくる。

「.....百合子さん...会いたかったよ。20分間、たっぷり愛し合おうね」

「あ.......」

 綺麗に笑った黎は...百合子を抱き上げベッドに運ぶ。
 そしてーー。
 宣言通り、愛情いっぱいの時間を過ごしーー。

 気づけば.....窓から朝日が差し込んでいた。

「....な、なんで?」
「....ん?....どうしたの?」

 満足げに鼻を寄せて頬に擦り合わせてくる黎を....百合子は恨めしげに見つめた。黎は....素知らぬ顔で。
 百合子は、やっと真実に気づいた。

「.....黎さん?」

 咎める声音で言えば、さすがに黎も観念した。
 頭をぽりぽりかきながら言ったのだ。

 ーー百合子さんに会いたくて、全力で仕事片付けてきたんだよね。

「~~~!気づいてたなら、教えてくれたらいいのに!」
「ははは。だって、信じてる百合子さんが可愛くて...つい」

 どうやら黎は気づいていて、わざと黙っていたらしい。

「もうっ!....知らないっ!」
「.............」
「....な、なんですか?」

 と、怒っても。蕩けた顔で見つめてくる黎に、百合子が若干後ずさる。

「いや....百合子さんって、怒った顔も本当に可愛いなって見惚れてた」
「なっ、何言って」
「百合子さんはどんな時でも。何をしてても可愛い。うん、俺って....幸せ者だね」

 満面の笑みで笑うから、百合子の怒りは萎んでいってーー。結局、『魔法の砂時計』のことは忘れ去られていった。

 百合子と黎は、昨日の分もたっぷりデートを楽しんで....もう一泊して帰っていったーー。



「あの女の子、どうなったかね~。老婆心でちょいと冗談言っちゃったけど。楽しんでくれてたらはなまるだね~。ふふふふ」

 今日も同じ場所に同じ姿で座っていた老婆は、ニタァと笑って呟いたーー。
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