3 / 96
本編
リヒトール回想
しおりを挟む
それは5年ほど前、私はセルジオ王国の宮殿で商談をしていた、24歳の時だ。
国相手となると規模の大きい商談となる。
もちろん、マクレンジー商会長の私、リヒトール・マクレンジーが出向かざるを得ない。
なにより、今回は軍備補強なので、機密度も高く、利益率も高い。
ヒステン王国の巨大な富を誇る商家に生まれた私は、平民にも関わらず家のおかげで、様々な教育をうけ、ルクティリア帝国にも留学した。
そして運にも恵まれ、マクレンジー商会は益々繁栄を続け、動かす金も小さな国以上になってる。
扱うのは農産、海産物から、大砲、軍艦まで、なんでも有だ。
人間さえも傭兵として売る。
各国の貴族や王族、国までもが債務者だ。
債務不履行に落ちいった貴族から、取り上げた爵位もいくつかあるが、所詮は私は平民。
有り余る金を持つ平民の私に向けられる目はいろいろだ。
媚びる、妬む、蔑むそんなことばかりだ、表面上は取り繕ってはいるが、そんなものを気にするほど、きれいな人間ではない自覚もある。
まっとうでない商売も多くしてきたせいで、敵も多く、命を狙われることも覚えてはいないほだ。
他人からは黒い血が流れてるんじゃないかと言われる程、情を考慮にいれない。
そんなもの金になるわけでもないし、不都合の方が多い。
ただ、見かけだけは、父が金できれいな母を買ったおかげで、整ってる。
借金のかたに、貴族の娘を取り上げたらしい。
今夜のうちに、パーバル海を渡る船に乗り込まないと、明日のルクティリア帝国の商談に間に合わない。
このセルジオ王国の隣国の、ブリューダル王国では圧政で国民が苦しみ、不穏な動きが見受けられることもあって、国境警備の補強が最優先とされ、今回の商談は早く合意にできた。
後は納期を早めるために、運送経路と警備のシュミレーションを頭の中でかいていたら、小さな声が聞こえた。
突然足を止めた私に、警備の私兵が緊張する。
そこには寝起きの天使がいた。
けぶるシルバーブロンドにアメジストの瞳は潤んでいる。
どうやら、廊下の側の花壇の片隅で昼寝をしていたらしい。
10歳を超えたぐらいだろうか。すでに美貌と言えるほどの美しさがある。
「お兄様はだぁれ?」
少女特有の清廉さがうかがい知れる、宝石類をいっさい付けてないのがいい。
「私はリヒトール・マクレンジーです。かわいい姫君のお名をうかがっても?」
姫はあっという顔をした。この年で、私の名前を知っている外国の姫君。
ただの姫君じゃないようだ。
「デュバル公爵の長女シーリアといいます。お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありません。」
この国の宰相である、デュバル公爵も嫡男も銀髪だった、公爵家の血筋か。
流れる髪が光をはじいて薄いピンク色に染まる、稀有な髪だ。
「いえ、何も見てませんよ。シーリア姫。」
笑顔の姫に見とれてしまったのは、仕方のないことだ。これほどの美貌なのだから。
「ありがとうございます。黒髪の素敵な紳士様。」
思わずつられて笑ってしまったのは、何年ぶりだろう。
殺伐とした商売の世界で、見たくもないものばかり見てきた。
優しい人間では、商会をここまで大きくできなかった。
まだこれからも大きくなる、そして私はもっと怖い人間になる。
「こんな処にお一人でいるのは危険です。人のいるとこまで、エスコートさせて下さい。」
「お願いします。」
多分、彼女は幼くても、私の事を知るだけの知識を持っている。それは商人としての私の事を。
人々が恐れる非情のリヒトール・マクレンジーの事を。
何の躊躇もなく、媚びることなく私の腕に手をかける姫。
子供だからではない、豪胆なのだ、彼女は。
自分の容姿を知らないわけではあるまいに、こんなとこで一人でいるとは、面白い。
危険も楽しんでいるかのような姫君、誰もが君に手をだせないのを知っているかのようだ。
会話もなく、王宮を進んでいく、それは心地よい静寂、姫は1人だが、私は護衛と側近を連れている。
この小さな姫が物怖じすることなく、淡々と歩んでいく。
私に腕を預けて、クスクス笑っているようだ、大した度胸だとつられてしまった。
側近のケインズが私を見て驚いてる、私でも楽しいと笑うさ。
別れ際に振り返った姫に、心が跳ねた。
幼くても女だ。
あれは、私のものだ。
計ったように、ケインズが寄って来た。
「シーリア・デ・デュバル調べろ。」
自分でも驚くぐらいの低い声だった。
父は母を買った。
私も妻を買うことにしよう。
国相手となると規模の大きい商談となる。
もちろん、マクレンジー商会長の私、リヒトール・マクレンジーが出向かざるを得ない。
なにより、今回は軍備補強なので、機密度も高く、利益率も高い。
ヒステン王国の巨大な富を誇る商家に生まれた私は、平民にも関わらず家のおかげで、様々な教育をうけ、ルクティリア帝国にも留学した。
そして運にも恵まれ、マクレンジー商会は益々繁栄を続け、動かす金も小さな国以上になってる。
扱うのは農産、海産物から、大砲、軍艦まで、なんでも有だ。
人間さえも傭兵として売る。
各国の貴族や王族、国までもが債務者だ。
債務不履行に落ちいった貴族から、取り上げた爵位もいくつかあるが、所詮は私は平民。
有り余る金を持つ平民の私に向けられる目はいろいろだ。
媚びる、妬む、蔑むそんなことばかりだ、表面上は取り繕ってはいるが、そんなものを気にするほど、きれいな人間ではない自覚もある。
まっとうでない商売も多くしてきたせいで、敵も多く、命を狙われることも覚えてはいないほだ。
他人からは黒い血が流れてるんじゃないかと言われる程、情を考慮にいれない。
そんなもの金になるわけでもないし、不都合の方が多い。
ただ、見かけだけは、父が金できれいな母を買ったおかげで、整ってる。
借金のかたに、貴族の娘を取り上げたらしい。
今夜のうちに、パーバル海を渡る船に乗り込まないと、明日のルクティリア帝国の商談に間に合わない。
このセルジオ王国の隣国の、ブリューダル王国では圧政で国民が苦しみ、不穏な動きが見受けられることもあって、国境警備の補強が最優先とされ、今回の商談は早く合意にできた。
後は納期を早めるために、運送経路と警備のシュミレーションを頭の中でかいていたら、小さな声が聞こえた。
突然足を止めた私に、警備の私兵が緊張する。
そこには寝起きの天使がいた。
けぶるシルバーブロンドにアメジストの瞳は潤んでいる。
どうやら、廊下の側の花壇の片隅で昼寝をしていたらしい。
10歳を超えたぐらいだろうか。すでに美貌と言えるほどの美しさがある。
「お兄様はだぁれ?」
少女特有の清廉さがうかがい知れる、宝石類をいっさい付けてないのがいい。
「私はリヒトール・マクレンジーです。かわいい姫君のお名をうかがっても?」
姫はあっという顔をした。この年で、私の名前を知っている外国の姫君。
ただの姫君じゃないようだ。
「デュバル公爵の長女シーリアといいます。お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありません。」
この国の宰相である、デュバル公爵も嫡男も銀髪だった、公爵家の血筋か。
流れる髪が光をはじいて薄いピンク色に染まる、稀有な髪だ。
「いえ、何も見てませんよ。シーリア姫。」
笑顔の姫に見とれてしまったのは、仕方のないことだ。これほどの美貌なのだから。
「ありがとうございます。黒髪の素敵な紳士様。」
思わずつられて笑ってしまったのは、何年ぶりだろう。
殺伐とした商売の世界で、見たくもないものばかり見てきた。
優しい人間では、商会をここまで大きくできなかった。
まだこれからも大きくなる、そして私はもっと怖い人間になる。
「こんな処にお一人でいるのは危険です。人のいるとこまで、エスコートさせて下さい。」
「お願いします。」
多分、彼女は幼くても、私の事を知るだけの知識を持っている。それは商人としての私の事を。
人々が恐れる非情のリヒトール・マクレンジーの事を。
何の躊躇もなく、媚びることなく私の腕に手をかける姫。
子供だからではない、豪胆なのだ、彼女は。
自分の容姿を知らないわけではあるまいに、こんなとこで一人でいるとは、面白い。
危険も楽しんでいるかのような姫君、誰もが君に手をだせないのを知っているかのようだ。
会話もなく、王宮を進んでいく、それは心地よい静寂、姫は1人だが、私は護衛と側近を連れている。
この小さな姫が物怖じすることなく、淡々と歩んでいく。
私に腕を預けて、クスクス笑っているようだ、大した度胸だとつられてしまった。
側近のケインズが私を見て驚いてる、私でも楽しいと笑うさ。
別れ際に振り返った姫に、心が跳ねた。
幼くても女だ。
あれは、私のものだ。
計ったように、ケインズが寄って来た。
「シーリア・デ・デュバル調べろ。」
自分でも驚くぐらいの低い声だった。
父は母を買った。
私も妻を買うことにしよう。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理
SAI
ファンタジー
魔法が当たり前に存在する世界で17歳の美少女ライファは最低ランクの魔力しか持っていない。夢で見たレシピを再現するため、魔女の家で暮らしながら料理を作る日々を過ごしていた。
低い魔力でありながら神からの贈り物とされるスキルを持つが故、国を揺るがす大きな渦に巻き込まれてゆく。
恋愛×料理×調合
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
古堂 素央
恋愛
【完結】
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。
階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。
しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。
ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?
悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!
黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる