ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿

文字の大きさ
28 / 81

28任命

しおりを挟む
 ルイの恐れが現実になったのは、それから数日後のことである。王妃ミランダに呼び出され、厳粛な場で彼女との面会が行われた。
 通常のお付きに加えて、女官らしい人が王妃の周りに多くいる。お付きと、ルイの侍女たちと、女官とが混在するややこしい雰囲気。会談するには少しばかり目線が忙しかった。

「調子はどう?」

 予想に反して穏やかな談話だった。心がこもっていないが、その素振りだけ見せてくる。ルイはにこやかに王妃へ対応していった。

「国王陛下はあなたに期待しているわ。レオポルドが奮励努力するようになったのは、あなたがそばに居たからだと」

「身に余るお言葉ですが、大げさにございます。私は運よく殿下の妻になれただけに過ぎません」

「謙遜するのね。いいわ、すごく模範的で」

 レオポルドの親も同然だと、王妃はとんでもない賛美を相手に言い放つ。とんでもないことだ。彼女は子の親といっても、王子にはすでに他人行儀な言い回しが多く、それもルイを驚嘆とさせた。

「野外授業で貴族の子どもたちを育てているそうじゃない。よほど働き者なのね」

「お褒めにあずかり光栄にございます。学校の真似事をしてたら、気づいたらあのような規模になってしまい」

「ふふ、継続は力なりとはよく言ったものね」

 児童が育てば、国にそれだけ貢献してくれる。ルイのことはともかくレオポルドの後ろ盾を作る意味でも、野外学校の影響力は計り知れない。王宮の者からしたら、ルイは無意識でもレオポルド傘下の貴族を日々増やしているといえた。

「でもあまり働き過ぎるのもいけないわ。王宮は変化に目ざといから、ほどほどにね」

「どういうことでしょう?」

 含み笑いの正体を、ルイは知らない。まさか自分がレオポルドのシンパを生み出しているなんてことすらも。

「そんな熱心なあなたに、一個だけ頼みごとがあるわ」

 王妃が姿勢を正す。のほほんとしていた表情が一瞬で切り替わり、ルイは瞬きした。

「レオポルドの閨教育を任せたいのだけど」

 ルイの目が点になる。前触れはほとんどなく、不意打ちのような頼みに辟易とする。他方で周りの従者たちは、口を綻ばせ、祝福したそうな空気をまとい出した。
 夫婦としては未成熟で、無二の友としても最近は疑わしい。

「私よりも適役がいるのでは」

 そうだ。男の自分よりも王子を満たすことのできる人がいるはず。乳母でも、女官の誰かでもいいではないか。レオポルドのことを懇切丁寧に相手できる人の方がはるかに良いだろう。

「いないわ。あなただけが求められているの」

「そんな。そんなことがあるわけ」

「王子たっての希望なの。申し訳ないけど、この件はどうしても受け入れてほしいわ」

 宮の儀礼なのよ、と強い声がかかり、ルイは厳しい顔つきをした。だからこそ男では役不足だと忠告したのだ。

 女性らしい豊かな身体つきも、男を誘える肢体も振る舞いも乏しい。顔が多少良くても、若くて初々しい美女には圧倒的に劣る。比べられる対象も、立つ土俵もおかしいこともルイは承知している。

 王妃は涼しげな顔で、相手が頷くのを待っていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...