60 / 70
第29話 ②
しおりを挟む
「いらっしゃい、アンちゃん!」
「楽しみに待っていたのよ!」
「ささ、早く中に入りなさいな。馬車の中は寒かったでしょう?」
フィーネちゃんと話していると、お姉様方までわざわざお迎えに来てくれた。
「いえ、とても快適でしたよ。馬車まで用意していただき有難うございます!」
「お店からここまで歩かせられないからね~」
「今日は荷物があったので本当に助かりました。あ、これ約束していたプレッツヒェンです。お口に合えば良いのですが」
「まあ! これが噂のプレッツヒェンね! こんなにたくさん焼いてきてくれたの?!」
「嬉しい! お茶と一緒にいただきましょう!」
「良い香りね~! 早く食べたいわ~~!」
わいわいと賑やかにお喋りしながら、お姉様方とテラスへ移動する。
テラスにはすでにお茶会の用意がされていて、お菓子や軽食が並べられていた。
席についたタイミングで使用人さんが私の前に、紅茶が入ったカップを置いてくれる。絶妙なタイミングはもはや職人技だと思う。
そんな職人的な使用人さんが淹れてくれたお茶はとても香りが良くて、高級な茶葉だということが一口飲んだけですぐにわかった。
(うわぁ……! 美味しい……!)
私が紅茶の美味しさに感動していると、使用人さんが自作のプレッツヒェンを綺麗にお皿に盛り付けて持ってきてくれた。
素人が作ったプレッツヒェンと一緒に並べられた高級なお茶が、あまりにも釣り合わなさすぎて勿体なく思ってしまう。
「これですわ! わたくし、このプレッツヒェンが食べたかったのですわ!」
「あら、美味しそう! これはクラテールが入っているのかしら?」
「あ、はい! クラテールをいれたものを何種類か作ってみました」
「アンさんのプレッツヒェンは美味しいだけじゃありませんのよ! 食べたら元気になれますのよ!」
フィーネちゃんは私のプレッツヒェンをかなりお気に召してくれているようだ。こんなに喜んで貰えるなら、朝早く起きて作った甲斐があるというものだ。
「これはテューミアーンが入っているんだけど、フィーネちゃんは初めてじゃないかな?」
「まあ! テューミアーン入りですの?! これは絶対いただきますわ! 他には何が入っているんですの?」
「後は……ディールとマヨーラム、フェンケルかな。ローゼマリンもあるよ。」
定番のプレーンの他に、今回は少しスパイシーなプレッツヒェンを作ってみた。きっと花束みたいにお姉様方の味の好みもバラバラだろうと考えたのだ。
「まあ! 甘さ控えめで香ばしいわね! すごくお茶に合うわ!」
「あらあら、これはフェンケルが入っているのかしら? エスニックな香りね! 美味しいじゃない!」
「この存在を隠していたヴェルナーの罪は重いわね」
「美味しい~~! 独り占めしたくなる気持ちはわかるけどね~~!」
「アンさん! テューミアーン入りもすごく美味しいですわ! テューミアーンのスッキリとした風味がたまりませんわ!」
お姉様方にもプレッツヒェンは好評でとても嬉しい。
でも流石にこればっかりも飽きるだろうから、違うお菓子にも挑戦してみたいけれど。
「……ねぇ、アンさん。聞きたいことがあるんだけど」
「はい? 何でしょう?」
「その髪留め、とても可愛いわね。どこのお店の商品かしら?」
「そうそう、わたしもずっと気になってたのよ」
「綺麗な髪留めね。珍しい意匠だけれど、何の花かしら?」
「あ、これはマイグレックヒェンっていう花です。白い蕾のような花が鈴なりに咲いてとても可愛いんですよ。この髪留めはいただきものなので、お店はわからないんです……すみません」
「まあ。初めて聞く花ね。何か意味があるのかしら?」
「花言葉はわからないけど、髪留めの贈り物は確か、<魔除け>とか<貴女を守りたい>って意味じゃなかったかしら?」
「あらあらまあまあ! アンちゃんってば、そんな良い人がいたの?」
「だって可愛いもの。恋人がいない方がおかしいわよ」
「……プレッツヒェンを独り占めした罰ね~。アイツも可哀想に……」
お姉様方が何か勘違いしているようなので、私は慌てて訂正させてもらう。
「あ! いえ、これはお守りだと言っていました! 危害を加えようとする人から守ってくれるそうなので、魔除けの方の意味だと思います!」
意匠がマイグレックヒェンなのも、王女様やヘルムフリートさん関係だろうし……。
きっとジルさんにとってそんなに深い意味は無いと思う。
* * * * * *
❀名前解説❀
テューミアーン→タイム
マヨーラム→マジョラム
ディール→ディル
フェンケル→フェンネル
「楽しみに待っていたのよ!」
「ささ、早く中に入りなさいな。馬車の中は寒かったでしょう?」
フィーネちゃんと話していると、お姉様方までわざわざお迎えに来てくれた。
「いえ、とても快適でしたよ。馬車まで用意していただき有難うございます!」
「お店からここまで歩かせられないからね~」
「今日は荷物があったので本当に助かりました。あ、これ約束していたプレッツヒェンです。お口に合えば良いのですが」
「まあ! これが噂のプレッツヒェンね! こんなにたくさん焼いてきてくれたの?!」
「嬉しい! お茶と一緒にいただきましょう!」
「良い香りね~! 早く食べたいわ~~!」
わいわいと賑やかにお喋りしながら、お姉様方とテラスへ移動する。
テラスにはすでにお茶会の用意がされていて、お菓子や軽食が並べられていた。
席についたタイミングで使用人さんが私の前に、紅茶が入ったカップを置いてくれる。絶妙なタイミングはもはや職人技だと思う。
そんな職人的な使用人さんが淹れてくれたお茶はとても香りが良くて、高級な茶葉だということが一口飲んだけですぐにわかった。
(うわぁ……! 美味しい……!)
私が紅茶の美味しさに感動していると、使用人さんが自作のプレッツヒェンを綺麗にお皿に盛り付けて持ってきてくれた。
素人が作ったプレッツヒェンと一緒に並べられた高級なお茶が、あまりにも釣り合わなさすぎて勿体なく思ってしまう。
「これですわ! わたくし、このプレッツヒェンが食べたかったのですわ!」
「あら、美味しそう! これはクラテールが入っているのかしら?」
「あ、はい! クラテールをいれたものを何種類か作ってみました」
「アンさんのプレッツヒェンは美味しいだけじゃありませんのよ! 食べたら元気になれますのよ!」
フィーネちゃんは私のプレッツヒェンをかなりお気に召してくれているようだ。こんなに喜んで貰えるなら、朝早く起きて作った甲斐があるというものだ。
「これはテューミアーンが入っているんだけど、フィーネちゃんは初めてじゃないかな?」
「まあ! テューミアーン入りですの?! これは絶対いただきますわ! 他には何が入っているんですの?」
「後は……ディールとマヨーラム、フェンケルかな。ローゼマリンもあるよ。」
定番のプレーンの他に、今回は少しスパイシーなプレッツヒェンを作ってみた。きっと花束みたいにお姉様方の味の好みもバラバラだろうと考えたのだ。
「まあ! 甘さ控えめで香ばしいわね! すごくお茶に合うわ!」
「あらあら、これはフェンケルが入っているのかしら? エスニックな香りね! 美味しいじゃない!」
「この存在を隠していたヴェルナーの罪は重いわね」
「美味しい~~! 独り占めしたくなる気持ちはわかるけどね~~!」
「アンさん! テューミアーン入りもすごく美味しいですわ! テューミアーンのスッキリとした風味がたまりませんわ!」
お姉様方にもプレッツヒェンは好評でとても嬉しい。
でも流石にこればっかりも飽きるだろうから、違うお菓子にも挑戦してみたいけれど。
「……ねぇ、アンさん。聞きたいことがあるんだけど」
「はい? 何でしょう?」
「その髪留め、とても可愛いわね。どこのお店の商品かしら?」
「そうそう、わたしもずっと気になってたのよ」
「綺麗な髪留めね。珍しい意匠だけれど、何の花かしら?」
「あ、これはマイグレックヒェンっていう花です。白い蕾のような花が鈴なりに咲いてとても可愛いんですよ。この髪留めはいただきものなので、お店はわからないんです……すみません」
「まあ。初めて聞く花ね。何か意味があるのかしら?」
「花言葉はわからないけど、髪留めの贈り物は確か、<魔除け>とか<貴女を守りたい>って意味じゃなかったかしら?」
「あらあらまあまあ! アンちゃんってば、そんな良い人がいたの?」
「だって可愛いもの。恋人がいない方がおかしいわよ」
「……プレッツヒェンを独り占めした罰ね~。アイツも可哀想に……」
お姉様方が何か勘違いしているようなので、私は慌てて訂正させてもらう。
「あ! いえ、これはお守りだと言っていました! 危害を加えようとする人から守ってくれるそうなので、魔除けの方の意味だと思います!」
意匠がマイグレックヒェンなのも、王女様やヘルムフリートさん関係だろうし……。
きっとジルさんにとってそんなに深い意味は無いと思う。
* * * * * *
❀名前解説❀
テューミアーン→タイム
マヨーラム→マジョラム
ディール→ディル
フェンケル→フェンネル
27
あなたにおすすめの小説
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?
向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。
というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。
私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。
だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。
戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
この度、青帝陛下の運命の番に選ばれまして
四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる