平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎

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後日談 黛先生の婚約者

(20)名前を呼んで(★)

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(19)話の夜のお話。R表現まで行きませんが大人っぽい表現があります。
そして今回少し拗れたまま終わりますので、苦手な方は閲覧に注意してください。

※なろう版には掲載しておりません。

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 目的の店を一通り周り回らないお寿司を賞味した後、予約していたホテルにチェックインした。休みを合わせているので、翌日は引き続き買い物がてらデートする予定だ。

「なぁ、七海?」
「んっ……?」

 ホテルの部屋に入ったところで七海は背後から柔らかく拘束された。
 ちゅっと首筋に吸い付きながらまゆずみが擦れた声で言った。

「何?黛君……」

 素早い行動に七海はドキリとしながら振り向こうとした。その勢いを使ってクルリと向かい合わせにさせられ、両肩を柔らかく掴まれる。

「名前で呼んで?」
「なっ……まだ無理って……」

 弱々しい反抗を意に介さず、黛は七海の肩を掴んだまま部屋の中へと歩みを進めた。そのままベッドにポスンと七海の背を預け、両肘で体を支えつつ顔を覗き込む。
 自分好みの美しい顔でニコリと微笑まれ、頭の芯がボウッと霞んだようになり七海は頬を染めた。

「今だけでいいから」
「……恥ずかしいもん」
「……」

 黛は一瞬黙り込み、思案する。

 そしてニヤリと嗤うと再び唇を落として来た。
 黛は七海の唇に吸い付き、無言で首筋に齧り付いた。不埒な手が七海の体をまさぐり始めたので、圧し掛かられた七海は慌てて彼の胸板を押し返した。

「ちょっと待って……先にシャワー浴びたい」

 一日中店を回ってかなり汗を掻いた。ベッドに入る前に七海は是が非でも体を洗いたかった。
 すると押し返した筈の体が―――再び無言で覆い被さって来る。

「黛君……んっ、汗掻いてるから!駄目……」

 もう一度押し返そうとするが、ビクともしない。
 背中のシャツがじんわりと肌に張り付いている。

(散々歩いて埃っぽいし、きっと汗臭いよっ……!)

 七海は蒼ざめた。



「黛君!」



 抗議の声はサラリと無視される。代わりにペロリと首筋を舐められ、ビクリと体が震えた。
 がっちり抑え込まれ、続けて落とされる唇が徐々に鎖骨へ移動する。カットソーの裾から武骨な手が入り込み下着の上から柔らかな膨らみに到達した。

 すると黛の胸を押し戻そうとする手の平から僅かに力が抜ける。

「黛く……んっ」

 必死に上げた七海の声は、ガブリと食べられてしまう。
 力の入らない腕でドンドン胸を叩く。抵抗を続けるがそれでも止まらない行為に、ジワリと眉尻に涙が浮かんだ。

 その時『もしや』とある考えが浮かび、七海は羞恥心を振り切ってその言葉を口ににした。



「り、龍之介……!やめてっ!シャワー浴びたいっ……!」



 ピタっ。



 と圧し掛かっていた大きな体が動きを止めた。
 まさかと思ったがやはりそう言う事だったのかと……七海は呆れるやら腹が立つやら。
 グイッと再び胸板を押すと、今度はスンナリと重みが向こうへ遠ざかる。
 体を起こしベッドにへたり込む七海が顔を上げると、悪びれず満面の笑みでニコニコこちらを見ている男がいる。

 その途端、七海の涙腺が決壊した。

「うっ……」
「えっ」

 ポロリポロリと涙を流す七海を見て、黛は目に見えて慌て出した。
 ワタワタと手を忙しなく動かしてから恐る恐る目の前の恋人に手を伸ばし、跳ねのけられないのを確認してから抱き寄せた。

「うう~~……」

 嗚咽を漏らす七海の背中を擦る。

「ご、ごめん……」
「う……ぜ、全然返事してくれないからっ……怖かっ……」
「……悪かった」

 つい悪ノリしてしまった事は否定できない。
 名前を呼んで欲しくて、試しに呼ぶまで七海の言う事をきかずにいようと思った事が切っ掛けだったが―――嫌がる素振りの相手を組み伏す行為に意外と興奮してしまったのも事実だった。

 漸く泣き止んだ七海が顔を上げた時、その目が赤くなっていてズキリと胸が痛んだ。



「バカバカバカ!」
「……はい、スイマセン……」



 胸を押されて大人しく頭を下げる。
 七海はベッドに黛を置いて、真っ赤な目のままシャワー室に去ってしまった。



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大ピンチ?黛が悪ノリし過ぎなので、このお話の中ではお許しを貰えませんでした。

お読みいただき、有難うございました。

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