イケメンなら間に合ってます(改稿版)〜 平民令嬢は公爵様に溺愛される 〜

コロ星人

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身から出た錆

プロポーズ

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 事件があった日から4日後。その日もエマはアーサーの病室に来ていた。いつものように手を握り、頬のあたりを指先で撫でる。早く目が覚めますようにと祈りながら





 それは昼前のことだった
エマの手をアーサーが握り返したのだ。その感触にエマがアーサーの顔を覗き込むと、今まで閉じていたはずの青い目がゆっくりと開いた

 「アーサー様!!」

 そう叫ぶとエマの目から涙がとめどもなく流れてきて、アーサーの名前を呼んだ後は声にならなかった。嬉しい気持ちが溢れて思わず抱きついてしまう

 「エマ……ずっと、側にいてくれた、の?」

 アーサーがかすれた声で囁いた
 エマは涙で声が出ず、顔を縦に振ることしかできなかった

 「ありがとう。すごく嬉しいよ。目が覚めたら、俺の好きな君が、側にいてくれるなんて、夢みたいだ……。ねえ、エマ、俺を許してくれる?」

 「……はい。そのかわり、もう無茶はしないで下さい。それと女性の心を弄ぶのもダメです」

 「ははは、厳しいな。でも、もう大丈夫だよ。俺はエマだけしか見えてないから。未来永劫俺には君だけだ」

 アーサーの手が伸びてエマの頬を撫でる

 「ねえ、エマ。俺、毎朝目が覚めたら、今みたいに君が横にいて、おはようってキスしたい。君の理想の男になれるよう、ずっと努力し続けるよ。だから、俺と結婚して下さい」

 チャラ男の真剣な顔と言うのは中々の迫力がある。エマが返事をするまで、ずっと真剣な眼差しで見つめるアーサーに、エマは握っていたアーサーの手を握り返した

 「はい。よろしくお願いします」

 エマの顔が花が咲いたように綻んだ

 「エマ!ありがとう。嬉しい…嬉しいよ。ああ、今すぐに君を思い切り抱きしめてキスしたい。元気になったら、全力で愛すから覚悟しといてね」

 アーサーは隅に控えている侍女に、自分の目が覚めたことを実家に知らせてくるよう指示を出すと、それを聞いた侍女が病室から出て行った

 侍女が退出するのを確かめたアーサーは、エマの腕をサッと掴むとまだベッドに寝ている自分の方に引き寄せてエマを抱きしめ、優しいキスをした

 それからエマの体を離すと、二人の目が合った

 「エマ、愛してるよ。君は俺がこの命にかえても守ってみせる。だから俺の怪我がなおったら国王様とソフィア様に結婚する旨を報告しようね。それからエマのご両親にご挨拶に行って、直ぐにでも入籍をすませてしまおう?そしたら公爵家で一緒に暮らせるし、君とずっと一緒に居られる。それから世界中に二人の結婚を知らせよう。世界中にいる君のファンと馬鹿な貴族に君が俺の妻になったことを教えないと。ああ、どうしよう!俺幸せ過ぎて死にそうだ。あいたたたたた……」

 「アーサー様!大丈夫ですか?」

 「大丈夫じゃないけど大丈夫。さっき君と無理してキスした時に、ちょっと痛くなっただけだから。きっと神様が幸せすぎる俺に嫉妬してるんだよ」

 「それって、思いっきりダメじゃないですか!もうキスは退院するまでお預けです!」

 「えっ⁈やだよ!俺の病室での唯一の楽しみなんだから」

 「じゃぁ、アーサー様は退院をわざと伸ばして……私と結婚したくないんですね。わかりました。では、王城にそのように伝えます」
 
「わ、わ、わ!それだけはダメ!それだけはやめて!わかったよ、大人しくしてるから……。もう、エマのケチ……ちょっとくらいだったらキスしたって…」

 「わかってないようなので、この後直ぐに王城に連絡を……」

 「わ~~!わかった!わかりました!」

 既に尻に敷かれている公爵様でした



 暫くすると、先程公爵家に連絡を入れに行った侍女が戻ってきて、直ぐに前公爵ご夫妻がここにやって来ると報告していた



 そしてアーサーの目が覚めてから一時間後位にアーサーの両親が病室に入ってきた

 「アーサー!やっと目が覚めたか!良かった良かった…」

 「ああ、アーサー!私にしっかりあなたの顔を見せてちょうだい!!母はあなたが死んでしまったら、生きてはいません。もう金輪際、こんな危険な真似はしないでくださいね!」

 暫く親子三人で抱き合った後、アーサーがエマに手招きをする

 エマは手を取られアーサーの側に立った

 「父上、母上。俺はここにいるエマ嬢と結婚の約束をしました。退院後、国王様に許可をもらってから直ぐにエマ嬢のご両親にご挨拶に行きたいと思います。直ぐにでも入籍したいので、結婚式と入籍の順序が入れ替わりますが、結婚式はいつでも都合がつく時にすれば良いので、準備が整い次第でいいと思ってます。こんなスケジュールを考えておりますが、お許し願えますか?意見があれば先に聞いておきますが、何かございませんか?」

 「おお!やっとか!エマ嬢、こんな愚息を選んでくれてありがとう」

 「エマさん、アーサーをよろしくね」

 「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 漸く公爵家に笑顔が戻ってきた





 アーサーが退院するまでの間に、公爵家では新婚の二人の部屋になる主寝室の改装を始めたらしい。二人が入籍するまでには終わらせる予定だという

 エマは入学以来のゴタゴタで欠席続きだった大学にやっと通えるようになった。

 学内でも、シルビアの傷害事件のことやアーサーの怪我のこと、そしてエマがアーサーの婚約者であることなど、話題に事欠かなかったらしく、久しぶりに大学に顔を出したエマは、たくさんの同級生に囲まれて色々説明するのに大変だった


 アーサーの怪我は出血が酷かったため、体力の回復が遅れていたが、目覚めて一週間後には無事に退院することができた

 エマはアーサーの退院の時間に合わせて、病院に駆けつけ、二人で手を繋いでそこを後にすると、その足で王城に報告に向かった

 この度は、国王の私室で話をすることになっている。そこにソフィアも同席するという

 王城の国王の私室に案内されると、中では既に王族の二人が待っていた
 
 「先ずは、アーサーよ、退院おめでとう。此度は災難だったな」

 「いえ、どれもこれも、全ては私の不徳の致すところ。もっと思慮深くあるべきでした。今は、深く反省しております」

 「当たり前じゃ。まあ、あの刃傷沙汰を起こした娘には、あの家共々深い罰を与えたのでな。もう絡んでくることもあるまいが、これから先は二度とこういったことのないよう努めよ」

 「はい。ありがたきお言葉」

 「ところで、今日は我に何やら報告があって、参ったのであろう?」

 「はい。この度、ここにいますエマ嬢と結婚することになりましたので、その報告に参りました」

 「エマは、それでいいのかえ?」

 「はい。お祖母様。色々ご心配をお掛けしましたが、私もアーサー様とずっと一緒にいたいと思っています」

 「それは吊り橋効果じゃないのじゃな?」

 「はい。大丈夫です」

 「それで、我が王よ。私達は、エマの両親に挨拶を終え次第、入籍したいと思っております」

 「何と!式は挙げんのか?」

 「いえ、結婚式は挙げますが、入籍だけでも早くしておいた方が、私の周りも静かになるでしょうし、エマにまとわりつく貴族の御仁も手出しし難くなるでしょうから。結婚式は色々準備も大変ですし、時間をかけねばなりませんから、入籍の後にゆっくりと行います。多分これが全て丸くおさまる一番良い方法だろうと言う結論に達し、二人で相談して決めました」

 「そうか。そういうことなら、許可を出そう。もしも、エマの身分を貴族に引き上げる必要があるなら、儂の養女と言うことにしてもよいぞ」

 「まぁ!それなら私の養女でも構いませんでしょ?」

 「いや、それならソフィアは一旦国に帰らねばなるまい?それに比べれば儂の方が手続きは簡単じゃ。急ぎ、アトランティスのベイリー卿に儂の方から話を持ちかけてみよう」

 二人は国王から結婚の許可を得て、早速入籍の準備に取り掛かることになった。養女の話が流れたソフィアの機嫌がすこぶる悪い。先程から何やらぶつぶつ言っている

 アーサーからアメリア邸に送ってもらったエマは、門の前でアーサーから濃厚な別れのキスをされてしまった

 「だって、退院したらキスしていいって言ったよね?だから遠慮なくさせてもらっただけだよ。あっ!またしたくなっちゃった!ということで、もう一回!」

 ぶちゅう~~

 バッチーン!

 「もう、痛いなぁ。キスしていいって言ったの嘘なの?」

 「また、手が勝手に動いたの!アーサー様ってば、さっき激しいのしたでしょ?」

 「だって、あれだけじゃ足りない!」

 「往来のど真ん中なんだから、あれで十分です!」

 「エマのケチぃ」

 公爵様はわがままな甘えん坊でした




 エマはその日の夜、ラファエルに連絡し、明日には二人でアトランティスに向かうことを伝えた
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