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聖女を追放した国の物語
第18話 ラスボス、現る
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俺はロブドをはじめとする反乱軍の幹部たちを処刑した。
処刑人たちによって、一斉に十の首が斬り飛ばされる。
広間には歓声と怒声が巻き起こり、異様な盛り上がりと沈黙が訪れた。
まあ、見物人は複雑だろう。
娯楽の少ない庶民にとって、公開処刑という残虐ショーはエキサイトできる数少ない催しだ。
そして――
この罪人たちは、自分達に仇をなした存在である。
処刑されて当然という意見の者も多い。
しかし、彼らは――
ゾポンドートによる度重なる重税によって疲弊しきった自分達を、代表するように戦った英雄でもある。
その死に対して悲しむべきか、それとも素直に楽しめばいいのか、心の整理がつかない者が大半なのだろう。
処刑の終った広間を見渡して、これからまた大変になりそうだとうんざりする。
ゾポンドートによって引き上げられた税率は三十パーセントまで引き下げると、すでに公布してある。
しかし、本当に実行されるのか半信半疑の者や、今までの苦しみを新しい統治者に対しても向けるように、睨んでくる者も多い。
統治者として信頼を得るには時間がかかるだろう。
俺はそう思いながら空を見上げると――
「……ん?」
そこには争いがあった。
イーレス城の上空で、巨大な鳥と竜がぶつかり合っている。
ここから空の上までは距離があるというのに、それらの魔物が持つ巨大な力の衝突に伴った衝撃が、ここにまで届いてくる。
俺はその威圧感で押し潰されるような錯覚を覚えた。
これまでに、俺は魔物討伐で国中を駆け回ってきたが、大きさはデカい奴で――
せいぜい三メートルくらいだった。
あのような巨体は、見たことが無い。
あれは遠目に見ても、体長二十メートルはあるように見える。
二匹の巨体を空に浮かべる翼の大きさは、体長の二倍はあるだろう。
二匹の色は対照的だった。
鳥の方は虹色に輝き、竜の方はすべての光を吸い尽くすような漆黒。
広間に集まっている見物人たちのざわめきが、徐々に大きくなっていき――
我先にと、逃げだし始めた。
上空の戦いに変化が訪れる。
鳥の方が劣勢になり、東方面にある山脈を目指して逃げ出した。
黒い竜は逃げる巨鳥を追いかけて、上空で仕留めて山脈に降り立つ。
俺はイーレス城へと戻り、事態を把握するためロザリアを中心とする頭脳チームを会議室に集めた。
巨大な鳥と竜の戦いは、竜が勝利して幕を下ろした。
とりあえず死んだ鳥の方は置いておいて、竜についての情報を求める。
「で、あれは何だ?」
「恐らくは――あれは、古から伝わる邪竜王ガルトルシアではないかな?」
ロザリアによると――
あれはこの世界で、最強の戦闘能力を持つ魔物らしい。
現在確認されている竜の体長は最大で五メートル、翼を持つものは魔力で体を浮かして空を飛ぶと言われている。
火、水、風、土の四属性があり、それぞれの属性の色に染まる。
あれほどの大きさと黒い色をした竜は、言い伝えにしか出てこない。
なんでも、邪竜王ガルトルシアは暗愚な統治者の治める地の上空に出現して、罰を与えるために出現するらしい。
あの巨体に鋭い爪や牙、頑丈な鱗。
特に厄介なのが邪竜王の放つブレスで、その黒い炎は人間を焼き尽くすまで消して消えないという呪いが込められている。
一万の軍隊でも、到底敵う相手ではない。
人間どころか、あの虹色の魔物でも相手にならなかった。
研究者の間では、魔物は人間の負の感情の渦巻く戦争や飢饉のあった領地ほど、多く発生する傾向にあるとされている。
魔物が大量に発生すれば、共食いでより強力な魔物が誕生する。
その果てに生まれるのが邪竜王――
というのが通説だ。
邪竜王とまではいかなくても、大型の魔物は人間には討伐出来ない。
現れたら自然災害として、通り過ぎるのを待つしかない。
そんな強力な魔物が発生するにもかかわらず、この世界の人間が滅びることが無いのは聖女がいるからだ。
共食いの果てに巨大化した魔物は、その地域の人間を食い荒らしてから、聖女の元へと赴き、聖女の張った結界でその身の邪気を浄化され、消滅する。
その際に聖女も大量に力を消費して早死にするので、聖女保有国にとっても迷惑な存在となる。
強力な魔物を発生させてしまった国は、魔物が消滅した後でも周辺国との間で諍いの種が残る。
「これはまずいな、かなり――」
「そ、そうですよ。アレス様、早く逃げないと――」
給仕をしているメイドのリリムが、この地からの避難を促す。
邪竜王は自身が仕留めた鳥の魔物を食い尽くせば、次はこの地の人間を食べ始めるだろう。
「マズいというのは身の危険もあるが――それよりも、俺がこの地を統治することになった直後に、奴が現れたことだ」
「そうですね……先代のゾポンドートの、長年の悪政の結果として邪竜王が誕生した訳ですが――多くの者はアレス様が統治者として相応しくないから、邪竜王が現れたのだと……そう解釈するでしょう」
親衛隊長のリスティーヌが、俺の考えを詳しく解説してくれる。
「という訳で、俺はこれから邪竜王ガルトルシアを討伐してくるよ」
その場にいた全員から猛反対された。
処刑人たちによって、一斉に十の首が斬り飛ばされる。
広間には歓声と怒声が巻き起こり、異様な盛り上がりと沈黙が訪れた。
まあ、見物人は複雑だろう。
娯楽の少ない庶民にとって、公開処刑という残虐ショーはエキサイトできる数少ない催しだ。
そして――
この罪人たちは、自分達に仇をなした存在である。
処刑されて当然という意見の者も多い。
しかし、彼らは――
ゾポンドートによる度重なる重税によって疲弊しきった自分達を、代表するように戦った英雄でもある。
その死に対して悲しむべきか、それとも素直に楽しめばいいのか、心の整理がつかない者が大半なのだろう。
処刑の終った広間を見渡して、これからまた大変になりそうだとうんざりする。
ゾポンドートによって引き上げられた税率は三十パーセントまで引き下げると、すでに公布してある。
しかし、本当に実行されるのか半信半疑の者や、今までの苦しみを新しい統治者に対しても向けるように、睨んでくる者も多い。
統治者として信頼を得るには時間がかかるだろう。
俺はそう思いながら空を見上げると――
「……ん?」
そこには争いがあった。
イーレス城の上空で、巨大な鳥と竜がぶつかり合っている。
ここから空の上までは距離があるというのに、それらの魔物が持つ巨大な力の衝突に伴った衝撃が、ここにまで届いてくる。
俺はその威圧感で押し潰されるような錯覚を覚えた。
これまでに、俺は魔物討伐で国中を駆け回ってきたが、大きさはデカい奴で――
せいぜい三メートルくらいだった。
あのような巨体は、見たことが無い。
あれは遠目に見ても、体長二十メートルはあるように見える。
二匹の巨体を空に浮かべる翼の大きさは、体長の二倍はあるだろう。
二匹の色は対照的だった。
鳥の方は虹色に輝き、竜の方はすべての光を吸い尽くすような漆黒。
広間に集まっている見物人たちのざわめきが、徐々に大きくなっていき――
我先にと、逃げだし始めた。
上空の戦いに変化が訪れる。
鳥の方が劣勢になり、東方面にある山脈を目指して逃げ出した。
黒い竜は逃げる巨鳥を追いかけて、上空で仕留めて山脈に降り立つ。
俺はイーレス城へと戻り、事態を把握するためロザリアを中心とする頭脳チームを会議室に集めた。
巨大な鳥と竜の戦いは、竜が勝利して幕を下ろした。
とりあえず死んだ鳥の方は置いておいて、竜についての情報を求める。
「で、あれは何だ?」
「恐らくは――あれは、古から伝わる邪竜王ガルトルシアではないかな?」
ロザリアによると――
あれはこの世界で、最強の戦闘能力を持つ魔物らしい。
現在確認されている竜の体長は最大で五メートル、翼を持つものは魔力で体を浮かして空を飛ぶと言われている。
火、水、風、土の四属性があり、それぞれの属性の色に染まる。
あれほどの大きさと黒い色をした竜は、言い伝えにしか出てこない。
なんでも、邪竜王ガルトルシアは暗愚な統治者の治める地の上空に出現して、罰を与えるために出現するらしい。
あの巨体に鋭い爪や牙、頑丈な鱗。
特に厄介なのが邪竜王の放つブレスで、その黒い炎は人間を焼き尽くすまで消して消えないという呪いが込められている。
一万の軍隊でも、到底敵う相手ではない。
人間どころか、あの虹色の魔物でも相手にならなかった。
研究者の間では、魔物は人間の負の感情の渦巻く戦争や飢饉のあった領地ほど、多く発生する傾向にあるとされている。
魔物が大量に発生すれば、共食いでより強力な魔物が誕生する。
その果てに生まれるのが邪竜王――
というのが通説だ。
邪竜王とまではいかなくても、大型の魔物は人間には討伐出来ない。
現れたら自然災害として、通り過ぎるのを待つしかない。
そんな強力な魔物が発生するにもかかわらず、この世界の人間が滅びることが無いのは聖女がいるからだ。
共食いの果てに巨大化した魔物は、その地域の人間を食い荒らしてから、聖女の元へと赴き、聖女の張った結界でその身の邪気を浄化され、消滅する。
その際に聖女も大量に力を消費して早死にするので、聖女保有国にとっても迷惑な存在となる。
強力な魔物を発生させてしまった国は、魔物が消滅した後でも周辺国との間で諍いの種が残る。
「これはまずいな、かなり――」
「そ、そうですよ。アレス様、早く逃げないと――」
給仕をしているメイドのリリムが、この地からの避難を促す。
邪竜王は自身が仕留めた鳥の魔物を食い尽くせば、次はこの地の人間を食べ始めるだろう。
「マズいというのは身の危険もあるが――それよりも、俺がこの地を統治することになった直後に、奴が現れたことだ」
「そうですね……先代のゾポンドートの、長年の悪政の結果として邪竜王が誕生した訳ですが――多くの者はアレス様が統治者として相応しくないから、邪竜王が現れたのだと……そう解釈するでしょう」
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