聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

文字の大きさ
19 / 126
聖女を追放した国の物語

第19話 一騎打ち

しおりを挟む
 イーレス城を愛馬と共に出発し、東へと進んでいる。

 道には邪竜王から少しでも距離を取ろうと、イーレス城方面へと移動する者もチラホラといるが、俺はひたすら東を目指す。
 
 邪竜王を討伐するという方針に反対した仲間を説得する為、自分が『戦神アレース』から神の加護を与えられていることを明かした。

 それを伝えたことで、なんとか理解を得ることが出来た。


 それでも渋っている者は何人もいた。


 まあ、それはそうだ。
 戦神の加護があろうとも、勝てるとは限らない。

 俺自身この力を使うのは初めてだし、邪竜王の戦闘力も未知数――
 結果がどうなるかは、戦ってみなければわからない。

 俺の転生特典は、戦神から与えられた『戦神力』という不思議パワーで、漫画に出てくる『チャクラ』や『オーラ』のように、使用者を強化したり、攻撃や防御に利用出来るものだ。 

 戦闘のみに使用できる。
 戦神力には限りがあり、無限に強化し続けることは出来ない。

 与えられたエネルギーの総量は、十万ポイント。

 使える量に限りがあるので、これまで全く利用せず温存していた。

 ここが使い所だろう。




 邪竜王との戦いでは、足手まといになる。
 そう言って、親衛隊の随伴は禁止した。


 俺は一人、東へ馬を走らせる。




 東へと進むほど、集落の規模も小さくなり、避難民の姿も見えなくなった。
 道は狭く草が生い茂るようになり、辺りには平原が広がっている。

「――来るっ!!」


 空の上からこちらへと、狙いを定めて飛翔する巨大な竜の姿が見える。

 俺は馬から降りると、ここから離れて逃げるように尻を叩いて促す。
 馬は俺の意図を察して、この場から西へと走り去った。




 俺は両足を踏みしめて、剣を構えて邪竜王を待ち受ける。

 猛スピードで接近する邪竜王の姿は、どんどんと大きくなり視界を覆い尽くす。
 そして――

 ガッ、ギィいいァンンンンンンん!!!!!

 目の前に迫った邪竜王の爪を、俺は剣で受け止める。

 激突に伴う衝撃波が、轟音と共に辺りを伝わっていき――
 俺の踏みしめる大地に、ひび割れが起きる。




 邪竜王の巨体が、スピードに乗ってぶつかってきたのだ。
 それを受け止めるには、それ相応の力と強度が必要になる。
 
 今の一撃を受け止めただけで、戦神力を五千ポイント近く一気に消費した。



 爪を弾かれた邪竜王は身を捻り、巨大な尻尾で薙ぎ払うように攻撃してくる。
 躱す時間はない。
 仕方なく、剣で受け止める。

 戦神力が二千近く減る。

 
 上空からの運動エネルギーを乗せた攻撃よりは威力は劣るが、それでも戦神力がバカみたいに削られる。

 このまま攻撃を受け続けるだけで、ガス欠になってしまう。



 今度は、こちらから攻撃する。
 尻尾での攻撃は、俺が受け止めている。

 敵はこっちに、背を向けた格好になっている。
 俺は一気に跳躍して、邪竜王のがら空きの背中を切りつける。


 戦神力で全身を覆っている。
 そうすれば、人間には到底できないような跳躍や、硬い鱗で守られた邪竜王の身体を切り裂くことも可能だ。 


 湯水のように戦神力を消耗するが、出し惜しみする局面ではない。



 邪竜王は背中を切り裂かれても、動きは鈍らない。
 直後に半回転して腕を振るい、まだ空中にいる俺を爪で攻撃する。
 
 図体がデカいくせに、やたらと機敏に動く。


 爪の攻撃は剣で弾き、その反動を使い邪竜王から距離を取る。

 地面に着地し、反撃に出ようとするが――
 もうすでに邪竜王の牙が、俺の目の前まで迫ってきていた。

 食い殺す気だ。


 俺は戦神力を余分に消費して力をあげ、地面を蹴り邪竜王の牙から逃れる。
 敵の意表を突く速さで飛び上がった俺の前に、巨大な邪竜王の目がある。

 俺は怒りに満ちたその左目を、振り上げた剣で切り裂いた。




 そのまま重力に引っ張られて、着地する。

 目を抉られた痛みからか、邪竜王の追撃はない。



 お互いに距離を取ったまま、暫らく睨み合う。

 邪竜王は翼を羽ばたかせて、宙に浮かび上がり――
 俺から離れるように、上空へと飛翔する。


「そのまま立ち去って、聖女の所にでも行ってくれると助かるんだが――」


 俺は心からの願いを口にするが、この世界は俺に冷たく出来ている。



 邪竜王の体内から巨大なエネルギーが溢れだし、スパークするように体表を覆っていく――漫画などで言うところの『気を溜めている』状態だ。


「止めてくれよ、マジで……」

 俺はウンザリしたように呟くが、止めてくれる訳がない。
 
 邪竜王は、息を大きく吸い込むような仕草で、その溢れ出たエネルギーを口の奥の一点に集中するように圧縮させていく。

 対象を焼き殺すまでは消えることのないという、邪竜王のブレス。
 攻撃範囲は恐らくこの平原の――
 辺り一帯全部……逃げ場はない。

「やるしかないか――」


 ここまでの攻防で、一万六千近くの戦神力を消費している。
 空を飛べる敵を相手に、このまま戦っても勝ち目はないだろう。
 
 敵が大技を繰り出そうとしている。
 それをカウンターで打ち破って、勝負を決める。


 邪竜王はのけ反って身体を伸ばした後で、勢いをつけてブレスを放つ。

 俺はこれまでに消費した戦神力の約二倍――
 戦神力三万の力を剣に込めて、それを迎え撃つ。


 邪竜王のブレスに合わせて振りぬいた剣撃は、押し寄せる黒い炎の海を切り裂いて突き進み、そのまま上空を羽ばたく邪竜王の巨体を切り裂いた。



 身体を切断された邪竜王は飛翔する力を失い、落下して地面へと激突する。

 ズドォォオオオオオオオンンん!!!

 辺りに轟音が響き渡り――
 空からは、邪竜王の血の雨が降り注ぐ。

「やったか――?」

 大地に倒れ伏した邪竜王は最後に、残った右目で俺を睨み――
 呪いを付与して、息絶えた。

 俺の左腕を、激痛と熱が襲った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...