聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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聖女を追放した国の物語

第19話 一騎打ち

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 イーレス城を愛馬と共に出発し、東へと進んでいる。

 道には邪竜王から少しでも距離を取ろうと、イーレス城方面へと移動する者もチラホラといるが、俺はひたすら東を目指す。
 
 邪竜王を討伐するという方針に反対した仲間を説得する為、自分が『戦神アレース』から神の加護を与えられていることを明かした。

 それを伝えたことで、なんとか理解を得ることが出来た。


 それでも渋っている者は何人もいた。


 まあ、それはそうだ。
 戦神の加護があろうとも、勝てるとは限らない。

 俺自身この力を使うのは初めてだし、邪竜王の戦闘力も未知数――
 結果がどうなるかは、戦ってみなければわからない。

 俺の転生特典は、戦神から与えられた『戦神力』という不思議パワーで、漫画に出てくる『チャクラ』や『オーラ』のように、使用者を強化したり、攻撃や防御に利用出来るものだ。 

 戦闘のみに使用できる。
 戦神力には限りがあり、無限に強化し続けることは出来ない。

 与えられたエネルギーの総量は、十万ポイント。

 使える量に限りがあるので、これまで全く利用せず温存していた。

 ここが使い所だろう。




 邪竜王との戦いでは、足手まといになる。
 そう言って、親衛隊の随伴は禁止した。


 俺は一人、東へ馬を走らせる。




 東へと進むほど、集落の規模も小さくなり、避難民の姿も見えなくなった。
 道は狭く草が生い茂るようになり、辺りには平原が広がっている。

「――来るっ!!」


 空の上からこちらへと、狙いを定めて飛翔する巨大な竜の姿が見える。

 俺は馬から降りると、ここから離れて逃げるように尻を叩いて促す。
 馬は俺の意図を察して、この場から西へと走り去った。




 俺は両足を踏みしめて、剣を構えて邪竜王を待ち受ける。

 猛スピードで接近する邪竜王の姿は、どんどんと大きくなり視界を覆い尽くす。
 そして――

 ガッ、ギィいいァンンンンンンん!!!!!

 目の前に迫った邪竜王の爪を、俺は剣で受け止める。

 激突に伴う衝撃波が、轟音と共に辺りを伝わっていき――
 俺の踏みしめる大地に、ひび割れが起きる。




 邪竜王の巨体が、スピードに乗ってぶつかってきたのだ。
 それを受け止めるには、それ相応の力と強度が必要になる。
 
 今の一撃を受け止めただけで、戦神力を五千ポイント近く一気に消費した。



 爪を弾かれた邪竜王は身を捻り、巨大な尻尾で薙ぎ払うように攻撃してくる。
 躱す時間はない。
 仕方なく、剣で受け止める。

 戦神力が二千近く減る。

 
 上空からの運動エネルギーを乗せた攻撃よりは威力は劣るが、それでも戦神力がバカみたいに削られる。

 このまま攻撃を受け続けるだけで、ガス欠になってしまう。



 今度は、こちらから攻撃する。
 尻尾での攻撃は、俺が受け止めている。

 敵はこっちに、背を向けた格好になっている。
 俺は一気に跳躍して、邪竜王のがら空きの背中を切りつける。


 戦神力で全身を覆っている。
 そうすれば、人間には到底できないような跳躍や、硬い鱗で守られた邪竜王の身体を切り裂くことも可能だ。 


 湯水のように戦神力を消耗するが、出し惜しみする局面ではない。



 邪竜王は背中を切り裂かれても、動きは鈍らない。
 直後に半回転して腕を振るい、まだ空中にいる俺を爪で攻撃する。
 
 図体がデカいくせに、やたらと機敏に動く。


 爪の攻撃は剣で弾き、その反動を使い邪竜王から距離を取る。

 地面に着地し、反撃に出ようとするが――
 もうすでに邪竜王の牙が、俺の目の前まで迫ってきていた。

 食い殺す気だ。


 俺は戦神力を余分に消費して力をあげ、地面を蹴り邪竜王の牙から逃れる。
 敵の意表を突く速さで飛び上がった俺の前に、巨大な邪竜王の目がある。

 俺は怒りに満ちたその左目を、振り上げた剣で切り裂いた。




 そのまま重力に引っ張られて、着地する。

 目を抉られた痛みからか、邪竜王の追撃はない。



 お互いに距離を取ったまま、暫らく睨み合う。

 邪竜王は翼を羽ばたかせて、宙に浮かび上がり――
 俺から離れるように、上空へと飛翔する。


「そのまま立ち去って、聖女の所にでも行ってくれると助かるんだが――」


 俺は心からの願いを口にするが、この世界は俺に冷たく出来ている。



 邪竜王の体内から巨大なエネルギーが溢れだし、スパークするように体表を覆っていく――漫画などで言うところの『気を溜めている』状態だ。


「止めてくれよ、マジで……」

 俺はウンザリしたように呟くが、止めてくれる訳がない。
 
 邪竜王は、息を大きく吸い込むような仕草で、その溢れ出たエネルギーを口の奥の一点に集中するように圧縮させていく。

 対象を焼き殺すまでは消えることのないという、邪竜王のブレス。
 攻撃範囲は恐らくこの平原の――
 辺り一帯全部……逃げ場はない。

「やるしかないか――」


 ここまでの攻防で、一万六千近くの戦神力を消費している。
 空を飛べる敵を相手に、このまま戦っても勝ち目はないだろう。
 
 敵が大技を繰り出そうとしている。
 それをカウンターで打ち破って、勝負を決める。


 邪竜王はのけ反って身体を伸ばした後で、勢いをつけてブレスを放つ。

 俺はこれまでに消費した戦神力の約二倍――
 戦神力三万の力を剣に込めて、それを迎え撃つ。


 邪竜王のブレスに合わせて振りぬいた剣撃は、押し寄せる黒い炎の海を切り裂いて突き進み、そのまま上空を羽ばたく邪竜王の巨体を切り裂いた。



 身体を切断された邪竜王は飛翔する力を失い、落下して地面へと激突する。

 ズドォォオオオオオオオンンん!!!

 辺りに轟音が響き渡り――
 空からは、邪竜王の血の雨が降り注ぐ。

「やったか――?」

 大地に倒れ伏した邪竜王は最後に、残った右目で俺を睨み――
 呪いを付与して、息絶えた。

 俺の左腕を、激痛と熱が襲った。
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