聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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追放された聖女の物語

第75話 破滅へと至る道筋 4 B

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 うちの国ではアレス王子が、少女二十万人を強制連行したことになっている。何とか話を合わせて、謝罪してくれないか?
 
 そう頼んだらしい。


 当然のごとく門前払いにされ、リーズラグドから国交断絶を言い渡された。

 ――当然だ。
 どこの世界に、『デマが広まって大変だから、話を合わせてくれ』と頼まれて、謝罪して金を払うような、愚かな国があるというのか……。
 


 だが、ピレンゾル国民にとっては、そのデマこそが『真実』だ。

 こちらの要求を突っぱねた、リーズラグドに対して――
 国民の怒りは沸騰し、戦争しろと息巻いている。

 国の上層部は国民の声に応えるように、リーズラグドへの侵攻を開始する。

 侵攻自体は前から準備していたが、国民の後押しもあり、当初の予定よりも大規模な兵力で攻めることになった。



 勝ち目がない戦いだと分かっていても、もう誰にも止められなかった。



 絶望に打ちひしがれる日々。
 無気力に過ごす僕に、国王からの呼び出しがあった。

 ――なんだろう?

 呼び出しに応えて、王の待つ玉座の間へと赴いが、そこに王の姿は無かった。僕の母親の王妃の姿も見えない。



 代わりに――
 この国の玉座には、ローゼリアが座っていた。

 あの女は怪我でもしたのか、顔に包帯を巻いているが、間違いなく奴だ。


 その傍らに前王妃が立っていて、その前には大きめの木箱が二つ並んでいた。


「待っていたわピレール。あなた、この私を待たせるなんて、いけない子ね。何様のつもりなのかしら? これは、お仕置きが必要ね。ふふっ」

 ローゼリアは玉座に足を組んで座り、不敬にも僕に不遜な物言いをする。

 ――何故、この部屋の衛兵たちは奴を捕らえない?
 

 おかしい……
 前王妃はなぜ、奴の横暴を見逃しているんだ?
 
 そして、王と王妃はどこに――?


 この部屋の中央に、置かれている二つの木箱――

 木箱の下の方が、赤黒く染まっている。
 僕の動悸が激しくなる。

 ローゼリアがパチンと、指を慣らす。

 僕の左右に控えていた衛兵が、僕を小脇に抱えて木箱の側まで引き摺っていき、箱を開ける。

 止めてくれ――

 僕は顔を背けるが、無理やり箱の中を見るように顔を固定され目を広げられる。

 僕の目の前に、王と王妃の首があった。
 二人の顔の半分は、黒ずんで爛れている。

 これは、ステファと同じ――

 これを、やったのは……

 じゃあ、ステファを襲ったのも――




 何故だ?

 この状況を見ればわかる。
 ローゼリアはすでに、この国を乗っ取っている。

 そして――
 僕の推測だと、この女はアレス王子の命令で動いている。



 だとすれば、攻める相手はチャルズコートになるはずだ。

 チャルズコートとの決戦が迫っている、このタイミングで――
 自分の国を攻めさせるメリットは??

 ……分らない。


 もう何が、どうなっているのか――
 何が真実で何が嘘か、誰が味方で敵なのか……。

 完全に心がへし折れた僕は――
 考えるのを止めた。 

 もう、なにも……。
 


「うぅ……」

 僕はその場に立っていられなくなり、崩れ落ちる。

 ――降伏しよう。

「……もう、やめてくれ、僕はもう……何もいらない、この国の王位も君に譲る。僕をここから、この国から追放してくれ。頼む、ローゼリア! 今すぐ君の前から消えるから、もう解放してくれ!!」

 僕は泣きながら、懇願する。


 その無様な姿を見た、ローゼリアは――

 立ち上がり、こちらに近づいてくる。
 そして、蹲る僕に対して、全力で蹴りを入れる。


「ちーがーうーだーろーぉぉおおおおおお!!!!!!」

 大声で怒鳴る。


「この場面でお前が言うセリフは、『僕が悪かった、君を愛してる。戻ってきてくれ、ローゼリア!! 』だろうがっ!! なんで真逆のことを言うんだ! 何のために、お前の身近な人間を消していったと思っている。もう、私に頼るしかないんだよ! お前は!! それなのに、ここから出て行くだと? お前がここを出て、一人で生きていけるとでも思ってるのか? どんだけ馬鹿なんだよ、このアホ垂れが!! お前がそんなだから、私は聖女になれなかったんだ!! このクズ、ゴミ、ハゲ!! お前は! ローゼリアの為に! 創られた!! 王子だろうが!! なんでこんなに、へなちょこなんだよ!! 設定上はこの世界でも上位の素質や才能があるはずなんだ!! 本気を出せよ、本気を!!」

 ローゼリアは、意味不明なことを喚きたてて――
 地面に這いつくばる僕を、罵りながら蹴り続ける。


 悪魔のような形相で――

 いつまでも、いつまでも。
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