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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村
ワトル村の事情
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「それで他の人たち、というのは先ほどまで食堂に居た方々の事でしょうか?」
さっきまで食堂にいたオジさんたちとチャックさんたちはよく知った間柄に見えた。それでも話している様子を見ていると、チャックさんとナタリーさんでは接し方が違うようだったし、同じ村で育った村人同士には見えなかった。
「うん、そう!・・・ハイ、そうです。ワトル村には月に十日から十五日ぐらい木を切り倒しにやって来るおっちゃ・・・人たちが十人前後来ています。
その人たちは村で食事をするし、村の男たちは木を切り倒す手伝いで仕事を貰っている・・・います」
リッキー君はアシュトンさんに言われたのが余程悔しかったらしい。不本意そうな顔をしながら話す言葉は棒読みのような口調になっている。
「木を切り倒す場所って村から離れているんですか?村に来る時には木を切り倒しているような山や森は見なかったよう思うのですが」
私も林業の現場とかを間近で見た事はないんけど、木が切り倒された周辺てハゲ山っぽいイメージない?
植樹されていても、そこだけポッカリと周囲から浮いているというかさ。
だけど街道沿いの景観は村の入り口を見落としそうなほど、木々はビッシリと生えていたんだよねぇ。
「あぁ、そうですね。街道沿いからでは分からないと思います。私が子どもの頃にはもうワトル村からだいぶ離れた方へ作業場を移していたんですよ。
木を切り倒すにも平地の方が何かと作業しやすいようなんです。街道沿いは通行の邪魔になるから避けているようで、それでワトル村の付近から木を切り倒して森の方へとどんどんと広げていってるそうなんですよ」
「あ~、だからワトル村って結構広いんですね」
「ははははは。そうなんですよ。住んでる村人も建物も少ないですけどね」
リッキー君に代わってチャックさんが話し始めたけれど、これは迂闊に一緒に笑っちゃいけない自虐ネタ?
でも納得。やけにだだっ広いなぁ、とは思ったんだよね。建物が立っていた風にも見えなかったし。ワトル村を起点に近い所から木をどんどん切り倒していったから、結果的に村の敷地面積というか、空き地が拡大していったんだろうね。
「もしかして切り倒した木材を運び出す為に、態と空き地はそのままにしているんですか?」
「いえ、確かに切り倒した木は一旦、村の空き地まで運ばれて荷台に載せて依頼先へと運搬されていきます。
空き地がそのままなのは、木の根っこは何とか引っこ抜いても、周辺を耕すにも家を建てるにも整地するのに一苦労だったからそのままになっているだけですね。
お金をかけてどうにかすれば良いのでしょうけれど、それにはやはり大金が必要になるでしょう?」
確かになぁ。現状で食べるには困らない程度には生活出来ているなら、お金を掛けてまで整地する必要はないよね。
家を建てて移住者を増やそうと考えても、増えたら村人たちの仕事が減ってしまう、と考えたら現状のままで良いとなると思うし。
「それではワトル村では年々村人が外に出て行って減少しているとか、村で出来る仕事が少ない、といったような悩みはないという事ですか?」
「少しも悩んでいない、と言ったら嘘になりますが、実はそんなに困ってはいません。ワトル村は元々小さな村で、住んでいる村人の数は今も昔もそんなに変わりはないんです。
昔から乗り合い馬車が立ち寄る場所で、イベリスで宿泊しない観光客も偶に泊まってくれる。
材木屋から依頼された業者が月の半分近くは森に入っているから、体力のある男たちは手伝いで仕事は貰えるし村で食事もしていってくれる。
今までは皆が普通の生活していく分には困ってはいないかったんです」
「先ほどもリッキー君も言っていましたが、今までは、という事はこれからはそうじゃなくなるという事ですか?それが陳情書を出した理由ですか?」
「はい、その通りです。だいぶ前からジョーさんたちが食事の時などで言っていた話ですが、まだハッキリとは分かりません。
ですが、いずれワトル村を拠点にしないで木を運搬する事になるだろう、と言っていたんです。
実は作業員たちは、仕事がある時は現場に近い場所に寝泊まりするだけの小屋を建てて生活しているんです。
朝は適当に食べて、昼は村から手伝いに行っている男たちがウチと弟の家の店で作った弁当を届けているんです。さっきみたいに早い時間に来て夜だけ村に食べに来る人がいて、村の収入源になっていました。
けれどこのまま先へ先へと木を切り倒していけば、ワトル村からどんどん離れていくことになるので、特に領都に運搬する木材に関してはワトル村まで引き返して運ぶのは時間の無駄、という話が出ていると言っていました」
どんどん木を切り倒して先へと進んでいけば、そりゃそうなるよねぇ。
「それが一年、二年先ではなくてもそう遠くない将来、リッキーたちに代替わりする時に『ワトル村を利用する事が無くなったらどうするんだ?』と、陳情書の話が来た時にリッキーや娘、リッキーの姉のユッカに言われたんです。
ユッカは村の幼馴染と五年前に結婚して、夫になったコリンは現場で仕事を貰っているので前から不安に思っていたらしくて」
アイビー村やウィルキン村でもそうだったけれど、やっぱり次の世代の人たちの方が将来の不安が大きいよねぇ。
その日はそこまで話を聞いて、明日、村の案内などを含めてもう一度詳しい話を聞く事になった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
さっきまで食堂にいたオジさんたちとチャックさんたちはよく知った間柄に見えた。それでも話している様子を見ていると、チャックさんとナタリーさんでは接し方が違うようだったし、同じ村で育った村人同士には見えなかった。
「うん、そう!・・・ハイ、そうです。ワトル村には月に十日から十五日ぐらい木を切り倒しにやって来るおっちゃ・・・人たちが十人前後来ています。
その人たちは村で食事をするし、村の男たちは木を切り倒す手伝いで仕事を貰っている・・・います」
リッキー君はアシュトンさんに言われたのが余程悔しかったらしい。不本意そうな顔をしながら話す言葉は棒読みのような口調になっている。
「木を切り倒す場所って村から離れているんですか?村に来る時には木を切り倒しているような山や森は見なかったよう思うのですが」
私も林業の現場とかを間近で見た事はないんけど、木が切り倒された周辺てハゲ山っぽいイメージない?
植樹されていても、そこだけポッカリと周囲から浮いているというかさ。
だけど街道沿いの景観は村の入り口を見落としそうなほど、木々はビッシリと生えていたんだよねぇ。
「あぁ、そうですね。街道沿いからでは分からないと思います。私が子どもの頃にはもうワトル村からだいぶ離れた方へ作業場を移していたんですよ。
木を切り倒すにも平地の方が何かと作業しやすいようなんです。街道沿いは通行の邪魔になるから避けているようで、それでワトル村の付近から木を切り倒して森の方へとどんどんと広げていってるそうなんですよ」
「あ~、だからワトル村って結構広いんですね」
「ははははは。そうなんですよ。住んでる村人も建物も少ないですけどね」
リッキー君に代わってチャックさんが話し始めたけれど、これは迂闊に一緒に笑っちゃいけない自虐ネタ?
でも納得。やけにだだっ広いなぁ、とは思ったんだよね。建物が立っていた風にも見えなかったし。ワトル村を起点に近い所から木をどんどん切り倒していったから、結果的に村の敷地面積というか、空き地が拡大していったんだろうね。
「もしかして切り倒した木材を運び出す為に、態と空き地はそのままにしているんですか?」
「いえ、確かに切り倒した木は一旦、村の空き地まで運ばれて荷台に載せて依頼先へと運搬されていきます。
空き地がそのままなのは、木の根っこは何とか引っこ抜いても、周辺を耕すにも家を建てるにも整地するのに一苦労だったからそのままになっているだけですね。
お金をかけてどうにかすれば良いのでしょうけれど、それにはやはり大金が必要になるでしょう?」
確かになぁ。現状で食べるには困らない程度には生活出来ているなら、お金を掛けてまで整地する必要はないよね。
家を建てて移住者を増やそうと考えても、増えたら村人たちの仕事が減ってしまう、と考えたら現状のままで良いとなると思うし。
「それではワトル村では年々村人が外に出て行って減少しているとか、村で出来る仕事が少ない、といったような悩みはないという事ですか?」
「少しも悩んでいない、と言ったら嘘になりますが、実はそんなに困ってはいません。ワトル村は元々小さな村で、住んでいる村人の数は今も昔もそんなに変わりはないんです。
昔から乗り合い馬車が立ち寄る場所で、イベリスで宿泊しない観光客も偶に泊まってくれる。
材木屋から依頼された業者が月の半分近くは森に入っているから、体力のある男たちは手伝いで仕事は貰えるし村で食事もしていってくれる。
今までは皆が普通の生活していく分には困ってはいないかったんです」
「先ほどもリッキー君も言っていましたが、今までは、という事はこれからはそうじゃなくなるという事ですか?それが陳情書を出した理由ですか?」
「はい、その通りです。だいぶ前からジョーさんたちが食事の時などで言っていた話ですが、まだハッキリとは分かりません。
ですが、いずれワトル村を拠点にしないで木を運搬する事になるだろう、と言っていたんです。
実は作業員たちは、仕事がある時は現場に近い場所に寝泊まりするだけの小屋を建てて生活しているんです。
朝は適当に食べて、昼は村から手伝いに行っている男たちがウチと弟の家の店で作った弁当を届けているんです。さっきみたいに早い時間に来て夜だけ村に食べに来る人がいて、村の収入源になっていました。
けれどこのまま先へ先へと木を切り倒していけば、ワトル村からどんどん離れていくことになるので、特に領都に運搬する木材に関してはワトル村まで引き返して運ぶのは時間の無駄、という話が出ていると言っていました」
どんどん木を切り倒して先へと進んでいけば、そりゃそうなるよねぇ。
「それが一年、二年先ではなくてもそう遠くない将来、リッキーたちに代替わりする時に『ワトル村を利用する事が無くなったらどうするんだ?』と、陳情書の話が来た時にリッキーや娘、リッキーの姉のユッカに言われたんです。
ユッカは村の幼馴染と五年前に結婚して、夫になったコリンは現場で仕事を貰っているので前から不安に思っていたらしくて」
アイビー村やウィルキン村でもそうだったけれど、やっぱり次の世代の人たちの方が将来の不安が大きいよねぇ。
その日はそこまで話を聞いて、明日、村の案内などを含めてもう一度詳しい話を聞く事になった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
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