捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村

 陳情書を提出した理由

 私より二つも歳が下だったリッキー君には驚いたけれど、当の本人は私の方が歳が上だった事にも動じていない。
ま、ハドソン領の領主サマから依頼を受けて来た人たちにもタメ口だったんだから当然か。


どうやら料理の腕はホンモノらしいリッキー君の料理を満足そうにオジさんたちがワイワイと食べて宿屋を後にして、私たちの方も食事が終わった頃、部屋の準備が終わったらしいチャックさんが食堂の方へと戻って来た。

様子を見計らって戻って来たとしか思えないチャックさんは、嫌な事は後回しにする性質タチなのか、それともやっと話せる状態になったのか。
今は飲み物だけが置かれたテーブルの私たちの対面に座っている。隣にはナタリーさんが座っているし、リッキー君は両親の隣には座らずにやっぱり横に座ってニコニコしている。

もう、リッキー君に話をしてもらった方が話は早く済みそうじゃない?
彼も内容を知っているっぽいし、決心はついたけれどそれでも話し出すにはもう少し勇気が要りそうなチャックさんを見ているとねぇ。

「あの、陳情書に書いた件なんですが、申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」

やっと話す決心がついたらしいチャックさんの大きな声が広くはない食堂中に突然響いた。頭を下げながら謝るチャックさんは日本の土下座文化を知っていたら土下座してそうなぐらいの勢いで、それにつられてナタリーさんもペコペコと頭を下げている。

そんな両親の様子に爆笑しているのがリッキー君で、それは流石にどうかと思うよ?
チャックさん、真面目も真面目。誠心誠意な謝罪をしているんだからさ。


「え~と、アシュトンさん、でいい?それからティアナさんとクリスフォードさん。
親父がこんな風に思い詰めちゃってるのは俺のせいでさ。

俺が陳情書を書く時に『村に宿屋と店が有っても観光客は殆ど来ない。このままじゃ村人の生活が出来なくなる』って書けばいい、と言ったんだ」

「では、本当は観光客は宿屋にも店にも来ているって事ですか?」

「ううん。客が殆ど来ないのは本当。あと二時間は掛かるって言っても、領都やイベリスの町で食事を済ませて来てる観光客は多いから、ウチには本当に休憩するだけ、人も馬もね」

「それならば収入源は殆ど無いと同じではありませんか?陳情書に書く理由としては問題は無い思われますが?」

「うん。観光客にはもう少し宿屋や店を利用して欲しいっていうのも本音なんだけど、が食堂やもう一つの店を利用してくれてる。だからこの小さい村の皆が普通に食べていく分にはそれほど困ってないんだよね、今は」


なるほど。
この街道沿いで暮らすのに困っているから陳情書を出した筈なのに、実は困っていませんでした、という嘘を吐いた事にチャックさんは怯えていた、という事で合ってる?
バレたら捕まってしまう!とでも思ったのかなぁ。

「本当に済みません。済みません。カルミアのサフラン町長に強く頼まれたってのもありますが、コイツが絶対に陳情書は出した方が良いって煩く言ってきたもんで」


「あははは。大丈夫、と言ってしまって良いのかは分かりませんけど、他の村でも似たような話もありましたので。街道沿いにある村と町の活性化は何も立ち寄る観光客の数だけで出来るものではないですから」


ウィルキン村のジャックさんも、村の現状を訴える為にも陳情書を共同で出す話に乗っかったような事を言っていたからね~。

「それにリッキー君の口ぶりからすると、困っていなくても、将来が心配なんじゃないんですか?」

「そう!察しが良くて助かるよ!」

「お、おい。リッキー!ハドソン伯爵家の方とエトリナ商会の方たちが態々、ワトル村まで来て下さったのに、さっきからお前の態度は失礼だろう!」


陳情書を出した本当の理由について告白した事で、後ろめたい気持ちから解放されたチャックさんは、余裕が出て来たのか?ここでリッキー君の態度が改めて気になってきたらしい。

今更だけど、アシュトンさんが不快感を表していないので、ギリギリ許されている感じ?

「まぁ、馬車で立ち寄るお客様相手にもそのような態度ですと、貴族への対応は勿論、乗り合い馬車のお客様相手でも無理でしょうね。

ですが君は料理人で、本来は表に出るつもりは無いという事でしょう?

でしたら子どもの言う事ですし、最低限のマナーはに身につけていけば良いのではないですか?」

「なっ!子どもじゃっ」

あ。別にギリギリ許されてはいなかったみたい。
アシュトンさんのストレートな嫌味に、リッキー君は分かりやすく反応したけれど、それでも言い返すのは辞めたみたいだから自分の態度も良くはない事は理解したみたい。

心配事か相談したい事はあるようなのに、仮にもここの領主であるハドソン伯爵家から来てもらっておいて、その態度は真剣に話をする態度ではないよね。



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