お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro

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ボヤける視界を閉じ、来ると思っていた衝撃を待っていた所、待っていたものではなく誰かに頭を抱え込まれるような感覚と共に背中が地面に当たる衝撃を感じた。


「何してやがる!」


同時に近くからノエリア王子の怒声が聞こえ、恐る恐る目を開ければ、眉を寄せ私を強く睨みつけたノエリア王子が私の両肩を掴み、地面から上体を無理やり起こされた所だった。
ナイフは何処に、と後ろを振り向けば真後ろにあった木に突き刺さっていた。
私もノエリア王子も怪我は見たところなさそうだが、ノエリア王子の息の切れ方からして相当急いで駆け付けてくれたのが分かる。


「俺の助けが間に合わなかったら死んでる所だったんだぞ?!」


射抜くような瞳で私を見るノエリア王子の瞳はまっすぐで、まるでこの人の性格を表しているように思えた。
そんなまっすぐな瞳で死を覚悟してしまった私を見て欲しくなくて視線を反らせば、肩を掴まれている手に力が増した。


「………っ、だって」


「だってもくそもあるか!生きてりゃ良いことあるなんて綺麗事は言わねぇよ。でも、これだけは言わせろ。もし、お前が少しでも死にたいって思ったなら」


片方の手が肩から外されたかと思えば、胸ぐらを掴まれ額同士がぶつけられ、その瞳から逃れられなくなった。


「お前のためじゃない、俺のためだけに生きて、あいつを忘れるくらい俺に愛されてから死ねよ!」


「え」


今なんて?と聞き返せば、ノエリア王子は怒っていた顔を段々と赤らめ、胸ぐらと肩から手を離して私から距離を少しずつ取った。


「あぁーー、こんな弱みに漬け込むようなこと言うつもりなんてこれっぽっちもなかったってのに、それもこれもあの坊っちゃんのせいだぞ、くそ」


ぶつぶつと文句を言って、距離を取っているノエリア王子に私は何を言って良いのか分からず口の開閉を繰り返しながら、ノエリア王子のその言葉が今すぐにでも死んでしまいそうだった心に、ブライアンに婚約破棄しろとわれてじわりじわりと胸に広がっていた穴に、暖かな光が射し込んでくれたように思えた。
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