お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro

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「すぐにあいつを忘れろなんて無茶は言わねぇよ。ただ、どれだけ時間をかけても良いから、いつか俺のことを好きになってくれりゃそれで良い」


顔を赤らめながら私に背を向け、兵たちをまとめて縛り上げているアルノルフのもとへ歩き出したノエリア王子の大きな背中に抱き付いた。
額を背中につけ、いまだにボヤけている視界をノエリア王子の着用しているベージュのコート一色に染めた。


「………今は、頷けません」


たとえ、報われない恋だったとしても後悔ばかりが残る恋だったとしても、すぐに忘れることは出来ない。
そんな簡単に忘れるような恋ならこんなに悩んだりしていない。


「いつ忘れられるか分かりません」


いつも見ていた姿が目蓋の裏側や記憶から消え、ノエリア王子に塗り替えられるのかさえ分からない。
分からないけれど、胸に暖かみを感じたのは確かだし、今私が抱き締めているこの体温も、爽やかな香りもブライアンからは感じたものがないものばかりだけど、嫌じゃない。
むしろ心地よさすら感じている。


「本当に…………それでも良いのですか?」


ぎゅっと腕に力を入れて尋ねれば、その手の上に大きな手のひらが乗っけられた。


「良いって言ってんだろ?これでも長い間片想いしてたんだ。どれだけかかろうと待てる」


俺の片想い歴舐めんな、と少し柔らかな口調で言われ、涙がまた流れた。


「今は泣いとけ。泣き終えたら今度は幸せになることだけ考えろよ」


その声が優しくて、こんなに涙って流れるのかと思うくらいに涙が出た。
ブライアンを好きだった私をなかったことにはしたくない。
今までの努力もなかったことになんかしたくない。
でも、いつまでもこんなところで足を止めていても仕方ない。

それなら、ノエリア王子を好きになる努力をしようと思う。
どれだけ時間がかかるか分からないけれど。
好きになるかも分からないけれど。


でも、きっと、見た目も中身も素敵な人だから、私はきっと、この人に恋をする。


そのときはきっと、こんなことがあったよね、って笑って話せるときが来るかな。


おわり






沢山の閲覧、お気に入り本当にありがとうございます。
本当はもっと長く書こうかと思ったのですが、あえて短く終了させていただきました。
未熟な者なので、楽しんでいただけた方がいらっしゃるか分かりかねますが、少しでも楽しかった!と思っていただけた方が一人でもいらっしゃれば感無量でございます。

このお話の後を別視点で描いているものが『やっと、』という作品となっております。
もしご興味がございます方やまだ付き合っても良いよ!という心優しい方がいらっしゃればお付き合いください。


この度もありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
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