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しおりを挟む真が心配した通り、三村の杏への攻勢は続いた。
『杏くん、どっちが塩で、どっちが砂糖だっけ?』
『杏くん、包丁の角度、これでいいのかな』
『杏くん、ちょっと味見してくれないか?』
こんな具合に、料理教室の間中ぺったりと張り付いては、いろいろと声をかけていた。
そして、教室が終われば、決まってお茶に誘うのだ。
「今日もありがとう。お礼に、お茶を御馳走させてくれ」
「いつもすみません」
杏も、お茶を一緒に楽しむくらいは浮気と思っていなかったので、三村に付き合った。
(真さんのお店の常連さんだ、って言ってたし)
そんな彼の機嫌を損ねてはいけない、との思いもあった。
「今度はお茶じゃなくって、一緒に食事でもどうだい?」
「お食事は、ちょっと。僕、家事がありますから」
忙しくて、外食をしている暇がない。
そんな風に、杏はやんわりとお断りした。
「残念だな。『月雁(つきかり)』の予約、取ってるんだけど」
「え? 月雁!?」
杏の驚いた『月雁』は、有名な高級料亭だ。
予約は三年先まで埋まっており、おいそれと敷居の跨げない一流どころとして知られていた。
「一緒に、月雁の料理を試してみないか?」
杏の心は、大きく揺らいだ。
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