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しおりを挟む「月雁の味や盛り付け、自分の料理にも活かしてみたいと思わない? 北條さんも、きっと喜ぶよ」
「真さんが……」
確かに、料理教室に通うようになってからの杏の腕を、真は喜んでくれている。
「じゃあ、ちょっとだけ」
「決まりだ」
三村は、嬉しそうに杏に手を差し伸べた。
彼も自然に、その手を握った。
(何て華奢で、滑らかな手だ)
家事一切を任されていると言うが、肌荒れひとつ起こしていない。
三村はもう、その裸身に手を滑らせたかのように興奮してきた。
「じゃあ、楽しみにしてるよ」
「ありがとうございます」
その日はお茶だけにとどまったが、三村は浮かれていた。
城の外堀を、埋めた気でいた。
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