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しおりを挟むなるほどね、と青年はうなずき微笑んだ。
「恋多き源家の当主がのぼせ上るのも、解るよ」
青年の目にも、沙穂はまぶしく映っていた。
「どこの御子息だろう。品があるのに気取らない、あの自然な笑顔は」
気難しいスエツグ電子の会長までも、にこにことご機嫌で沙穂の傍に立っている。
「いつも退屈な源家のパーティーなど、冷やかし半分で来てみたが」
思わぬ収穫があった。
そんな視線が自分を射ているとは知らず、沙穂は優しい笑顔を振りまいていた。
「あれ? 真輝さんは?」
気が付くと、真輝は遠いテーブルにいた。
そこには杖を持った老婦人が掛けていたので、彼女を歩かせないように、との彼の気遣いが見て取れた。
「真輝さん、やっぱり優しいな」
そこへ、ゲストの間をすり抜けるようにして武井が現れた。
「白洲さま、こちらへ」
「何でしょう」
武井について行くと、大広間から回廊へといざなわれた。
「時は過ぎました。ご自宅へ、お送りします」
「え? どういうことですか?」
「真輝さまが提示された期日は、パーティーまでの10日間。今が、潮時かと」
沙穂は、急に奈落へ落とされた気がした。
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