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第二部 第二章 おっさんずパーティー
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安全な場所まで逃げることに成功した俺たちは、グレイたちとも合流することに成功しており、セーラが回復魔法アレルギーを発症したことを伝えることができていた。
「ごめん、みんな。騙す気はなかったの。お父さんが回復魔法アレルギーで苦労していたのを知っていたし、言ったら、パーティーに入れてもらえないと思って黙ってた。あの時はまだ発症してなかったし」
セーラは自分のパーティーの仲間に向けて謝罪の言葉を述べている。
メンバーたちは、いかにもバツの悪そうな顔をしてその謝罪を聞いている様子であった。
「病気のことを黙っていたことを責める気はないが、パーティーのリーダーとして言わせてもらえば、中堅になり立てのうちのパーティーには、回復魔法アレルギー持ちのメンバーをサポートできる資金力はない。セーラとはこれまで上手くやってきたが、やっぱりその病気のことは俺たちには重すぎる事実だよ。こうなってしまっては冒険者を廃業した方がセーラのためであると思う。俺たちにもっと資金力があれば、また違った選択もできたが……。すまないな」
回復術士のローガンが、他の二人の仲間を代弁するようにセーラに対し、やんわりと冒険者を引退するように勧告していた。
「やっぱり足手まといの戦士はいらないよね。ポーションはお金かかるし、みんなには迷惑かけられないし、やっぱ廃業かぁ。発症しないでずっとこのままいけると思ったんだけどなぁ……。神様はどうして、あたしにやさしくないのかな」
セーラはリーダーからの廃業勧告にガクリと肩を落としている。
だが、俺でもきっとローガンと同じことをセーラに告げていたと思う。即時効果の発揮できる回復魔法を受け付けない身体で冒険者を続ける危険性は、通常の冒険者よりも何倍の危険であるし、ポーション代の負担は馬鹿にならないのだ。
損益で考えれば、間違いなく損が出るメンバーだろう。
セーラに対し、苦渋の決断を下したローガンの心情を考えると非難はできない。
「本当に済まない。セーラ、君のパーティーからの脱退を勧告させてもらう。恨んでもらっても構わない」
「いいえ、恨むだなんて。あたしを思っての脱退勧告だって分かってるわ。今までお世話になりました」
パーティー内での話は、セーラがパーティーを脱退するということで決着がついたようだ。
残念だとは思うが、病気が発症した以上、仕方ない処置だと思う。
「このバカ娘が大変な手間を取らせた。親として君らに謝罪させてくれ。本当にすまない」
話が終わったのを見計らったように声を出したのは、セーラの父親であるグレイであった。
娘が発症したと知り、先程まで狼狽していたが、今は冷静さを取り戻したようである。
「申し訳ない。俺たちにもっと力があれば、セーラの脱退はしなくても良かったんだろうけど、うちじゃ実力が足りてないんで、力になれず申し訳ない」
「君たちは気にする必要はない。セーラも冒険者としては廃業に近い状態になるが、次の仕事は決まっているから、安心してくれ。君らも新しい仲間を迎えて、より深い階層を目指すことができるように、オレらも応援しておるぞ」
「え!? おとうさん、新しい仕事って何? なんのこと? そんな話聞いてないわ!」
確かにまだ一言も伝えてないし、セーラの意思確認もしてない状態だが、グレイが先走ったようだ。
「そうなのか……。良かった。セーラの生活状況は聞いていたから、みんな心配していたんだ。仕事が決まっているなら、少しは安心できる」
ローガンの顔から険しさが消えていた。仲間として一緒に戦ってきたセーラから、借金の話を聞いていたようで、冒険者を廃業させることで、彼女の生活状態が更に悪化するのではないかと考えていたらしい。
他の仲間たちも皆一様にセーラのことを心配していたようで、次の仕事が決まっていると聞き、顔から険しさが消えていた。
「ここにいる『商人』グレイズとメリーの店での販売員だ。あのダンジョンの第一〇階層で開いてる店でオレらと一緒に雇ってもらえることになっている。だから、君らも安心してくれ」
「ああ、あの店ですか……」
「え? そんな話聞いてないし!」
セーラが眼を点にさせて驚いていた。
「今言ったぞ。詳細は地上に戻ってから詰めるが、とりあえず意志確認だけしとく。グレイズとメリーの店で働く気はあるか?」
「おとうさん、勝手すぎ! 誰のせいでこんなことになったと思ってるのよ!」
「オレのせいだ。だから、頼むオレを助けると思って、この話に乗れ。悪い話じゃないから頼む」
グレイは娘に土下座して頼んでいた。ダメ親としての自覚があるようで、必死で娘に頼み込んでいた。
セーラが冒険者になった理由を作ったのが、グレイのこさえた冒険者稼業の借金なのだから土下座程度でも甘いと言われかねない。
「おとうさん、みんな見てるし、恥ずかしいからやめてよ。分かった。分かったから、病気も発症しちゃったし、病気でもやれる仕事探さないといけないところだったから、おとうさんの見つけてきた仕事を手伝うわよ。これで、いいでしょ」
セーラは土下座していたグレイを助け起こすと、膝の汚れを払っていた。
これではどちらが親なのか分からないが、セーラはとても気持ちが優しい子らしい。
普通、親にこれだけ振り回されたら、キレて悪態の一つも吐くと思うのだが、セーラは全てを受け入れたようにただ穏やかな笑顔をしていた。
その顔に回復魔法アレルギーで冒険者を廃業する羽目になった悲壮感は感じ取れないでいる。
グレイは娘に救われている。いい娘を持ったことを感謝しないとな。
「セーラ……すまねえぇな。お前にばかり苦労をかけさせちまって……。オレも今回限りで冒険者としては廃業する。真面目に勤め人になるからな!」
「はいはい。期待してますからね」
「セーラ、とりあえず生計は立てられそうだな。それが分かっただけでもありがたい。あの店なら、俺たちも利用するし、困ったら何でも言ってくれ。金以外なら何とかしてやれると思う」
セーラの脱退を選択したローガンたちが、俺の店で働くことが決まっていることを知って、ホッと安堵しているようだ。
脱退させたメンバーが借金苦で首を吊ったとかになると、さすがに彼らも寝覚めが悪いのだろう。
「まだ、詳細は分からないけどね。後でちゃんと話を聞いたら、ローガンたちにも改めて挨拶にいくわ。ごめんね。色々と心配とかさせて」
「ああ、そうしてくれ」
ローガンと握手したセーラは、グレイとともに俺の前に来ていた。
「とりあえず、父から簡単にお話を聞きましたが、父の話は本当でしょうか? あたしたちは借金も膨大にありますし、販売員とかやったことがないのですが、それでも大丈夫ですか?」
セーラは一応、俺たちに父親の話の確認を取ってきた。
散々苦労して育ってきているので、慎重な性格なのだろう。話に飛びつくわけでなく、事前の確認を求めてきていた。
「ああ、グレイの言ったことは本当だ。詳細は地上で詰めさせてもらうが、セーラにもグレイたちにも損はない話だと思う。話を聞いてダメだと思ったら遠慮なく言ってくれればいい」
「分かりました」
その後、地上でセーラにグレイたちに提示した条件を話すと、働くことを快諾し、数回の研修期間を経て、第一〇階層のダンジョン販売店は『おっさんず』とグレイの娘セーラが正式な販売員としてデビューすることとなった。
セーラはやはりメリーが目論んだ通り、接客業を経験していたため、客あしらいは上手く、金の苦労も知って育っているため、お金の管理はメリーもお墨付きを与えるほど、慎重すぎるほど慎重な取り扱いをしてくれる人材であった。
そのことを気に入ったメリーがセーラに父親の形見の指輪を貸し出し、鑑定作業や査定額などをマンツーマンで教え込み、セーラも必死に覚えていった。
また、店でのトラブルは冒険者としての実力もさることながら、経験が長い『おっさんず』がやんわりと血の気の多い冒険者たちを窘めて、トラブル拡大にならずに事を収めてくれているし、駆け出したちの善き相談役として色々な助言を行うことも若い冒険者たちに好評を持って迎えられていた。
こうして、店をグレイたちに任せた俺たちは、元々請け負った物資の搬送業務をこなし、鑑定、買い取り査定、販売は彼らに任せ、ダンジョンを探索する時間を大幅に増やす体制を構築することができるようになった。
「ごめん、みんな。騙す気はなかったの。お父さんが回復魔法アレルギーで苦労していたのを知っていたし、言ったら、パーティーに入れてもらえないと思って黙ってた。あの時はまだ発症してなかったし」
セーラは自分のパーティーの仲間に向けて謝罪の言葉を述べている。
メンバーたちは、いかにもバツの悪そうな顔をしてその謝罪を聞いている様子であった。
「病気のことを黙っていたことを責める気はないが、パーティーのリーダーとして言わせてもらえば、中堅になり立てのうちのパーティーには、回復魔法アレルギー持ちのメンバーをサポートできる資金力はない。セーラとはこれまで上手くやってきたが、やっぱりその病気のことは俺たちには重すぎる事実だよ。こうなってしまっては冒険者を廃業した方がセーラのためであると思う。俺たちにもっと資金力があれば、また違った選択もできたが……。すまないな」
回復術士のローガンが、他の二人の仲間を代弁するようにセーラに対し、やんわりと冒険者を引退するように勧告していた。
「やっぱり足手まといの戦士はいらないよね。ポーションはお金かかるし、みんなには迷惑かけられないし、やっぱ廃業かぁ。発症しないでずっとこのままいけると思ったんだけどなぁ……。神様はどうして、あたしにやさしくないのかな」
セーラはリーダーからの廃業勧告にガクリと肩を落としている。
だが、俺でもきっとローガンと同じことをセーラに告げていたと思う。即時効果の発揮できる回復魔法を受け付けない身体で冒険者を続ける危険性は、通常の冒険者よりも何倍の危険であるし、ポーション代の負担は馬鹿にならないのだ。
損益で考えれば、間違いなく損が出るメンバーだろう。
セーラに対し、苦渋の決断を下したローガンの心情を考えると非難はできない。
「本当に済まない。セーラ、君のパーティーからの脱退を勧告させてもらう。恨んでもらっても構わない」
「いいえ、恨むだなんて。あたしを思っての脱退勧告だって分かってるわ。今までお世話になりました」
パーティー内での話は、セーラがパーティーを脱退するということで決着がついたようだ。
残念だとは思うが、病気が発症した以上、仕方ない処置だと思う。
「このバカ娘が大変な手間を取らせた。親として君らに謝罪させてくれ。本当にすまない」
話が終わったのを見計らったように声を出したのは、セーラの父親であるグレイであった。
娘が発症したと知り、先程まで狼狽していたが、今は冷静さを取り戻したようである。
「申し訳ない。俺たちにもっと力があれば、セーラの脱退はしなくても良かったんだろうけど、うちじゃ実力が足りてないんで、力になれず申し訳ない」
「君たちは気にする必要はない。セーラも冒険者としては廃業に近い状態になるが、次の仕事は決まっているから、安心してくれ。君らも新しい仲間を迎えて、より深い階層を目指すことができるように、オレらも応援しておるぞ」
「え!? おとうさん、新しい仕事って何? なんのこと? そんな話聞いてないわ!」
確かにまだ一言も伝えてないし、セーラの意思確認もしてない状態だが、グレイが先走ったようだ。
「そうなのか……。良かった。セーラの生活状況は聞いていたから、みんな心配していたんだ。仕事が決まっているなら、少しは安心できる」
ローガンの顔から険しさが消えていた。仲間として一緒に戦ってきたセーラから、借金の話を聞いていたようで、冒険者を廃業させることで、彼女の生活状態が更に悪化するのではないかと考えていたらしい。
他の仲間たちも皆一様にセーラのことを心配していたようで、次の仕事が決まっていると聞き、顔から険しさが消えていた。
「ここにいる『商人』グレイズとメリーの店での販売員だ。あのダンジョンの第一〇階層で開いてる店でオレらと一緒に雇ってもらえることになっている。だから、君らも安心してくれ」
「ああ、あの店ですか……」
「え? そんな話聞いてないし!」
セーラが眼を点にさせて驚いていた。
「今言ったぞ。詳細は地上に戻ってから詰めるが、とりあえず意志確認だけしとく。グレイズとメリーの店で働く気はあるか?」
「おとうさん、勝手すぎ! 誰のせいでこんなことになったと思ってるのよ!」
「オレのせいだ。だから、頼むオレを助けると思って、この話に乗れ。悪い話じゃないから頼む」
グレイは娘に土下座して頼んでいた。ダメ親としての自覚があるようで、必死で娘に頼み込んでいた。
セーラが冒険者になった理由を作ったのが、グレイのこさえた冒険者稼業の借金なのだから土下座程度でも甘いと言われかねない。
「おとうさん、みんな見てるし、恥ずかしいからやめてよ。分かった。分かったから、病気も発症しちゃったし、病気でもやれる仕事探さないといけないところだったから、おとうさんの見つけてきた仕事を手伝うわよ。これで、いいでしょ」
セーラは土下座していたグレイを助け起こすと、膝の汚れを払っていた。
これではどちらが親なのか分からないが、セーラはとても気持ちが優しい子らしい。
普通、親にこれだけ振り回されたら、キレて悪態の一つも吐くと思うのだが、セーラは全てを受け入れたようにただ穏やかな笑顔をしていた。
その顔に回復魔法アレルギーで冒険者を廃業する羽目になった悲壮感は感じ取れないでいる。
グレイは娘に救われている。いい娘を持ったことを感謝しないとな。
「セーラ……すまねえぇな。お前にばかり苦労をかけさせちまって……。オレも今回限りで冒険者としては廃業する。真面目に勤め人になるからな!」
「はいはい。期待してますからね」
「セーラ、とりあえず生計は立てられそうだな。それが分かっただけでもありがたい。あの店なら、俺たちも利用するし、困ったら何でも言ってくれ。金以外なら何とかしてやれると思う」
セーラの脱退を選択したローガンたちが、俺の店で働くことが決まっていることを知って、ホッと安堵しているようだ。
脱退させたメンバーが借金苦で首を吊ったとかになると、さすがに彼らも寝覚めが悪いのだろう。
「まだ、詳細は分からないけどね。後でちゃんと話を聞いたら、ローガンたちにも改めて挨拶にいくわ。ごめんね。色々と心配とかさせて」
「ああ、そうしてくれ」
ローガンと握手したセーラは、グレイとともに俺の前に来ていた。
「とりあえず、父から簡単にお話を聞きましたが、父の話は本当でしょうか? あたしたちは借金も膨大にありますし、販売員とかやったことがないのですが、それでも大丈夫ですか?」
セーラは一応、俺たちに父親の話の確認を取ってきた。
散々苦労して育ってきているので、慎重な性格なのだろう。話に飛びつくわけでなく、事前の確認を求めてきていた。
「ああ、グレイの言ったことは本当だ。詳細は地上で詰めさせてもらうが、セーラにもグレイたちにも損はない話だと思う。話を聞いてダメだと思ったら遠慮なく言ってくれればいい」
「分かりました」
その後、地上でセーラにグレイたちに提示した条件を話すと、働くことを快諾し、数回の研修期間を経て、第一〇階層のダンジョン販売店は『おっさんず』とグレイの娘セーラが正式な販売員としてデビューすることとなった。
セーラはやはりメリーが目論んだ通り、接客業を経験していたため、客あしらいは上手く、金の苦労も知って育っているため、お金の管理はメリーもお墨付きを与えるほど、慎重すぎるほど慎重な取り扱いをしてくれる人材であった。
そのことを気に入ったメリーがセーラに父親の形見の指輪を貸し出し、鑑定作業や査定額などをマンツーマンで教え込み、セーラも必死に覚えていった。
また、店でのトラブルは冒険者としての実力もさることながら、経験が長い『おっさんず』がやんわりと血の気の多い冒険者たちを窘めて、トラブル拡大にならずに事を収めてくれているし、駆け出したちの善き相談役として色々な助言を行うことも若い冒険者たちに好評を持って迎えられていた。
こうして、店をグレイたちに任せた俺たちは、元々請け負った物資の搬送業務をこなし、鑑定、買い取り査定、販売は彼らに任せ、ダンジョンを探索する時間を大幅に増やす体制を構築することができるようになった。
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