おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第二章 おっさんずパーティー

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「聞いたか? 俺たちが敵を押さえるから、フィーユ、お前はセーラと先に下がれ。いいな」

「お、おう。すまない」

「よし、行け!」

 俺はフィーユの肩を軽くパンと叩くと蜥蜴人リザードマンと戦っている方へ送り出した。

「アウリース、援護の魔法よろしく。カーラも蜥蜴人リザードマンの足止めを頼む」

「心得ました」

「承知」

 アウリースとカーラを伴い、俺たちも撤退を支援するため移動を開始することにした。

 なおも、戦闘は続いており、メリーを盾役にファーマ、ハクがセーラの抜けた穴をフォローしているのが、見えてきた。

 先に撤退を開始したフィーユとセーラはリッキーを担ぎ、更に安全地帯への撤退を始めている。

「よし、そろそろ俺たちも逃げる算段しないとな。これだけの数は相手にしない方がいい」

「わふうう!(あたし、やれますよ。まだ、全然余裕です)」

 ハクが戦闘継続を打診してきているが、数が多すぎるのと組み合わせが最悪なのを勘案して却下する。

「退く! メリー盾役を俺と交代! 最初に下がれ! アウリース、カーラ、ファーマ、ハクの順番で下がるように!」

「了解、探索ではグレイズさんに指示に従うって約束したものね。お先に離脱させてもらうわ。グレイズさん、怪我はしないと思うけど、無茶はダメよ」

 盾役として敵の攻撃を受け止めていたメリーが、俺と入れ替わるように安全地帯へ向けて走り去っていく。

「大丈夫、こいつらくらいの攻撃は俺にかすりもせんよ。さぁ、アウリース、カーラも行け」

「分かりました。先に行ってお迎えの準備を致します」

「承知した。私、優秀。退き時は間違えない。グレイズ、無事に戻れ。待ってる」

 アウリースとカーラも先行したメリーを追って、安全地帯へと駆け去っていく。

 敵は俺たちが逃げ出そうとしていることに気が付いたようで、水辺にいた魚人マーマンたちも地上にあがり、蜥蜴人リザードマンと合流して殺到してきていた。

「ファーマ! ハク、もういい。あとは俺が抑え込む。安全圏まで一気に走れ」

「はーい! グレイズさんも早くきてね。ファーマ、待ってるから。ハクちゃん行くよー」

「わふうう! (あっ、あっ、ファーマちゃん!? あたしはまだ戦えますからぁああ!)」

 戦闘をしたそうなハクをファーマが引き摺って安全圏に向けて駆け出していく。

 ついに残ったのは俺一人になった。

 敵の集団は両種とも援軍を呼んだようで、五〇体ほどをキープしているのが見える。危険は感じないが、集団で押し込められれば、鬱陶しいと思われるため、小石を弾いて、牽制射撃を行い近づけないようにしていく。

 魔物集団は俺の指弾を嫌がり、距離を詰めようとしてきた。

 だが、その時、先に味方が逃げ出した方向から、女性の悲鳴が上がっていた。

 見ると、セーラの腹に三叉槍が生えている。水中を密かに移動した魚人マーマンの群れがいたようだ。

「ちぃ、しくじった。狙撃か。水中までは気配が追えねぇからな」

 すぐにファーマやメリーたちが狙撃してきた魚人マーマンの集団の方へ迎撃に出たようで、追加で攻撃を受けている様子を見えない。

「待ってろ。すぐにそっちに行くからな」

 俺は自分の方へ群がってきた魔物から鉄槍を取り上げると、集団に向けて力いっぱいに振り抜くことにした。

「おらぁあ! 飛んでいきやがれ!」

 鉄槍に横薙ぎにされた魚人マーマン蜥蜴人リザードマンは勢いよく吹っ飛ばされて、遠くの水面に次々に水柱を立てて落下すると、気絶したようで水面に浮かんできていた。

「おっし、これで追撃はない」

 粗方、吹き飛ばしたところで、俺は攻撃を受けたセーラたちの下へ駆け寄ることにした。


「おい! セーラ! どうしたんだ! おい!」

「ローガン! セーラの身体が痙攣しているぞ! 何をしてる。早く回復魔法を掛けてやれよ!」

「すでに回復魔法は行使しているんだ! なんで、意識が喪失して痙攣する。しかも傷が塞がらねぇ!」

 俺が駆け寄ると、回復術士ローガンと探索者のフィーユが、セーラの様子を見て慌てていた。

 まさかと思い、セーラの顔を見ると、メリーが『おっさんず』のモローに回復魔法を掛けた時と同じように意識を喪失して、目の焦点を失い、身体が痙攣を起こしているのが見て取れた。

 明らかに回復魔法アレルギーの症状を見せており、最悪のタイミングでアレルギーが発症したらしい。

「その子はきっと回復魔法アレルギーが発症している。まずは気付け薬で意識を取り戻して、後は回復ポーションと止血帯で血止めしろ」

 俺はベルトポーチから常備している気付け薬と回復ポーションをローガンに手渡した。

「セーラが回復魔法アレルギーだって!? だが、今までは何ともなかったぞ! それに本人はそんなこと一言も……」

 ローガンは受け取った気付け薬を清潔な布に染み込ませて、セーラの鼻に近づけ、意識を取り戻させると、回復ポーションの瓶の口を開けて、セーラに飲ませていく。

「この子の親父さんが、回復魔法アレルギーなんだ。この病気は遺伝性でな。親父さんが心配して捜索しているのを、俺たちも手伝っていたんだ。まさか、今、この時点で発症するとは思わなかったがな」

「セーラが回復魔法アレルギーだったなんて……」

 同じ戦士のリッキィーがセーラの様子を見て困惑していた。前衛を任されることの多い戦士が回復魔法の援護を受けられなくなる回復魔法アレルギーを発症したとなると、戦力としては価値が大暴落したに等しいと取られてもおかしくない。

「ああ、彼女は知られたくなかったんだろうが。冒険者、とりわけ前衛職の戦士で回復魔法アレルギーは致命的弱点だと言わざるを得ない」

 回復術士のローガンもセーラが回復魔法アレルギーだと知って困惑顔をしている。

「うちも中堅上がりたてで、資金に余裕がないからなぁ。回復がポーション頼りになるのは……」

 しばらく、みんな無言でセーラを見ていたが、そのセーラが回復ポーションの効果が効いてきたようで、意識を取り戻してきた。

「う、ううん。はっ! みんな、無事なの! あたし……は確か魚人マーマンの三叉槍をお腹に受けて……」

「傷は一応、塞がっているようだな。すまんが、ここから逃げ出すぞ。落ち着ける場所に行ってから詳しい話はするローガン、フィーユはリッキィーを頼む」

 俺はセーラを抱かかえると、狙撃してきた魚人マーマンたちと戦ってるメンバーに声を掛ける。

「よし、全員全速でこの場から撤退するぞ。カーラ、悪いがメリーの素早さを上げてくれ」

「すでに支援済み。いつでも遁走は可能」

「ナイスだ。よし、撤退する」

 俺たちは各人が出せる最高速で、戦場を急速離脱していく。一方、地上に上がった魚人マーマンは移動速度が低下して、しばらくすると影も形も見えなくなっていった。
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